図書館で借りた本です。
タイトルに惹かれて借りたものの、なかなか読めなくて一度は返そうかと思ったものの、何故か返すになれず―。読み出したら、面白くて夢中になりました。
ヒロインのマリーナはジャスティン(モンテ―ホー伯爵)と便宜結婚をします。その裏には彼女の兄チャールズがかつてジャスティンの父が手放した屋敷と「彼女との結婚」を引き替えにしようと申し出たという経緯がありました。
つまり、兄は屋敷を売る交換条件として、お金だけではなく妹との結婚も提示したわけです。
そして、ジャスティンが何故、そこまでナイトシャー(邸宅)を取り戻すことに執念を燃やしているかといえば、昔、彼の父とマリーナの父同士がサイコロ賭博をし、ジャスティンの父が負けたときにナイトシャーを譲ったからでした。二人の父にはサラにジャスティンの母をめぐる対立があり、ジャスティンは長らく恨みを抱いて生きてきたのですが―。
父親に似ず、心優しく誠実なマリーナの人柄に触れ、ジャスティンは次第に彼女を妻として愛するようになり、それはマリーナも同様でした。
このジャスティンというヒーローがとても魅力的です。外見は男らしくイケメンで、実際に頼もしい。なのに、内面は過去に負った傷を今も抱えて葛藤していて、とても脆い。そういう人物造形はヒーローには典型的であるはずなのに、何故、ジャスティンだけが他のヒーローより更に魅力的に見えるのか?
きっと他のヒーローには多少なりとも「俺様」的強引さがあるのに、彼にはないからでしょうか?
彼はいつもマリーナのことを優先的に考えています。彼女の父に対して複雑な感情を抱いていたとしても、彼女に対する思いやりと誠実さを忘れません。
とれほどヒロインと愛し合っていたとしても、割と傲慢なヒーローもいる中、ジャスティンの控えめさ、誠実さは魅力的で、とても読後感の良い作品でした。