すべての罪は血を流す (ハーパーBOOKS H210)

  • ハーパーコリンズ・ジャパン (2024年5月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784596823960

作品紹介・あらすじ

原題:ALL THE SINNERS BLEED

感想・レビュー・書評

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  • 超★5 黒人保安官が凶悪事件に挑む… 重厚な人種問題を描いた社会派警察小説 #すべての罪は血を流す

    ■あらすじ
    アメリカ南部ヴァージニア州チャロン郡、元FBIタイタスは黒人ながら選挙で選ばれた保安官であった。彼は日々街の治安を守っていたが、ある日学校で銃撃事件が発生してしまう。殺害されたのは人気のあった先生で、犯人は先生の携帯電話を調べろと言い残して自害してしまう。先生の携帯電話からは、思いもよらなかった写真が保存されており…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    超★5 今回も鬼エグな傑作、人種差別の問題をリアルに切り取った警察小説です。

    これまでS・Aコスビーは、街のギャングなど悪者目線での物語でしたが、今回は警察というヒーロー目線のお話。しかしながら中身はこれまで以上に悪逆な事件で、さらに人種差別もドギツク描ています。

    学校での事件の背後関係を調べるうちに、街に潜む凶悪事件が明るみになってゆく。主人公のタイタス保安官が中心となって、この凶悪事件の犯人を追っていくのが本書の筋立て。

    事件自体も一言では語れないくらい入り組んでいて、犯人の影がまるでつかめない。しかもあまりにも残忍な事件で、粘々しく読者の心を不快にしてくるんですよ。マジかよ、この事件… 捜査が進むうちに徐々に背景が見えてくるんですが、犯行に至った理由がまぁなんとも痛ましいし、それでも立ち向かうひた向きな保安官タイタスがもう激熱すぎて、体中がジンジンと痺れてきます。

    南部の都市、チャロン郡の描き方が臨場感に溢れてて素晴らしい。正直日本人だと縁遠い問題、アメリカにおける人種差別の歴史や環境が綿密に把握できるんです。黒人が六割のこの街は、葬儀屋、教会は当然人種で区別され、街の中心地には南部の反逆者なる銅像がある。いつも住人達が気に障るシンボルになっており、いつ暴動がおきてもおかしくない。常にこの厳しい環境で物語が綴られ、捜査をさらに難解なものにしていくんです。

    このハードな環境、つらい事件に挑む保安官タイタス。この人がヤバい。よく登場人物をカッコイイ!なんて表現したりするのですが、この人はマジ半端ねぇ。

    頭がよく知識と経験があり、ロジカルで冷静。誰よりも法を遵守して正義感を持っている。家族と恋人を愛し、市民と部下を体を張って守る、街一番の責任感のある男。それでも過去には苦い経験のあるスーパーマンではないひとりの人間。そして彼は黒人なんです… 奴隷制度が始まったここヴァージニア州で、このアイデンティティを維持するなんて並大抵の神経ではありません。

    しかもこんな条件のもと、凶悪事件に立ち向かっていく。私ならすぐに逃げ出しますね。是非この男の情熱を味わってほしいです! ちなみに表紙のカッコイイ写真、保安缶バッチをさわっている…読んでいただければわかりますが、クールすぎて漏らしました。

    本作もやってくれたS・A・コスビー、悶絶必死の社会派警察小説。まぁ私的には控え目に言って今年の必読書ですね。素晴らしい一冊でした。

    ■ぜっさん推しポイント
    間違った信念ほど恐ろしいものはありません。一方向だけの結論を重視して、途中の議論や手段はどうでもよくなってしまう。

    こうなると正義感は歪んでいき、さらに発展すると行き過ぎた道徳や価値観の押し付けになる。そして最終的には法律をも度外視する。

    我が国日本においても、いまだ様々な差別があるし、格差社会は解消しない。ネットでの中傷程度であればまだましで、こんな大きな事件が発生しないことを願わずにはいられませんでした。

