老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)

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感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596541499

感想・レビュー・書評

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  •  どこかかつて観た記憶のある映画のシーンが、深い水の底から浮き上がってくるような感覚。それが本作のいくつかのページで感じられたものである。語り口や物語の進め方が上手いのは、この作家が初の小説デビューにも関わらず、映画の脚本家としてならした経歴の持ち主だからだろう。

     作家が自分の物語として作り上げた「老いた殺し屋」オルソのキャラクター作りだけで既に小説を成功に導いているように思えるが、やはり彼の旅程を彩る派手なバイオレンス、また、彼が救い出す母子との交情の陰と陽のようなものが、この作品に、とても奥行きを与えているように思える。とりわけ少年と孤独な老人の間の不思議な絆ができあがってゆく風景は、この作品中、最も心に響いてくる。

     かつての妻と息子との生活を切り裂かれ、ギャングの殺し屋としての人生を終えようとしているオルソは、引退後に妻と息子との再会を果たすべく家族探しの旅に出る。しかしあっという間に彼の行動は派手な襲撃によって阻止される。派手な列車内の襲撃と残酷なまでの闘いのシーンは、映画的記憶では『ロシアより愛をこめて』のクライマックスを思い出させるものである。

     そしてその後の展開。行きずりの女性とその息子との煌めくような数日。これはもう『シェーン』や、ロバート・B・パーカーの、名作『初秋』を彷彿とさせる。暴力や闘いの世界に身を置く男が少年を父親のように優しく鍛え上げる。体をではなく心を。

     そんな懐かしいノスタルジックなシーンがちりばめられた小説、というだけでも十分素敵なのだが、イタリアン・ノワールならではのフランスやイタリアの各地で展開する過激なダイナミズムも、まるで映画そのもののように迫力を感じさせる。

     姿の見えぬ敵たちの冷酷さも際立っており、オルソは困難な敵たちと真向闘ってゆくことを余儀なくされる。老いた体ながら、暴力のプロとして、さぞかし凄まじい人生を送ってきただろうこの主人公の暗い歴史を想像させる。

     脚本家の経験を備えた実力派イタリアン・ノワールのこの作家。小説書きは副業とは思うが、今後の創作にも是非、期待したいと思う。

  • 男性はこの作品は好きかも。女性の立場からは、まずは40年も後に探し出して欲しくないし、それを愛とはふざけないでと言いたい。バイオレンスと主人公の純情さは確かに切なかった。

  • 基本みんな饒舌、イタリアン。アクションシーンもいい。

  • 還暦を過ぎた殺し屋オルソが40年前に生き別れになった恋人と娘を探しに行くという話。ありきたりな設定ではあるけれど中身は面白い。老いと病があるなかで激しいアクションもある。これが読み応えがある。途中で出会う女性とその息子との交流のホッとする場面と命を狙われている緊張感。殺し屋を引退しようと決意したときに去来する想いが溢れてくるラストもいい。

  • 弛みのない重厚な語り口が凄い。アクションシーンやオルソの心情が上手く描かれ、一気読みでした。

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