下流の宴

著者 :
  • 毎日新聞社
3.66
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感想 : 274
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107530

作品紹介・あらすじ

普通に暮らし、普通に生きてきたつもりだったのに。自分は下に落ちていた?家族。生き方。変わるもの、変わらないもの。身近に起きる格差社会の現実を真正面から描いた、大反響の新聞連載小説。

感想・レビュー・書評

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  • #3396ー61ー13ー219

  • 格差社会を描いた本と聞くと、上の人が優雅な生活を送って、下の人が困難な状況で生活していて惨めな思いをする…そんなイメージの内容が浮かぶ。この本は、「かわいそうな現実」を描くんじゃなく、下の者がのし上がっていくポジティブな内容だった。弱い立場の人にも必ずスポットが当たるはずだし、どんな理由でも奮起すれば、道は開けるんだと思った。
    本を読んで感じたこととしてもう一つ。自分の知らない外へ出向くことが大事だなと思った。福原家の視野は狭い。自分の家と、上の世界しか知ろうとしない。宮城家の視野はすごく広い。沖縄から東京に出てきて、自分たちの文化と全く違う世界で生きている。広い世界を見る方が、いろんな刺激を受けて、奮起するチャンスも比例して多くなるんだろうなと思った。

  • ドラマ化されただけあって、とても面白かった。分厚かったけど一気に読めた。とてもリアリティがあるな、と思った。"いい大学に行くのがいいことなのではなく、選択肢が広がることが重要なのだ。下にいる人たちは、選択肢が限られてるということすら気付かず、そこに甘んじて生きていくのだ。" 塾の先生の言葉が重くて響いた。
    彼氏の母親を見返すため、医師になろうと勉強を始める珠緒は、今までしたことない努力をし、こんなに努力をしてなるんだから、医者ってやっぱり偉いんだと気づく。徐々に考え方が変わっていく。下流にいた珠緒が医師を目指して上流へ登っていく反面、上流だと思っていた翔の家族は下流へ落ちていく。人生ってわからないものだ。まるでドキュメンタリーをみているかのようだった。
    林真理子さんは、美容やダイエットの面白エッセイのイメージだが、こういう小説もおもしろい。いろんな世界を見てきて、冷静でするどい観察力があるから、こういうリアリティのある小説が書けるんだと思う。
    最後、翔の母親が、息子を諦め、次は孫に希望をたくすシーンが、狂気すら感じられた。

  • 翔の考え方には理解できるところもあった。最低限の暮らしができれば、アルバイトでもお金がなくてもそれでいい。でも何かに打ち込んで、一生懸命高みをめざす事で見える世界がある。選択肢を広げる、下にいる人は選択肢が限られている事に気付いていないという予備校の先生の言葉にもなるほどと思った。

    恵まれているが故に、ハングリー精神がない若者に、それを持てというのは難しいのか。彼らが気付いた時には遅かったとなるのか。また、「足るを知る」的な考え方で、本人たちの幸福指数は高いのか。でも、やっぱり大変な思いをしても、珠緒のように何かに本気で取り組んで、新しい世界が見れた方がきっと楽しいだろうな等、色々考えさせられた。

  • この本は、下流ってタイトルがついていたり、文学というにはずいぶん直截的な表現が使われていたりするから、貧困とかそういう主題を据えて語りたくなるのだけれど、ここで語られる余りに凡庸な悲劇は、結局「家族」へと帰着するように思う。
    家族だから。その言葉の呪い。家族だから、干渉し、評価し、家族だから、許諾し、甘受し、そして家族だから、弾劾し、断罪する。

    さて、おもちゃ売り場のジグソーパズルをいくつか適当に開けて、一掬いずつのピースを組み合わせたところで、もちろん綺麗な絵は完成しない。その不出来な塊に、どうにか意味をつけたり、納得する解釈を捻り出すのが現実ってもので、だからこそ物語は一箱のパズルのように美しい。というより、須く美しくなければいけない。

    対してこの本は、物語というには余りに現実に似過ぎている。だから、酷い痒みにはヒスタミン軟膏が処方されるように、「何故ならば」と言った類の説明を要請する。
    そういった種類の救いのなさのお話。

