ザ・ボーダー 上 (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
4.31
  • (25)
  • (24)
  • (3)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 218
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (768ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596541185

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー 上』ハーパーBOOKS。

    『犬の力』『ザ・カルテル』に続くシリーズ第3弾。完結編。 上下巻で1,500ページを超える超大作。

    まるでノンフィクションのような麻薬戦争の実態。面白い。冒頭から麻薬の利権を巡る血煙と硝煙が漂う暴力と殺戮の世界が描かれる。人間の欲望は果てしなく、留まるところを知らない快楽への欲求が愚かな人間たちを麻薬の世界へと向かわせるのだろう。

    メキシコの麻薬戦争はアート・ケラーが望む結果とはならず、アメリカへのヘロインの流入は止まらない。麻薬の利権を巡り、次々と新たな麻薬カルテルの支配者が生まれていく。麻薬取締局の局長に就任したアート・ケラーはニューヨーク市警麻薬捜査課と共にある極秘作戦に着手するが……

    本体価格1,296円
    ★★★★★

    • aveleさん
      面白そうですね。分厚いか。読みがいありそう(^^)
      面白そうですね。分厚いか。読みがいありそう(^^)
      2019/08/01
    • ことぶきジローさん
      読み応えがあります。心して読むべし!(^_^)
      読み応えがあります。心して読むべし!(^_^)
      2019/08/01
  •  小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。

     読者を圧倒する小説とは、壮大なスケール感を持つ骨太な物語でなければならない。阿修羅の如き悪と、神のごとき善とを内包する人間たちの運命のぶつかり合う軋みが聴こえるようなドラマでなければならない。壮大な構想で読者を牽引してくれる力がなければならない。それらすべての困難な条件をクリアして余りある作品が、ウィンズロウのライフワークと言ってもよい巨作が、実は本シリーズであり、完結作である本書だ。

     シリーズ第一作『犬の力』が<このミス一位>、第二作『ザ・カルテル』が<このミス二位>(ちなみにこの年は『熊と踊れ』が一位だった)、そして第三作であり完結編である本書がこの夏登場となった。圧倒と言うしかない分厚さと重さと物語性を引っ提げて。世の読書子が心の底から待ち望んでいたような小説として。

     メキシコ麻薬戦争をめぐる現代史を学ぶ機会はなかなかないだろう。このシリーズがなければ闇に葬られてたかもしれない暗黒の現実。コロンビア産の麻薬がメキシコを経由してアメリカ国境を渡るという単純な構図を見ると、生産利益、運搬利益、販売利益を目的とする反社会的な受益団体の存在が見えてくるはず。メキシコは運搬と販売を司る仲介利益に群がる組織間の戦場と化してしまう。一般人やジャーナリストの犠牲者を多く出した40年という長い暗黒史にメスを入れたのが、実はこのシリーズなのである。

     麻薬捜査官のアート・ケラー、麻薬王アダン・バレーラ。二人の対立構図を描いた大河小説とも言える前二作を受けて、本書では第二世代の組織による新たな暗闘が幕を開ける。『ザ・カルテル』ではメキシコ麻薬戦争で実際に犠牲者となったジャーナリストに作品は捧げられていたが、本書では麻薬カルテルによって葬られたバス一台分の無辜の学生たちの実名が挙げられ、作品は彼らに捧げられている。

     例えば2014年のケラーの嘆き。「メキシコではバスに乗った四十九人の学生が亡くなった。アメリカでは二万八千六百人がクスリで亡くなった。誰ひとり復活しない。おれにはやるべき仕事がやれていない」
     「二〇〇〇年から二〇〇六年までは、とオブライエンはケラーに説明する。ヘロインの過剰摂取による死亡者数は横ばいで、一年に約二千人だった。二〇〇七年から二〇一〇年までは、約三千人に増加した。それから急激に増え始め、二〇十一年には四千人、二〇一二年には六千人、二〇一三年には八千人になった。」
     「二〇〇四年から現在までに、イラクとアフガニスタンで失ったわが国の兵士の総数は七千二百二十二人だ」
     「同じ期間に、十万人以上のメキシコ人が麻薬戦争で殺され、二万二千人が行方不明になっています。ちなみにこれはひかえめな数字です」

     この数字の規模でシリーズは進んできたのだ。そしてケラーが取り組んできた長い麻薬との闘いの人生でもある。本書はその総括ともなる大作で、何と上下巻併せて千五百ページを軽く超える重量級のクライム小説である。凄い厚みと重みだが、それを読ませてしまう推進力こそが、ドン・ウィンズロウという作家の持ち味である。

