- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620107110
作品紹介・あらすじ
わからないことはわからないままにしておくのがいちばんいい。記憶と謎に導かれ、蕗子さんが向かった先は…。著者待望の最新小説。
感想・レビュー・書評
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ふわっとあたたかな感じ。これといったことが起きるわけではなく、誰かの日常、のような話。綺麗な日本語で、優しく多彩な表現をされる。
ひょんな事から亡くなった父が「めぐらし屋」をしていたと知る。子どもは親のことをほとんど知らないものだ。この娘も独特の雰囲気の人として、社内でもたいせつにされているあ。そして父について知っていく事でまた、自分にも少しずつ変化が生まれてくる
わからないことは、わからないままにしておくのがいちばんいいと、娘におしえてくれたのは父だった。
p. 12
つまらない思い出?そうかもしれない。でも、ひとが聞いたらなんの面白みもないようなことこそ、じつは最良の思い出ではないだろうか。 p. 178
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主人公はからだが弱く、おっとりやさんの独身アラフォー女性、蕗子さん。
両親とも亡くなり寄る辺ない身の上の、なんとも頼りない彼女だが、
子供の頃からの親友や、会社の同僚は気の置けない優しい人たちで、
何かと彼女を気に掛けてくれる。
そんななぜか放っておけない蕗子さんは、
やはり父親似で、めぐらし屋の仕事はきっと性に合ってるに違いない。
上品な文章で、特に話し言葉が美しく、女性が書いているような印象を受けた。
病弱な蕗子さんの体調の描写が多く、重苦しくなりがちな部分もあるが、
全体で見れば彼女の人の良さが前に出て、のんびりおだやかなお話。 -
ストーリー自体は大きく動くことはなく、ゆるやかな雰囲気の日常の話。
白昼夢みたいな想像が広がって、どことなく浮遊感がある感じの文章。私も身体が弱いので、不調が日常の主人公に共感。 -
長く疎遠だった父の遺品の整理中に見つけた「めぐらし屋」と書かれた大学ノート。困惑する娘の蕗子さんにめぐらし屋を依頼する見知らぬ客からの電話が舞い込む。父のめぐらし屋をなぞっているうちに蘇る父との記憶。特に大きいことが起こるわけではない。人と出会い日常を淡々と生きる営みの尊さがここにはある。
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初めての堀江敏幸。
新しい作家さんに出会えて嬉しい。
1冊に出会うとそこから読書の糸がつながっていくのが楽しい。
静かな空間がずっと広がっていて、静かな気持ちで、すーっと読めた。
蕗子さんみたいな歳の重ね方をしたい。
言葉と言葉、人と人とのつながりがだんだん紐解かれていく感じがおもしろかった。
センマイと百葉箱と、ノートの紙の束とか。
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柔らかな文章、人物。
少しのミステリ。
匙加減がちょうど良くて、つられて優しい気持ちになった。 -
予想より、はるかに話は動きません。
それが、よさとも言えるかもしれませんが。
文章の流れは、趣があって大好きです。 -
新聞の日曜版に連載されていたものなのですねー。
なんて贅沢な。
冒頭の置き傘のエピソードといい、主人公「蕗子」さんの名前も、体調を気にしながらの行動も、年齢的に近いものを感じながら読んだ。
平行してエンタメ系の小説を読んでいたので読み心地の差がはっきりと分かって、堀江氏の作品はありがたいなーなどと思った。
文章の間に読者の記憶をめぐらせる余地を感じて読んで豊かな気持ちになった。 最終章の冒頭の池の描写とかもう圧倒的。
終わり方めちゃくちゃかっこよかったー。 -
好きか嫌いかで言ったら好きな方ではありますが。
作中の気圧が低い(雨だったりどんより曇りな感じと、主人公の低血圧っぷり)ので、元気な時で良かった。
しかしその割にはふんわりした優しい感じ抜けた感じもあって不思議な読後感。
とくにはっきり何か問題や事件があってそれが解決するような話ではないので、もやもやする人はするかな。
まだ1冊しか読んでないけど、脳内の「よしもとばなな・川上弘美・小川洋子」ラインに仮置きしとく。
装幀 / 有山 達也
初出 / 『毎日新聞』日曜版2006年4月2日~9月24日 -
ん?豆?
黄色が素敵です。
人のしゃべった言葉から、蕗子さんが思い出したものから、ぼわぼわっとわたしの想像が広がってしまい、なかなか読み終わらなかった。気持ちがはるかかなたにいて、多少読み飛ばしてしまっても大丈夫なおおらかさ。想像力がめぐりめぐるという意味ですね、めぐらし屋。