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  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596541550

感想・レビュー・書評

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  • ローレンス・ブロック・編『短編画廊 絵から生まれた17の物語』ハーパーBOOKS。

    名画家エドワード・ホッパーの17枚の絵画をテーマに17人の文豪たちが様々なスタイルでストーリーを紡いだ異色の短編集。嬉しいことに口絵には短編のテーマとなったホッパーの絵画がカラーで掲載されている。

    リー・チャイルドにマイクル・コナリー、ジェフリー・ディーヴァー、スティーヴン・キング、ジョー・R・ランズデール、ジャスティン・スコット、ローレンス・ブロックなど馴染みの作家が名を連ねており、何とわくわくするようなアンソロジーだろう。中でも、マイクル・コナリーとジェフリー・ディーヴァー、ローレンス・ブロックの短編が秀逸。

    ミーガン・アボット『ガーリー・ショウ』。初読みの作家。絵画が趣味の夫の浮気を疑った妻が夫を尾行。妻の意外な仕返しとは。

    ジル・D・ブロック『キャロラインの話』。こちらも初読みの作家。産まれて直ぐに養子に出された女性。産みの母親を探し当てた彼女はホスピスのボランティアとして実の母親を訪ねる。やがて、真実を知った母親と実の父親は……

    ロバート・オレン・バトラー『宵の蒼』。またまた初読みの作家。ホラーっぽい作品。全てを見透しているかのようなピエロは地獄の道化師なのか。

    リー・チャイルド『その出来事の真実』。好きな作家の一人。主人公のFBI特別捜査官アルバート・アンソニー・ジャクソンが関わったマンハッタン計画に関連する諜報活動。その件で非公式の突然の聴取を受けた主人公は……

    ニコラス・クリストファー『海辺の部屋』。初読みの作家。海辺の部屋にまつわる奇妙な話。

    マイクル・コナリー『夜鷹 ナイトホークス』。好きな作家の一人。まさにエドワード・ホッパーの『ナイトホークス』と題された絵画を目の前に繰り広げられるドラマ。ハリー・ボッシュの探偵時代の物語。何と真っ直ぐでスマートな男だろう。

    ジェフリー・ディーヴァー『11月10日に発生した事件につきまして』。好きな作家の一人。時代は1954年、ソビエトの副首相に宛てた報告書で物語は進行する。エドワード・ホッパーの『線路沿いのホテル』と題された絵画が物語の鍵を握る。

    クレイグ・ファーガソン『アダムズ牧師とクジラ』。初読みの作家。癌で余命幾ばくもない老牧師が最後に見たのは夢か幻か……

    スティーヴン・キング『音楽室』。かつてよく読んでいた作家。ホラーサスペンス。自宅の音楽室でくつろぐエンダビー夫妻。クロゼットの中に閉じ込められた人物の正体は……

    ジョー・R・ランズデール『映写技師ヒーロー』。かつて何作か読んだことのある作家。若い映写技師が味わうサスペンスとスリル。そして、儚い恋。スリルが過ぎ去れば再び退屈な映写技師の日々が。

    ゲイル・レヴィン『牧師のコレクション』。初読みの作家。主人公の牧師が屋根裏に見付けたエドワード・ホッパーの初期作品の山。

    ウォーレン・ムーア『夜のオフィスで』。初読みの作家。主人公の女性は既に死んでおり、幽霊としてさ迷い歩く。大都会のニューヨークでは誰も彼女になんて気を止めない。

    ジョイス・キャロル・オーツ『午前11時に会いましょう』。初読みの作家。テーマとなったホッパーの絵画の通り、裸に靴を履き、窓辺で待つ女。彼女は不倫相手の男を殺害しようと約束の午前11時を待つのだが……

    クリス・ネルスコット『1931年、静かなる光景』。初読みの作家。恋人と別れる変わりに大金を手にした女性……

    ジョナサン・サントロファー『窓ごしの劇場』。初読みの作家。ピンクの下着に身を包む女を窓越しに監視する男は彼女を物にするが……綺麗な薔薇には棘がある。

    ジャスティン・スコット『朝日に立つ女』。かつて何作か読んだことのある懐かしい作家。自殺を願う男とそれを思い止まらせようとする女。二人はどこへ向かうのか……

    ローレンス・ブロック『オートマットの秋』。かつて何作か読んだことのある作家。カフェテリアで食事をする女。挙動がおかしいと感じた店長が警察を呼び、彼女のハンドバッグを開けるとスプーンとフォークが……

    定価1,100円
    ★★★★

  • 祝文庫化!