  • S・A・コスビー『すべての罪は血を流す』ハーパーBOOKS。

    『黒き荒野の果て』『頬に悲しみを刻め』に続くS・A・コスビーの3作目。海外ミステリーの場合、邦訳タイトルは大切だ。S・A・コスビーは、興味がそそられる格好良いタイトルで非常に得をしているように思う。

    白人保安官補による黒人被疑者の射殺というデリケートな問題と人種差別の狭間で、黒人コミュニティからは白人のようにふるまう黒人の蔑称の『オレオ』呼ばれながら、連続殺人事件に挑む黒人保安官タイタス・クラウンが奮闘する姿を描く。

    今年になってから読んだ海外ミステリーではベスト1であることは間違い無い。


    ヴァージニア州チャロン郡のジェファーソン・デイヴィス・ハイスクールで教師のジェフ・スピアマンが銃撃される。現場に駆け付けた元FBI捜査官の黒人保安官タイタス・クラウンは容疑者の黒人青年ラトレル・マクドナルドに銃を捨てるよう説得に当たるが、ラトレルは「先生の携帯を見てみろ」という言葉を残し、白人保安官補に射殺される。

    タイタスがこの事件の背景を調査すると射殺されたスピアマンの携帯電話から彼と加害者のラトレル、革の狼のマスクを被った男による黒人の少年少女たちへの虐待の画像が発見される。さらにはスピアマンの自宅から見付かったUSBメモリには少年少女たちを拷問し、殺害する動画が保存されていた。

    タイタスは画像や動画を手掛かりに殺害された黒人少年少女たちの遺体を探すと、私有地の柳の木の下から7体の遺体が見付かる。タイタスは革の狼のマスクを被った3番目の男の正体を突き止めるべく捜査を進める。

    しかし…………

    定価1,450円
    ★★★★★

    • 土瓶さん
      おおっ!!
      退院おめでとうございます\(^o^)/
      お身体お大事に。

      この著者の本、いつか読んでみたいな。
      おおっ!!
      退院おめでとうございます\(^o^)/
      お身体お大事に。

      この著者の本、いつか読んでみたいな。
      2024/05/27
    • ことぶきジローさん
      ありがとうございます。コスビーの3作はお勧めです。
      ありがとうございます。コスビーの3作はお勧めです。
      2024/05/27
    • 土瓶さん
      お勧め、お勧め。
      ( ..)φメモメモ
      お勧め、お勧め。
      ( ..)φメモメモ
      2024/05/27
  • どうやらS.A.コスビーは傑作しか書かないらしい

    すでにご存知のことかと思われるが、今年は2024年だ
    つまりイエス・キリストが生まれてから2024年(あるいは2028年)たっているということだ

    そろそろ神はこの世界に無関心だということに気付いてもいい頃合いではないだろうか

    どんなに祈っても戦争は終わらないし、どんなに祈っても差別はなくならないし、どんなに祈っても大切な人は奪われていく

    そしてどんなに祈っても天使たちは助けに現れてくれそうにない

    それともまだそれも神の計画の一部だと信じろというのだろうか

    S.A.コスビーが描いた主人公タイタスを突き動かすのは神の教えではなく、公平な世界を実現しようとする人たちの意思だ
    窮地に陥った彼を救うのは天使の囁きではなく、彼を愛する人たちの想いだ

    人の心に巣食う悪魔と対峙するのは神ではなく、人なのだ

    • ひまわりめろんさん
      本気の人たちにめちゃくちゃ怒られそうだけど、聖書ただの世界的大ベストセラー小説説を提唱したい
      本気の人たちにめちゃくちゃ怒られそうだけど、聖書ただの世界的大ベストセラー小説説を提唱したい
      2024/06/13
    • 1Q84O1さん
      となると、世界的大ベストセラー小説第二位はコーラン?
      となると、世界的大ベストセラー小説第二位はコーラン?
      2024/06/14
    • ひまわりめろんさん
      そーやん
      そーやん
      2024/06/14
  • S・A・コスビーが描く物語の主人公はやっぱりカッコいい

