虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ (ハーパーコリンズ・フィクション F27)
- ハーパーコリンズ・ジャパン (2025年2月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (624ページ) / ISBN・EAN: 9784596725646
作品紹介・あらすじ
虚言症が蔓延するアメリカで、稀代の嘘つき男が
仕掛ける奇想天外なロードトリップ――
ピュリッツァー賞候補作家が放つ長編小説、待望の全訳!
オブライエン(著)×村上春樹(訳)
ある理由で一流ジャーナリストからフェイクニュースの王に転落した中年男ボイド。
カリフォルニアの田舎町でデパートの店長をしている彼は地元銀行の窓口係アンジーに
銃をつきつけ、奪った8万1千ドルと彼女を連れ逃避行に出る。
仕切り屋で喋り通しのアンジーに閉口しつつアメリカを縦断するボイドと、
彼をとりまく大富豪、悪徳警官、美人妻、殺人者――追う者追われる者が入り乱れ、
嘘と疫病に乗って全米を疾走するが……。
ティム・オブライエン、20年ぶりの長編小説。
みんなの感想まとめ
虚言症が蔓延するアメリカを舞台に、主人公が繰り広げる奇想天外なロードトリップが描かれています。元一流ジャーナリストのボイドは、フェイクニュースの王に転落し、銃を持って地元銀行から逃げ出します。彼と共に...
感想・レビュー・書評
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『オーケー、ティム、話し(ストーリー)を始めてくれないか?、私の方では、必要な資料がすでに十分用意されて、頭の中に再構築(ロード)されて準備ができている。それは例えばこれまでに私が観てきた様々な下衆なアメリカ映画(多くはコソ泥やヒモ、ヤク中、貧乏人、悪徳警官、弁護士、商人、ロビイスト、を題材としたもの)や、その中で見てきた色々なアイテム(古いアメ車や高級車、プールのある豪邸、トレーラーハウスでの生活、はたまたジャンクフード)、感じた空気感、…それらを君の語りで、再度私の頭の中で繋ぎ合わせて(ストレッチ)してくれ、楽しませてくれ、よろしく頼むよ…』
…上記は私が、この作品に感化されて、勝手に馴れ馴れしく(著作者)ティム・オブライエンに語りかけてみたフィクションである。
…先に書いた様な情景、背景、キャストで実に小気味良いテンポでストーリーが進んでいく…、この様なフィクション大作は、残念ながら日本人には書けないのでは無いかな…と思いつつ、ここ日本にいてその世界に没頭する喜びに感謝しながら、読み進める事ができた。
実はまだ600ページに渡る長編のちょうど半分、part 1、を読み終えた所なのだが、図書館の返却期限が来てしまい、続きを読み始めるのは早くても2週間先になりそうだ。
「どんなに穴を掘ってでも」(同じくアメリカ文学のピュリッツァー賞受賞大作、オーバーストーリー、からの引用)、続きが読みたくなる、最後の結末が知りたくなる、素晴らしい大作であると思う。
2025/06/20追記:幸運なことに、図書館での2度目の貸し出しが前回返却直後に始まり、本日、貸し出し期間満了寸前に後半部分、part 2を読了することができた。これから読まれる方の為にも多くは語らずおく。莫大な時間をかけて本書を読了することは、人によっては色々な受け止め方はあるだろうけれど、私にとっては決して無駄な時間ではなかった… -
一貫してオブライエンを翻訳してきた村上春樹。オブライエンはベトナム戦争から離れ、第一次トランプ政権からコロナ禍を語り、現在の第二次トランプ政権の世界、カオス、虚偽、フェイク、戦争などなどを予告している。虚言症が猛威をふるい、嘘をつくことを生業とした主人公の一貫した「誠実さ」が描かれている。後書きにあるようにシリアスな喜劇で、大勢人が死ぬわりには(というか)面白く読めるんだが、とにかく村上春樹口調が強烈。オブライエンの原文を借りた村上小説、しかもこてこてに村上春樹構文を盛り込んだバージョンを読んでいるようだ。「はてはて、さてさて」「やれやれ」「まったくもう」「わかるかしら」「なのよ」もそもそと、ろくでもない、いちおう、しっかりと、するりと、まるでXXのような…わざとやっているのだろうか?翻訳ってこういうことなんだろうか?と読んでいて混乱してくる。
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「輝かしい話、ファンタスティックな話───荒っぽく奇怪な嘘───は知性から疑問を呈されることはあっても、心には全面的に吸い込まれていくものだ。ほとんど常にメソメイニア患者たちは、自らの脆弱なエゴを補強するべく嘘をつく。自分たちの人生を、正当に得てもいない光輝で彩って。」
オブライエンは、読んだことのあるなかでは「カチアートを追跡して」がとてもこのみだったのだけれど、こちらもやっぱりとてもおもしろい。もう、たまらない。
彼の偏屈はとても神聖だ。だってそうでしょう?
