わたしの全てのわたしたち (ハーパーコリンズ・フィクション)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
3.86
  • (12)
  • (18)
  • (10)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 244
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596552112

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 両親と妹と暮らす結合双生児のグレースとティッピは、経済的な理由から高校2年生で初めて学校に通うことになった。好奇の目の中、友人になったのは、ヤスミンとジョン。グレースはジョンにほのかな恋心を抱く。嬉しいことも傷つくこともある学校生活だったが、二人は体に不調を感じ始める。唯一の稼ぎ手だったママが失業した。家計を助けるために二人は今まで拒んでいたドキュメンタリーへの出演を受ける決心をする。

    結合双生児として生まれ育った少女が、日常生活で経験し感じたことをグレースの言葉で語る物語。








    *******ここからはネタバレ*******

    片時も離れることのない相手がいる「双子」という状況は、双子の母としてある程度は想像できますが、自分の病気が治っても片方の調子が悪ければ付き合うしかないとか、嘘や隠し事(いずれも心の中のことだけになりますが)も見破られてしまうとか、相手が摂った不適切なモノ(タバコやお酒)さえも共有してしまうとか、片方だけ行きたいところややりたいことも、もう片方が付き合わないといけないとか、おばあちゃんだってできる恋愛や結婚も制限されてしまうとか、最終的には、どちらかの体調不良がもう一方の生死にすら関わってくるとか、こうやって話を読んでみると、見た目以外にも大変なことが多いのだと気付かされます。
    そしてそれ以上に驚いたのが、二人が一緒にいることを望んでいること。生まれたときから一緒だから、もうそれを受け入れてしまっているんだと思いますが、一卵性双生児の絆の強さを見せられた思いです(我が家のは二卵性)。

    分離手術の結果は、やってみなくてはわからなかったことなんでしょうけど、生き残ると思っていたティッピが逝ってしまってとても悲しい。思うようにはならないということなんでしょうか……。
    しなくてはふたりとも生きることができなかったとしても、それでも悲しいですよね。


    米国の雇用制度にもびっくり。今日解雇通告されたら、もうすぐに出ていかないといけないんですね。




    翻訳のせいなのか、詩の形で書かれているせいか、読みにくいところや違和感を感じるところもありました。

    特にグレースがジョンを思い浮かべるところ。世間なれしていない女の子が、男の子を「きみ」と呼びかけるのはいかがなものか?直接会っている時は「あなた」って言っているのに。

    102頁、更衣室でのヴェロニカとヤスミンの会話。
    「チャイム……もう鳴らなかった?」
    「ううん、次の授業は、5分後だね」
    どっちなの?

    169頁。句点がおかしくないですか?
    シルバーの、うさぎ足のペンダント。10歳の頃、ママにもらってからずっと身につけている。「幸運のペンダント」ジョンは、ペンダントをひっくり返す。

    336頁、ドラゴンが持ち帰ったマトリョーシカについての場面。それのどこが彼女たちを表しているのか?私にはわかりませんでした。


    読みにくいところは多々ありましたが、彼女たちの気持ちが等身大で描かれているお話で、しっかりした高学年以上からの読書をおすすめします。

  • 言葉の“音”に合わせてフォントを変える。祖父江慎が解説『わたしの全てのわたしたち』装丁 | J-WAVE NEWS
    J-WAVEで放送中の番組『CREADIO』(ナビゲーター:佐藤オオキ・クリス智子)。「デザインを音で楽しむ」をテーマにお届けしている。7月3日(金)のオンエアでは、グラフィックデザイナー・祖父江慎がゲストに登場。60歳を迎えて変化したことや、音を意識した書籍の装丁について語った。
    https://news.j-wave.fm/news/2020/07/post-6286.html

    わたしの全てのわたしたち|ハーパーコリンズ
    https://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail/13057

  • 結合性双生児で、上半身はそれぞれの体、腰から下はひとつの体を持つグレースとティッピ。

    グレースの視点からつづられる日々は、生まれてから常にふたりが一緒にいるしかないことの幸福と苦しみ、もちろん心は別々の個性を持つこと、普通に接してくれる友人との出会い、家族への思い、そして恋、治療、不安…などが連なっている。
    そして辛い決断、さらに辛い辛い結末。


    彼女の生きていることそのままが、想像したこともないような日々の困難に立ち向かう物語。
    ティッピを失って“ひとり”になったグレースの喪失とはどういうものなのか、わかったとか感じたとかも、とても言えない。
    正直なところ、まだよくわからないまま。
    それでも、読んで良かった、と思う。