    本作の主人公はヴァージニア州の群保安官タイタス

    タイタスは就任一周年の記念日にショッキングな銃撃事件に巻き込まれる
    そして、そこから凄惨な殺人事件が続いていく

    連続殺人事件だけではなく、南部の人種差別問題も大きくのしかかってくる
    奴隷制が廃止されているこの地でも今だに差別意識は残っており、白人至上主義も勢力を伸ばしている

    タイタスは保安官であり黒人であるという二重の制約を受けながら難しい捜査に臨んでいく


    そんなタイタスの一番の武器は信じる気持ち

    「おれは怖くない。心配はしているけど、怖くはない。犯人を必ず捕まえることがわかっているから。おれは自分と同じくらい部下たちを信じている」

    だけど、ほかの誰を信じるより、自分を信じて突き進むタイタスがカッコいい!

    • 1Q84O1さん
      ひま師匠

      理想の上司左遷です〜
      ひま師匠

      理想の上司左遷です〜
      2024/07/12
    • かなさん
      信じられる部下がいない人はどうしましょ??
      私部下がいないんですけどぉ…
      自分を信じるしかないんですかねぇ^^;
      信じられる部下がいない人はどうしましょ??
      私部下がいないんですけどぉ…
      自分を信じるしかないんですかねぇ^^;
      2024/07/13
    • 1Q84O1さん
      かなさん

      それはですね…
      えーっとですね…
      仕方ないですね…(;^ω^)
      自分を信じましょ!w
      かなさん

      それはですね…
      えーっとですね…
      仕方ないですね…(;^ω^)
      自分を信じましょ!w
      2024/07/13
  • いやー、面白かった。
    もちろん昨年このミス1位をかっさらった『頬に哀しみを刻め』の皮肉とユーモアの効いた会話、何を差し置いてもの家族愛の物語も面白かったが、自分的にはこのザ・南部アメリカ物語がこれまでのコスビー作品の中で一番刺さった。

    ヴァージニア州の田舎町チャロンの元FBI捜査官の黒人保安官タイタスが就任1周年を迎えたとある日、町内の高校で銃発砲事件が発生。
    誰からも信頼を寄せられるスピアマン先生が撃たれ命を失う。
    犯人はタイタスの親友の息子ラトレル。
    ラトレルは駆けつけた警官達に降伏する素振りも見せず、むしろ迫ってきたことで射殺される。
    残した言葉は「(スピアマン)先生の携帯を見てみろ」。
    その後、その携帯、スピアマン宅で発見される怖気が走るほどの悪事の証拠。
    そして発砲のタイミングが早すぎたのではないかという疑念。
    被害者のスピアマンは聖人などとは程遠かったのではないか、ラトレルはむしろ犠牲者なのではないか。。。

    何と言っても毅然として悪事と対峙するタイタスがカッコ良すぎる。
    現実世界ではどうしたって甘えや自己欺瞞が発生してしまう「正義」をど正当に貫き通す姿。
    黒人であることの逆風や世間からの視線も物ともせず、時に融通が利かないとすら思える窮屈な法律も遵守しつつ、ただただ自らのできる正しきことを推し進める。
    こういう「強さ」を感じられる物語を読むと大いに勇気づけられるし、少しでも自分ができることをやろうという気にさせられる。

    ただそんなタイタスの姿勢は過去に対する贖罪の意識から。
    必要以上とも思える、全てを背負おうとする心情に痛々しさを感じることも少なくない。
    自らを律する気持ちを支えきれず、立っていられなくなりそうなときに寄せられる父親、弟との家族愛修復の展開もまたうるっとくる。

    またしてもエドガー賞候補となった本作、現地ニューヨーク・タイムズに絶賛のコメントを寄せたのはデニス・ルヘイン。
    これ以上にない程の適評者。
    あー、ルヘインも読みたくなってきたー。

    このミス2025年度版7位。

  • 黒人差別の残る南部の町。
    元FBI捜査官のタイタスが
    故郷であるチャロン郡の保安官となって一年、
    ハイスクールで教師が銃殺される事件が起こる。
    その事件をきっかけに、平凡だった町に次々と
    おぞましい出来事が。。

