グッド・ドーター 上 (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
3.74
  • (4)
  • (11)
  • (7)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 85
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596541420

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • カリン・スローター『グッド・ドーター 上』ハーパーBOOKS。

    いつものウィル・トレント・シリーズではなく、全くのノンシリーズ。悲劇に見舞われた家族の物語なのか、法廷ミステリーなのか判然としないままに上巻が終わる。28年前の事件のフラッシュバックと女子高校生による銃乱射事件。登場人物の誰もが傷付いており、壊れていて、か弱く、ヒーローと成り得ない。

    アメリカ南部で白人女性を殺害した容疑者の黒人青年を弁護した弁護士ラスティ・クインの自宅が放火される。一家が引っ越した数日後にラスティの留守中、銃を持った二人組の男が乱入し、妻のハリエットを殺害、姉のサマンサも重傷を追う。妹のシャーロットはサマンサに助けられ、辛くも生き残る。

    それから28年後、弁護士となったシャーロットは不倫相手の元に忘れたiPhoneを取り戻すために偶然居合わせた母校の中学校で女子高校生による銃乱射事件に遭遇する。

    本体価格891円
    ★★★

  • 弁護士一家を襲った残忍な殺人事件を背景としたミステリ小説。辛くも生き残った次女シャーロット(チャーリー)は父と同じ弁護士になっていた。
    アメリカ南部の田舎町が舞台である。皆が顔見知りで噂が知れ渡る、うんざりするような村社会である。日本の新型コロナウイルスの自粛警察も似たようなものである。凶悪事件の被疑者・被告人を弁護するチャーリーの父親は町の人々から嫌われていた。
    チャーリーは地元中学校で銃乱射事件に遭遇する。銃乱射事件を起こした少女を拘束した警察官らは怒りから私刑に走る(上巻98頁)。弁護士が警察官らの暴行シーンの動画を撮影すると、それを止めさせて奪い取って投げ捨てた(上巻101頁)。
    しかも警察官らは隠蔽工作まで行った。「警官たちは口裏を合わせ、互いをかばうような報告をしていた。チャーリーが反抗的で、自分からグレッグにぶつかっていき、彼女がうっかり踏んだせいで携帯電話が壊れたことになっていた」(上巻104頁)。
    英米のミステリを読んで感じることは、警察の人権侵害を抑制する意識の高さである。被疑者・被告人の人権擁護は日本よりも進んでいると感じることが多い。しかし、ここではダメである。2020年のアメリカはジョージ・フロイドさんの暴行死(Killing of George Floyd)を契機にPolice Brutalityが大きな問題になっている。本書の実態もアメリカの現実だろう。だからこそ抗議デモが大きく広がったのだろう。原著は2017年刊行であるが、邦訳の2020年刊行はタイムリーである。

  • 銃社会では良くあることなんでしょうけど、一筋縄ではいかないな。

  • 銃があるとこう言う事になるよね
    なんとも悲惨な・・・

    ちょっと変わった母は
    真っ直ぐ手を伸ばして
    ・・・なんて事!

    姉の終わりから
    話は妹に
    途中は飛んでるけど
    容易に想像できる

  • 朝日新聞の書評で見て。正義感の弁護士ラスティ・クインの妻ガンマ、娘のサマンサとチャーリーがラスティが弁護費を滞納していたザックらに襲われる。無残にガンマは殺害され、サマンサは生き埋めになりながらも一命をとりとめる。そして、そこから月日がたち、チャーリーも弁護士となった。とあるきっかけで訪れた中学で、襲撃事件の当事者となってしまう。18歳のケリーウィルソンは犯人なのか。ケリーの弁護に立つラスティも何者かに襲撃され、サマンサとチャーリーは再会。そして下巻へ…。正直、展開が遅く冗長に感じたり、同じページの中でサマンサがサムになったりチャーリーがシャーロットになったり、読むのが疲れる感じ。だけど、下巻まで頑張って読んでみます…。

  • CL 2020.12.26-
    未読了

  •  カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。

     とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。

     弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後遺症を抱えたまま家族を離れた長女。父とともに暮らしその弁護士としての仕事を継ぐ次女。暴力で断たれた母の命と、その豊饒なる知性の記憶。

     それぞれに性格の異なる姉妹。そして彼女らへの沈黙の不可視的な愛を貫く弁護士の父。それぞれに深みも痛みも介在する人間たちの傷だらけの人生。それでいて並々ならぬ知性豊かな三人の、喪われし人生の記憶とその再生の行方とが、何と、次女が出くわす新たな凄惨なる事件いう形で試されてゆく物語である。学校での発砲事件。もはや珍しいとは言えないアメリカの風物詩みたいな。

