6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む (ハーパーコリンズ・フィクション)

制作 : 夏目 大 
  • ハーパーコリンズ・ ジャパン (2017年6月24日発売)
3.57
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  • 340人登録
  • 30レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596552068

作品紹介

本を愛するすべての人へ。

フランスで26万部突破、
36カ国で刊行のベストセラー小説

彼は今日も朗読する――死にゆく本を“天国”へ送るため。

パリ郊外の断裁工場で働くギレンは、
本を〝死〟へ追いやる毎日にジレンマを抱えている。
生き延びたページを持ち帰っては翌朝の通勤電車で朗読して〝往生〟させるのが日課だが、
憂鬱な日々はある朝、持ち主不明の日記を拾った時から変わり始める――。

読後きっと、いつもの景色が違って見える。
人生の葛藤と悲哀、希望を描いたベストセラー小説。

6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む (ハーパーコリンズ・フィクション)の感想・レビュー・書評

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  • 献本でいただきました。ありがとうございます。無機質な生活が、有機的に変わっていく様が柔らかく素敵に描かれていて好きでした。
    他者から逃げることでしか生きれなかった主人公が、自分と相手の人生を変えようと行動できたことに幸せを感じました。

  • 献本に応募していただいた本。

    本の断裁というものがあることはもちろん知っていたけど、断裁工場というものを具体的に思い描いたことはなかったので、ちょっと意表をつかれた。

    「本を読む」が朗読だったことにも意表をつかれた。
    訳者さんもあとがきで書いているけど、これ奇矯な行動ですよね(笑)。けっして感動的な行為とは言えないような気がするんだけど、その朗読をたのしみにしている人たちがいたり、そこから人の輪が広がっていったりするところがいい。

    主人公は、けっこう知的で繊細な感情の持ち主のように見えるけれど、本の断裁というとてもストレスのたまる職場にいて、仕事がいやでたまらないのに、一向に抜け出せる様子もないあたり、ずいぶん閉塞感がただよってる。でも声を出して読むという行為でそこにほんの小さな穴をうがっていくところがいいなと思いました。

  • 本を裁断し溶かして紙の原料にする工場で働くギレンは、工場の機械の清掃の時に出る溶けなかった本のページを持って帰り、朝の通勤の電車の中で朗読することを日課にしている。孤独に暮らすギレンの友と言えば、機械に挟まれ足を失った同僚のジュゼッペと、工場の守衛のイヴォンくらいだった。裁断され溶かされていく本への愛着を込めて、残された一部を朗読するギレン。乗客たちは、ひそかにその朗読を楽しみにしている。ある日、ギレンがいつも座る折り畳みの補助いすを引き出すと、赤いUSBが転がり出てきた。家に帰ってUSBをのぞいてみると、とあるショッピングセンターのトイレで働くジュリーという女性の日記だった。

    大都会パリの片隅で、単調な毎日を送るギレンとジュリー。特に大きな事件があるわけでもないストーリーなのに、読み終わると暖かいものを感じるお話だった。

  • 献本で戴いて、ひさしぶりに小説を読んだ。
    翻訳していることを感じさせない自然な筆致で、近頃こころが疲れ気味の私でもさほど苦労せずに読めた。

    重苦しくもなく、甘ったるくもなく、淡々と進むストーリー。
    主人公が通勤する描写がたびたび入るためか、本全体から、早朝のパリッとした空気と灰色の街路が思い浮かぶ。

    装丁に非の打ち所がなく、カバーの手触りも心地よい。
    力作だと思う。

    *******
    本の断裁工場で働く主人公には、労災で両脚を失った元同僚がいる。生涯取り戻せない損失に対して会社が支払った補償は17万6千ユーロ。片脚につき8.8万ユーロ、現在のレートでおよそ1145万円だ。

    これには考えさせられてしまった。
    50歳ちかい男の片脚1145万円は妥当なのか。判断するのは難しい。逸失利益(事故などで亡くなったり、重度の障害を負ったりした人が将来的に得られたとして算定される収入)は「命の値段」とも言われるが、まさしく人の命、人生に値段をつけるような行為だから。

    私は自分の命に価値を見出せずにいるが、もし私が事故か何かで死んだら、やっぱり保険会社か事故主が私の命にお金を払うだろう。それって誰に対して払ってるんだろう。誰が私の命に価値を感じたことになるんだろう。
    額によっては、それも悪くない命の使い方なのかもしれない。

    そして矛盾するようだが、どこかの猟奇的な趣味の持ち主が1145万円で私の脚を切りたいと言ってきても、私は受けないだろう。逸失利益を考えたとき、今後何十年かで私の片脚がそれだけの利益を(社会的に)生み出せるとは思えないが、生きている私にとって、私の脚はそれ以上の価値がある。