    正直、黒人差別の問題やキリスト教に関して
    どれだけ理解しようとしてもしきれない部分はあるけれど、それを上回る物語のおもしろさに
    最後までグイグイと引っ張られ読了。
    文章が時にロマンチックだったり、
    格言的な台詞に説得力があったりと
    印象的な箇所が多かった。

    主人公はたくさんの苦悩を抱えながらも自分を律し
    犯人逮捕に向け、なんとか前に進む。
    その姿が痛々しく切ない。
    彼の家族を含め、その先の人生に幸あれ!
    と願ってしまう。

    以下、気になった箇所

    おもな登場人物以外の、その他の人物が多すぎて
    名前のメモは必須。
    この人は黒人、はたまた白人?と迷う場面も多く、
    この作品については大事な所なので
    もうちょっとわかりやすかったらもっと良かった。


  • 黒人保安官が主人公で、殺人事件を捜査する中でまだまだ人種差別が色濃く残る南部で苦悩する物語、渋くて良かった。

    主人公は母親が死んでから神を信じなくなったにも関わらず、セリフや地の文でも聖書からの引用がそこら中に挟み込まれる。
    このやり取りがカッコイイです。
    否定しているのにほぼ暗記してるし、間違いを指摘してやり込める会話劇も新鮮で楽しい。
    キリスト教圏の会話ってほんとにこんな感じなのかな、だとしたらかっこよすぎる。
    犯人との聖書引用問答も印象に残った。

    前作はアクション映画みたいだったけど、今回はサスペンス寄りかな。
    面白いし、アクションの迫力、登場人物たちとのやり取りのスリリングさはあるのに爆発力はなかったかな、最後に南部連合の像を引き倒すような場面が2箇所くらいあれば最高だったかも。

  • S・A・コスビーの二作品目。前の「頬に哀しみを刻め」とはまたぜんぜん違うタイプの主人公で警察物になるが、こちらもよかった。人物や舞台となる街、歴史背景などが作り込まれていて、ずっしりとした読み応えがあった。

    高校での銃撃事件を発端に明らかになる闇は深く、凄惨すぎる。黒人差別や宗教が絡み、主人公タイタスも黒人として、保安官として様々な葛藤を抱えながらも事件に臨む。どうやら過去のFBI時代のトラウマもあって、それが現在の立ち位置に大きく関係している様子。そんなタイタス自身の人間関係や背景も描きながら、事件の真相は複雑かつ重層的な様相を見せていく。

    人種差別や暴力、悲惨な事件による重さがあるにもかかわらず、読ませるのはそれだけ著者のストーリーテリングが上手いとうこと。特に終盤の黒幕との対立場面はすごい緊迫感を感じながらも没頭した。
    ラストのタイタスの行動も爽快さがあってよかった。

  • S.A.コスビーの3作目。
    今作は前2作のノワールから変わり、ゴリゴリの警察小説。

    舞台はアメリカ南部の街。拳銃を所持した黒人の高校生を、保安官たちが射殺する。高校生は殺される直前、先生の携帯を見ろと言い残す。教室では教師が殺されていた。この街初の黒人の保安官タイタスは殺された教師の携帯を調べるが、中には目を背けたくなるような残虐な映像が残されており。。。

    いくらなんでも前作「頬に哀しみを刻め」より面白いことはないだろうと読み始めたが、すみません、軽々と超えてきました。
    正直物語のまとまり方は前作の方が上だけど、今作の警察小説としての手堅さ、完成度は圧倒されるほど良かった。

    アメリカ南部の人種差別、独特の宗教感がこれでもかと言うほど描かれており、黒人保安官タイタスの非常に難しい立ち位置がわかりやすい。
    若干、ラストが駆け足気味だったが、面白さは抜群だったため、今年を代表する翻訳小説になると思う。

