どつぼ超然

著者 :
  • 毎日新聞社
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本棚登録 : 448
感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107585

作品紹介・あらすじ

明るすぎるし、見晴らしがよすぎる。どうも死ににくい。飄然から超然へ。世界を睥睨する町田文学の新境地。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログさんより献本していただきました。ありがとうございます。

    町田康の小説を評するなど、凡人の自分にはまあ不可能だと思われますので感想をば書かせていただきます。

    「くっすん大黒」では大黒像を捨てなければ自分は幸福になれないと思い込み、「きれぎれ」では画家として売れた旧友への嫉妬心を晴らすために、彷徨・思考を繰り返す主人公を描き、僕を悶絶と爆笑の世界に連れて行ってくれた町田康の、久々に時代小説(風)な設定から離れた最新作。

    本作は、初期の上記2作と似たような印象を受けたが、彷徨・思考する方向性が短絡的な目的ではなく、超然とした人間になるという点が大きく違う。

    もちろん短絡的な目的・意図を、得意の被害妄想満点の思考力で展開する初期2作は(目的が自分勝手すぎるため)かえって爆笑を生むのだけれども、本作は(一応)高尚な目的・意図を持って主人公が行動・妄想するところがポイントだと思った。

    高尚な「超然とした人間」になろうと心に決めたものの、そこはやはり持って生まれた被害妄想・誇大妄想の脳内パレードにより、自分勝手な目的よりもさらに多くの困難や、脳内からの反論に見舞われ、そのたびに自分を保つために最大限の言い訳をおこなうさまに、初期2作の自分勝手すぎる主人公の所作に対する情けなさに対する笑いではなく、人間の滑稽さを露骨に見せ付けられ笑いが止まらなかった。

    被害妄想による脳内からの反論に、時に論理的に、ほとんどは詭弁で返し、さらに広がる妄想ドライブに読んでるこちらの脳もぐらんぐらん揺さぶられ、にへらにへらと笑みがこぼれ、ファミレスで読み始めたことに大きな後悔を覚えさせてくれる。

    特にP103「二十四の瞳」の教師を「瞳が二十四ある女教師」と説明するくだり、P133の「当初のコンセプトを最後まで保ち続ける重要性」を説くくだりでは声を出して笑わされた。

    何とか評論チックに書こうと思ったが、やはり町田康相手では無理だなと痛感したので、結局最終的に伝えたいことを書かせていただくと
    「この本は僕が読んだ中でも一番と言ってもいいくらいに爆笑できる稀有な本なので、みんなも読んだほうがいいよ」
    というあまりにありきたりな感想となってしまいましたw

  • 人生、苦しいこともあるだろう、腹の立つこともあるだろう、でも大丈夫。そういう時は『どつぼ超然』を読みましょう!すると人生『頑張るぞー、頑張って、死ぬぞー』って気になりますから!

    すると悠々と人生を超然と見据える事が出来るようになり、「善きかな、善きかな、ほほほ。」と言えるようになる・・ハズ!!((笑))

    文章の書き方が主人公の独り言の形で物語が書かれているのですが、実は私、こういう文法?っていうんですか?例えば森見登美彦さんの【恋文の技術】や、アンシリーズの【アンの友情】など、台詞があまりない文章を読むのは(しかも、それが状況説明ではなく、独り言だったりすると)集中力を欠いてしまうんです。

    なので、例えに出した作品も、最後は面白く読み終わったのですが、本の世界に入り込むまで時間がかかってしまうのですが、この『どつぼ超然』に限って言えば、最初っから、一気に読んでしまいました。

    一言で言えば『お笑い読本』ですね。

    特に気にいったところ(笑ったの)は、P139の『そこで余は、下りていく男の背中に向かい、心内語、「ばーか」と言い、少し足りないような気もしたので念のため、「ばーか、ばーか、ばーか」と付け加えた。完璧である。』という部分です。

    しかも、この作者の偉いところは、これが『何とかの遠吠え』(もちろん、負け犬遠吠えですよ。これが『オオカミの遠吠え』や、『おっかさん!の遠吠え』だったりしたら、怖いだけですからね。)の証拠を、例え話で非常に上手く説明してるんですね。で、最後は『そうか~、そんな小さい事を考えているようではまだまだ凡人、善きかな、善きかな、ほほほ。』とつぶやいてしまっているんですから、恐るべし、どつぼ超然!と思いました。(ホントか?ホントです(爆)

    他にも人生を超然と生きるためのバイブルが盛り沢山と書かれていますが、一番盛り上がったのは自殺するための場所選びの主人公の考えている事や行動、縄と踏み台の配色などを遠くから真剣に眺めたりするところでしょうか?