  • タイトルに惹かれて図書館からレンタル。

    主人公の性格的にこだわりの強かったり、数字を数えているところ、電車の中で突然スクリプトの朗読を始めたりするとこらから、自閉症のようなギフトを持った方なのかなぁと思い読みました。それが差別的とかどうということではなく。性格的なものという印象です。
    大きな起伏はなく、淡々と、むしろ少し鬱々とした日々が絵が描かれる。
    でもそれは呼吸のようにゆったりとしていて、ギレンの日常なのだなあと感じられる。

    本が好きで本を愛しているのに、それを断裁しなければならない背徳感。
    仕事だと割り切ることが出来ないギレン。
    不器用で、でも人らしくて愛おしい。
    元同僚のジュゼッペに対する思いやりや、度を超えた優しさもきっとギレンだからできることなのでしょう。

    人の日記を読んでしまい、ひっそりと想いを寄せるギレンは純粋のようだが、それを電車で読み始めた時はドキドキしてしまった(笑)
    最終的にはロマンスに発展しそうなところがフランスっぽくて素敵だなと思った。
    ジュリーの日記は、たしかに格言というかハッとすることが書かれていて、思わず頷いて読んでしまう。
    ギレンじゃなくても読み込んでしまう。
    し、そこから職場を絞り込んだジュゼッペの執念たるや。
    もしかするとジュゼッペはギレンのやっていることを少しは悟っているのかなと思った。

    物憂げで、ゆったりとした日々を描きつつも、少しの非日常が加わり色付いていく感じが夜更けから綺麗な朝焼けへと変化していく空の様で印象に残った。

  • ジャン・ポール・ディディエローランの6時27分発の電車に乗って、僕は本を読むを読みました。

    フランスのちょっと変わった人たちの物語でした。
    主人公のジャンは不要になった本を廃棄処理する機械を運転する仕事に就いています。
    毎日たくさんのトラックがジャンが動かしている機械に本を運んできます。
    本は機械の大きなナイフで裁断され、ハンマーでつぶされ、溶解されていきます。

    機械の動作音は大きく、内部の清掃作業は危険を伴う作業で、さらに上司はいけ好かないやつということで、ジャンは会社の仕事に満足感を得られていません。

    そんなジャンの人生に赤いUSBメモリの形をした他の人の日記が紛れ込んできます。
    その日記を読んだジャンは日記を書いた女性を探そうとするのですが...

    この本を読んで印象的だったのは、満足感を得られない職場というのは拷問に近いものなのかもしれないということでした。
    私がジャンと同じ状況に置かれたら精神を病んでしまうかもしれないと思いました。

  • モノクロで重い話が色とりどりのカラフルな世界に変わって行くような。フランス人作家の小説は初めてかな。ステキでした。

  • 読むのに、ものすごく時間がかかった。
    その点でも、春樹とはちがうかなと思う。

    せっかくの献本なのに、大変申し訳ないが、
    星ふたつ!ですー。

    作者やギレンの本への愛がひしひし伝わってくるし、早朝や集いの朗読のシーンとか、
    暗から明への話の流れもよろしと思うんだけど、



    ギレンの職場の描写が
    あまりにもグロテスクで
    胃内容がこみあげそうになるし、
    ジュリーの仕事内容も生々しい。

    知らない人の日記を朗読する無神経さ。

    そんなんでほっこりでけん。
    と思ってしまいました。





  • 献本としていただいた本です。
    読み始めからいきなり、主人公ギレンに強い共感を持ってしまった。
    それは、自分の名前が嫌いなところ(笑)
    私も子供のころ自分の名前が嫌いで嫌いで。。。一文字を変えるとある野菜の名前になり、常にその野菜の名前で(つまりは、あだ名で)呼ばれた(笑)
    ホント、嫌だった。。。そんな過去を思い出し懐かしい気分になった。
    それはさておき、本の断裁工場で勤務するギレンが、断裁から逃れた本のページを取り置いて、早朝の通勤電車でそれを読む、いや、朗読する。そして、居合わせた人たちが彼の朗読に耳を傾ける。。。
    一見、かなり不可解な行動だけど、この物語の中でならそんな行動もしっくり来るから不思議だ。
    淡々とした日常の中で、ギレンの周辺にもささやかな出来事が起きる。周りの人物も個性豊かに描かれている。守衛のイヴォンが私の一番のお気に入りだ。朗読ひとつで煩い業者を黙らせ、老人ホームのシニア達を虜にした。どれだけ素晴らしい朗読なんだろうか??
    イヴォンの朗読をぜひとも聞いてみたいものだ(笑)
    どんな人生を背負っていても、どんな職種に就いていても、それぞれが淡々と生きていく一方でささやかな幸せを見出してゆく。
    大事なのは物の豊かさではなくて、心の豊かさなんだな。改めてそのことについて考えることとなった。

