残虐の大地 ~私が生まれ育った中国は、なぜここまで恐ろしい国になったのか (扶桑社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594072551

感想・レビュー・書評

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  • 中国という国は我が国の隣にあり、私も若い頃は観光で、社会に出てからはビジネスなどで何度か訪れたことのある親しみ深い国だ。見た目もアジア人であるから、白人が闊歩する街を歩くよりも安心感がある。一度日本で言う年末年始の冬季休暇を利用して上海に行ったときなどは、あまりの人の多さに驚き、どんな人混みでもかならず見かけるのは、満員電車の様な鮨詰め状態からでも喫煙している人と痰を吐いてる人だ。そして1人が吸い殻を植え込みに投げ捨てると、面白い様に後から後から同じ場所に吸い殻が捨てられ、いつのまにか天然の吸い殻入れになってしまう。それと食事中に手を拭いたナプキンや食べかすを床に捨てていくのは正直驚いた。床が絨毯なのに捨てたら当然シミになるとは思うのだが、次々と床がゴミだらけになるのはそれなりのレストランでも見た目が食事の妨げになった。だが、これはあくまで文化の違いであり、中国ではそうやってすぐに捨てても拾う係の人がちゃんといるから問題ない行為なのだ。中々そこを理解していないと、行儀が悪いと決めつけて、勘違いをしてしまうのだが、顔は似ていても文化が異なれば常識も変わる。日本人が食べ終わった皿やグラスをテーブル上で重ねて行くのは、日本人にしたら「片付けやすい様に」気を遣ってるつもりでも中国では行儀が悪い。この様な双方の文化の違いは時に誤解や対立を招く事もある。
    筆者は元中国共産党の役職クラスの地位にありながら、共産主義体制に疑問を持ち、やがて海外に亡命し、中国の真実を内部をよく知る立場として世界に発信し続けている。サブタイトル「私が生まれ育った中国は、なぜここまで恐ろしい国になったのか」が示す通り、特に世界から批判の対象となる残虐な行為(主語は主に中国共産党)について克明に記録している。なお現在世界から非難を浴びる新疆ウイグル自治区の弾圧には触れずに一冊分の分量が構成されている。タイトルからそこに期待していた方は、それについて詳細に書かれた本も沢山あるのでそちらを合わせて読むと、更に残虐性が伝わってくるだろう。
    本書のスタートは国民の道徳性についてだが、上海の様な国際化・近代化が進んだ都市部よりも、田舎においては、日本では信じられない様な犯罪・事故が多発する。共産主義を掲げながら実際は資本経済が主になっているから、自己の遺体引き取りにも金を請求する話や、それに続く、法輪功への弾圧と臓器売買の話は、読んでる文字からも凄惨さが十分伝わってくる。政治犯として収監された人々への強制労働の実態、不衛生かつ粗末な食事、女性収監者への日常的なレイプ、強制労働所内での賄賂のやり取りなど、これが全て真実なら正直、戦時中の帝国陸軍も驚く様な行為のオンパレードである。公開処刑は北朝鮮も思い起こさせるが、田舎ではまだまだ古い体質を引きずる状況もある様だ。何よりYouTubeにアップされている道端でトラックにはねられた子供を誰も助けずに避けて歩いていく人々の姿は(結局すぐに助けなかった事もあって、女児は死亡している)、これが本当に国民性なのかと疑いすら抱いてしまうが、動画サイトに掲載されるくらいだから、そう遠くない最近の話のようだ。その原因が国民性から来ているのか、自分のことは自分で何とかしろという伝統なのかは判らない。ただ車に轢かれるのも、怪我をするのも自己責任という事であろうか。
    そして話は中国の失敗とも言える一人っ子政策にも触れていく。日本も少子高齢化に伴う人口ピラミッドの変化と将来に向けた対策は急を要している。中国はご存知人口抑制策として有名な一人っ子政策は明らかに将来の破綻を招く。1人が二親を面倒見なければならず、配偶者側の両親を入れると最低でも4名の扶養が必要だ。これは将来の中国経済の衰退を明らかに示唆する問題であり、そう簡単には解決できないだろう。政府も始めは全額社会保障でまかなう、その後政府が支援する、そして自分たちで保険に入って積み立てろ、と立場を10年スパンで変えている様である。
    話は環境保護にも及ぶ。このまま人口が増加すれば食料問題は致命傷になりかねない。田舎の大地は隅々まで掘り起こされ、無理な連作を繰り返して土地が痩せやがては砂漠と化していく。田舎では家畜の食べる飼料でさえ不足してくる。
    本書は後半に進むにつれ、最終章に近づいていく共産主義の末路をリアルに描いていくが、隣の国である日本へ今後中国がどの様に影響してくるのか、まさかの軍事侵攻も無いとは言い切れない。沖縄や尖閣を見ていれば、寧ろ軍隊を派遣して獲りに来ると考えた方が余程リアリティがある。
    現在、中国への入国にはビザが必要だ。一昔前はそんな面倒な手続きはなかったが、徐々にこじれが更に進む日中関係。同じアジアの民族として、地域を安定化させるための指導的・大国的立場として、先ずは両国の負の側面も理解した上で、関係性を築いていく事が重要だ。
    本を読み、経済発展に明け暮れるニュースの裏側を読み、非人道的行為に対しては毅然とした態度を示し、対等な立ち位置でアジアの将来、世界の未来について建設的な話し合いができて行ったら良いと感じる。まずはお互いの文化や国民性をわかり合うことから始めたい。

