女信長

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • / ISBN・EAN: 9784620107028

作品紹介・あらすじ

織田信長は女だった-鬼才が、空前絶後の大胆な発想で、史実のなかに「生身の信長」を描ききった、傑作戦国小説。

感想・レビュー・書評

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  • 織田信長が実は女だったという歴史改変もの。

    父の正室だった母・土田御前が、側室に男の子が生まれた悔しさから、最初の子を男だということにしたのだ。
    父は御長と名付けた娘に見込みを感じ、そのまま信長として跡取りに据える。
    母は弟のほうを跡継ぎに望むのだったが。
    女だから守りに入らない自由な発想で大胆に世の中を変えていき、天下泰平を構想するようになる。
    むろん公表は出来ない極秘のことだが、実は女だと明かせば男は言いなりになると覚えていく。

    浅井長政は年下の恋人。
    妹のお市を嫁がせてからも、関係は続き、むしろ中身は空っぽだが外見は似た女を側にやって、忘れさせないというぐらいのつもりだった。
    浅井の離反に怒り、お市がそそのかしたと思うが、実際には長政が野心から女を見捨てて寝返ったのだと知る。

    斎藤道三の娘・帰蝶(お濃)は女と結婚してしまったわけだけど、信長とは友達として暮らし、けっこう仲が良かった。
    浅井が離反すると、お濃の方に、女を使うのは年齢的にもうそろそろ無理だとさとされてしまう。

    明智光秀は、お濃の従兄で、初恋の男。
    教養があり、女の若さだけではない魅力にも気づいてくれる度量があり、そして自分の出世だけではない~天下泰平を考えている男だった。
    信長が、お濃の侍女・御長として光秀と付き合うようになると、お濃とは気まずくなるが…

    無理を重ねて、ヒステリックになっていく信長。
    いささか下世話な書き方ですが~
    光秀が酷い仕打ちを受けるままになっていた有様というのが、実は女のわがままを受け入れている姿だった?
    歴史の上で、いくつか疑問に思っていたような点(信長の死体が発見されなかったこと、秀吉の大返しが早すぎたことなど)が解釈されていくのが面白い。
    秀吉ははしっこい男で信長に目をかけられるが、どっちかというと悪役。
    あ、蘭丸出てこなかった。
    女性ならではの大胆さというのは夢がありますね。
    ドラマ化されるそうです。

    • まろんさん
      おお!これって、「天海祐希さんがヒゲをつけて信長を演じる!」と
      話題になっていたドラマの原作なのですね?!
      sanaさんのレビューを拝見して...
      おお!これって、「天海祐希さんがヒゲをつけて信長を演じる!」と
      話題になっていたドラマの原作なのですね?!
      sanaさんのレビューを拝見していると
      信長の破天荒ともいえる行状が、「実は女性だった」から、
      という理由でなんだか納得できてしまう気がして、興味深いです。
      ドラマも楽しみです(*^_^*)
      2012/09/14
    • sanaさん
      まろんさん、
      そうなんですよー!
      天海さん、イメージぴったりです☆

      信長って確かに綺麗な顔だったし…
      弟との跡目争いの真相は、こ...
      まろんさん、
      そうなんですよー!
      天海さん、イメージぴったりです☆

      信長って確かに綺麗な顔だったし…
      弟との跡目争いの真相は、こういうことだったのーみたいな。
      女ならでは!というのがあの時代に新鮮ですよね。
      たいていの戦国大名は戦争を続けるのが面白いので、天下泰平は思いつかないとか…!?
      ドラマは内野さんが光秀なので、楽しみにしています♪
      2012/09/14
  • 光秀が良い人すぎて、最後本能寺にどう繋がるのかと思いながら読んだ。史実と女の信長をうまく繋げていて、なるほどと面白かったが、晩年の方が辛かった。幸せになってほしいと思った。

  • フィクションではあるが、いろいろ腑に落ちた。

  • 好き嫌いはあるかもしれませんが、信長が女性であったという設定のもと、よく考えて作られた物語だと思う。
    読者がどこまで史実を押さえているかによって、面白さが違ってくるかもしれない。
    個人的にはかなり興味深く読むことができた。

  •  織田信長は実は女性だった!という設定の歴史小説。「女信長」像が典型的な「男が考える女」の集合体(「恋愛脳」で結局男に依存する)で不自然。内面描写はライトノベルの「織田信奈の野望」の方がましに思える。

  •  フランス史ものが多い佐藤賢一としては異色作のひとつということになるのだろう。フランス史を熟知した佐藤賢一が史実の隙間にフィクションを織り込んでいくところが面白いのだが、日本史ものはどうなのと、ちょっと引いていた。ところが友人に勧められて読んでみたら、ぐいぐいと最後まで惹きつけられて、最後は睡眠時間を削って読み終えることとなった。

     日本の時代小説はあまり読むほうではないので、信長といったらもっぱらテレビの時代劇の記憶になってしまい、その印象からするとどうしても「女信長」というのはイメージが湧かなかったのだが、信長は御長という名の女性だったという設定は、意外と説得力のある物語を生み出すのが興味深かった。もっとも、その説得力とは「女はみんなこうしたもの Cosi fan tutte」という先入見とギリギリのところにあるようにも思われる。
     最近、テレビドラマ化されたようだけれど、私はそれを知らず見ていないので、あれこれいう権利はないが、男装の麗人を映像化してしまったらやはり何か陳腐なところに落ちてしまう気がする。

