日本の地政学

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594086978

作品紹介・あらすじ

 2020年7月23日、アメリカのポンペオ国務長官は、カリフォルニア州のニクソン大統領図書館で、このように宣言しました。
これは、「中国共産党打倒宣言」と考えて、間違いありません。

意識するしないにかかわらず、私たちは、「米中覇権戦争」の時代に生きています。

 日本は、世界で何が起こっているのかを正確に知り、「戦勝国」として、この時代を通過していかなければなりません。

 どうすれば、日本は「戦勝国」になれるのでしょうか?

 答えは、この本の中にあります。

感想・レビュー・書評

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  • 国の置かれた地理的条件が、政治、軍事、外交にどのように影響を与えるのかを考察する学問が地政学。

    著者は地政学的観点から、日本は東洋におけるイギリス、中国はドイツと似ていることに気づき、100年前のドイツとイギリスの間で起きたことが、これからの日本と中国の間でも起きると考えて、その予想と対処法につき提言をしている。

    国内外のメディアに載った記事をエビデンスとして、非常に説得力のある検証と提言がなされ、日本が将来生き延びるための重要な一冊となっている。

    日本政府は著者を外交問題のブレーンとして迎え入れるべき、と強く思った。

  • とても分かりやすい日本の大戦略についての書籍。

    まず前提となる地政学について検討を加え、日本がシーパワーであり、リムランドである中国との相剋が必然であることを説明。

    その上で、日本が米中どちらに着くべきかという論点について、中国必敗論、日本が米との同盟の信義に忠実に、米の負担軽減の観点から軍事力を強化、合わせて人口、経済力を強化してFOIPを推進し、中国のパワーを封じ込める体制を取るべきことを説いている。

    また、第一次大戦前とのアナロジーで、日本をイギリス、中国をドイツに例えているのは非常に示唆に富む。

  • 日本の立ち位置について。
    分かりやすい。さすが、メルマガをずっと続けていらっしゃる方だなと思う。
    「地政学」という言葉は最近になってようやくメジャーになってきたが、このような理論は日本人にこそ必要な理論ではないかという気がする。立ち位置を常にいろんな視点で確認し続けるのが大事。

  • 日本が現在のポジションを維持していくのに「人口」、「経済力」、「軍事力」が必要ということには同意します。
    しかし、現在の日本政府が打ち出している政策でどこまで効果があるのかはまだまだ疑問です。
    道を誤ることなく、進めてほしい。

  • 外交についてほとんど知識がなかったけれど、第一次、二次世界大戦のイギリスやドイツを例に今の中国や日本を解説していてわかりやすかった。
    安倍総理が行った行為の解説やトランプやバイデンの行動の裏にある目的や、中国共産党と香港や台湾の立ち位置などが大まかに理解できた。
    このベースをもとにいろんな知識をつけていきたい。

  • 北野さんのメルマガは、かれこれ10年以上の付き合いになりますので、北野さん信者と言っても良いのかも知れません。最初の頃は、胡散臭いとしか思いませんでしたが、これ迄の北野さんのお考えを元に世界情勢がすんなりと理解でき、各国の行動の元になる動機や日本が取るべき態度が理解できるようになりました。
    この本の内容はメルマガの話と被るところも散見されますが、最近、良く耳にする地政学を広めたきっかけは、北野さんではないかと思っています。
    日本は岸田内閣に変わりましたが、どうか北野さんの掲げる指針に沿って、行動して頂きたいと切に願います。

  • 地政学という分野があることを知って6年程経過します、地形を考慮した上で国が戦争に勝つ学問に役立つことから、日本では長い間制限されてきた分野であったと認識しています。