  • 秀作映画を観たような、なんとも言えない心地よい読後感。
     当ブクログでは献本企画とやらで話題になった作品のようだけど、別ルートのアンテナに引っかかった一冊だった。タイトルが巧いね。原書フランス語の「6:27の読者(liseur=reader)」では、ピンとこなかったろう。

     主人公は書籍の断裁工場で働く30半ばの男性。断裁・粉砕しきれなかった本のページ ーそれを「生きた皮膚」と彼らは呼ぶ― を断裁機から拾い出し、通勤の電車の中で朗読する一風変わった男だ。
     彼を取り巻く工場の同僚、上司、守衛などもひと癖ふた癖ある男たち。いわば社会の底辺とも言える職場で、やや屈折した生活を送る主人公ギレンが、本の断片を声を出して読むことから広がる世界、そしてやがて通勤電車の中で拾った落し物の文章を通じて、素敵な恋の相手も見つけてしまうという・・・。舞台はパリ、オシャレなフランス映画の趣きたっぷりの作品。

     前半は、その工場と自宅をただ往復するギレンの単調極まりない暮らしと、やっかいな同僚たちのやりとりが物憂げなトーンで展開される。が、その単調さを補って余りあるのが、時折差し挟まれるちょっとスノッブな表現や、詩の引用、あるいは含蓄ある(ありそうな?)格言めいたひと言ひと言。

     口ひげが自慢の守衛のイヴォンには「口ひげが立派なら、言葉も立派なはず」という17世紀の哲学者(シラノ・ド・ベルジュラック)の台詞を言わせたり、落し物の文章の主ジュリーのおばさんの数々の口癖が、いい具合にエスプリを利かせている。
     そう、このおばさんのお気に入りの口癖 ― 語録としてジュリーは番号を付けて備忘してある ― が折に触れ登場するが、「お客は安心している時のほうが、不安な時よりも気前がいい」、「トイレは神父のいない懺悔室」、「笑顔はタダだけど、たくさんの得をもたらしてくれる」「乞食が留守なら、お椀は空」 etc. etc., この語録だけの付録があればいいなと思えるほど味わいがある。

     そんな一風変わった登場人物たちに囲まれて、主人公とジュリーは出会い、本作品が冒頭からモチーフとして設定した「文章」を通じて心を通わせ、どうやら恋がはじまりそうだ、というところで余韻を残して物語は終わる。 最後までオシャレだなぁ。

     本を読んで映画化を望まない、あるいは想像しないほうだけど、この作品に関しては映像も浮かんできてBGMまでもが流れていたような錯覚を覚え、ついつい登場人物の実像も思い描こうとしていた。設定も少しアレンジして、ジュリーの職場は不遇だけども、もう少し女性らしい職業がいい、映画のエンディングとしても美しくまとめられるかな、などと想像しつつ、パラパラと本書を見返し、ハタとこのところで手が止まった。これはジュリーが書いた文章で、USBメモリに入れて落としたものをギレンが拾って読んでいるものだ。

    「この地球上で二十八年近く生きてきて一つ学んだことがあるとすれば、それは、人は見た目で物事を判断する、ということだ。うわべの下にどんな中身が隠れていても、興味を持たない。だから今は、他人から変に思われないよう、私は自分を装う。」

     あぁ、ジュリーに皮肉られてしまったなあ。そう、つい置かれた立場、職業、見た目で判断してしまった。ギレンの職場についても「いわば社会の底辺とも言える職場」なんて書いてしまってるな。”職に貴賎なし”なんて言葉では言ってるけど、気持ちとして分かっちゃいないな(反省)。

     本当にこの作品が映画化されたときに、ジュリーの職業に変更が加わるかどうか見てみよう。恐らく、ギレンの職業や性格、行動様式は主人公だけに変更はされないだろう(冴えない30代ではなく、多少、見栄えのする少し若手の役者が演じるとしても)。基本構成はシンデレラストーリー的なお話だけど、白馬の王子様が断裁工場で働くギレンで、デパートの化粧室の清掃係のジュリーでは興業的にも花がないゾ、なんて製作サイドが思って手を加えそうなところだけど、それじゃジュリーに、その底の浅い企みを見透かされてしまうね、きっと(笑)

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