  • 続けて気持ち悪い本を読んでもた。
    元共産党幹部の告発。
    マジでやっとるんかという感想。隣のシナ国。
    文明国とは、人を殺さない、少なくとも残虐な方法で人を殺さないことが最低条件という言葉も聞いたが、この国を、文明国の一角を占めさせておいていいのか。発展途上国と先進国ではない。
    西洋文明が全部いいわけではないのだが、長い諍いの果てに、出来た守るべきルールっていうのは尊重されて然るべきだろう。

    図体でかいだけで、なんなんだ。

    ただ、この作者も、共産党支配以前は、シナは良い国だった的に書いてるのはどうかと思うな。通州事件とか起こした人民だし。

  •  どこまで信じていいかどうか疑問を感じながら読んだが、作者である「李真実」が「中国生まれで中国育ち」で「元中国共産党幹部」であることが本当であるとして、「本の内容が本当である」ならば、これは怖ろしいことである。第一章からあまりにもショッキングな内容が書いてあった。
     (抜粋であるが)・・・人類社会は、原始社会から始まり、奴隷社会、封建社会、資本主義、社会主義という順に、低級社会から高級社会に進化し、最後には「地上天国」とも言われる共産主義社会へと発展していく。しかし、この「地上天国」は共産党が建てる・・・と謳い、また、人類の歴史は階級闘争の歴史であり、武力(暴力)によって旧制度を倒し新制度を建て、共産主義も例外でなく武力によって建てなければならない・・・としています。
     この文章に衝撃を受けるとともに、共産主義がなぜ危険な思想なのかがようやく多少わかってきたような気がした。

  • 元中国共産党幹部、日本に留学、帰化。実体験をもとに真実を語る。人権を蹂躙した強制労働所。生体臓器狩り。一人っ子政策と財産の没収。自然破壊。道徳退廃。共産党崩壊は必至だが、日本への要請や影響は多大なので、要注意。

    対岸の火事では済まない関係性にあることを再認識。

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著者プロフィール

李 真実(リ ジェンシー)元中国共産党幹部。1960年代、中国生まれ、中国育ち。2008年、日本に帰化。昇進の内定もあったが、汚職が横行している環境下、中国の「役人になれば人間になり難い、人間になりたければ役人にならない」という教訓にならい、生活を一新するため、日本の大学院に留学。そこで、中国共産党に植えつけられた「日本は劣等国」が?であるとことを知る。2005年、ある二つの事件を契機に、中国共産党の、人を人とも思わない恐ろしい本質を知り、インターネットで「脱共産党声明」を出す。それ以後、日本での会社勤めのかたわら、中国の実態についてインターネット、雑誌などで発表する活動をはじめる。本書は、多くの日本人を震撼させた前著『残虐の大地』(扶桑社刊)に続く第2弾となる。

「2016年 『中国共産党の紅い金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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