    というか、5月と6月は本作に加えウィタカーの新作、ボルトンの10年ぶりの新作、クレイヴンの新シリーズと、とんでもない豊作で嬉しい悲鳴。

  •  一作目『黒き荒野の果てに』もパンチ力があったが、『頬に哀しみを刻め』は文句なしの凄玉だった。白人と黒人の双方とも息子を殺された父親というダブル主人公。しかも息子たちの関係はホモセクシュアルであったという、社会的受難を二重三重に受けた中年二人が、人種の壁を乗り越え協力して犯罪者であり差別主義者である連中と闘ってゆくあまりに胸アツの作品であった。毎年一作ペースで、今年も例によって一作、そして毎度のことながらテーマは人種間の軋轢、差別、そしてそれが起こす犯罪である。しかし、本書は一つの犯罪だけではなかった。読者は、ある街の過去にまで遡る犯罪の犠牲者たちの堆積、そして現在も起こる山のような人種差別の暴力に対峙しなければならないのである。

     本書は黒人警官タイタス・クラウンのまずまずの日常が、事件の勃発によって破られるところからスタートする。現場に駆けつけると、高校で白人教師を射殺した黒人青年が警官たちに包囲され、うち一人の発砲によって射殺される。いつもの通り劇的な幕開けだ。

     しかし射殺された白人教師の携帯電話に遺されたビデオには陰惨な殺人動画が遺されており、多くの黒人たちが惨殺されその死体が隠され埋められているという大事件に発展する。動画に映っていたのは複数の名のある人間たちで、それを捜査する保安官が黒人主人公であるタイタス。彼はFBI出身の優秀な人材だが、この町で黒人保安官であるゆえに敵も多く、陰湿な攻撃に晒されつつの捜査という苦境の中で孤立しつつ闘う運命となってゆく。

     捜査を進めるうちに数人の隠れ差別主義者による暴力が明らかになってゆく。土の下から掘り起こされる複数の黒人児童たちの亡骸。動画に映っていた黒人の子供たちの虐待と殺人のシーンなどから、三人の白人が浮かび上がる。うち一人が射殺された教師だったことに町は揺れ動く。尊敬される教師であった人物が実は黒人児童を殺害して動画に撮るような男であったのだ。

     黒人警官であるゆえに差別や暴力と闘わねばならない構図。コスピーが前作でも前々作でも書いてきたテーマである人種差別と、そこから生まれる暴力。人間というよりも野獣のような残酷さ。そして社会がそれを更生し切れずにいるアメリカ南部という隠された地獄。それらを今なお描き出し、闘おうとする作者並びに主人公の保安官。どうにも落ち着きどころのないテーマを描いて三作目。

     本書は初の警官主人公というど真ん中のヒーローを軸にして、街を揺り動かす連続人種差別事件、そして埋もれていた山ほどの殺人事件の発掘というところまで繋がる人種差別組織の存在。KKKを思わせる差別と犯罪という永遠の命題に取り組み続けるコスビー作品三発目であるが、これまでで最も正面切った構図であること(FBI帰りの黒人保安官が主人公となって真向犯罪と対決というのはいつものコスビーらしくなく、全体に平坦なイメージ過ぎたか)、また犠牲者があまりに多すぎること、残酷過ぎることなどから、やり過ぎの評価を免れることはできないような気がするが、そこを気にしない方にはコスビー節が心地よいのかもしれない。ぼくは、ここまで過酷な作品だと、罪の深さもあまりに不快過ぎてちと読みづらかったというのが本音のところです。

  • ヴァージニア州の高校で教師が銃撃され、容疑者の黒人青年が白人保安官補に射殺された。人種対立の残る町に衝撃が走るなか、元FBI捜査官の黒人保安官タイタスは捜査を開始する。容疑者は銃を捨てるよう説得するタイタスに奇妙な言葉を残していたのだ。「先生の携帯を見て」と。被害者の携帯電話を探ると、そこには彼と“狼”のマスクを被った男たちによる残忍な殺人が記録されていた――。

