黒い谷 (ハーパーBOOKS H219)

  • ハーパーコリンズ・ジャパン (2024年11月22日発売)
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感想 : 9
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本 ・本 (744ページ) / ISBN・EAN: 9784596718532

感想・レビュー・書評

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  • ★5 フランスのピレネー山脈で発生する猟奇殺人、重々しくも心臓に突き刺さる骨太ミステリー #黒い谷

    ■あらすじ
    フランスはピレネー山脈で男性の奇妙な惨殺死体がに見つかった。さらに半年後にも同様の猟奇殺人が発生してしまい、憲兵隊ジークラー大尉が事件の真相を追う。

    一方、以前事件で停職中になっていたセルヴァス刑事の元に、八年間も行方不明になっていた恋人マリアンヌから電話がかかってきた。かつての恋人を探すためセルヴァスは奔走するも、足取りがわからない。さらに連続殺害事件との関連も見えはじめ…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    ★5 おもろいっ! 自分がミステリーを書くなら、こんなのを書いてみたいという物語でしたね。いわゆる北欧ミステリーなんですが、やっぱりこの重く暗く寒々しい世界観が好きすぎる。

    複雑な感情が絡み合った結果、人間の深く醜い部分が見えてしまう。読み終わった時にひたすら苦しい気持ちになるんですが、同時に人間の温かさも染みわたるんですよね。腹も立つし、泣きたくもなるんだけど、抱きしめたくもなる。ホント、心がぐちゃぐちゃになるんですよ。

    本作、まず登場人物が素晴らしいんです。まずなんといっても憲兵隊ジークラー大尉ね、女性なんですが超カッコイイんですよ。才色兼備、質実剛健、捜査本部のリーダーとしてチームをひっぱる。どんなことにも屈せず、立ち向かう姿がCoooool過ぎるでしょ! そんな鬼軍曹でも愛する人には… という人間のやわらかい部分も丁寧に描かれてるんですよね。

    そして主人公のセルヴァスですよ。本来はバリバリの刑事なのに、本作では停職中という身分のため、最初から最後までずっーーーと我慢しきりで可哀想。自分がどんなにも辛い時でも優しい言葉をかけられる。本当に強い人間ってのは彼のような人のことをいうんでしょうね。私もこんなシブイ男になりたい。

    他にも艶めかしい女性精神科医、力強く立ち向かう女性村長、何か怪しげな神父や教師などなど… それはもう強めなキャラクターで目白押し、すっかり人間関係の渦に巻き込まれてしまいました。

    特に後半、いわゆるラブシーンが2か所あるんですが、これがスゴイの。こんなにもヒリヒリする事件の中、こんなにもキワキワの情事があるんすか。いやー、もうビックリ。

    物語の構成もしっかりしてて、エンタメ度も抜群なんすよ。警察小説としてもすったもんだあって面白いし、最後まで読む手が止まらない。謎解きとしても、かなりハードな真相です。こんなの大好物なの、私。

    現場に残された謎の記号の意味は? なぜ殺害方法が猟奇的なのか? そして恋人マリアンヌの拉致事件との関連性は? 最大の疑問は何故こんな事件が起こったのか? ということでしょう。

    フランスだけではない、日本はもちろん世界中で起こりうる、現代的な社会問題が背景にあるんです。善悪や勝ち負けを決めたがり、強いものが弱い者をこき下ろす。何でも二項対立にしたがる現代人の悪い癖。何でも我欲や自分の立場を通すのではなく、もっとひとりひとりに寄り添うことはできないもんでしょうかね…

    ベルナール・ミニエの本シリーズ、初めて読みましたが面白過ぎですね。本作は6作目ですか、これはもう遡って読むしかないです!

    ■ぜっさん推しポイント
    最終盤、セルヴァスがある人物に語り掛ける。これまで長い長い物語を読んできて、最後の最後に至極当然の話をするんです。これにたどり着くために、読んできたと言ってもいい!

    自分自身の人生も振り返らせてくれる、味わい深い素晴らしい語らいでした。

  • ベルナール・ミニエ『黒い谷』ハーパーBOOKS。

    全仏ベストセラー第1位の警部セルヴァズ・シリーズの第6作。最近では余りお目に掛からない奇怪な連続殺人を描いた700ページ超の長編ミステリー小説。

    主人公が停職中の刑事で、8年前に失踪した主人公の元恋人から連絡があり、そこで得体の知れぬ犯人による奇怪な連続殺人事件が発生するという、まるで全方向を網羅する形で興味惹かれる読み応えのある作品だった。

    果たして、セルヴァズの警察人生は……マリアンヌは本当に生きているのか……奇怪な連続殺人事件の犯人の正体は……


    ピレネー山中の凍結した湖面で全裸状態で腹を斬り裂かれた遺体となって発見された29歳のカメル・アイサニ。斬り裂かれた腹の中にはプラスチック製の赤ん坊の人形が無理矢理押し込められていた。