    あと、どうしても分からなかったのが、どうして突然主人公が自殺しようと思ったのか?という部分です。その理由が、あまりに超然過ぎて凡人の私などには、とてもとても(ここで手のひらを上に向け、両肩をすくめ、首を左右にゆっくり振る)。理解できなかった次第でして・・うーむ、、やはりまだまだ修行が足りないようです。

    最後に主人公が「善きかな、善きかな。」とつぶやいたあと付け加える「ほほほ。」これにも深い意味があるとみました。ただ「善きかな、善きかな。」とつぶやくだけより、そのあとに「ほほほ。」と付け加えるだけで、あ~ら不思議、主人公が心から「善きかな、善きかな。」と思っている時と、実は無理して「善きかな、善きかな。」と思っている事が分かって面白いと思いました。

  • 呆れるほど不毛で、生きる活力の溢れる物語。
    冒頭から、自殺を志向するという現代的な悩みを持つ主人公ながら、不可解な出来事(?)にどんどん迷い込んでしまう達人。自意識過剰なあまり300P近くの大作になるまで右往左往を続ける。町田作品の中でも、ここまで意味のなさを追求して、笑えて、力が漲る物語はないかもしれない。

  • ブクログ様献本企画で頂きました。ブクログ様ありがとうございます。

    町田康さんの本は初体験ということで何の前情報もなく読み始めました。

    フィクションなのかエッセイ的なものなのか分からない文体で、主人公のひねくれた、頭の中でよくそんなに思考をめぐらせられるなっという独り問答の展開に驚きました。衝撃的なファーストインパクト。

    一体なんなんだこの人は?奇怪なものを見るように読み進むうちに、主人公というか著者の人間観察力とシュールな着眼点にニヤニヤしてしまいました。特に写真がある部分の話はシュールで笑えました。超然ってかっこいいかもしれん。

    普通だったら見逃してしまう事を自己展開し、思考がフライハイするという。人の頭を覗いているような感覚。

    町田康という人の思考や感性を楽しめたという点ではとても満足でしたが、その展開についていくのにはかなりパワーが必要でした。少し読みづらかったという印象です。
    しかし、読後、妙にこの本の内容が頭に残っていて、思い出してしまうのがなんとも不思議。

  • ミュージシャンでもあり小説家でもある町田康氏の小説「どつぼ超然」を読了。3連休で頭は疲れていなかったし、ストレス度合いも低い状態なので読み終えられたが正直読み進めるのにちょっと疲れた。だからといってまったく面白くない訳ではない。妄想力が尋常ではない主人公「余」がストレスあふれる日常から逃れるべく多分熱海をベースにしたとおもわれる街を歩き回り色々なシーンに出会うたびに頭に浮かんだことをつらつら書き付けたような形で進んで行く小説なので、ばかばかしさが半端ではなく、ばかばかしさが限度を超えるときに思わずふと笑ってしまう部分は何度かあるにはある。だがこの徹底したおばか妄想に最初から最後までつきあえる人と出来ない人に完璧に分かれるだろうと思われ絶対読者を選ぶ小説だ。パンクバンドでは伝説の人らしいいので、この小説もパンクだと思えば楽しめるのかもしれないので誰か試してみてはどうだろう。

  • 圧倒的な紙の無駄使い感、思考の無駄使い、日本語表現の無駄使い感。これこそアート!

  • 作者の分身?的な「余」が綴る、街の散策日記的内容。町田康の頭の中はこんなに忙しいのか、面白い。脱線しまくり言い訳しまくり。

  • 今までにも増して、脳味噌をぐぢゃぐぢゃに掻き回されたような読後感。
    私の脳が「余」のとりとめのない思考と、洪水のように溢れ出す
    訳のわからん言葉に浸食、いや侵略されそうだ。
    やばい、やばい。
    うかうかしていると町田康に脳を乗っ取られかねない。
    中毒性のある麻薬のような言葉は、もはや快感。
    ツボすぎて自分が怖くなる(笑)

  • 非常に面白いbut疲れるw読むときのテンションによる。

  • 熱海と思われる場所に移り住んだ「余」が、周辺をうろつくという話。強烈なボケもあっておもしろい。社会の底辺のパンク歌手の物語を書くことで金を稼ぎ、とうとうリゾート地に住んじゃったプチセレブ(に見える)な自分の現状について、ちょっと複雑な心境があるのかなという気がした。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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