- Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620106205
感想・レビュー・書評
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中国史を元にした武侠ロマンスなども面白い藤水名子の
中国文学「紅楼夢」はいかにして生まれたか…?という話。
ですがファンタジックであり
冒険活劇テイストでもあるエンタテイメント小説で
そして一人の作家が
物語りを生み出すまでの話でもあって…と読み応えがあった。
これまでの武侠ものでも
冒険活劇の胸躍るワクワク感と
ロマンスもののバランスがとても良いなぁ、というか
登場人物の心の動きと
物語の運びも噛み合ってて
この本でもそうでしたが、歴史上の人物でも
とても人間的で魅力的。
古典だったり歴史ものって、申し訳ないですが
そのまんまの感じで出されて並べられても
なかなか感情が入りにくかったり
入るまでの力というのも必要になってくる
というのが個人的にはあって
この本は「紅楼夢」を現代語訳してるわけではないのですが
その原典の「紅楼夢」
確か
ダイジェスト的にまとめられた大体のお話を読んで
「紅楼夢」を題材にしたとかの映画は見たことある…
という程度にしか私もよく知らない
つまりはほとんどちゃんとはわかってないに等しい、
というていたらくですが
それでもこの本でひとつの世界になってるので
全然問題なく楽しく読めたんだと思いますが
(それで良いのか?どうかはともかく…)
けれどこの本で興味をもって
ボチボチと原典にもあたって行こうかな、とは
さすがに思ってくる
そう思わせる本でもあったと思います。
この本の主人公、
没落貴族で作家志望の才子・曹霑(そうてん)という
男の魅力
なーんだかよれよれフラフラしてるようで、
なるほどこの男が生み出した物語だというなら
それはきっと
さぞかし魅力的な本に、物語に違いない…と思わせる。
何とも良かった。
この作者である藤水名子や日本の作家の書く中国物には
「中国武侠小説の面白さ」と
「日本の時代小説の面白さ」の両方が無理なく
並び立って相乗効果を感じさせるような本があるなと
思うことがあるのですが
それでいうならこの本も
例えば古龍の「多情剣客無情剣」や、
皆川博子の「みだら英泉」のような魅力が
入り混じったように、広がりがある
贅沢に面白い本だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中国の古代に的を絞ったこの作者の小説は、私にはとても楽しいものの一つです。
紅楼夢に想を得たこの小説も作者ならではの活劇あり恋物語ありの目も眩むような展開でした。
良い意味で、エンタテイメントに徹しているので
素直に胸を躍らせて読むには楽しいと思います。
漢詩の勉強をこの方の作品がきっかけで、まじめに
味わってするようになりました。中国文学へ触れるいいきっかけになってくれたことにも感謝しています。