- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784596552051
感想・レビュー・書評
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テッドはロサンゼルスに暮らすゲイのフリーライターで、6年付き合ったパートナーと別れてからは鬱傾向にある42歳。
12歳の愛犬リリーを愛し、慰めとして日々を暮らしていたが、ある日、リリーの頭上に「タコ」が居座っていることに気づく。
リリーを苦しめる「タコ」を退散させようと奮闘するテッドの、苦しく、切なく、悲しい闘いを描いた物語だ。
人は生きている限り何かを失っていく。
お気に入りのカップを割ってしまうようなモノの喪失から、友人や、家族や、愛犬といった大切な存在を喪うことまで、どれだけ抗っても、嘆いても、喪失は決して避けては通れないのだという当たり前のことを、改めて思い知る。
これは長い喪失の物語で、そして誰にも起こりうる話なのだ。
主人公はアメリカ人の中年のゲイで、生活習慣や人間関係、マッチングサイトを利用した恋人探しなど、細かな部分は日本人の自分にはやや馴染まないように感じる部分があるけれど、根本のところにある、誰かを大切に思い、喪うことを悼む気持ちは、国も世代も関係ない普遍的なものなんだと感じた。
後半、テッドが現実と向き合ったとき、涙が止まらなかった。
それはたぶん、本当に心の底から感じた素直な気持ちや言葉が綴られていたからだと思う。
大切なものを喪うことを受け入れる時の痛み、辛さ、そういうものを思い出す。
訳者あとがきによると、本作は半自叙伝的な物語らしい。作者もリリーという愛犬を持ち、亡くしている。
その時の思いが正直にそのままに書かれているんじゃないかと思った。
ただ、悲しいだけではなく、足掻き、嘆き、苦しんだその先には青空があり、日常がある、そういう普遍的な強さも描いた一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
犬を飼ったことはないし、妄想癖もないし、ゲイの気持ちもわからない。でも面白がれた自分がちょっと意外だ。
割と最初は細かい説明がなくて、読み進めないとわからない仕組みだ。察せはするので詰まりはしないが、あとで真実が明かされて驚かされたりする。
ゲイだというのが全然わからず、途中までいわゆる「ボク女」なのかと思ってた。私の周りではゲイを見かけないからか、全然察せなかった……のは若干私の読みの甘さな気もするが。
犬が喋るというのは、あまりにも飼い主の独りよがりすぎる、といつもなら言いたくなるが、主人公のテッドが妄想癖だということで自然に納得できた。何より、文章が結構おもしろいリズムや言い回ししてて、楽しませてくれるのが良い。
私が気に入っている装幀家の鈴木成一さんと、前から気になっていたイラストレーターの西川真以子さんというコラボに惹かれ、購入した。
西川さんはデッサンしっかりしてるけど、ゴッホみたいに情動的で感覚的な、線の脈打つ感じがイイ。そんなイラストと、キュートな赤と水色との組み合わせが意外で、すごくキマっている。
色彩とその配し方だけで見ると、葛西薫さんっぽいな、という気がするが、参考にしたのかな。(『人生を三つの単語で言い表すとしたら』の装幀、マナスクリーンのポスター)
買ったのは、ほぼ物欲だった気もするが、内容も良かったと思っている。 -
最初はどんどん先読みたいな、と思ったのだが、意外に読了まで時間がかかってしまった。リリーにさほど犬感?は感じなかったものの、やはり動物という存在に自分自身あまり興味がないのが原因か。
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いや~~
ここまでする??
無理でしょ
共感できないもの -
ブクログさんのプレゼント、ありがとうございます!
時間なくて、いただいてからだいぶ経ったけど、やっと読み終わった!
中間の妄想的な部分と、語りの調子がどうも苦手だったけど、リリーを大好きなことは伝わる
私は犬を飼ってないけど、これは犬飼いには切ないだろな
あ。ラストの救いがあってよかった -
作者が経験した大きな喪失を思うとこの本の執筆にどれだけの痛みが伴っただろうと胸が締め付けられる思いでした。
リリーはメスの老犬だが、人だろうと犬だろうとどんな生き物だろうと、愛する存在を失う痛みは計り知れない。
その痛みと真っ向から向き合って、その存在が自身に与えてくれた全てに感謝する、生きることについて真剣に考えを巡らす、人生にとってこれほど価値のある時間もないのではないだろうか。
そして一人の男性が経験したそんな時間を追体験する意味でこの本はとても意義深い。
命に対してどれだけ自分を純化して向き合うことができるか、人はそんな局面でこそ今までの自分を試されることになると思う。
平和ボケをしていてはダメなのだ。
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