日本会議の研究 (扶桑社新書)

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594074760

作品紹介・あらすじ

市民運動が嘲笑の対象にさえなった80年代以降の日本で、めげずに、愚直に、地道に、そして極めて民主的な、市民運動の王道を歩んできた「一群の人々」がいた。

彼らは地道な運動を通し、「日本会議」をフロント団体として政権に影響を与えるまでに至った。
そして今、彼らの運動が結実し、日本の民主主義は殺されんとしている。――

安倍政権を支える「日本会議」の真の姿とは? 中核にはどのような思想があるのか?
膨大な資料と関係者への取材により明らかになる「日本の保守圧力団体」の真の姿。

感想・レビュー・書評

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  • 菅野完という名前がどうしても読めない。ああそうだ、たもつだったっていつも思う。ばりばり左翼の馬鹿本。立憲民主党の奴らもそうだけど、何故彼らは私こそ保守だといいたがるのか?僕には極左にしか見えないのだが。よっぽど左翼に属してるということが恥ずかしいことだと定着している証左か!

  • 墨塗りの本というものが見たくて手に取った。ここ最近、見聞きする現政権の中の人たちの言動が、なんだか悪い宗教に引っかかっちゃった人みたいだなーと思っていたら本当に宗教だった話。怖い。

  • 先ず本書の内容を1000字で要約したあと、わたしの感想を4点述べて、このベストセラー本を冷静に評価したい。

     日本会議の主なメンバーは、ほとんど生長の家の学生運動出身である。最初は1966年の長崎大学学正常化闘争が出発点だ。左翼系全学連から学園封鎖を阻止して、自治会選挙で勝ったその運動は、右翼学生から全国的に評価され、、やがて「全国学協」に発展し、社会人組織「日本青年協議会」を生み、樺島有三はそのトップとして君臨し続けている。
     1970年代の元号法制化運動で、日本青年協議会は「日本を守る会」の事務局に入る。しかし靖国神社国家護持法案で失敗し閣僚の公式参拝運動に切り替える。97年「日本を守る国民会議」と統合して「日本会議」が生まれる。それをプロデュースしたのは、同じ生長の家会員の参院議員村上正邦である。靖国神社問題の核心は宗教性を保ったまま慰霊行事を行う事であり、日本会議の存立に関わるので、会員たちはは公式参拝にこだわるのである。また、「日本会議国会議員懇談会」を設立し、第三次安倍内閣では閣僚に占める割合は84.2%になっている。首相補佐官に生長の家の出身の衛藤晟一が入っている。
     安倍政権の筆頭ブレーンの伊藤哲夫(「日本政策研究センター」)も生長の家出身。伊藤の主張は「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」。改憲の目標は、憲法9条ではなく、「緊急事態条項」と「家族条項の追加」である。
     生長の家本体は1983年に政治運動から撤退したので、それに反旗を翻した信徒たちが作ったのが、日本会議の人々である。彼らの主張は「反左翼」「反ジェンダー」で単純なので、人々が集まりやすく、かつ真面目に草の根運動(選挙前のアンケート、国会請願、署名活動)しているので、組織票目当てに国会議員も結集しやすい。また、高い事務能力も有する。そしてこれらの運動をまとめているのが、長崎大以来の古参幹部の安藤巖である。
     菅野完は言う。「日本社会が寄ってたかってさんざんバカにし、嘲笑し、足蹴にして来た、デモ・陳情・署名・抗議集会・勉強会といった「民主的な市民運動」をやり続けていたのは、極めて非民主的な思想を持つ人々だったのだ。そして大方の「民主的な市民運動」に対する認識に反し、その運動は確実に効果を生み、安倍政権を支えるまでに成長し、国憲を改変するまでの勢力になった。このまま行けば「民主的な市民運動」は日本の民主主義を殺すだろう。」(298p)

    読んで分かったことは二つ。ひとつは、彼らの主張の貧弱さである。脱退会員が言うようにカルト宗教だろう。理論的でないから様々な人々が結集できるとも言える。伊藤哲夫の作ったレジュメを見ても穴だらけだ。そしてもうひとつ、日本会議の歴史はよく分かった。
    分からなかったことは二つ。菅野氏は彼らの「市民運動」を高く評価しているが、全く「同じ事」を、めげずに、愚直に、地道にこつこつやって来たのは、当の本家の「市民運動」である事を菅野氏はどうやら知らないらしい。そして署名数でもデモ参加者でも他の数字も、いつも日本会議を遥かに凌駕しているのも市民運動なのだ。それでも「国憲に影響を与える」ところにならないのは何故で、日本会議が安倍政権下で影響を与えているのは何故か、菅野氏は分析しなくてはならないだろう。
    もう一つ。日本会議が安倍政権を利用している面と、安倍政権が日本会議を利用している面、両方あると思うが、どちらがパワーバランスで強いのか。それを見極めるのは作戦を練る上でも重要だと思うのである。

    2016年8月20日読了

  • (個人的な感想)