     作家は信長=御長をある意味で「かわいい女」ととらえているのじゃないかと推察するが、女性読者の共感は得られるのだろうか。「所詮、女には天下は取れない」と結論しているようにもとれるし(もっともここは多義的だが)。当然、光秀、秀吉との関係をどのように描くかが作家の腕の見せ所で、いかにも佐藤らしい男女の情がキーになっていくとだけ紹介しておこう。
     つまり「女信長」が「女<信長」だったり「女>信長」だったりで揺れるわけだ。本能寺で何が起こるのか、およそのところ予想が付くものの、出来事の裏の意図と意図のぶつかり合いには、う〜んと唸らされた。
     そして、終章、家康が信長を回想するシーンの余韻こそ佐藤賢一らしいと思った次第。歴史の中の個人、しかし歴史を超える個の生の重み、ということか。ここは美しい。

  • 歴史小説は歳をとってからの楽しみにとってある。が、もうじき50になるので、前から気になっていた本書を手に取った。織田信長や羽柴秀吉、明智光秀の話は様々な歴史小説、ドラマで取り上げられてきたが、信長が女だった、という目のつけどころが面白かった。御長と信長、そして、本能寺の変、とその後のエピソードに至るまで、とにかく飽きさせない。佐藤賢一は『アメリカ第二次南北戦争』以来だが、ハズレなし。ただし、どの本もページ数が多いので、先送りしてきたが、この本を機に月に1冊は読んでみようかと思った。

  • これは 面白かった!

    信長が女だった!

    。。。な 視点で物語が進みます。


    いま 史実として、信長が行なった
    数々の功績
    。。。鉄砲を大量に使って戦をするとか
    楽市楽座や その他 数々の
    斬新な施策が、土地(領地)に縛られた男では 考えつかない、
    現実的な女だからこその発想だと。

    なるほどなぁ〜
    なかなか 新しくて、割と説得力があって。


    女だからこそか〜


    短気なのも、女のヒステリー??


    とにかく いちいち史実も曲げず、
    けど、女だったと話が進むんですが、
    無理なく読めました。


    けど、女信長と言いつつも
    明智光秀の物語といってもいいぐらいな話でした。


    なるほど こういう解釈かぁ〜と、
    かなり 楽しく読めました!

  • きつい本だった。冒頭からいきなり道三と信長がやってしまう。それも打算づくで、妙に理屈が通っている。

    信長は女でしたという設定は自体はいいのだけど、男装の麗人的なものはまるっきりなくて、リボンの騎士でもオスカルでもない。
    無残というか丸出しというか、さすがにミラボーに「男は保身」と言わせた作者である。

    ----

    ところで私は、歴史小説が好きなのだけど、織田信長は好きになれない。
    戦国は普通に好きだし、史実としての織田信長は別に好きとか嫌いとかってものでもないが、小説に出てくる織田信長が、どうも好きになれない。

    現代人は、織田信長に近代的な価値観を投影しすぎだと思う。
    近代的な進歩主義を彼に持ち込むから、彼がおかしな人物になる。「300年早かった近代主義者」に仕立てあげようとして、あちこちぼろが出る。

    そしてこれ自体が、「徳川幕府なかりせば、今頃日本は世界に雄飛していたのに」という願望の裏返しである。信長が本能寺で死ななければ、ヨーロッパよりも早く、少なくともヨーロッパと同時代に近代化や産業革命が出来たのに、という、甘ったるい妄想を信長に転嫁している。

    ----

    私の評価を言うと、織田信長はあまり賢い人物に思えないし、それ以前に人間としての魅力に欠けるので、物語としておもしろくない。

    楽市楽座とか言っている割には(楽市楽座は近代的な重商主義の現れだ!)って言う割には、通貨とか法制とかやってない。田沼意次とまでくだらなくても、秀吉でもやってたよ。

    既存の権威を鴻毛のごとく軽くしたって、その割には足利義昭の扱いは最後までグダグダだし、朝廷に対しても一貫した姿勢があると思えない。

    宗教的権威への反発と世俗主義にしたところで、総見寺で底が見えてる。

    たしかに彼の頭のなかのスパークにはすごいものがあったと思うし、そのスパークは数百年後にもつながるような、つまり人間の普遍性に近付くような何かがあったのだと思う。
    しかし彼はそれを語る言葉を持たなかった。システムとしてそれを表現する努力もしなかった。
    で、そんなスパークなんか、誰にだってあるのだ。
    それをその次代の制約の中で形にするように苦闘した人間のほうがえらいし、興味をそそられる。つまりそれは、秀吉であり、家康だ。

    ----

    で、この本「女信長」である。
    最初は、道三で破瓜するわ、柴田勝家を肉体で籠絡するわ、浅井長政に言葉責めされるわ、イロモノ街道まっしぐらである。
    「きっつぅ〜」と思って読んでたけど、明智光秀との愛になるあたりから、どういえばいいのか、「女信長」こと御信の方に人間としてグイグイと引き込まれる。
    信長ものにしては、ぜんぜん登場しない秀吉も珍しいが、それが最後にぐいっとでてくる。
    また同様に、信長ものの若き日の刺身のツマにすぎない道三娘の濃姫も最後までいい役だ。

    愛、老い、そして女であるということ。

    つまり、人として普遍的な課題を一身に背負い、それに立ち向かい、それに敗れていく「女信長」の姿は、清冽であり、共感と反発を呼び起こすものであった。
    つまり、私が読んだ「信長もの」の中で、もっとも面白い小説であり、はじめて、織田信長という人物に、興味を持った。

    いい本でした。
    記憶に残る本です。

  • 歴史物。用語に苦労したが、良さに気づく。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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