自閉症の画家が世界に羽ばたくまで

  • 扶桑社 (2021年8月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784594088682

作品紹介・あらすじ

重度の自閉症だった息子が、フランスの美術展で受賞し、画家として活躍。
その陰には、40歳でがんで他界した妻の献身的な「療育」があった。
亡き妻の遺志を継いだ父親の子育てが花開いた感動の物語。
NHK「おはよう日本」(5月2日放送)特集で話題に!

フランスの美術展(新エコールドパリ浮世・絵展)で版画作品が優秀賞に輝いたのを機に、 各地で個展を開くたびに入場者数記録を塗り替えている、愛媛県在住の画家・石村嘉成氏。
生後2歳で自閉症と診断され、暴れる、泣きわめく、発語がないなど、手の付けられない 嘉成氏をどうやれば社会に送り出せるか、と苦悩した両親による必死の子育てが始まる。
小学校では普通学級に通わせる代わりに、毎日教室で授業に付き添うなど、すべてを息子の 「療育」に捧げた母親・有希子さんは、嘉成氏が11歳のとき、がん闘病の末に他界――。
遺された夫の和徳氏は、妻の想いを継ぐべくシングルファーザーとして息子の療育に励み、 中学高校と普通学級に通わせ、高校3年間は無遅刻無欠席、父子一緒に自転車で登下校した。
高校3年の絵画の授業で版画にめざめた嘉成氏は、創作意欲を発揮して、大好きな動物や 生きものたちの姿を次々と作品に仕上げていく。母親が遺してくれた動物のビデオや絵本が、 今でも嘉成氏の創作のモチベーションになっているのだ。
一見、順風満帆にもみえる嘉成氏の成長だが、暴れる息子を前に「我が子を暴君にしない。 親が子どもの奴隷にならない」という、壮絶な覚悟の「療育」が今でも続いている。
本書は、40歳で他界した妻・有希子さんが遺した胸を打つ日記も多数掲載。
「この記録を 社会のために役立てて」と妻が言っている気がする、と語る和徳氏。夫婦の25年にわたる 苦闘の記録は、子育てに悩める人々に様々なヒントを与え、希望の書となることだろう。

★目次より

[はじめに] 石村和徳
四六時中息子に向き合った妻の信念が
子育てに悩める人への激励となれば

【1章】
自閉症の宣告
「療育」での意識改革

【2章】
母の献身、付き添い授業
そして死別……

【3章】
父が背負った「療育」
変わった息子

【4章】
父と子でがんばる喜び
人生を変えた版画

【5章】
アートで自立の道
母の想いは永遠に

[おわりに] 石村和徳
「この記録を社会のために役立てて」
と妻が言っている気がしてきたのです 

石村嘉成 アーティスト活動歴&受賞歴

感想・レビュー・書評

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  • 「自閉症は障がいではなく人間のタイプのひとつ」
    お父さんの和徳さんの言葉だが、とても良い言葉だと思う。
    嘉成さんは2歳で自閉症と診断されたが、その時の心の葛藤や不安が伝わってきた。
    そして「療育」に出会う。
    なんでも子供の言うことを聞く親になってはいけないと、心を鬼にして「愛情あふれる、突き放し」を実践していく。
    46時中、目の離せない子育ては、かなり厳しい。
    それでも子供のためと一生懸命な姿に心を打たれた。


  • 石村嘉成展を見に行くにあたり、この本の存在を知り読んでみました!

    自閉症の息子と向き合った両親の行動や気持ちを知りました。

    淡々と語っているように思うが、その背景での大変さというのは想像もできない。

    でもこんなに人を惹きつけられる絵を描けるというのは彼と両親が歩んできた過程があるからなのかなと感じたし、本作で語られていたように描かれた動物たちの目は本当にキレイで吸い込まれそうになった!
    展覧会も静かに黙々と鑑賞するというよりはみんなで楽しく見るという感じで雰囲気もすごくよかった!たくさんの人にみてほしいと思った!