    この本では、前半部分では、イギリスと日本・ドイツと中国の置かれている立場が似ていることを解説した上で、英独関係からわかる日本のとるべき戦略、さらにはこれから世界で起こることまで述べられています。最終章では、日本のとるべき道が示されています。地政学を学ぶとここまで見通すことができるのかと益々興味を持つようになりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・マッキンダーによれば、世界島の心臓部にハートランド・ロシアがあり、その周りに内周の半月孤(リムランド)である、欧州・中東・インド・中国があり、その外側に、外周の半月孤である、イギリス・南アフリカ・オーストラリア・アメリカ・カナダ・日本がある(p21)世界島(ユーラシア、アフリカ大陸)をいきなり征服することは難しく、前段階がある。東欧を支配するものは、ハートランドを制し、ハートランドを支配するものは、世界しまを制し、世界島を支配するものは世界を制する(p25)

    ・日本とイギリスは共に「外周の半月孤」に属している、そしてユーラシアのすぐ近くに位置する島国である、地政学的にいうと、日本とイギリスは似ている。別の言葉で表現すれば「日本は東洋のイギリス」だ」ということになる(p28)

    ・マッキンダーは1904年に語っている、ロシアはかつてのモンゴル帝国に代わるべき存在である。ロシアが、フィンランドに、スカンジナビアに、ポーランドに、トルコに、ペルシャに、インドに、最近では中国に圧迫を加えている(p29)

    ・イギリスの黄金期を築いたビクトリア女王の在位期間は1837-1901年の64年間、イギリス王として歴代1位、昭和天皇の在位期間は1926-89年の63年間である。さらに私達が普段自覚していない超重要な事実として、「海に守られている」ことがある(p33)

    ・日本は「戦線を拡大しすぎた」ことが敗因として挙げられる、小さな日本は、満州で戦いながら、オーストラリアを攻撃、日本国内がスカスカになっていた、日本がアメリカに降伏した背景には、原爆投下とソ連参戦という2つの理由があるが「水の制止力が働かなかったわけではない」(p36)

    たらどうなるか、イギリスはロシアとの緩衝地帯を作るためにベルギーに進出(=朝鮮半島に相当)、それでドイツと戦争となるもこれに勝利(=日清戦争に相当)、イギリスはベルギーを併合(=韓国併合に相当)、その後、更なる緩衝地帯を作るためにドイツとロシアの中間にあるポーランドに傀儡国家を建国する(=満州国に相当)、ドイツがこれに反発し、イギリスと戦争を開始(=日中戦争に相当)、ドイツはソ連から支援を受けて、イギリスと戦うことになる。イギリスはこのようなややこしい動きをせずに(=大陸欧州に進出することなく)ドイツの脅威、ソ連の脅威を避けた(p41)日本は「水の抑止力」に守られているので、緩衝地帯はすでに存在していると考えるべきであった(p42)

    ・なぜ1970年代初め、アメリカと中国は和解したのか、これはハートランド・ソ連があまりにも強くなりすぎた(東欧、中国、北朝鮮の共産化に成功)から、1950年に朝鮮戦争が始まる、これはアメリカ・韓国対ソ連・中国・北朝鮮の戦いで、アメリカはこの戦争に勝てずに引き分けとなった、1960年代、今度はアメリカ・南ベトナムと共産ソ連・中国・北ベトナムの戦いに激化し、アメリカは敗北する。ソ連に勝つために、中国はシーパワー超大国アメリカと組むことにした(p54)

    ・中国が台湾を統一しようとしている、沖縄の領有権はない、と行動する理由は、中国はアメリカに対抗するために超大国になることを目指している、東アジア・東南アジアを中国側から見ると、日本・韓国・台湾・フィリピン・ベトナムが、新米勢力に包囲されていることがわかる(p59)

    ・ドイツ帝国と中国が似ていると思われる点、一党独裁体制、民族絶滅政策である(p78)

    ・ドイツ帝国と中国が似ていると思われる点、一党独裁体制、民族絶滅政策であること(p78)

    ・2008年、アメリカ発「100年に一度の大不況」が起きて、1999年12月のソ連崩壊から続いていた「アメリカ一極時代」が終わった、そして「米中時代」が始まった、これより中国政府高官の態度が明らかに変化した(トロイオンス75)

    ・イギリスは外交革命によりドイツに対応した、つまり、フランスとの和解・ロシアとの和解・日本との同盟・アメリカとの和解、このようにして味方につけたのでドイツに勝てた(p87)