    ややキツイ描写もあるが、抜群のリーダビリティ。

  • アメリカ南部の田舎町チャロン郡で保安官を務める黒人タイタス・クラウンが主人公。ある日、町の高校で人望厚く評判の良い教師ジェフ・スピアマンが被害者となる銃乱射事件が起こる。犯人は高校の卒業生である黒人青年ラトレル。彼は現場に駆けつけたタイタスを長とする保安官チームによって射殺される。ラトレルは殺される直前、妙な言葉を口にする。「先生の携帯を見ろ」スピアマンの遺品の携帯電話のデータを探ると、町の子どもたちが被害に遭う凄惨な連続殺人事件が明らかに。加害者は3人。ラトレル、スピアマン、そして狼の面を被った謎の人物。タイタスは事件を追う……。

    コスビーやっぱり面白い!最初から最後まで追い詰められるような焦燥感、緊迫感。ページを捲る手が止まらない。
    人種差別根強いアメリカ南部で黒人が保安官を務めるという難しさ。小さな町に蔓延る差別、暴力。息苦しい。
    今作は宗教もテーマに絡み、聖書からの引用がピンとこないところも多かったが、それを抜きにしても面白かった。

  • 過激で悲惨な場面が多すぎてなかなか読み進めなかった。それにしても、差別意識の改善されなさに、改めて自分の胸に問いかけたい。

  • アメリカバージニア州の高校で教師が銃撃され、現場からさ迷い出た黒人少年も保安官に射殺された。少年は教師殺害の犯人とされるが、調査していくうち隠されたおぞましい犯罪が明るみに出る。黒人奴隷を使っての農場経営の歴史のある土地。いまだに続く白人と黒人の対立感情。この事件の根幹はそこにあった、と見た。

    探るのは元FBIにいたがある事件で故郷の戻り保安官となった黒人のタイタス。正直で正義感あふれる女性にも平らに接する人物設定。事件が渦をまくように広がりでる筆致。登場人物が多く、人物一覧はもっと人数をふやしてほしい感じだが、ページが進むにつれ読む手がとまらなくなる。

    ちょっと映画「死刑にいたる病」を思い起こす。

    S.A.コスビー:1973バージニア州生まれ
    ・2018「The Grass Beneath feet」(短編)をオンライン雑誌「TOUGH」に発表し注目される
    ・「My Darkest Prayer」長編デビュー 未邦訳
    ・「黒き荒野の果て」2022.2ハーパーブックス
    ・「頬に哀しみを刻め」2023.2ハーパーブックス (このミス2024年度版 海外1位) オバマ大統領が23年の読書リストにあげた。

    2023発表
    2021.5.20第1刷 図書館

  • 一切容赦のないグロ描写、緊迫感のある展開、まるで海外ドラマを見ているかのような満足感‼︎

    近年、日本でも田舎での閉塞感や近所問題について話題に上がることが多いが、本作の舞台であるヴァージア州チャロン郡はその比ではない。
    黒人差別が根深く残る地域で黒人初の保安官として暮らす主人公タイタスは、様々な人々に囲まれながらも冷静沈着で良きリーダーとして働く一方で誰にも話していない秘密に対して罪悪感を抱えて生きており、今回の猟奇的な事件を追っていく中で少しずつ心が蝕まれていくことになる。

    タイタスに救いはあるのか、次は誰が殺されてしまうのかとヒリつきながら読んでいたが、非常に満足のいく結末だった。

  • ・あらすじ
    アメリカヴァージニア州が舞台。
    未だ人種差別が色濃く残る南部の田舎町チャロン郡で保安官をしている元FBI捜査官タイタス。
    ある日高校で銃撃事件が起こる。
    加害者の黒人男性はその場で射殺されるが、被害者の携帯電話にあったSDカードから加害者と被害者、そして狼のマスクを被った男たちが黒人の少年少女達を拷問殺害しているスナッフフィルムが発見される。