    ※単行本のPR
    短編画廊 絵から生まれた17の物語|ハーパーコリンズ・ジャパン
    https://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail/12292

  • エドワード・ホッパーの絵を題材にした短編集。
    最初に絵が提示され、この絵からどんな物語が?と思いながら読むと、そこには予想もつかない世界が繰り広げられていた。
    読み終わってからもう一度作品を見ると読む前とは違って見える不思議。
    ホッパー好きは勿論この本を機にホッパーを知る人にもおすすめ。

  • 文庫落ちにて再読。
    やっぱランズデールが面白い。

  • 寡聞にしてエドワード・ホッパーを知らず・・・ファンも多い画家のようだ。くっきりと塗り分けられた家具や壁や服、存在感のある影、静止した時間――劇かミニチュアを見ているような感覚になる絵だ。物語が生まれてくるのも、うなずける。
    17作、長短はバラバラだが、短いながら印象に残ったのはスティーヴン・キング『音楽室』。さすがは人気作家キング・・・なのか(初めて読んだ)、出てくる夫妻は(回想を除き)絵のごとく立ち上がりすらしないのに、その場面の恐ろしさといったら!
    ニコラス・クリストファー『海辺の部屋』は奇妙だけれど美しく、終わりの予感に少し震えながら読んだ――カルメンはほんとうに戻らなかったのだろうか。
    ウォーレン・ムーア『夜のオフィスで』は、読んだ後にもう一度絵を見てしんみりしてしまう。「彼に少しだけやさしさの恩返しがしたかった。」

  • 初読

    ホッパーの作品から生まれる短編集

    「ガーリー・ショー」GIRLIE SHOW,1941
    ミーガン・アボット
    夫のモデルを務めるポーリーンと、劇場に通う夫、
    メイに変わって舞台を歩くポーリーン、
    おしろいと香水の匂いの楽屋の衣装の中2人で食べる甘いクリーム・ボンボン。

    「キャロラインの話」SUMMER EVENING,1947
    ジル・D・ブロック
    16歳でハンナを産み、養子に出した父母と再会する方法。

    「宵の青」SOIR BLUE,1914
    ロバート・オレン・バトラー
    ピエロの前に座るルクレール大佐と身請けしたミューズソロンジュの2人を見つめる画家ヴァシュロン、
    2人が部屋に戻り、ピエロと2人で交わす会話、その顛末。
    >彼女が浮かべた表情に私は息を呑む。高い評価を受ける私の技量を持ってしても、こんな複雑な表情を描くことはできないだろう。
    嘘を探し、脱げ出す算段をしなが、同時に自分の人生を案じ、自らを不貞に走らせる情熱ー今回は妨害されたが、過去5、6回は満たされている筈の情熱ーを嘆き、私に裏切りを気付かれたと知って悔やんでいる。

    「その出来事の真実」HOTEL LOBBY,1943
    リー・チャイルド
    マンハッタン計画にまつわる宣誓証言、老シャーマン・ブライオンと彼の妻と2歳歳下の義母。
    これ、私、前提の知識が抜けてて読めてないな…

    「海辺の部屋」ROOMS BY THE SEA,1951
    ニコラス・クリストファー
    不思議で、不穏で、印象的なあの絵に描かれた日差し
    のような一編。
    バスク出身の不思議な一族の住む不思議な館。

    「夜鷹 ナイト・ホークス」NIGHTHAWKS,1942
    マイクル・コナリー
    シカゴ美術館、絵を見る女と男。
    父親から逃げる娘と私立探偵。
    自分は絵の中の誰?

    「11月10日に発生した事件につきまして」HOTEL BY A RAILROAD,1952
    ジェフリー・ディーバー
    ソビエトGRU大佐による報告書かと思いきや。
    ユダヤ系ドイツ人の物理学者の同志ディーバーの
    絵画を使った脱出計画の顛末。嘆願書。

    「アダム牧師とクジラ」SOUTH TRURO CHURCH,1930
    クレイグ・ファーガソン
    ラストはちょっとうーん?なんだけど
    それに至る迄はとても好き、私はこういう人生の話がとても好きなのだ…

    「音楽室」ROOM IN NEW YORK,1932
    スティーブン・キング
    キングで、ニューヨークの部屋。
    凄く期待したのだけど……いささか安直というか
    やっつけ的な印象。残念。

    「映写技師ヒーロー」NEW YORK MOVIE,1939
    ジョー・R・ランズデール
    虐待するならず者の父から救ってくれた引退した映写技師バートさんから
    受け継ぐもの。
    新たなならず者達、制服を着た案内嬢のサリー。
    バートさんの本当の意味での引退。

    「牧師のコレクション」CITY ROOFS,1932
    ゲイル・レヴィン
    これは変わり種。最後に筆者が登場人物の1人、若きキュレーター、ホッパー研究の第一人者ゲイル・レヴィンだと明かされる。
    この短編の主人公、サンボーン牧師に興味出ちゃうわね

    「夜のオフィスで」OFFICE AT NIGHT,1940
    ウォーレン・ムーア
    テネシー州からNYに出てきた“ラージ・マージ”、ペギー。
    NYがわたしの街、になった矢先の不幸な事故。
    ウォルターの側に落ちた書類。

    「午前11時に会いましょう」ELEVEN A.M.,1926
    ジョイス・キャロル・オーツ
    午前11時、裁ちばさみをクッションの下に隠したブルーのフラシ天張りの椅子に座り、
    ヌードにハイヒールで待つ女。
    女の待つザ・マグワイヤに向かう男。

