カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生

著者 :
  • 扶桑社
3.55
  • (42)
  • (100)
  • (88)
  • (25)
  • (7)
本棚登録 : 993
感想 : 102
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594068707

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  前に読んだエッセイ集『直角主義』がなかなか面白かった著者(ライター兼マンガ家)による、今回は全編マンガの単行本。
     買おうかどうしようか迷っていたところ、町山智浩が絶賛していたことに背中を押され、ゲット。

     元は、「ゲリラ的に手売りしていた自主制作のコピー漫画」(印刷会社を経由せず、自分でコピーして作った本)だったもの。それが評判を呼び、描き下ろし作品も含めて正規の単行本化に至ったのだ。

     著者はプロパーのマンガ家ではないから、絵柄はヘタウマ風ではあるが、なかなか捨てがたい味わいがある。

     収録作品は表題作のほか、「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」、「ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園」、「口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画 (MASH UP)」の全4編。
     ほかに、「テレビブロスを読む女の25年」という見開き2ページのマンガもオマケについている。

     各作品のタイトルだけでご飯が3杯いけるくらいの味わい深さ。これらのタイトルを見て「ピンときた」人たちにとっては、期待を裏切らない内容といえる。

     帯には、「自意識の不良債権を背負ったすべての男女に贈るサブカルクソ野郎狂想曲!!」というスゴイ惹句が躍っている。この惹句も秀逸で、内容を的確に表現している。

     サブカル者のハシクレとして、またライター業界の片隅に身を置く者として、身につまされることこのうえないマンガ。

    《「オレさ…劇団辞めて群馬に帰るんだ…」
    「オレも…ライター辞めて親父の土建屋手伝うことにした」》

     などというセリフの一つひとつが、心にヒリヒリと痛い。
     個人的にいちばんヒリヒリしたのは、「口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画 」。主人公の駆け出しライターの挫折が、まったく他人事ではない。
     「かけだしのライターどころか…かけ出すことすらできなかったな…ハハ…」というモノローグに胸打たれた。

     各主人公の部屋の本棚やCD棚の中身(一つひとつ作品タイトルやアーティスト名が書かれている)などのディテールまでがよく練られていて、いちいち楽しい。

     かなり読者を選ぶマンガで、本作の世界に「縁なき衆生」にはまったく面白くないだろう。
     しかし、元と現役の別を問わず、サブカル者なら必読という感じ。

  • 恐ろしいほどのペルソナ設定。
    ボサノヴァカバーを歌う女の結末恐ろしさたるや。
    渋谷直角さんの本、奥田民生になりたいボーイ等身近にいる人を描く天才。現実を超えてるんだよな、詳細すぎて…。

  •  あいたたたたたー!!!!!胸が痛い、でも絶対にこういう人いるよな…と思える、サブカル好きを描いた短編集。自意識の塊で周りにいたら本当に嫌になりそうな人ばかりが出てきて、これほどまでに痛々しい気持ちになった漫画は初めて。作者の観察眼の鋭さにしてやられた感じ。

  • 題名からして「これはキテるマンガでは?」と思わせる雰囲気。表紙の女性の目つきが危なすぎる。この本は短編集だが、やはり表題作の感想を書きたいと思う。カーミィ(本名ミツカ)は「手段を選ばずして有名になりたい女子」。バンドで開花するのを期待するも、解散しソロになる。ソロになってからのカーミィが常軌を逸してくる様子が怖いけど、こういう子って確かにいた!そして、カーミィ35歳のシンガーの夢は途絶える。しかしその2年後のカーミィの姿がさらに恐怖だった。カーミィ、そっちの道に走っちゃったか!いろんな意味で「痛い」なぁ。

  • どっかの寺の本堂の、すげえたくさん安置された仏像の中には必ずあなたと同じ顔のものが存在しますという僧侶のコトバや、船底一枚下は地獄とかそういうフレーズが思い浮かんだ本。
    サブカルをこじらせた者には思い当たる事象が山ほど。危ないところだった。いや、まだ油断はできまい。それにしても本のタイトルが秀逸すぎて本当にすごい。

  • コピー誌が話題になってた頃から気になってたので、というかその事実すらもう自分がサブカル糞野郎に思える……でもこれだけ描ける渋谷さんもさすがの渋谷さんというか本当にメビウスの輪ですねこれ。
    気持ち良いくらいにグサグサきて笑えました。自虐ウケです。
    結構どんな方面にも斬り込んできますので油断はできません。

    ♪痛いよ~あったかいよ~、痛いよ~あったかいよ~

    倉橋ヨエコが思い浮かぶあたり、そうですね、自分はど真ん中でした。

  • 登場人物の自意識を肥大化させた痛々しい言動、行動で笑わせるように見えて、登場人物のねじくれた個性に描写される絞り込まれたリアティに、抽出されたディテールから窺いしれる著者の鋭い観察力の妙味が深みを増して、何ものかに憧れながらもなれなかった方々の心を揺さぶる著者の造詣深い視線が非常に映えた作品だと思った。

  • 歌手、お笑い芸人、シンガーソングライターになりたいサブカル系男女の非現実さを描いた短編集。個人的にこじらせ系漫画やエッセイを好んで読む事もあり、既視感があったのは否めないのですが、ここまで遠慮がないと清々しさすら感じます。何者かにならなければいけない…そんな自意識にまみれた使命感にかきたてられている若者に一読頂き、現実を知る参考書にしていただきたいですね。90年代的な小物使いやパロディも笑えます。しかし、いつからサブカル系は痛いとカテゴライズされるようになっちまったんだろうか。

  • あ〜、イタい、イタいよ〜。でもわかるわ〜。カーミィがその後、ナチュラル系にいってミトン作ったり原発に反対するとか、めさリヤルやんか。私含め、全てのサブカルバカ、必読!

  • 爆笑した後にもの哀しくなる。

渋谷直角の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×