経済で読み解く世界史 (扶桑社新書)

  • 育鵬社 (2025年3月3日発売)
4.00
  • (1)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 46
感想 : 1
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784594099381

作品紹介・あらすじ

世界500年の金利動向が示すものとは?
物価、GDP、生産性、株・債権…経済で見れば時代の変わり目が理解できる。ビジネスに役立つ「使える歴史」!

古代
◎なぜ、ギリシアのような辺境の貧村が世界帝国となったのか?
◎ローマの台頭、繁栄、衰亡の三段階、その力学構造とは?
◎漢王朝の経済論争、国家は市場に関与すべきか?
中世
◎銀行業で華々しく成功する事業家一族、利子禁止をどのように回避したのか?
◎唐王朝、宋王朝はマーケットをどのようにコントロールしたのか?
◎一体化する世界、元王朝や明王朝はグローバリズムにどのように向き合ったのか?
◎アジア、アフリカ、ヨーロッパを支配したイスラム、その力の源泉とは?
近世
◎ヴェネツィアではなく、ジェノヴァが新しい時代をつくることになったのはなぜか?
◎ポルトガルの香辛料貿易の利益、スペインの新大陸産の金銀はどこへ消えたのか?
◎なぜ、小国オランダは世界の覇権を握ることができたのか?
◎オスマン帝国が形成したグローバル・リンケージ・システムとは何か?
◎なぜ、辺境の異民族が中国を260年間、支配し続けることができたのか?
近代
◎急激な経済上昇はなぜ発生し、また、なぜ、それは欧米や日本に拡がったのか?
◎イギリスは莫大な利益をどこから稼いでいたのか?
◎覇権国家イギリスは財政危機をどのように乗り切ったのか?
◎財政危機の救済に悪用されるリフレ政策、その功罪とは?
◎なぜ、中国やイスラムでは近代化が起こらなかったのか?
現代
◎新しい資本主義の局面を、イギリスではなく、ドイツがつくり上げていくのはなぜか?
◎不況の時に有効なのは財政政策か金融政策か?
◎戦争は回避不可能、戦争に突入しなければならない必然性とは何か?
◎日本軍のファイナンスはどのように失敗したのか?
◎なぜ、アメリカ国民は軍拡の負担を受け入れたのか?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ■ 第1章「概観」|歴史を読み解く方法としての経済
    情報の意味を理解するために、因果的・体系的な「歴史」が必要。
    経済(衣食住・交易・生産・消費)を人間社会の基礎と捉え、歴史上の制度や権力の変遷はすべてこの経済的土台から派生すると定義。
    歴史を5つの時代区分(古代/中世/近世/近代/現代)に分け、それぞれの経済構造の特徴を抽出する。

    ■ 第2章「古代」|通貨と国家の誕生
    最初の通貨経済圏(リディア・ギリシア・ローマ)は貨幣の導入により広域市場を創出。
    ローマ帝国は軍事・税制・通貨の制度化で繁栄するが、経済疲弊・インフレ・制度の硬直化によって崩壊。
    中国では統一王朝(秦・漢)が市場統一を推進し、シルクロード経由で西方と結びつく。

    ■ 第3章「中世」|ネットワーク経済と銀の世界市場
    中世ヨーロッパは、封建制のもと都市国家が経済の中心となる「点と線のネットワーク構造」へ。
    中国では紙幣経済(宋・元)が登場し、やがて銀本位制へ転換。明代以降、銀が経済の基軸となる。
    イスラム世界やモンゴル帝国は交易と物流インフラを支え、ユーラシアの経済的結節点となる。
    世界の貿易は銀を媒介とし、中国がその最大の吸引地に。

    ■ 第4章「近世」|商業資本と国家の結合
    商業資本主義が台頭し、国家と企業(東インド会社など)が結びついて世界の植民地化と貿易網を展開。
    ジェノヴァやヴェネツィアのような金融都市が収益を吸い上げ、スペインやポルトガルは債務国家に転落。
    オランダは金融・軍事・販売を一体化させた「国際企業国家」モデルを確立。
    清帝国は交易の利害調整を制度化し、銀経済と広域市場を組織。

    ■ 第5章「近代」|産業革命と覇権国家
    石炭と蒸気によるエネルギー革命が、富の構造を一変。
    イギリスは産業革命の三要素(エネルギー・資本・市場)を独占し、植民地化と自由貿易で覇権を築く。
    近代国家は国民から富を吸い上げる「徴税→債券→戦費→覇権」のサイクルを確立。
    「大分岐(Great Divergence)」により、西欧が近代化に成功する一方、中国やイスラム圏は宗教的・制度的制約で近代化に失敗。

    ■ 第6章「現代」|金融資本と通貨の自己増殖
    現代は資本主義の波動(コンドラチェフの波)に従って、経済成長と危機を繰り返す。
    世界恐慌→ナチスの台頭→第2次世界大戦→ブレトン・ウッズ体制→冷戦とアメリカの覇権確立という一連の流れは、「経済構造の再編成」に他ならない。
    通貨戦争、インフレ、信用経済の膨張は、資本の自己増殖という構造的問題に根差す。
    今後の経済秩序もまた「貨幣と信用」が再編する構造下にある。

    【全体の主張】
    歴史とは経済構造の変遷である。
    通貨・エネルギー・交易ネットワーク・金融制度が歴史の駆動因子。
    政治や戦争、宗教の動きは、背後にある経済の圧力が引き起こす現象にすぎない。
    未来を予測するには、情報ではなく、過去の経済パターンを歴史から抽出することが必要である。

    【応用的意義】
    地政学や国際関係の理解に、経済的土台からの視点を提供。
    現代のニュース・政治判断・通貨変動の読み解きに活用可能な「歴史的洞察」を授ける。
    思想史や文化史とは異なる、リアルな力学の視座からの世界史観。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家となる。テレビ、ラジオ、 雑誌、ネットなど各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。
主な著書に『民族と文明で読み解く大アジア史』(講談社)、『「民族」で読み解く世界史』『「王室」で読み解く世界史』『「宗教」で読み解く世界史』『世界「民族」全史』(以上、日本実業出版社)、『経済で読み解く世界史』『朝鮮属国史』(以上、扶桑社)、『世界史で読み解く天皇ブランド』(悟空出版)などがある。

「2023年 『知らないとヤバい民主主義の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宇山卓栄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×