    この男の内心、 
    >実際のところ、彼が1番好きなのは心に思い描いた窓辺の女だ。
    >妻が向けてくる疑いの眼が嫌だ。
    妻の傷ついた心が嫌だ。滲み出ている怒りが嫌だ、
    そしてなにより妻が感じてる嫌気が嫌だ。
    >男が欲しいもの。それはほかの男に欲しがられる女だ。ただし、自分から気を惹いたりせず、注目されていることにさえ気づかない女なのだろう。
    のリアリティよ…

    「1931年、静かなる光景」Hotel room.1931
    クリス・ネルコット
    姉の一言で無辜の罪でリンチにかけられた感じのいい青年。
    成長しNAACP(全米黒人地位向上協会)の為に白人コミュニティに入り込むルーリーンがNYのホテルで思うこと

    「窓ごしの劇場」Night Windows.1928
    ジョナサン・サントロファー
    ホッパーで1,2を争う好きな作品
    クライムミステリー調で、面白かったような、私がこの絵から感じる切なさや寂しさと猥雑と同居するほの暖かさを上書きされてしまったような…w

    「朝日に立つ女」A woman in the sun.1961
    ジャスティン・スコット
    ベトナム帰りの自殺する前の男とトラブルを抱えたテニスプレーヤーの女の出会い。
    私これ読めてないな…。イマイチわからない

    「オートマットの秋」AUTOMAT.1927
    ローレンス・ブルック
    お見事!
    絵画×小説世界、意外性のある展開。彼女の憂いがそう繋がるとは思わなかった。
    オートマットという存在そのものをホッパーの絵画で知ったなー

  • ――

    「だと思います。というか、はい」



     語られるべきものが、そこには、ある。
     すべき、とかせねば、という言葉遣いに拒否反応を示すのは、自分の意思で自分を縛れていないからなんだろう。
     自由であるべきという不自由もあれば、縛られているから飛べる翼もある。
     右と左で、同じ風に乗れるか乗れないか。それだけだったのかもね。



     アメリカの画家、エドワード・ホッパーの作品をテーマに書き下ろされたアンソロジー。その書き方と編集も面白いのだけれど、なによりそうそうたる顔ぶれ。
     絵画として切り取られたアメリカン・シーンに潜む孤独や不安、不協和音のような歪みが、この面子に掛かればミステリにも、ハードボイルドにもスリラーにも仕上がる。編者の序文にもあるとおり、テーマ的に似通ってもおかしくない短編集であるのに、むしろ通読することで群像劇に巻き込まれるように、20世紀初頭のアメリカにスリップしていく。

     或いはそれは、いま、この状況に似通ったものを感じているからなのかもしれない。社会情勢的にも、個人的にもだけれど。
     隔絶や断絶。誰のせいでもない孤独と、自分由来の孤独と。果たしてそれが時代に切り取られるだけのものなのかは別として、それがそこにあることは確かなわけで。だったらどうにかするしかないじゃない。


     ベストを選ぼうかと思ったのだけど難しいわね…17編という贅沢なボリュームもそうだし、それぞれまったく趣の違う尖り方をしているので、なんだか5、6本映画を観たあとのような気分になれます。なんというコスパ。

     いつも不安なあなたへ、どうぞ。
     ☆4。

  • 姫路大学附属図書館の蔵書を確認する→https://library.koutoku.ac.jp/opac/opac_link/bibid/SS00105059

  • シンプルで変哲のない絵をどれだけ複雑に物語るのか、裸の女やピエロなどインパクトの強い絵に負けない物語をどう広げるのかという、物語とは少し別の好奇心も満たしてくれるアンソロジー。

    絵そのものが小道具として登場したり、絵が舞台になっていたりする中、その両方で創作したディーヴァーの作品が特別面白かったです。

    「ケープコッドの朝」で、
    私はファンタジーを思い浮かべましたが、ほかにはどんな物語が生まれているのかな。
    読者ひとりひとりがそれぞれ好みの物語を想像し、無限に自由な物語を描くことができるという、絵画鑑賞の新しい楽しみ方を教わった一冊でした。

    メモ
    11月10日に発生した事件につきまして / ジェフリー・ディーヴァー/著 
    映写技師ヒーロー / ジョー・R.ランズデール/著
    キャロラインの話 / ジル・D.ブロック/著

  • ホッパーの官能的かつダークな魅力が引き出されている。

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著者プロフィール

ローレンス・ブロック Lawrence Block
1938年、ニューヨーク州生まれ。20代初めの頃から小説を発表し、100冊を超える書籍を出版している。
『過去からの弔鐘』より始まったマット・スカダー・シリーズでは、第9作『倒錯の舞踏』がMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞、
第11作『死者との誓い』がPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長篇賞を受賞した(邦訳はいずれも二見文庫)。
1994年には、MWAグランド・マスター賞を授与され、名実ともにミステリ界の巨匠としていまも精力的に活動している。

「2020年 『石を放つとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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