    ・中国の戦略は日本とアメリカを分断する、日本とロシアを分断する、日本と韓国を分断する、日本を孤立させて破滅させるであったが、安倍総理は、日米・日露・日韓関係を改善することで、反日統一共同戦線戦略の無力化に成功した、これはあまり知られていない安倍氏の偉大な功績である(p97)安倍総理のしたことは、本質的にイギリス・チャーチルがしたことと変わらない、日中戦争は、米中戦争に転化した(p102)

    ・2018年になると、トランプは習近平は嘘をついている(北朝鮮金政権を倒すための経済制裁)ことに気づいて、トランプ政権は仲介者としての中国を外し、北朝鮮を直接交渉することにした(p101)

    ・ロシアは2014年以降はずっと低成長が続いている、その理由は1)アメリカのシェール革命の影響で原油価格が低迷、2)欧米と日本の経済制裁(p154)

    ・中国共産党体制崩壊時に独立する可能性がある3箇所は、1)台湾、2)新疆ウイグル自治区、3)チベット、である(p156)

    ・日本の戦時中の話、「軍部が独走したからとか、そういう要素は確かにあった、でも当時は日本国民が戦争をやりたがっていた」指導者も国民も、しばしば戦略より感情を優先させる(p162)

    ・ソ連崩壊後のロシアは、賠償金を払う必要はなかったが、ソ連が崩壊した翌年1992年には2600%インフレが起きて、92-99年までにGDPは43%減少した。(p167)

    ・マッキンダーの処方箋を中国共産党崩壊後に当てはめるとどうなるか、中国にヒトラーが現れないようにする方法は、1)民主主義思想をどんどん普及させる、共産党が行ってきた悪事(チベット大虐殺、ウイグル人絶滅、天安門事件の真実など)を知らせていく必要がある。目指すは中国が「今のドイツ」のごとく民主的で人権を重視する国に生まれ変わること、2)中国に対抗できるだけの同盟(例:アジア版NATO:アメリカ・インド・オーストラリア等)を作ること(p171、173)

    ・ドイツがソ連を攻撃を開始したときに日本が即座に参戦して攻撃を開始したら、西からナチスドイツが、東から日本がソ連を攻撃する。ソ連は戦力が分散されて敗北する可能性が高まる。すると、ドイツはイギリス以外の欧州とソ連の西半分を支配、日本は朝鮮半島、満州、中国とソ連の東半分を支配することになり、アジアと欧州に「反米的な巨大帝国」が誕生することになる、だからアメリカは、ドイツがソ連攻撃を開始した1941年6月時点で日本を叩き潰すことを決めた(p180)

    ・第一次世界大戦が起きたとき、日本と同盟関係にあったイギリスは海軍のみならず陸軍の派遣も要請したが、日本政府はこれを何度も断り続けてイギリスは失望し、日英関係は悪化、日英同盟は気を決意した(p184)

    ・日本が現在の地位を維持するために必要な3要素は、人口・経済力(一人当たりのGDP)・軍事力である(p187)

    ・ロシアの出生率を上げた「母親資本」という制度は、子供を二人産んだ家族は大金(平均年収の2倍)もらえる、というもの。2007年導入、2013年に1990年以降初めて死亡率を超えて、2014年に過去最高(新生ロシア)となった(p188)

    2021年8月8日作成

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著者プロフィール

国際関係アナリスト。1970年生まれ。19歳でモスクワに留学。1996年、ロシアの外交官養成機関である「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を、日本人として初めて卒業(政治学修士)。メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」(RPE)を創刊。アメリカや日本のメディアとは全く異なる視点から発信される情報は、高く評価されている。2018年、日本に帰国。
著書に『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』(草思社)、『隷属国家日本の岐路』(ダイヤモンド社)、『日本人の知らないクレムリン・メソッド』(以上、集英社インターナショナル)、『日本の地政学』(小社刊)などがある。

「2022年 『黒化する世界 ――民主主義は生き残れるのか?――』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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