    ある日、警部補に降格された上に停職中のマルタン・セルヴァズの元に8年前にジュリアン・アロイス・ハルトマンに拉致されたマルタンの元恋人のマリアンヌから助けを求める電話が入る。

    マリアンヌを捜索するため、ピレネー山中の村を訪れていたセルヴァズは捜査を担う憲兵隊大尉ジーグラーと遭遇すると新たな男性の惨殺死体が発見される。そんな中、村に通ずる唯一の道路が何者かによって寸断され、一行は村に閉じこめられることになる。

    そして、さらなる残虐な殺人事件が続き……

    定価1,680円
    ★★★★★

  • フランスの警部補セルヴァズを主人公にした警察ミステリー。シリーズ6作目。
    8年も行方不明だったマリアンヌからの電話で物語は始まる。ピレネーの村に駆けつけたセルヴァズを待っていたのは残酷な遺体で発見された二つの殺人事件と、道路を爆破されて孤立状態になった村の人々の不穏な動きだった。
    今回は停職中のセルヴァズが旧友ジーグラーの片腕となって事件の解決とマリアンヌの救出に尽力するというもの。兎に角、殺人方法も理由もエグいが700ページ超えもあっと言う間に読ませてくれた。次回も楽しみ、待ち遠しい。

  • 転換期かな。どう動くやろ。

  • 面白すぎるー!

    前作で肉親を守るために自分を痛めつけまくったセルヴァスも、50歳と言う年齢のせいなのかはたまた今回は肉親と物理的に離れてたからなのか、事件に対しても節度ある行動で安心して読めた。

    そして事件は私好みの物凄い凄惨なもの。しかもうまく被害者の心象や驚きも描かれてて、後で読み直すとその反応や伏線すべてに納得という感じ。さすが手慣れてる!よっミニエ様!
    フーダニット、ワイダニットもそう来たか、いや、そうだよね?と納得感があり、いろんな意味で高値安定のまま着地、素晴らしい。

    やー、ほんと、良い読書だったなあ。

    ドMなの?と思っちゃう肉親のためなら破滅上等キャラが鳴りを潜めただけではなく、最後に犯人に語りかける内容にはもう、父親もといパパ味が溢れてて、いい感じに主人公が成長してるなあって変なとこにも感動しちゃった。シリーズものでここまで納得できる作品ってしばらく当たってなかったから、飛び上がりたいくらい嬉しかった。ぐんぐん引き込まれて700ページ越えの作品だけど、体感瞬き20回くらいで終わった気分。うーん、良き読書。幸せなまま眠ろう。おやすみー

  • また犯人が「行き過ぎた正義感と男性嫌悪」の女犯人だ。これ流行ってるんですか?
    やたら現代人の感覚にはついていけない…というセルヴァズ、警官なのに文系で哲学もわかっちゃう俺…がだるい。権威主義的というか体制批判も我慢ならんみたいなんだけどじゃあどうしろと?作者が保守的なのか?作品通して伝えたいことがあまり合わないかも。ミステリーとしては面白いけど。

    全ての男性がクソ男じゃないのだ!というお決まりのノットオールメン構文のような描写も出てきたが、それならちゃんと「まともな俺とは違うクソ男」に対して怒ったり法に基づいて裁いたりなんやして貰えますか?被害に遭った女を叩く前に。て事が多すぎるので、そんな事言われても。でした。てかレアの存在都合良過ぎ。次回犯人になって欲しい。
    今回思想の部分がかなり色濃くなっており、その分「(笑)」感も高まってて残念だな

  • 購入済み

  • セルヴァスシリーズ第6作。前作『姉妹殺し』の次作。相変らずもてまくりのセルヴァスだが、たかがタバコをやめることができないダメ男。前作の無茶な行為で責任を問われ、懲罰委員会の決定を待っている停職中の身である。
    これが元恋人の助けを求める電話を受けたとたん前後を考えず突っ走る。もっと考えて動けよと突っ込みながら読み進む。多くの事件が発生するがそれらの被害者はそうされても仕方がないような悪事を働いていた犯罪者だったのである。セルヴァスの貢献はほとんどない中で、いつも通り危機一髪のところで犯人は捕らえられ、一時的な平和がおとずれて本編は終了するが事件が起こる社会的病理の基底の部分はなにも変わらず悪くなる一方だ。
    フランスばかりでなく世界中が変わってきているのは共通の現象でそれも決して良い方向性でないのが感じられて怖くなる読書経験だった。
    みなが良かれと思って行動しているその行為がホモ・サピエンスの終焉を近づけているようにしか思えない。

  • これ以上マルタンがひどい目にあわないようにここで終わってほしいようなエンディングでしたが、まだ続くんですね。
    読み応え十分な700ページ超えでしたが、事件の解決は結局パスワードの解析によってもたらされるのが残念な気もしますが、それまでのマルタンの苦労を思えばもういいでしょう。

    フランス社会が大変なことになっていることもよくわかりました。

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