  • 障害のある子ども達とかかわっている1人の教師として、この本を読んだ時、改めて障害のある子どもを育てる両親の葛藤や苦悩、それに勝るほどの喜びなどを感じることができた。

    「自閉症児の療育は2歩進んで3歩下がる」

    昨日できていたことが、今日はできない、明日はできるかもしれないが、その先は分からない。だからこそ、できるようになった時の喜びはとてつもない。

    私が障害のある子ども達とかかわる中で、特に嬉しい光景は、できなかったことができるようになった彼らの姿を見ることである。

    この本を通じて、障害のある子ども達の親、周りの人たちがその子にどれほどの願いを、気持ちを込めているのか改めて知ることができた。
    読みながら泣いてしまうこともあった。

    教師として1人ひとりの子ども達にかかわることができる時間は限られている。その限られた時間の中で何ができるのかを常に考える必要があると感じる。
    何をするかも大事だが、何ができるかを考えてみようと思う。

  • 意地悪く言えば、本書に書かれているのはあくまで奇蹟や僥倖とも言える成功例の「一例」である。もちろんそこからさまざまなことを学ぶことはできる(し、「一例」であってもかくじつにそうした「自閉症」者がいることが勇気づけられることはぼく自身も自閉症者として認めたい。ぼく自身、子どもの時期を振り返った)。たとえば療育にかんする心構えや受け入れ側の態度、どう社会において成人するか。こうした無視できない問題をとらえている点において本書は貴重だ。だが、ここから「自閉症=天才」という図式だけは間違っても導き出してはならない

  • 石村嘉成さんのファンです。個展も何度も行き、毎回感動します。お父様もとても素敵な方で、この本を読むとどれだけ真剣に嘉成さんを育てられたのかよく分かりました。

  • 2歳で自閉症と診断され、暴れる、なかなか発語がないなどのたいへんな時期を経て、その後、版画などのアーティストとして世界的に活躍するに至った石村嘉成さんの両親による「療育」の記録。
    嘉成さんの療育に人生を捧げたといえる母・有希子さんは、がんにより嘉成さんが11歳のときに早世しているが、その想いを受け継いだ父・和徳さんが、有希子さんの療育の記録を引用しながら、子育ての歩みをたどっている。
    とても貴重な療育の実践記録であり、心に迫るものがあった。有希子さん、和徳さんには本当に敬意を表したい。
    四六時中向き合われていた息子の成長を見届けることなく世を去られた有希子さんの無念を思うと、心がぎゅっとなった。亡くなる2日前の奇跡の抱擁の写真(128頁~130頁)を見て、涙が止まらなかった。画家として活躍する嘉成さんの今があるのは、有希子さんの懸命の療育あってこそだと思う。
    「愛情あふれる、突き放し」という石村家で実践された療育方針は、自閉症児に対するものだけでなく、子育て一般にとっても参考になるものだと思った。また、幼児期からの療育が大切というのもそのとおりだと感じた。
    そして、本書で紹介されている嘉成さんの絵は、どれも慈愛の心とエネルギーにあふれていて、見ているだけでパワーをもらえた。
    ただ、本書を読んで、ちょっとひっかかりを感じたのは、有希子さんが亡くなってからはシングルファザーとして本当にたいへんだったとは思うのだが、有希子さんが生きているときから、和徳さんにはもっと嘉成さんに向き合い、療育に参画してほしかったなぁとは思った。

  • 石村さんの絵画が好きで、こちらの本に出会い読みました。
    幼少期からずっと絵を描いてきた方かと思いきや、
    親子(母子、父子、そして3人)で歩んできた本当に地道過ぎるようなひとつひとつの出来事が、繊細に丁寧に紡がれた上での現在のご活躍に繋がっていることがわかりました。

    著者がお父様であり、お母様であり、嘉成さんであることに本当に意味があり、
    ご家族ひとりひとりの思いや葛藤がひしひしと伝わりました。

    決して綺麗ごとにはできないほどの苦労や努力、
    それでもなんとか未来を打開していく工夫、
    たくさんの出会いをいい方向へ繋げる姿勢、
    私にとって学びがたくさんありました。

  • 障がい者支援を生業とするものとして…お母様お父様の療育に深く尊敬の念を抱くと共に、自閉症であろうとなかろうと、嘉成さんが素晴らしい才能のある「画家」であると感じました。私の周りにいる愛しい自閉症とされる人たちを思い、いつか「自閉症の」という枕詞がない世界になったらいいなあと思いました。

  • 打算がない分ダイレクトに心に響く絵になるのかな。配色もビビットでカッコいい。ご両親の体当たりの育児の賜物なのだろうなと思いました

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著者プロフィール

石村和徳(いしむら・かずのり)
1960 年生まれ。愛媛県新居浜市在住。2歳で自閉症と確定診断された息子の子育てに夫婦で取り組む。シングルファーザーとなってからは、会社経営の激務と両立させながら、嘉成氏が高校生のときには3年間無遅刻無欠席で一緒に自転車で登下校するなど、苦闘の「療育」を続けた。現在は嘉成氏の個展の企画や、「療育」についての講演会にも取り組んでいる。

「2021年 『自閉症の画家が世界に羽ばたくまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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