    凝った装丁、選び抜いた言葉、数ページごとに交互に変わる紙の色。分かち難いふたりの結びつきを本の形であらわしているようだった。


    図書館あきよしうたさんのレビューで、手に取った本です。
    ありがとうございました。

    • 図書館あきよしうたさん
      うわぁ、yo-5h1nさん、これ、無っ茶嬉しいです。

      私レビューの後半に、ちょっと辛口コメント載せてしまいましたが、お邪魔になっていなけれ...
      うわぁ、yo-5h1nさん、これ、無っ茶嬉しいです。

      私レビューの後半に、ちょっと辛口コメント載せてしまいましたが、お邪魔になっていなければと祈ります。

      でも私、この「詩」と「本」全体をちゃんと味わう感性がなかったんだなぁと、yo-5h1nさんのレビューを読んで思いました。

      もう一度手にとってみようと思います。

      私こそ、ありがとうございました。
      2020/11/03
    • yo-5h1nさん
      コメントいただきありがとうございます。
      辛口コメントとは全く思わず、図書館あきよしうたさんが星を4つ付けてるなら、と気になって読みました。...
      コメントいただきありがとうございます。
      辛口コメントとは全く思わず、図書館あきよしうたさんが星を4つ付けてるなら、と気になって読みました。
      邪魔だなんてとんでもない!
      これからもすてきな、正直な思いのままのレビューを楽しみに読ませていただきます!
      2020/11/05
    • 図書館あきよしうたさん
      レビュアー冥利に尽きるコメント、本当ありがとうございます。

      これから更にレビュー書くのが楽しみになりました。

      これからもよろしく...
      レビュアー冥利に尽きるコメント、本当ありがとうございます。

      これから更にレビュー書くのが楽しみになりました。

      これからもよろしくお願いしますね。

      2020/11/07
  • 16歳のグレースとティッピは、腰から下が繋がった結合双生児。語り手はグレース。
    綺麗で汚れのないまっすぐな文章が良い。特に、グレースのジョンへの恋心。
    決してお涙頂戴系の話ではない(と私は思っている)が、それでもやっぱり心を動かされる。

  • 実際に結合双生児のエピソードを参考にして書かれたフィクション。

    結合双生児のティッピとグレースは高校2年から家計の事情により高校に通うことになる。おとなしいグレースの語り(詩)により物語は進んでいく。体がくっついている以外は性格は違うけれど2人とも普通のティーンの女の子。

    学校に通うようになり人の好奇の芽に晒されながらも数少ない友人ができ、恋もする。教習所にも通う。

    両親、祖母、妹との関係、家族の困難に対する姉妹の決断、消える命。

    詩でなければ表せなかったこの物語は、金原瑞人さんの翻訳から最果タヒさんが書き直すという贅沢な行程を経て発行されています。

  • 詩の形式の小説というのはどんなものかと思ったけど、意外にも読みやすく、内容にもあっているように感じた。
    題は原題の「One」のほうが好き。

  • 性暴力を受けた女性のノンフィクションと思って読み始めたら、結合双生児の話だった。そっちは『私の中のわたしたち』。似てる。『中の』の原題は知らないが、解離性同一性障害の人の話だから、タイトルとしてそのままだと思う。こちらのタイトルは原題はOneだから、意訳という感じ。読み終わるとこのタイトルも悪くないとは思うが、そのままOneで、サブタイトルをこのタイトルにしたら良かったかも、と思った。
    結合双生児の物語というとホラーやミステリーに出てくるものは別として(誰でも、生まれた姿がどうであろうとその体で生きなければならないのだから、ホラー扱いは見世物小屋みたいなもので、現代では許されないと思う。)、萩尾望都の「半神」を思い出すが、あの結合双生児はメタファ的なところがあり、身近な人にコンプレックスを抱いている人なら共感しやすい物語だった。
    こちらはリアルな結合双生児の片方が主人公であるので、作者はかなり取材と研究をしたようだ。
    もっとリアルに書けたかもしれないが、障害の様子などはあまり細かく描写せず、意外に普遍的な青春小説として成り立っている。
    グレースとティッピ(グレース・ケリーとティッピ・ヘドレンからつけた名前)の双子の語り手はグレース。身体は共有していても、アイデンティティは別。でも、どんな人より近しい存在。そんな気持ちが、分かる気がする。母子感染でエイズとなったヤスミンとの友情、母に捨てられ、母の再婚相手に育てられているジョンへの恋、姉達の代わりにいろいろなことを引き受けている妹ドラゴン(本名ニコラ)への思いなども。
    それにしても、やはり普通の生活は難しいし、医療費ももちろんかかるのに、何の保障も手当もないの?両親が双子の医療費を出すために、他の全てを犠牲にしているのは、読んでいて辛い。アメリカの医療費はとても高いとは聞くけど、障害のある人にかかる費用はそれこそ公助で何とかできないのかと思う。
    結合双生児と聞くと、素人は分離手術を考えるけど、それを選択しないで生きている人達もいて、それを念頭に置いて書かれている。誰よりも理解し合えるソウルメイトが、いつも隣にいるって意味では羨ましくもある。孤独という感覚がきっと全く違うだろう。
    難しい設定を上手く生かした、いい物語だった。

