レディ・ジョーカー〈下〉

著者 :
  • 毎日新聞社
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本棚登録 : 1229
レビュー : 136
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620105802

感想・レビュー・書評

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  • 上巻は辛かったが下巻は夢中になれた。ラストシーンのちょっとカラーな映像が残り、半田が守りたかった人達が一緒になって生活してる後味は悪くない。グリコ森永事件を題材にした企業、新聞社、警察、検察、政治、裏社会もろもろ詳細に繋がるスケールの大きな話でした。満足したが、照柿を読んだはずなのに面白かった印象はあるが内容をまったく覚えてない自分にびっくり。クリスマスイブはどう過ごしたんだろなー!

  • なんとなくすっきりしない…。でも、世の中ってそうだよね、と言ってしまう何かがあった。

    合田さんと加納さんが意味深すぎて色々想像してしまった…。

  • 文庫と比較のため読了。終章は文庫とは全然違っていてびっくりだったんですが、花とか後輩の話とか文庫にはなかったエピソードもあってこれはこれでよかったと思う。
    合田さんと義兄の関係は単行本の方が合田さんが義兄に寄りかかっている感じがよりしたかなぁ。
    加納さんが…こんなに弱く脆い面を見せていたのか…というのがびっくり。
    どんどん狂ってゆく半田とそれと呼応するように破滅してゆく合田さんに引き込まれ、インフルエンザのような巨悪に横たわっている何者にもなれない私達はどう生きていけばいいのか…。
    身につまされる想いでいっぱい。

  • 上下巻合わせて一体どこが一番の山場だったの?と思うほど終始、淡々としていた。多くの登場人物が無気力なオーラを全身にまとっていた為かもしれない。
     全体的にやはり難しい。世の中の仕組みを全然わかっていない自分がいけないのだが、経済・警察・マスコミ・暴力団などなど世の中思いもしないところで因果な関係があるのだなと勉強になった。
     まとめると、難しかったがその分勉強になったなと。思う。ストーリーも引き込まれるものがあったしね。

  • 多方面に広がった事件があらかじめ織られていた布の一端だったかのように、きちんと収束したのがさすが。いい小説です。

  • 私にはちょっと難しすぎたかな・・・
    「レディ・ジョーカー」による犯罪自体よりも
    その裏を利用した闇社会とかのドロドロ感は、
    それはもうたっぷり伝わってきます。

    初めての高村作品でしたが、
    もうちょっと大人になってから読もうかな、と思った。
    (注:十分、大人ですがw)

  • 普段笑顔で軽口を叩きながら日常生活を平凡に送っている人がいる。その人はヒッソリと心に闇を抱えている。時々疼く欲求を邪魔だと都度追い払うものの、それらが自身の内部で蓄積し、発酵し、腐っていても気づかない。腐りきった欲求は一つの固まりとなり矛先の定まらない怒りへ変化する。矛先が定まらないからとりあえず社会へ復讐してみようとする。ちょっと世間を騒がせてみたい、といった悪戯レベルから、綻びにつけ込んでたっぷりと稼いでやろうといった悪意レベル。闇の深さは様々だ。ただそれを抱えたもの達が偶然化学反応を起こした。その結果がLJだったのだと思う。

    物理的条件がそろっていたわけでもない。人間の感情が引き起こし、人間の感情が揺さぶられ、人間の感情が崩壊した。全ては人間の感情の上に起こった現象だった。恐ろしいのは事件そのものでない。普段隠れて表に決してあらわれることのない個人が心の奥底に抱えている闇こそが、事件の原子のような分子のような存在だったのだ。LJはあらゆる人間の感情を揺さぶり、生き方を問い、価値観を問い、膿を出した。社会の膿もしかり、個人の膿をも。

    合田と半田、互いを鏡にして何を見ていたのだろうか。彼らは同じ組織に属し、同じように組織の中で個人を埋没させ、無理やり折り合いをつけようとし、それができなくて自分を殺し続けていた。その点全くの同志だ。とすれば、本来は同じ苦しみを分かち合えるはずの人間同士だったはず。なのに何故互いを憎しみのターゲットにしたのか。

    合田は組織を恨みながらも刑事でありたかった。組織の中の一刑事でなく、本質的に刑事でありたかったのだと思う。そして刑事になるための手段として半田を選んだ。そして半田は組織を、果ては社会を恨んでいた。恨みを晴らす手段として、同じ組織の一員である合田を選んだ。

    お互い目的を達成するための手段として利用しあったということか。なんて残酷な話だろうか。合田が白、半田が黒。決して混ざり合うことはない二色。自分が信じた生き方を肯定したいがために、一方を抹消する必要があったということか。自分自身の影のような存在を抹殺することで完璧になりたかったのだろうか。

    企業はただの幻想、ただの人間の欲望の集合体。繰り返しそう書かれていた。たしかに企業理念という薄皮をかぶり、中には皮をいつでも突き破って噴出しそうな人間の感情が押し込められている。忍び寄る悪が常に狙うのは、城山や、杉原のように、薄皮から透けて見えている感情の部分だ。立派なビルがそこにあり、その中で何千人の人間が働いていようと、企業とはやはり実態のない幻想なのだと思う。欲の集合体、総会屋、政治家。これらが繰り広げる終わりのない不毛なゲームには反吐が出る思いだった。