     先日終わった伊勢志摩サミット、消費税中止、オバマの広島訪問も、支持率を上げ、憲法改正、大日本帝国へと還るステップ。(各国首脳に伊勢神宮を参拝させたのは、文化観光スポットの意味合いよりは、上記文脈に色濃く従う。)
     この本を衆参選挙前に読めば、憲法改正と大日本帝国回帰を目指すカルト政権の是非を判断する参考になる。

     なぜ「美しい日本」というと、大日本帝国に戻りたがるのか不思議だったが、この本によってやや解消された。また、日本会議周辺に、庵野監督の「大日本戦隊」のような滑稽さがある理由が少しわかった。
     トランプの滑稽さを笑っているうちに、アメリカ大統領になる可能性も現実味が出てきた。日本も時代錯誤なカルトやカルト右翼が政権を立て、憲法改正し、漫画のような大日本帝国回帰を現実のものとしようとしている。
     議論を深め、中枢の権力基盤にまともな知性とバラエティを持たせなければ、お笑い漫画のように亡国してしまうだろう。childishな思考停止、形式的な儀式の繰り返し、全共闘のリア充憎し、内実は老人会でありルーツはラジオの落語・漫才がブレーンなのだとすると。

     ただし、本書について内容的には「生長の家」に偏っている印象。(神社系からもらった紙が、国粋ぽい表現だった事があるけど、)たとえば神社本庁とかその周辺は大丈夫なんだろうか?ほかにも影響のある団体や、ダイナミズムを生む仕組みや背景があるように思った。

     敗戦によって失われた父権。戦後、こわれた家族制度や生き血の流れなくなった村コミュニティ。受け皿となった都市部を中心に、失われた制度を模倣し穴埋めを求めた人々によって、カルト宗教が乱立繁栄した。そして、戦後70年、それらは政権の中枢を担うまでになった。
     GDPや経済効率中心で、インセンティブやトレードや虚業に精を出し、政は主に富の分配機関としてだけ利用し、市民としての良心を養わず、義務を疎かにしてきた結果ではある。

     ここは、多くの市民にとって、乗り越えなければならない、暗い時代に向かう途中だろうか?天から降ってきたマナのように享受し、貪っていた自由や権利の灯がひとつひとつ消されていくのだろうか?

    (↑20世紀末には、黒澤明「夢」だって、んなわけあっかでゲラゲラだった筈が、次世紀になってみると、そうでもなくなった。国政においては、カルト政権誕生という笑えないお笑いなオチに落ちっててるので、これぐらい悲観を並べとくぐらいで丁度いい。)

  • 安倍さんの使う「左翼」という言葉の特殊な用法の理由がわかったように思う。

    しかし現閣僚の皇室軽視との関連が今ひとつ不明。

  • 元々ジャーナリズムの世界に属していないにもかかわらず(だからこそかもしれないが)、これぞ調査報道という内容をまとめ上げた筆者に敬意を表したい。

    また、本書が岩波でもなく、朝日新聞でもなく、扶桑社からであるのも驚きだ。

    現在日本の「右傾化」と呼ばれている文脈は戦前の「右翼」とは文脈が異なっていると考えてきたが、謎が解けた感じである。しかし、一宗教の原理主義分派セクトによって政権が支持、維持され運営されているという事実は背筋が凍るし、キリスト教原理主義に支配された米国議会を笑ってもいられない。

    今のこの国を考える上での非常に重要なテキストの一つであり、主義主張に関係なく手にして読んでほしい。

  •  日本会議の源流として、全共闘運動が激しかったころ長崎大の民族派学生が学園紛争からキャンパスを正常化した運動があるのは興味深かった。背後に生長の家が母体としてあり、椛島有三が議長だったという。若き日の鈴木邦夫も早稲田大で生長の家の民族派として活動していたが、こちらは武闘派で、ゲバ棒と渡り合った。結局、長崎大系の安東らに学生組織の権力の座を追われていく。生長の家は「出版宗教」と異名を取り、数々の出版物を出していた。谷口雅春の言葉は今でも原理主義者がいるようだ。生長の家は1983年に政治活動をやめるが、今も影響を残している。
     日本会議は、神社本庁のほか、霊友会や崇教真光など新興宗教も協賛。活発な地方議会への請願活動、立候補予定者への思想アンケートなど、かつての左翼運動が得意とした手法で政策実現を図っているという。
     参議院の法王と呼ばれ、戦後50年決議の戦争責任の箇所に最後まで抵抗した村上正邦への取材は面白かった。逆にそれ以外の日本会議メンバーには、あまり直接取材ができなかったのか、資料に頼った記述が多かったのは惜しむべき点か。

  • 得体の知れぬ日本会議の歴史、構成員、関与団体がよくわかった。丹念にに資料収集とインタビューを行った末の作者の労作である。
    それでもわからないことがある。何故、自民党の大物政治家の多くが日本会議のメンバーとなっているのだろうか。

  • 抜群の面白さ。日本の将来は暗いと改めて感じる。

  • 高校時代に立花隆の『中核VS革マル』(講談社文庫)を読んだ時と同じ面白さがあった。

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