ダ・フォース 上 (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596550811

感想・レビュー・書評

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  • ドン・ウィンズロウ『ダ・フォース 上』ハーパーBOOKS。

    珍しくハーパーBOOKSから刊行されたドン・ウィンズロウ作品。まだ上巻の物語のほんの入口だと言うのに非常に面白い。

    通称『ダ・フォース』、麻薬や銃犯罪を取り締まるマンハッタン・ノース特捜部を率いるデニー・マローンを主人公にした驚愕の警察小説。マローンら『ダ・フォース』の面々は賄賂に収賄、麻薬の横取りと警察にあるまじき悪行の限りを尽くすが…

    流石、ウィンズロウというべき大興奮の圧倒的傑作!

  • 最初はどんな物語かのみ込めなかった。警察対マフィア?ではなかった。汚職、正義、人種差別に王とネズミの話し。
    後半に向けて物語は急展開し、加速していく。

  • 本国で『犬の力』や『ザ・カルテル』と並ぶほどの賞賛を受けていたので翻訳が待ち遠しかったが、いざ読み始めて「これがあの傑作を書き上げた作者なのか」と疑問に思わざるを得なかった。『犬の力』で絶対的な悪を、『ザ・カルテル』で地獄の極地を描いて、次は地域警察内部の汚職だと何かスケールが小さく今更という感じも。とりあえず上巻を読みきったあとはそのまま放っていたのだが、危ない危ない。ようやく年末に下巻を読み終え、著者が何に突き動かされ、本書を描いたのかようやく理解できた。

    きっかけはおそらく、現実に起きた白人警官による黒人青年への射殺事件と、それに続く市民の怒りや暴動を報じたニュースだったのだろう。批判の矢面に立たされた警察組織の苦悩や、それでも現場の最前線で体を張って働く警察官の姿に心打たれて、取材を始めたのではないかと勝手に想像している。映画『トレーニング・デイ』にも描かれた、悪事に手を染め、いわば王となって街を牛耳る悪徳警官はこれまでも描かれてきたが、冒頭から悪事が露見して捕まり、挙げ句の果てに仲間を売るネズミに転んだ男を主人公に持って来た理由は下巻で明らかになる。

    どんな警官にも、よって立つべき場所があり、寄り添うべき対象がいるものだが、マローンの場合は、ニューヨークとその市民がそれに当たる。彼は、悪臭を放つほど甘いこの市の豊かさを愛している。「一本の通りを歩いているだけで五つの言語が聞こえ、六つの文化のにおいが漂い、七つの音楽が聞こえ、百もの人種とすれちがい、千もの物語が存在する」ニューヨークが好きで好きでたまらないのだ。

    これも現職警官からの聞き取りから得た話なのかわからないが、警官が保護し守るべき市民である被害者を逆に憎むようになるメカニズムも紹介されている。それは責任感が強く、熱心であればあるほど倒錯した感情が生まれるらしい。「被害者の痛みはやがて自分の痛みになり、彼らの苦しみはやがて重い責任となって自分の肩にのしかかる - 彼らを守りきれなかった、いるべきところに自分はいなかった、犯人を捕まえるのが遅すぎた」と。そうして被害者も責めるようになる。「なんでそんなに無防備なんだ、なんでそんなに弱いんだ」と。

  • ウインズロウらしい。まさに清濁併せ吞む?リアルティのある正義とはこういうものか。
    マローンが最後までカッコ良くいて欲しいけど・・

  • 圧倒的な迫力の警察小説だ。あくまで現場にこだわり、汚辱にまみれながらも理想を目指す主人公デニー・マローンの生きざまは強烈だ。

  • 待ちに待ったドン・ウィンズロウの新作。
    しかも上下2巻の厚さ。

    今回は汚職刑事が主人公で、汚職故に留置されているところから物語が始まる。

    ・・・という事で、ここからいつもの作品と違う。
    正義を実行するための手段として”汚職”という世界に足を踏み入れた、という訳だけでもないし、ひたすら主人公の言い訳めいたモノローグが多く、今一つキャラに共感できない。

    しかも、まるでニューヨーク賛歌でもあるがごとく、街の裏表を含めた様々なエピソード紹介が多い。確かに興味深く読めるエピソードは多いし、作者の博識ぶりはよくわかるが、その分、物語のリズムがそがれ、名作「犬の力」や「カルテル」のような物語のダークな疾走感がない。

    ”転落”が始まるであろう後半に期待。

  • 麻薬に汚染された街、マンハッタン。
    ギャングと警察がイタチごっこを繰り返す。
    デニー・マローンは悪辣な刑事だと思う。
    でも悪辣な中にも彼なりの正義があると私は思っていた。
    その彼が仲間を売る『ネズミ』へと落ちていく。

    一つ階段を踏み外すと、そこから這い上がることは出来なくなってしまうのだろうか。
    正義を語るFBIも、連邦検事も、誰もかれもがマンハッタンの街のように汚染されている。

    読んでいて息苦しい。
    でも読むのをやめられない。
    これがドン・ウィンズロウなのか!

  • 腐敗した敏腕刑事。

    そう言う主人公は数多あるが、これもその一つ。ちょっとしたことで歯車が狂い、敏腕刑事と言う立場から転落していく様が描かれていく。

    下巻では、どんな展開が待ち受けているのか。

  • ニューヨーク市警特捜部のマローン部長刑事。NYの治安を守るために日々の仕事に邁進する。全体的には正義のヒーローなのだが、その裏では事件現場の麻薬や現金を盗んだり、マフィアとつながっていたり、悪いこともしている。それが当然であるかのように...。

    そんなマローンが罠に嵌められる。上巻は罠に嵌まったマローンが、ダークサイドの入口まで堕ちていくところまで。大きな犯罪を取り締まるための小さな犯罪は見逃してもいいのかといった倫理的なものを読者にも考えさせられる。単純に主人公のマローンに共感してよいのか迷いながら下巻に続く。

  • レビューは下巻にて。

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著者プロフィール

ニューヨークをはじめとする全米各地やロンドンで私立探偵として働き、法律事務所や保険会社のコンサルタントとして15年以上の経験を持つ。

「2016年 『ザ・カルテル 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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