まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班 (ハーパーBOOKS)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596018601

感想・レビュー・書評

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  • 成功が約束されたウィリアムの成長物語の二作目。
    ゴールが分かっているだけに、ロンドン警視庁の様々な部署を経験し、組織内における人脈を作り昇進を重ねる必要があるというような、将来に向けての展開を勝手にイメージしていた。
    よって、本作においても、主人公は、麻薬捜査班のリーダー(一作目にほんの少しだけ登場した記憶が…)のもとに異動し、新しい仲間と共に悪に立ち向かう設定かなと思いきや、見事に違っていたのでいい意味で裏切られた。
    美術担当班が、そのまま麻薬捜査特別班にスライド。畑違いもいいとろ、そんなのありか?と思ったものの、この設定によってメインキャクター達のコア部分がしっかりと確立されいるので、読む側としては安心して、最初から物語に没入できるというもの。
    稀代のストーリー・テラーのJ・アーチャーの真骨頂、展開が二転三転してても大丈夫。読者にとっても優しい。
    騙し合い、裏切り、殺人、隠密捜査、そしてお得意の法廷劇、前作に続く美術品と、とにかくエンターテインメント要素が今回も満載。
    捜査班には期待できそうなニューフェイスも増え、班内における微妙な上下関係や、家族の絆なども読み応えあり、いずれも今後のシリーズの伏線を予感させる。
    長さを感じさせない一気読み必至の一冊。


  • プルーフ版で読了。

    読み終わると同時に早く第3作を読みたい!
    原題「Turn A Blind Eye」という意味深なタイトルで
    ウィリアムの戦いぶりが早く知りたいところ。

    舞台は1986年一昔前とはいえ、英国ではこんなに犯罪者や刑務所が自由だとは。
    文化の差を感じるとともに、こんなストーリーは日本では成り立たないなと思いながらも
    悪役たちがとても個性的でしたたかだ。

    新作が出る前に、まだ読んでいない前作(第1作)を読んでさらに小説の舞台を詳細に把握しておきたい!

  •  発売前、構成前のプルーフ本を、例によって先読みさせて頂いた。

     ぼくはジェフリー・アーチャーの模範的な読者ではないし、シリーズ作品をいきなりこの第二作から読み始めたことによる当惑を感じないではなかったが、キャラクター描写にとても時間をかけている作者なので、それぞれの個性は第二作からでも十二分に味わえる。否、むしろ第一作も、さらに第三作、第四作と続く本シリーズをすべて読みたいという誘惑の方が激しいかもしれない。

     さて、本作のメイン・ストーリーは、主人公ウィリアム・ウォーウィックが新たに配属された麻薬取締独立捜査班が、麻薬王ヴァイパー率いる組織を壊滅、頭目を逮捕という目的に向かって捜査を進めるものなのだが、同時並行的に前作でのライバルである美術品窃盗詐欺師マイルズ・フォークナーの逮捕と裁判が同時進行形で行われる。しかも後者はおそらくシリーズのサブ主役級の宿敵扱いで、別格級の悪玉みたいに描かれている。

     マイルズの裁判そのものが法廷ミステリーとしての面白さを十分に見せてくれるのだが、そちらの主役はウィリアムの父と姉である。また、ウィリアムの婚約者ベスと、マイルズの離婚係争中の妻クリスティーナが親友、という複雑な関係性を持ているところが可笑しい。つまり、ウィリアムの知人や敵がクロスして関係した家族物語、としても楽しく読めてしまうところがこのベテラン作家の抜け目ないところなのである。

     同時進行形の二人の強敵を相手取りながらも、前作を引き継ぐ(らしい)美術品の争奪戦が、未だ新たな局面を見せて丁々発止のコンゲーム的面白さを見せてくれるあたり、サービス精神と仕掛けに満ちた、まるでおもちゃ箱みたいなのである。

     残酷で暴力的な犯罪と、善悪の闘いを描きながら、どちらのサイドにも癖のある個性的キャラを配置して、なおかつどこか楽しく笑えてしまう明るい表現には一度ならず苦笑を禁じ得ない。