  • P41 人というのは、誰でも一度だけドラマの主人公になる時がある。そしてその興奮と熱風の最中に一生が決まり、やがて静かに後悔という冷えが始まるのだ。

  • 「いい大学を出ていい会社に入れば一生安泰」
    そんな価値観が崩壊して久しいですが、まだ信じきっている人もいるのだろうなと感じました。自分も少なからず考えている事なので。
    学歴はつけておいて損はないし選択肢も増えるから、子供たちにもそれなりの……という思想こそもう通用しないのでしょうか。
    考えさせられます。

    由美子の口惜しさと子供・孫への執着、母の価値観を受け継いだ可奈、昔で言う三無主義の翔、存在感のない父親(名前すら印象にない)……福原家の人々は好きになれませんでしたが、珠緒とその母親の気風の良さは読んでいて心地よかったです。

  • んん?これってあの人のことじゃないの??
    というようなリアルな登場人物ばかりで続きが気になってしょうがなかった。
    下流=お金がないとか学歴がないとかではなく、下流=思慮の浅い人として描かれているように思う。
    誰が何を言っても覇気のない人と、誰かがちょっと言っただけで燃える人とのバックグラウンドの違いは何だろう?

  • この本のタイトルを見たとたん、あの林真理子さんが下流?と一気に興味をもち読みたい!と思いました。
    林真理子さんの本は読みやすくて面白い~と思い、昔から読んできましたが、嫌だな~と思うのは、毎度毎度作品にバブルの頃はどうの、学歴がどうのという記載があることです。
    女なら短大卒が最低の学歴(短大というのが時代を感じるけど・・・)だというのは何度も目にしたし、登場人物はお金や地位のある男性と何とか縁をもちたいと奮闘している。
    それ以外の人って、この作者にはアウトオブ眼中なんだな~とずっと思い、ハナにつくと同時にうんざりしてました。
    だからこの人がどんな下流を描くのかと興味津々だったけど・・・。
    主人公は普通よりちょっと学歴があり裕福な主婦で、その一人息子が高校中退してフリーターになった。
    しかも結婚したいと言い出すが、その相手というのは主人公が「下流」と見下げる、高卒の沖縄の女の子。
    だから自分は下流になったと嘆くわけですが・・・。
    これが下流なのか・・・というのが正直な感想でした。
    プライドや優越感をもつほど、主人公も上流階級の人間でもないのに。
    それにいつものように、金持ちで条件のいい男性と結婚しようと目論む女の子が出てきてタイトルは下流だけど、書かれてるのはいつもと同じ内容。
    まあ、ここくらいまでが限界なんだろうな・・・。
    想像通りの「下流」でした。

    とまあ、そんな風に今回もハナがついた所がありつつも、楽しんで読めました。
    ラストも何とも皮肉だし。
    印象的な場面は、主人公の娘と、息子の恋人がすれ違うシーンです。
    お互いとも相手が自分にとってどういう存在なのかしらない。
    主人公の娘はいかにも林真理子さんの書く女の子という感じで、人生の目標を裕福で何不自由ない暮らしを送らせてくれる相手と結婚するということにおいている。
    一方、息子の恋人は自分の力で、何と医大を目指そうとしている。
    そんな対照的な二人が白金という場所ですれ違うというのが何とも皮肉で印象的でした。
    読み終えて、美しさとか若さとかそういうものって頼りないものだし、自分で手に入れたものでないものは移ろいやすいものよな~と思いました。

  • それぞれに、ひどく単純な価値観で生きてる人たち。ちょっと極端に書かれてる分、「こんな人いるいる」って、リアルに思い浮かべやすい。

    真剣に、一生懸命になればなるほど滑稽。それが他人事なら。こんな家族に生まれたら、こんな境遇になったら…まったくぞっとするけど。

    男性も出てくるけど、女性のがキャラが濃い。女として私は、登場人物の誰の生き方ならできるかな、と考えたりした。母娘三代にわたる生き様比べが、時代感もあっておもしろい。

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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