    ・感想
    流石のコスビー、面白くってあっという間に読み終わってしまった。
    1970〜80年代の話なのかと思いきや2000年代が舞台ということで少し驚いた。
    南部の人種差別というのはここまで根深いものなんだと些細な描写で実感させられた。
    私はアメリカ南部には行った事ないし小説やドラマでしか触れたことがないから勝手な憶測?だけど2000年代にはもうちょっとマシになっているかと思ってたわ。

    法律に則り公平・公正であるために常に自分を厳しく律しているタイタスだけど、その信念のためにどの立場の人間からも煙たがられていたり…。
    ずっと自分を律してきていたからこそ、最後チャロン郡を旅立つ時に【南部の反逆者 ジョー】という差別の象徴である銅像を引きずり倒して笑う描写にはとても爽快感があった。
    タイタスには穏やかな余生(?)を送ってほしい…。

    犯人予想に関しては邪道な方法(登場人物一覧の消去法。「こいつ登場人物欄にいる割に全く話に出てこないな?」とか思いながら)絞り込んで読んでたw
    犯人の家に突入するシーンから最後の戦闘シーンまでは手に汗握る描写で痛々しくもハラハラしっぱなし…犯人発覚の段階で残りページがほぼ無かったからどう決着させるのかと思ってたけどサクサク進んだ。

    南部の強烈で強固な信仰心は私みたいなふんわりテキトーな信仰心(無宗教とは思ってない)しか持ってない人間にはちょっと理解できないところもある。
    だからタイタスの「犯人を神格化してはいけない」「悪魔も神もなくただの人間」だというリアリストな部分は読んでて共感した。

    コスビー作品はまだ黒き荒野の果てが未読なのでこっちも早く読みたい。

  • 構図がわかりやすいんと疾走感はある。

  • 元FBI捜査官だが、訳あって退職、今は故郷の町で保安官をしているタイタスが主人公。ヴァージニア州の根強く黒人差別が残る保守的な町なのだが、そこで高校教師が元生徒に銃殺される事件が起きる。加害者が黒人、被害者が人望のある白人であり、町に不穏な雰囲気が広がる。さらに事件の裏には残虐な秘密が隠されていた。
    人種対立が浮き彫りになる描写は、特に南部に顕著なのだろうけど、暗澹とさせられる。そもそも真犯人自体が、この町の暗部から生み出されたものだろう。タイタス自身や周囲の描写に比べ、事件の方は犯人を異常な者と単純にとらえてあまり深掘りしてないところがちょっと不満かな。

  • アメリカ南部で保安官として働く黒人のタイタス。町の学校で銃撃事件が起き、人気のあった教師が殺害される。犯人は射殺されるが首謀者が他にいるのではと捜査が始まっていく。これをきっかけに連続殺人へと発展していく。ひとつの町で起きた凄惨な事件とともに描かれていくのが黒人への差別。その根深い問題が町の人々や事件の中に大きな影響を与えていく。常に緊張感があって犯罪小説としての面白さが存分に詰まった作品。

  • S.A.コスビー邦訳3作目。月並みな言い方やけど、裏切らない作家だなぁ。残酷描写の好みは分かれるが(俺は正直苦手)そこを差し引いてもすごいサスペンス警察小説。

    良くも悪くも典型的なアメリカ南部の小さな町チャロンで、人望篤い白人教師が黒人の卒業生に殺害される事件が起こる。現場に居合わせた黒人保安官タイタスは事件の陰に大きな事件の糸を引く黒幕の存在をかぎつけ捜査を始める。

    残酷描写もエゲつないが、根強く残る差別と旧態依然(伝統的ともいう)な信仰心が同居する人間の矛盾描写がまぁエゲツない。保安官タイタスの正義は分かりやすいが、差別主義者たちも自分たちの信じる正義をもって行動しているという皮肉。ストレートな勧善懲悪の物語に終息するはずが、自分の信じる正義は本当に正しいのか?という疑問を持った時、小説だけでなく自分自身に疑問を持ってしまう。深いし辛い。

    主人公タイタスがジョー・ピケットと共同戦線を張るような物語を読んでみたいなぁとか思ってしまった。

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