中国複合汚染の正体

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594069780

感想・レビュー・書評

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  • 想像も絶するほどの汚染問題。汚染された川の水を村の人たちの前で飲んでみせ、その後それが祟って死んでしまった市長のはなしとか、嘘みたいな話がわんさかでてくる。それに加え撮影禁止地区にも果敢に飛び込んで取材した女性記者にも脱帽した。

  • 中国の汚染問題はもはや中国だけの問題ではない。
    手遅れになる前に何とかしないと!!

    よく拘束されず取材できたな。

  • 福島香織さんは、新聞記者で、北京での 食事会の時に参加されていた。
    柔らかい感じの人で、書かれている文章とイメージが少し違った感じを受けた。
    中国の複合汚染をどのように 突撃取材して まとめあげるかと言うことに興味が持てた。
    新聞記者と言う肩書きと フリーのライターでは、取材がしやすいかもしれないとおもった。

    はたして 中国の複合汚染の正体まで 暴きだしているのか?
    ということで言えば、フリージャーナリストとして
    中国をネタにして 書いていかなければ ならないということから、
    ペン先に すこし 躊躇がみられるのは 残念でもある。
    もっと、暴いてもいいことが あるはずなのだが。

    水質汚染、土壌汚染、大気汚染。
    その主たる犯人は 産業活動 にある。

    企業は 利益を上げることを最優先として、
    『環境への配慮』が ほとんどなされない。
    安全性のない食品が平気で売られる。
    死んだブタを食にまわす。
    痩肉精(塩酸クレンブテロール)を使った豚肉。
    メラミン混入牛乳。などが、食の安全を直接 消費者を脅かす。
    企業の倫理 が どこかで ネグレクトされている。

    同時に 地方政府は 儲かる企業を支援していることから、
    環境破壊については、利益が減少するが故に
    目をつぶり、みなかったことにしている。
    そして、出世のために 握りつぶそうとする 木っ端役人。
    その地域の共産党書記だから 中国語では 地元のヘビ と言う感じではあるが。

    そんなことから、工場からの排水、煙突からの有害物質が
    垂れ流されて、構造的な 公害が 広がっていく。

    工場排水を 河川に流すだけでなく
    直接 地下水に 注入して、処理する。
    水は 過剰なまでに 汚染されている。
    そこから、ガン村と言われるような 村が生まれる。

    がんと水質汚染の関連を追求する 良心的な研究者というものが
    存在しない。草の根の 公害を追求する人がいるが
    企業との妥協点を探すにすぎない。
    それでも、前進と言うべきなのだろうか。

    土壌の重金属汚染は もっと深刻である。
    そこから生産される カドミニウム汚染米。
    そして、疑われるイタイイタイ病の存在。
    「軟脚病」と言われているが、
    日本のイタイイタイ病の経験が生かされない。
    というか、中国は 公害をある意味ではみとめていないので、
    活かすこともできない。それは、愚かなことだ。

    雲南の陸良のクロム汚染も、
    雲南にいながらも 知らなかった。
    ビタミンK3 を作る会社 雲南省陸良化工実業。

    クロム残渣土(5000トンあまり)を不法投棄した。
    廃水による汚染もあり、実に悪質だった。
    それによる健康被害も起こった。
    結局は その当事者たちは 捕まったが、
    健康被害を受けた人たちへの補償はされていないようだ。

    大気汚染 PM2.5 は、もっと 被害が 大きく広がっている。
    中国の死因のなかで 肺がんは 大きな比率を占める。
    北京オリンピックのために 北京の空気だけをきれいにする
    という 中国的なメンツが もはや そのレベルでは解決しない。

    この本は 日本人にむけての本であるのが残念だ。
    中国人が 読んでもいい本だとおもう。
    有吉佐和子の『複合汚染』は、1975年に本となり、読んだ時に衝撃的をうけた。
    私自身の その後の農業に対する基本的な視点を与えてくれた。
    その時の『複合汚染』は、農薬、化学肥料というものにまみれた農業を中心に組み立てていた。

    今回の福島香織さんの本は、
    水、土地、そして 空気の汚染を 複合汚染として
    それに立ちはだかる 中国の独特な政治的な構造が 
    解決し得ない複合汚染として 描き出されている。
    『正体』を明らかにするのが ジャーナリストかもしれないが、
    中国における 複合汚染を 解決する チカラは どこにあるのか?
    というところまでは、描き出されていない。

    確かに、日本では 不思議なほど 公害事件が おこっているが
    それを追求する 医者や 大学などの研究者、経済学者、弁護士など
    多くの良識ある人々が 取り組むことで 因果関係を 明確にした。

    中国には 『ガン村』が 400ヶ所以上あると言われるが、
    因果関係が 明らかにならないまま 隠蔽されている。
    住民や農民が 一時的な抗議行動をしても、反政府活動と認定され弾圧される。
    中国の 公害は どういう道筋で 解決されるのかが
    まさに 不透明であり 濃霧におおわれているところが、現実なのかもしれない。

    ただ 水が汚れ 土壌が汚れ 空気が汚れる ということは
    農作物も 汚れるということだ。
    それが、ニンゲンに及ぼされ、生物にも及ぼされる。
    生態濃縮という メカニズムの中で さらに悪循環の未知へ。 

  • 著者自ら撮影した冒頭の写真だけで充分衝撃的だが、現地取材に基づくルポ内容もインパクトがある。
    マクロな議論だけでなく、こういう「現場を見よ」という視点も大事。でも危ない橋を渡っていらっしゃるので、著者が危険な目に遭わないか心配。

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著者プロフィール

ジャーナリスト、中国ウォッチャー、文筆家。
1967年、奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、1991年、産経新聞社に入社。上海復旦大学に業務留学後、香港支局長、中国総局(北京)駐在記者、政治部記者などを経て2009年に退社。以降はフリージャーナリストとして月刊誌、週刊誌に寄稿。ラジオ、テレビでのコメンテーターも務める。
著書に、『習近平 最後の戦い』(徳間書店)、『台湾に何が起きているのか』『ウイグル人に何が起きているのか』(以上、PHP新書)、『習近平王朝の危険な野望』(さくら舎)、『孔子を捨てた国』(飛鳥新社)など多数。
ウェブマガジン「福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップス)」を連載中。

「2023年 『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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