  • 金原瑞人さんの訳を、最果タヒさんが散文詩にするという発想が天才。
    ティッピと、語り手のグレース。
    二人はひとつのからだを共有するシャム双生児と呼ばれる17歳だ。
    二人だけど一人。

    〈これ以外の体を知らない。
     これ以外の人生を知らない。
     たった一人で生まれて、
     たった一人で生きるなんて、
     リアリティがなさすぎる。〉

    私はひとつのからだで生まれてきた一人。
    たった一人で生まれて、たった一人で生きてきた。
    だからティッピとグレースの人生を想像することなんてできるのだろうかと思ったのだけれど、詩の言葉でこのように語られていくことで、気づけばするすると二人の物語を感じられるようになった気がする。

    ティッピとグレースは性格だって違うし、食事の量だってちがうし、眠るタイミングだってちがう。
    入学したホーンビーコン高校で出会ったヤスミンとジョンと送る高校生活は、とても刺激に満ちていて楽しそう。

    ティッピとグレースをめぐる運命について、なんだか最後まで読んで感想をうまくまとめられないのがもどかしいけど、タイトル「わたしの全てのわたしたち」という言葉について、じっと考えた。
    わたしが、わたしたちであること。
    広義の"私たち"ではなく、ただ本当に"わたしたち"であることの意味について。心強くて、あたたかさに包まれるような感覚だった。

  • 散文詩という形がとても自然。言葉がやさしくシンプルだけど、とてもリアリティがあって、ほんとうにティッピとグレースという姉妹がそこにいるかのよう。その部分はほんとうにすごい。結合双生児という、比喩でなく「同体」の人生を送りながら、それなりに性格もちがい、ときにはやりたいことが食いちがいもするけれど、お互いを深く愛していて、離れたくないというふたりのありようが、無理なく伝わってくる。

    ストーリーそのものに関しては、若干、ありがちな展開かなあというアンビバレントな感覚も。でも、展開云々よりも、やはりティッピとグレースの存在感、ふたりが読み手の心のなかに広げるやさしさやつらさなどが主眼なのかなと思う。

  • 辛い経験をした人は優しくなれるなんて言説、
    クソ食らえだと思う。
    辛い経験をしたことにあぐらをかいて、
    辛い経験をしたことをアイデンティティにして、
    永久に名誉にして自慢する奴らなんて死ぬほどいる。
    辛い経験をしたから、その人は優しいんじゃない。
    その人が優しくなれるよう、考えて努力したから、
    優しくなったんだ、と思う。
    誰かの優しさは、誰かの悲しさや絶望なんかで保証されてはいない。
    そんなこともわからないの?って、いつも思う。

    ティッピとグレース、ドラゴン、ヤスミン、ジョン。
    子供達の持つ優しさに出会うたび、
    そういうことを考えていた。

    結合双生児と、その妹。エイズに感染した少女。

    側から見たら「幸福」とは言い難い人生を送る彼女達の優しさを、
    どうか、彼女達の辛い経験がもたらしたものだなんて言いたくないな、と思った。
    そもそも、「側から見たら『幸福』とは言い難い人生」なんて言い方、
    それこそ、その視点自体がおかしいのだけど。

    彼女達の、自分の人生や世界に向ける視線の真摯さ、切実さは、
    詩という形式以外表現しようがなかったんだと、
    読後ひしひしと感じた。

    「普通じゃない」少女達の人生に、
    「普通」なジョンが向き合うとき、
    私はその姿があまりにも逞しくて泣いてしまいたくなった。

    けれど、その逞しさを、優しさを、切実さを、
    彼らの運命のせいになんかしていいと思いたくない。
    私にはないものだからと、向き合わない理由にしていいはずがない。

    本当は、ティッピとグレースの父親の話がしたかったけど、
    こんなことになってしまいました。
    おしまいです。

全22件中 1 - 10件を表示

サラ・クロッサンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
清川 あさみ
ディーリア・オー...
エラ・フランシス...
レティシア コロ...
フランシス・ハー...
多和田 葉子
ショーン・タン
川上未映子
有効な右矢印 無効な右矢印

わたしの全てのわたしたち (ハーパーコリンズ・フィクション)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×