自己愛性人格障害。アダルトチルドレン。そしてもちろんPTSD。現代のアラフィフ世代のかかえる精神の闇。人間の欲のもたらす疾患。
そしてつかれた数多の嘘は、まったくの嘘でないような気がした。世界は嘘にまみれているし、それを眺めていると、どうやら人びとは騙されることにも恍惚を覚えているようにおもうから。操作された 星 に群がり列をなす(「やっぱり美味しい~!」とかなんとか)。プレゼンテーションがすべて。ビジネスに誠実さは必要ない。そしてその価値観すら自分では測れない人びと。たしかに嘘はひとを救うこともあるけれど、結局それは、完璧な解決方法とはいえない。みんな、自分自身の脳みそと感性をみずから放り出しているようにおもえる。
「ちょっとした嘘が簡単に手に入るというのに、どうして失敗の危険を冒さなくてはならない?」
それに答えることのできない現代の哀しみ。この虚言の海を、うまく泳いでゆけないことの生きづらさ。信じてしまえたら、どんなに楽だったろう。
「生きる」ことのほんとうの意味。「自分らしさ」ということ真の価値。わたしは落ちこぼれのままでいい。そうやってだれかさんみたいに銃口をこめかみにあてて(もちろん比喩だけど)、その覚悟と安心感をむねに、まとわりつく喪失感と虚無感をわたしは幸せにおもう。
ぜんぜん余談なのだけれど、金持ち(それがとりわけ汚い金によって形づくられたもの)に、蝿がよくたかる、という描写をよくみるな、なんておもった。映画、『逆転のトライアングル』でもそうだったし。なかなか好き。
2025/3/31
「彼女のもしゃもしゃ頭の少年は、実際に少年だったのだ。シネマスコープによって発育を阻害された八歳の子供なのだ。その少年の反射神経は瞬間的に、自動的に幻想に飛びついてしまうのだ。そうあるべきなのに実際はそうではないものに。切望しているのに、実際には手に入らないものに。幸福と願望の深夜映画版に。」
「我々はみんな自分の『ファンタジア』を持っているんじゃないのかな?あんたも私も」
「今のぼくには・・・・・使命というものがない。高齢といってもいい。」
「「ボイド、真実というのはあなたにとって意味を持たないわけ?たとえちょっぴりでも?」
「馬鹿なことを言わないでくれ。どうして真実が意味を持たなくちゃならないんだ?」
「何故なら、真実は本当のことだからよ」
「ああ、そうかもな」とボイドは言った。「でも長い目で見てくれ。太っている、痩せている、年取っている、若い、使命がある、使命がない。長い長い時間を与えてくれ。無限を与えてくれ。そうすれば、すべては真実になる。あるいは何ひとつ真実ではなくなる。自殺に対抗する善き論証だ。」」
「ぼくだけじゃない。みんなそうさ。ぼくらはみんなそれに恋い焦がれている───ハリウッドのろくでもないファンタジーにね」
「ぼくらはみんな幻想を必要としているんだよ、アンジー。きみでさえ。ハープと光輪。生命の永続。UFOやら、アルコール入りのクールエイドやら、素敵な王子様やら、ぼくらを楽園に送り込んでくれるものをね。この地上のすべての人が──ぼくらを前に進ませてくれる何かのために、現実性をトレードにだしているんだ」
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トランプとコロナでフェイクと陰謀論に覆われた国、アメリカ
裏切りと絶望で真実なき人生を歩むと決めた主人公が、利己的な人との交わりで現実に引き戻され、生きる意味を見つけていく
著者が「虚言(ミソメイニア)の国」と化したかつての「自由の国」の末路を憂いているようで、なんとも考えさせられる物語でした
村上春樹の翻訳は最高です -
10代の頃、「外国の小説ってなんでそうなるの?みたいな展開が多くてよくわからん」と思って幾星霜。大人になって外国文学の面白さをようやく知ったのですが、この小説はあの10代の感覚を久しぶりに呼び覚ましました。なんでそうなるの?の連続。でもこれが現代アメリカなら、会話が出来ないんじゃ?と思わせられること然り。行動に脈絡がない。
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「馬鹿なことを言わないでくれ。どうして真実が意味を持たなければならないんだ?」
「ぼくらはみんな幻想を必要としているんだよ。〜〜〜この地上のすべての人がーーーぼくらを前に進ませてくれる何らかのために、現実性をトレードに出しているんだ」
「リアリティーはモンスターだ」 -
主人公はジャーナリストから転落した男が銀行強盗をして人質に若い女の子を連れて、自分を窮地に追いやった義父へ対する話。