     それぞれの章に登場する複数主人公が良い。潜入捜査官として苦闘するボビー・シレロ。ビリー・ザ・キッドの異名を持つ殺し屋ショーン・カラン。グアテマラからアメリカへの国境越えを図る少年ニコと少女フロルの運命。そしてメキシコのファミリーたちのそれぞれの狂気の個性。またも犠牲になるジャーナリストの悲惨。前作までの覇者と死者とその子供たち。刑期を終えて再登場する古き麻薬王たち。

     何よりも時代は変わり、ドナルド・トランプを思わせる新手の大統領がアメリカと現代とを掻き回す。麻薬戦争はメキシコからアメリカに移る。さらに過激に残酷になり地下に潜ってゆく薬物戦争に対峙するケラーの運命。

     多くの人間の運命を乗せた重機関車のように物語は疾走する。ケラーのラストの法廷での証言が彼の辿った四十年を振り返る。まさに現代の『戦争と平和』と言える本シリーズ。できれば一作目『犬の力』から辿って頂きたい。そして本作の持つ圧倒的な力に、是非とも魂まで揺さぶられて頂きたい。

  • 「犬の力」「カルテル」に続く3作目。最近は後から追加されて全3部作、という作品が多い・・・

    主人公ケラーが主人公なのは同じだが、前2作目とは趣が違う。今まではバレーラという強大な敵がいたわけだが、今回はバレーラ亡き後の跡目争いと乱立した組織同士の闘い、そしてDEAとの戦いとまさに三つ巴、四つ巴の闘いとなっていて、登場人物が今までにも増して多い。

    それぞれの視点で描かれるので話の展開も目まぐるしいため、今一つ感情移入しにくい。
    果たして後半、このドラッグウォーズはどんな展開に、そしてどんな決着を迎えるのか?

  • 『犬の力』を猛烈に読み返したくなりました。

  • 己の読書史を塗り替えられた「犬の力」「ザ・カルテル」メキシコ麻薬戦争の金字塔三部作、その最終章。

    まさか、ここであの人物が再登場かよ!(そして退場かよ!!)的な怒涛の展開もありつつの、これ以上無い復讐の連鎖が織り成す怒りと不穏な空気も健在。
    ロス・ロホスという名が示す通り、メインの世代は息子たちに移るものの、ケラーを含め前世代もしくは前々世代からのレジェンドたちもバッキバキ。

    ドナルド(ファッキン)トランプも、現実世界よろしくのクソツイート馬鹿野郎として出演。娘婿のジャレッド・クシュナーも疑惑のマネロン野郎として出演。てか、これどのくらいリアルなものとして見れるんだろうか。この作品がきっかけで失脚してくれんか、おい。

    ただ、やはり前作から自己更新を果たしているのが、上巻ラストで描かれるグアテマラの少年の決死行。やっぱ、心臓を強く持たないと、読み切れんぞこれは、、と決意を新たにしてさて下巻。

  • とうとう読了。三部作、大河小説。アートケラー気高い男、アダンバレーラ、寡黙な麻薬王。
    ドンウィンズロウの筆致力。圧倒的な悪の現場のリアリティ。ラテン系美女たち。

  • 面白い。最後の一章は本当に身につまされた。この闘いに終わりがあるのだろうか。
    ハーパーコリンズさん出来れば3巻にして紙質を少し良くして欲しかった。

  • 多数の登場人物があり、それぞれの立場での視点で各種シーンが次々と描かれるので、シーンの切替わりが早く、最初は取っつき難い印象です。

    ですが、物語が進むにつれ、画が返れている内容は、徐々に重みを増やしていき、読み手のこちらは話に引き込まれていきます。

    某第45代アメリカ合衆国大統領みたいな登場人物がいるような気がしますが、たぶん、気のせいだと思います。

    下巻で、どの様に話が進むのか期待です。たぶん、ハッピーエンディングじゃないんだろうなと思いながら。

  • レビューは下巻にて。

  • 読ませるなぁ〜、ウィンズロウ。集中して読み進めないと誰が誰だか状態になってしまう(笑。「犬の力」のアノ二人も登場とは!新しいニコの物語も気になる下巻へGo!

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ニューヨークをはじめとする全米各地やロンドンで私立探偵として働き、法律事務所や保険会社のコンサルタントとして15年以上の経験を持つ。

「2016年 『ザ・カルテル 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドン・ウィンズロウの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
劉 慈欣
トム・ロブ スミ...
ドン・ウィンズロ...
ドン・ウィンズロ...
ダヴィドラーゲル...
横山 秀夫
アンソニー・ホロ...
ドン・ウィンズロ...
ピエールルメート...
トム・ロブ スミ...
ドン・ウィンズロ...
陳 浩基
有効な右矢印 無効な右矢印

ザ・ボーダー 上 (ハーパーBOOKS)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×