新宿鮫風化水脈

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620106151

感想・レビュー・書評

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  • 今回の鮫島は云わば忍耐の男だ。“静”の新宿鮫である。それは作者が「時の深み」を底流に物語を紡いでいるからだ。
    新宿鮫Ⅰの頃から出ていた真壁を核にし、これまでの集大成として本書を書いた事は疑いない。当初ギラついたバイプレイヤーとして出てきた真壁をこんな風に鮫島と対峙させるとは誰が予想し得ただろう。私自身、丁々発止の大攻防戦を考えていただけにこれだけじっくりと味わい深い物語を展開させられるとはいい意味で裏切られた。
    そして雪絵の母と大江の物語…。
    最後の、機動隊の奏でる喧騒をバックに駐車場の詰所で静かに語らう鮫島と大江。サイレンとパトライトの只中でそこだけ音の消えた世界で見つめ合う雪絵の母と大江。静と動が織り成す大人の時間の味わいが、この上なく美味であった。
    傑作。

  • 本屋で新宿鮫の最新刊が平積みされてて、懐かしくなり一番記憶が新しかった「風化水脈」を再読。学生時代めっちゃ好きだった新宿鮫。特に「風化水脈」は真壁がすごい印象に残ってた。今読み返してもかっこいい。晶の成分が少ない!とも当時も思ってた。笑
    今となっては時代の変化を感じる。殺人事件の時効も廃止されたし、マイルドセブンはもう無いし。新宿の街並も多分違うはず。事実は小説より奇なり、というけど世界の変わりように小説の人物が適応するのも大変だね。

  • 真壁かっこよすぎだろ。伏線全てをしっかりと回収するところ、当たり前だけど大好き。後半部分で点がどんどん線になってくとこすごく読書の気持ち良さが味わえる。自分が読書ではなく登場人物になってしまうヒリヒリ感もバッチリ!他のシリーズも読むどぉー

  • 新宿鮫シリーズで、初めてちょっと泣けました。
    今回の7作目はやたらと新宿の歴史や警察の体制などの説明が多くて、いつもと違うかなーという印象でしたが、ラスト、よかったです。
    登場する老人も女性も芯が強くて憧れてしまいます。
    面白かったし、感動もしました。

  • 新宿鮫シリーズで、何作ぶりかにいいものを読んだ、と思えた。地勢学的な追求のプロセスがストーリーの進展に重なり、味わいの深さではシリーズ中、出色。タイトルがピタッとはまり、鮫シリーズの再浮上に安堵した。

  •  ご存知、かどうかは分かりませんが、「新宿鮫」シリーズもこれで7作目。個人的には5作・6作と直木賞受賞後の2作にちょっと質落ちを感じて不満だったんですが、本作はちょっと復調の兆しありかな。ところで、このシリーズってどの程度ポピュラーなんでしょうか?たしかシリーズものとしては初の直木賞受賞(4作目「新宿鮫無間人形」)だったはずだから、それなりに評価はされているんだろうけど。
     このシリーズを全然知らない人の為に簡単に紹介しておくと、これは「新宿鮫」と呼ばれる、わけあって警察内部でも孤立した一人の刑事を主人公にした小説です。もちろん舞台は新宿。本当に簡単に(笑)。
     さて、本作の特徴を挙げるとすれば、きっと新宿という街に対するこだわりのようなものを改めて主要なテーマとしている事でしょうか。事件捜査の中で過去を洗い出す作業をしていくと、そこには当然、事件の舞台となった新宿という街の過去から現在へと続く様々な営みが現れてくるわけです。今回はその辺りがかなりかき込まれています。読んでいて最初のほうはちょっとくどいような気もしましたが、途中からは納得しました。
     ラストはちょっと甘いかなぁって気もしなくもないですが、相変わらず脇役の人物造形が秀逸で、たっぷり楽しませてもらいました(^^)。
     ちなみにシリーズものですがそれぞれ一応完結してます。ただ、登場人物は主人公以外も重なってますので、やっぱり1作目から読む方がいいかも(^^ゞ
     私は第2作「毒猿」が一番好きです。

  • 新宿鮫シリーズが人気なのがよく分かる。文句なしに面白い。
    警察小説の体裁をとっているが、ハードボイルド的な小説である。
    新宿を舞台とし、街の歴史や息使いをふんだんに織り交ぜながら、そこに根付いた人たちの人間模様を描ききっている。

  • つながった。なんか、粋だね。

  • 新宿鮫シリーズ読了。大沢作品エンディング旨いよねえ(^^)。鮫に語らせる警察機構の芯のようなものが、大沢さんの主題なのかなあ?どれを読んでも読み応えあり。お薦めの一冊!

  • 新宿に行ったことはありませんが、新宿近辺の地理に詳しくなれそうなほど今作では新宿の地理が細かく説明されていました。
    頭の中に地図を広げるのは苦手ですが(建物の設計図も苦手)、その地理が細かく説明されていた理由も新宿の歴史に絡めてのことだったと分かり、地理同様に新宿の歴史についても詳しくなれた気がしました。
    新宿の地理・歴史が説明されていたこともあり、今回は新宿という場所がキーとなっており、タイトルの「風化水脈」については読み終わってみるとなるほどなぁという気分になりました。
    今作で遂に真壁が出所し、真壁と鮫島とでまた一波乱があるのかと思ったのですが、その一波乱は予想外の一波乱で面白かったです(にこにこ)。
    また、晶との関係は「氷舞」からあまり進展していないようで、2人の間にはいまだに溝があるようでしたが、その溝も少し埋まったようで少し安心しました。
    過去に繋がりがあり、過去に関係し、過去に縛られるいろいろな人々が絡み合い繋がり展開していく物語とその複雑な人間模様が面白かったです。

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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