     事件の加害者である少女の沈黙がまずは謎である。事件の被害者は、さらに年少の少女、そして校長。一見、単純な構図に見える事件だが、動機も、その後の展開も、見た目通りではなさそうであった。事件に関わるヒロインたちの内なる闘いに、外なる疑惑が絡み合い、継いで、彼女たちに関わる男、壊れかけた夫婦関係、出産の失敗などなど、複雑な課題と過去とが絡み合う暗黒の深さ。

     主要登場人物がそう多くない割に、彼ら彼女らの個性が否応なく絡み合い、ぶつかり合う。いつものスローター節。どんでん返しや、いくつものトラップやミスリードが、全体のエンターテインメントとしての謎多き物語を象っているのも、いつも通りのスタイルである。

     しかし、警察小説の形を取らず、シリーズとは分離させ、事件関係者(被害者、弁護士、検事)やその家族たちの道を、心の内側から、それもいくつもの過去からの出来事の真相に迫ろうとする、この作者ならではの複雑に編まれたプロットにずっと寄りそうような心身の痛みの記憶がたまらない。

     娘たちを守れなかった父親と、その後の人生。一見雄弁に見える彼を取り巻く秘密と、娘たちの錯綜する心が出くわすとき、この家族の物語は、この家族を変える時間にようやく出会うことができる。そこにあるのは癒し? あるいは決意?

     不幸な事件により無残に傷つけられた家族とその後の人生航路を、押し寄せるいくつもの波濤のなかに描き切るビルディングス・ロマンである。少なくとも時間軸空間軸ともに壮大なスケールのミステリーとして、否、むしろヒューマンなドラマとしてしっかりと味わって頂きたい力作である。

  • カリン・スローターはタフな女性を描く。
    今作では、読者にまでそれを求めてきた。

    はじまりは、ちょっと個性的な少女小説である。
    次は、今時のハーレークイン・ロマンス。
    それからアクションシーンがあって、
    社会派の法廷小説に進むのかなあなどと思われる。

    これがほんの序盤。
    私は疲弊した。

    一見ロマサス(ロマンティック・サスペンス)に向かいそうな展開のはずが、私は突然、衝撃をうけ、圧迫を感じ、打ちのめされ、目が回り、息が詰まり、ぐるぐる引きずり回された。

    呼吸のために本を置けば、自分がひどくへばっていることに気づく。
    乾いた唇にしわにが寄り、脳がぐつぐつ煮えている。
    がばっと水を飲んで、また読みにかかる。
    そしてまたさらに衝撃をうけ、痛みにおののき、めまいを覚えて、ひたすらぶん回される。

    そんなにまでして、なぜ読むかといえば、気になって仕方がないからだ。

    それからどうなったの? つまりこれはどういうこと?
    あの人は誰? その人はなに?
    彼らの間になにがあったの?

    なにより、あの人はどうなったの?!

    自分を傷めつけるように読む、読み続ける。
    もはや薬物中毒である。

    舞台はアメリカ、ジョージア州の田舎町だ。
    皆が互いの顔を知り、家も、家族も知っている。
    どこの誰に"事情"があって、どこの家がどんな"訳あり"なのか、皆が知っている。
    親子が同じ学校に通い、同じ教員に教わるような、そんな町だ。

    たいていの人が思い当たる町を見知っているだろうが、
    カリン・スローターの世界では、タフでなければ生きていけない。
    そして、その世界は、この上なく魅力的だ。

    疲労しきった読書体験だったが、読み終えることができたのは、どうしようもなく笑ってしまう箇所が、時々あってくれたからだ。
    カリン・スローターに、「緊張と緊張の緩和」の心得があったこと、性分としてのユーモアがあったことを、私はとても感謝している。

    ところで、この『グッド・ドーター』には、『Last Breath』なる前日譚があるらしい。
    そういえば同じ著者の本『プリティ・ガールズ』にも前日譚があり、それは『彼女が消えた日』として電子版のみで出されていた。
    読めば話の奥行きがなお拡がる、すぐれた一編だった。

    こちらもそのような形で出してくれると、たいへんに嬉しい。

全10件中 1 - 10件を表示

カリン・スローターの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
横山 秀夫
カリン・スロータ...
カリン スロータ...
アンソニー・ホロ...
カリン・スロータ...
凪良 ゆう
ベルナール ミニ...
ピエールルメート...
カリン スロータ...
レイフ・GW・ペ...
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×