    それでもやはり、人間の集合体に対する興味はつきない。更に私はその一部になることを欲している。なぜなら大勢の人間の感情が同じ方向を向いたときのエネルギーは想像をはるかに超え、そこに希望を見出すことができるからだ。企業の弱さ、脆さ、不条理さ、社会への裏切りをあれだけ見せつけられながら、まだ自分に企業という形への興味と希望を抱かせる。つまりこの作品はそれほど単純ではない。

    物井とヨウちゃん、そしてレディは、悪の手にかかることなく東北の田舎で”天国”を築いた。それが実現できたのは莫大な金の前に揺らぐことの無い価値観もさることながら、半田のおかげかもしれないと思う。半田が守りたかった人々は半田によって守られたのだ。物井は自分に悪鬼を飼っていることを知っている。おそらく”天国”に土足で踏み込むものが現れたときは、その悪鬼を躊躇いもなく放ち容赦なく排除するのだろう。まるで番人のように。大事なものを守るためにだけ悪になれる。その強さを手に入れたのかもしれない。

    合田は生まれ変わり、誰かに必要とされること、そして必要とすることを知った。今まで彼を見守ってきた読手に与えられたカタルシスは相当なものだ。なぜなら皆知っていたのだ。彼のグルグル思考はいつでもシンプルに生きることを邪魔していたのを。その思考がようやくリセットされた。そして己の欲求をすんなり受け止めた。よかったな合田!早く加納のもとへ行け!

    一皮むけた合田の次なるステージに期待が高鳴る。またどうせグルグルと悩むんだろうけど。

    そして...次回こそはしっかりと愛し合ってほしい!

  • 崩壊への道はどこにでもあるのだろうか。合田しかり、加納しかり、半田しかり。著者特有のがっちりとした骨太な文章で、人間が普段見せることのない深い深い暗部を覗き込むと、一気に体力が持っていかれる。なんというか、ずっと先が見えない道を走りつづけていたつもりなのに、実は目の前にある壁をひたすら蹴りつづけてた、みたいな。正直に生きるためには、この社会は少々つらいものがある。
    合田にはなんだか底知れぬ不安定さを感じた。そして、加納も実はひたすら隠しつづけていた。なんだかすごく、弱い人間だらけだと思った。でもその弱さが人間たるものなんだと思った。
    最後のシーンは緊迫していた展開からほっとひと息つくことができた。物井とヨウちゃんとレディは、この先静かに暮らしていってほしいなあ。

    (889P ※上下巻)

  • 最初はとっつきにくかったけど、読めば読むほど面白くなってきた

    バラバラの歯車がかみ合い大きな歯車が回り始める
    そんな物語にドキドキする

    きっかけの一つは息子の死。孫の死。だったかもしれない
    レディ・ジョカーと名乗った彼らがしたことは勿論認められるものではない。
    だけど
    平気で人を脅し
    人を殺す
    しかし、そのことを追求もされず
    裁かれもしない
    そんな人たちが野放しになっている
    …のだとしたら
    正義はどこにあるのだろう






    本編が面白かったのは勿論
    加納と合田の関係に途中からドキドキしながら読んでしまいました(^_^;)

  • 高村薫さんにダダハマりしたきっかけの一冊


    グリコ・森永事件を下敷きに書かれた企業恐喝事件の話で
    様々な「組織」の内側に巣食う闇がぎちぎちと描かれています

    <<犯人グループ>><<一兆円企業>><<警察>><<マスコミ>>の四つの視点を主軸として
    夥しい数の登場人物それぞれの情念が入り乱れ
    そこに被差別部落問題や地検・株屋・永田町まで絡み出してくるので
    もうそのボリュームたるや胃もたれするほどに凄まじいのですが
    全ての駒が出揃って物語が回り出す下巻に入ってからのスピード感は本当に爽快でした


    その緻密な硬筆 と 骨太な題材 から
    「とても女性が書いたとは思えない」と評されることの多い高村さんですが
    時々ふと女性にしか書き得ない描写が光っていたり
    独特な句読点の打ち方による不思議な読みやすさが滲んで見えたりして
    読みながらハッとさせられる瞬間も多かったです
    文章に美や技を求める人ではないし 比喩も独特でねちっこいし
    好き嫌いは激しく分かれる筆だと思いますが
    人物の心情の移り変わりに言葉を与えることにかけてはズバ抜けて長けた人だと思います


    ちなみにこの本は"合田雄一郎シリーズ"の三冊目
    つい最近文庫版も出版されました
    高村さんは文庫化の際に大幅な改訂をすることでも有名な方なので
    単行本を制覇したら読み比べしてみたいと思います

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著者プロフィール

高村 薫(たかむら かおる)
1953年大阪市東住吉区生まれ、現在大阪府吹田市在住。国際基督教大学教養学部人文学科(フランス文学専攻)卒業。外資系商社の勤務を経て、作家活動に入る。
1990年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞、1993年『マークスの山』で直木三十五賞、1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞、2016年刊行の『土の記』では大佛次郎賞、野間文芸賞、毎日芸術賞をそれぞれ受賞し、新たな代表作となった。
『レディ・ジョーカー』を境として、重厚な社会派ミステリーから純文学に転向。織田作之助賞選考委員を務める。

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