物語自体は古臭さがある。その古臭いストーリーを、現代的な意匠をまとって作り上げている。ただ、その現代的なイコンがどこまで有効になっているのかは怪しい。あまり鋭くは思えない。ただ、会話劇が中心なので、読みやすさはある。まわりくどい言い方もたくさんするが。
翻訳が村上春樹で、「本当に原語でこうなってるのか?」と思えるほど、村上春樹的な言い回しが出てくる。人質の若い女の子がぺらぺらと喋るあたり(そしてその喋りに中年男が圧倒されて振り回されるあたり)も、むかしの村上春樹のなにかの小説を思い出す。 -
一流ジャーナリストからフェイクニュースの王に転落した中年男ボイド。
カリフォルニアの田舎町でデパートの店長をしている彼は
地元銀行の窓口係アンジーに銃をつきつけ、
奪った8万1千ドルと彼女を連れ逃避行に出る。
仕切り屋で喋り通しのアンジーに閉口しつつアメリカを縦断するボイドと、
彼をとりまく大富豪、悪徳警官、美人妻、殺人者、
追う者追われる者が入り乱れ、
嘘と疫病に乗って全米を疾走するが……。
うーん、正直読みにくくてしょうがなかった。
いわゆる村上構文がやはり肌に合わない。
内容が頭に入ってこないのだ。
前半はそれでも読み進め、面白くなってきそうな気配はあったが
もう後半はひたすら喜劇を大真面目に演じてるような、
そんな見苦しさにも似たものがあった。
この物語の良さがわからないまま終わってしまったのが何より無念である。 -
何よりもこの表紙がいちばんかっこいい。中身はまぁ、それなりに。
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原題はAmerica Fantasticaで、アメリカ万歳とも訳せるようなタイトルだが、書かれた内容を読み進めると、何が何だかわけがわからなくなる。虚実(小説はそもそもフィクションだが)が混沌として、理解が追いつかない。SNSが醸成した世間が、トランプ大統領の登場とともに現実として世界に表出し、著者はそんな現実をシニカルに、いや本気で嘆くさまを本書『虚言の国』に結実したんだと思う。
また、訳書のタイトルにアメリカという固有名詞を出さずに、“ 国 ”と普遍性を持たせたところに訳者の強い思いがうかがえる。
銀行強盗を働いた主人公の男は、その時窓口にいた行員女性を誘拐し、そのまま逃走する。逃走というより、それは旅だ。主人公が銀行強盗を働くに至った背景と、関わる人物たちの物語が並行して語られるロードノベルになっていく。主人公の心にある真実と救いが、周囲の荒唐無稽ともとれる虚言に翻弄されているよう、僕には見えた。 -
正直、ボイドとアンジーの逃走劇にフォーカスしすぎて読んでいたのか、このメインストーリーと、虚言症が蔓延する世界の噛み合い方がよくわからなかった。。。
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嘘をつかずにはおれない人たちの切ない物語
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ある日、ドゥーニーへの復讐を夢見たボイド・ハルヴァーソンは銀行強盗で9万ドルを手に入れ、窓口係のアンジーを誘拐した。
それはいつの間にかアンジーの恋人ランディーの執拗な追跡からの逃避行となる。
しかし、ボイドは本当に銀行強盗をおこなったのだったか。
ドゥーニーに復讐するのだったっけ。
そもそも、ハルヴァーソンだったか。バードソングではなかったのか。
大真面目に喜劇が進む。
緻密に描写はされアメリカのリアルな空気感は感じるが、全く現実感は伴わない。
1ミシシッピ、2ミシシッピ、ゆっくり物語が渦巻いていく。
リアルじゃないけどすごくリアル。
なんだか不思議な読書体験。 -
虚言壁のある男が銀行強盗をしてその窓口の女性と逃げることになる、それまでの禍根といろいろないまぜになって行く先々で起こるアウトローな世界。自国第一主義を掲げるアメリカの大統領や、空気のように浸透するフェイクが主題の様。何とか読んだけど印象に残る場面は少なかった。
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AMERICA FANTASTICA
アメリカに広まるミソメイニア(虚言症)という感染症、名前から経歴まですべて嘘の主人公ボイド・ハルヴァーソン、銀行、大企業と富豪。トランプとそれを生み出したアメリカ社会を風刺した小説。訳文は村上春樹っぽい文章。
著者プロフィール
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