- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784596551009
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カリン・スローター『彼女のかけら 上』ハーパーBOOKS。
ノンシリーズ。上巻から何がどうなって、この先どうなるのか全く予想が出来ないハラハラドキドキの目まぐるしい疾風怒濤の展開が続く。これまでのカリン・スローターの作品の中では群を抜いて面白い。
母親のローラと共にショッピングモールを訪れた警察署通信係のアンディは、突然発生した少年による銃乱射事件に遭遇し、警官と間違えられたアンディは少年に銃口を向けられる。恐怖に震えるアンディの前に立ちはだかったローラは少年のナイフを素手で受け止めると顔色ひとつ変えずに犯人の喉を掻き切る……平凡な主婦であったはずのローラの過去とは……
2018年の現在と1986年、二人のローラ、二つの時代を繋ぐ謎は……タイトルの『彼女のかけら』とはローラの過去の断片という意味なのか、はたまた…… -
彼女の各作品はどうしてこんなに面白いんだろう?
もちろん翻訳者の筆力もあるだろうけどそもそものプロットが面白くなければつまらない作品になるのは間違いないのだし
さて物語は2018年8月、31歳にもなったしょうもない娘が平凡な主婦の母親とショッピングモールでのランチの席で独立を促されるところから始まる 突然少年の銃乱射事件に巻き込まれるが、平凡な主婦だった母が顔色も変えずに素手で犯人のナイフを受け止め喉を掻き切る。。。
それだけでもう気持ちを持って行かれるのだが、話しは2018年と1986年を行ったり来たりしつつ少しずつ全容を見せ始める -
『日常の土台にある秘密や嘘に惹きつけられてきました。』
作家は意地悪なほうがよいと思っている。
人が見てほしくないところに目をとめ、
人が知りたくないところまで書く。
でなくして、なにが作家か。
その点カリン・スローターは、これは大変に意地悪な方だぞと、初めてその作品を読んだ時から嗅ぎつけていた。
おとなしやかな顔をして、人から事から周りのすべてを見透かして、
それでいてそれをしゃべりまくるわけではなく、一人静かにしたためるという、
相当な意地悪さんだと嗅ぎつけた。
それが、この冒頭の作者の言葉である。
『日常の土台にある秘密や嘘に惹きつけられてきました。』
巻頭にさらりと彼女は述べている。
でしょうねえと、私は納得した次第である。
「あの人はこう見えているけれど、本当はどうなんだろう?」
「あの人はこう言っているけれど、本当はどうなんだろう?」
こういう人はニュースの見方も違う。
「マスコミはこう説いているけれど、実際はどうなんだろう?」
人の肌色、DV、銃社会、フェミニズム、世代の特徴、カルト、テロ、etc.etc.etc......
アメリカのニュースを見れば、よく聞かれるあれこれのテーマが、さりげなくあちこちにちりばめられている。
それらについて、人は簡単に断罪したがるけれども、
意地悪な人、カリン・スローターは、浅薄な○×や善悪では語らない。
簡単な結論も出してこない。
こういう見方もあるでしょう?
こういう場合はどう?
善いとされているこれについてはいかが?
本当によいことかしら?
むしろ、返答に詰まるような問いかけをしてくる。
だがしかし、彼女は底意地が悪いわけではないのだ。
意地悪さで摑んだ色々のもの、皆に問いたい様々なことを、露悪的に陰湿に書くことはしない。
さらりとした皮肉とユーモアでくるんで、素晴らしいエンタテイメントにする。
実はかなり思いやり深い人といえる。
くわえて、カリン・スローターは、すべての女性に対して敬意をもっている。
どの作品に出てくる女性も皆、程度の差はあれ、タフなのだ。
この作品の主人公の一人、アンディについてはどうだろう。
たしかに、彼女の性格には賛否ある。
ヒーロー的ではない、覇気がない、
普通でさえない、落ちこぼれで、まともに口をきけもしない。
理想家、ロマン派には許せないだろうし、
身につまされて堪らない人もいるだろう。
けれども、普通の人間ならば、こんなものではないか?
むしろよくやっているではないか。
とっさの攻撃は優れたものだし、おぼつかないながらも、彼女はタフだと思う。
けれども、そんな私でさえ、自分の状態や時期によっては、イライラもどかしくて、そうは読んでいられなかっただろう。
アンディのとらえ方は、まさに読者それぞれで・・・・・・
それによって、読者もまた、カリン・スローターに見透かされているのかもしれない。
作中で印象的だった曲はこちら。
a-ha ''Take On Me''
https://www.youtube.com/watch?v=djV11Xbc914
The Doors ''Love Me Twice''
https://www.youtube.com/watch?v=QdCZR9M5EKY -
シリーズ作品だけでもチェイスが大変なのに、独立作品をいつ読むのか? 今でしょ! 入院は積ん読本を読むには絶好の機会なのだ。
しかし病気で入院してるのに、何故、暗い不健康な本を読まねばならないのだろう。本作は、ある意味、覚悟し、さらに予期していた通り、そんな不健康さでいっぱいの悲劇大作なのだった。
いきなりのテロシーンで物語は始まる。ナイフ片手の無差別殺人鬼にあわや殺されそうになるヒロインを母が救い、さらに返り討ちにするという衝撃の幕開けだ。娘の立場から描かれる現代と、母の思いもよらぬ過去の物語が交互に語られる。
過去の物語の中心人物たちはまず名前そのものも異なるので、すんなり今と結びつくわけではないのだが、国際テロ集団の離合集散の暗い時代とその緊張感が半端ではなく語られてゆく。
現在と過去が容易に結びつかない中で最後まで持ってゆかれる物語には相当やきもきさせられるものがあるが、そこの紆余曲折が本書の読みどころであり、現在のヴァイオレンスからの脱出路の出口に繋がってゆくので、戦後国際テロを背景とした母と娘のサバイバルを、いつものようにスローター節で味わいたい。
血とバイオレンスと男と女。そして壮大な旅として俯瞰される家族の物語は、いつものスローター節なのだが、あまりにも引っ張リ過ぎなラストのキレの悪さが、好印象には繋がらず、残念。
Netflixでドラマ化されているとのことなので、そちらも要チェックであること間違いなし。 -
序盤でとても印象的なシーンあり、ローラの真の姿は○○○ではないか、とこれまでの映画体験をもとに予測したけど、どうやらそんな単純なものではなさそう。下巻に期待。
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アンディの振舞いは読んでいるとストレスを感じるが、これにも何か含みがあるんだろうか。下巻次第。
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今の所、主人公の行動がバカすぎて、ついていけないが?
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同じ作者の作品で、この作品に登場した人物が出てくる『忘れられた少女』という作品もあるが、こちらの方が先に書かれている。
上記の『忘れられた少女』は、この作品のその後という感じなのかもしれないが、雰囲気はだいぶ異なる。
こちらの作品は、1960年代1970年代の出来事が現代の多大なる影響を与えているという事が、物語が進むにつれて明らかになって行く話で、主人公も比較的能動的に活動しているという印象だが、『忘れられた少女』は、あまり主人公が能動的に動いているという印象を受けず、正直、読み進めにくかった記憶がある。その意味では、この作品にはあまり期待していなかったが、良い意味で期待が裏切られた。物語が進むにつれ、“え?どういう事?”という感じで、次に物語を読み進めずにはいられなかった。