     主人公の未来を見据えた成長ストーリーを軸に、関係する家族それぞれの人生模様がシリーズらしさを匂わせつつ、最後には、とっておきのハイテンポでアクション満載のクライマックスに引きずり込んでゆくエネルギー。猫の目のように視点を変えるジェットコースターなみのスピード感を含めて、流石、手練の描写力というしかない。

     巨匠による描写技術の粋を尽くしたエンターテインメント&スリラーの醍醐味を、是非とも手放しで味わって頂きたい。 

  • 巧みなストーリー展開、ウィットに富む会話。
    期待を裏切らない。その手があったのか?
    予測を超える、鮮やかな逮捕劇に圧巻させられる。 
    次作への余韻を残すエピローグが素晴らしい。

  • 何年ぶりかのアーチャーだが、人間もセリフもスカスカな印象。しかも、シリーズ物かと。

  • 初めてジェフリー・アーチャーを読んだ
    巡査のウィリアム・ウォーウィックの2作目でした
    話があちこち飛ぶので、場面について行けず、後戻りした。
    その分裁判や、捕物など読み応えはあった。
    2作目から読んじゃったので、
    1作目を読もうか考え中

  • プルーフ版を頂いて読了。
    恥ずかしながら今作がシリーズ2作目であることを知らずに手に取ったが、物語の視点が変わりながらずんずん核心に迫っていくスピード感が心地良い。ウォーウィック一家の軽妙な会話と、いざという時の団結感がたまらない。
    若く熱意あるウィリアムは好青年そのものだが、対するクレバーな大悪党の自信に満ちた振る舞いも不思議と魅力的。
    後半の怒涛の展開と不穏な空気に、息をつくのも忘れて読み切ってしまった。ウォーウィック一家、ベスとその家族、警察の仲間達、フォークナー夫妻、麻薬王…それぞれの想いと思惑が絡み合い、次作以降どう展開していくのか目が離せない。もう誰も信じられない…!

  • シリーズ第2作 今作ではスコットランドヤードの麻薬取締独立捜査班に配属され捜査巡査部長になったウィリアムは麻薬王のヴァイパーを捕まえるために捜査を開始する。 そして前作も出てきたフォークナーの裁判も同時並行で進んでいく。裁判の展開も面白く、殺人工場へのアジトへの緊迫の突入シーンもハラハラさせられて楽しかった。 次作も最近発売されていて、今作の終わり方からするにフォークナーとの対決もあると思うので楽しみでしかない。

  • ジェフリー・アーチャーの作品を読んだのは、お恥ずかしいことに、『レンブラントを取り戻せ』(2020)が初めてだった。
    あまりに面白くてびっくりした。
    当然じゃないかと怒られるだろうと怯えつつ、読書仲間にそれを話したら、
    「ジェフリー・アーチャー、懐かしい!」
    「昔よく読んだ!」
    などの声ばかりが返ってきた。
    どうやら、皆、かつて読んで・・・・・・今は読んでいないらしい。

    いや、いや、ジェフリー・アーチャーは、今も面白いよ?
    絶好調だよ?
    その証拠がこれだ。

    1980年代のイギリス、ロンドン――
    ウィリアム・ウォーウィックは、ロンドン警視庁捜査巡査部長だ。
    勅撰法廷弁護人である父の反対を押し切って、警察官となり、美術骨董捜査班の一員となった。(『レンブラントをとり返せ』)
    みるみる力を発揮して、今、彼は麻薬取締班にいる。

    頭がいい、知識もあれば、機転もきいている。
    身なりがいい。ユーモアがある。
    人に好もしい印象をあたえ、人の心を摑むこつを知っている。
    なにより品のよさがいい。下品なところがひとつもない。

    これはつまり、家風だろう。
    ウォーウィックの一家は、たとえ意見の違う点があっても、怒鳴ったり、わめきちらしたりしない。
    議論、話し合い、ユーモアをまじえたやりとりで解決する。

    『「どうしようもなく哀れな人たちなのよね。次にやるドラッグを手に入れることしか生きる目的がないんだもの。いつになったら当局は気づくのかしら、そういう多くの人たちに必要なのは治療であって、犯罪者として扱うべきではないということをね」
    「しかし、犯罪者であることは変わらない」父親がさえぎった。「甘やかすのではなく、刑に服させるべきだ。・・・・・・」』(『まだ見ぬ敵は~』30頁)

    父、サー・ジュリアンと、娘グレイスは、どちらも優秀な弁護士だが、保守的な父と、革新的な娘では、信条信念が異なっている。
    しかし、彼らは同じ食卓で、声を荒らげることなく、それぞれの意見を述べることができるのだ。
    くわえて、こうした家族の対話で、読み手は、80年代という時代が――環境が悪いのであって、その人が悪いのではない、とかいう論理が、そうそう、あの頃出てきたなあ――などと、思い起こせるようになっている。
    こうした家に育ったウィリアムが、品良く、頭よく、会話の妙に優れた人物になるのは当然だ。

    対する犯罪者らも、下品さがない。
    一人などは、悪党ながら美術芸術を好む、かなり知的な人物だ。
    そう、ウィリアムが美術骨董捜査班にいた時――
    『レンブラントを取り戻せ』からの因縁のある男である。

    この本だけで面白いですと、ハーパーブックスは言っている。
    そう、『まだ見ぬ敵はそこにいる』は、たしかに面白い。
    けれども、『レンブラントをとり返せ』を読んでいなければ、
    これ、誰? えらく仲がよさそうですね?
    この人とは、なんでこんなに仲が悪いの? 
    数々の疑問が沸くことだろう。

    幸い、シリーズはまだたった2巻しか出ていないので、
    『レンブラントをとり返せ』から読むのも、いいと思う。
    むしろ、そのほうがおすすめだ。
    そしてさらに幸いなことに、ジェフリー・アーチャーは、3巻目4巻目も書き上げて、英国では既に出版されている。
    嬉しいことに、3巻目『TURN A BLIND EYE』が、2022年冬に、ハーパーブックスからの刊行が決定している。

    ジェフリー・アーチャーはのりにのってきたようで、当初全4巻の構想だったこのウォーウィック・シリーズは、全8巻になる模様だ。

    ジェフリー・アーチャーは、面白い。
    かつて読んでいた人も、まだ読んだことのない人も、大ベストセラー作家の新たなシリーズに、さあ、没入しようではないか!

  • プルーフ版をいただき、読了。
    初めましての作家さん、そしてまさかのシリーズ二作目に、読み始めは少し物語に入り込めなかったんですが……
    ページを捲る手が止まらない!! なんだこのぐいぐい引き込む感じ!
    登場人物が多い&前作との絡みがあり、キャラを覚えるまで読みにくいかな? と思いきや「キャラわからんけどとりあえず話進めるでー」という勢いにぐいぐい引き込まれて、気づいたら大体のキャラにも愛着が持てるぐらいになりました(笑)
    フォークナーとの裁判のシーンが特に面白かった!! グレイス好き! スカッとしたーっっ。

    主人公のウィリアムが着々と成長するのも良き。結婚式のシーン、いるの? と思っていたら、ああ! 必須シーンでした(笑)
    新婚旅行しかり。プライベートもちゃんとストーリーに絡んでくるの楽しい。

    そして、ラストよ!!
    めでたしめでたしかと思いきや、あっちゃもこっちゃも綻びだらけで最後までほんま油断ならんかった(笑)
    これは……シリーズ三作目に続くんだろうなぁ、彼との対決は。楽しみすぎるやろ。
    とりあえず第一作目の「レンブラントをとり返せ」を読まなきゃという気持ちにさせるお話でした。
    夢中で読みました!! プルーフ版ありがとうございました!!

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著者プロフィール

ジェフリー・アーチャー(Jeffrey Howard Archer)
1940年生まれのイギリスの政治家、小説家。一代貴族の貴族院議員。オックスフォード大学卒業後に政治家に。大ロンドン議会議員、庶民院議員(3期)、保守党副幹事長などを歴任したが、 1973年に投資で失敗して財産を全て失ったことを契機に、1974年10月の総選挙時に政界から退いた。
1976年に発表した『百万ドルをとり返せ!』が大ヒットして借金を完済、1985年に政界復帰し党副幹事長を務め貴族院議員に列されたが、偽証罪によって2001年に実刑を受け服役。2003年以降、作家活動を再開した。
代表作に『プリズン・ストーリーズ』、『クリフトン年代記』シリーズなど。

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