逆渡り

著者 :
  • 毎日新聞社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107639

作品紹介・あらすじ

一所に定住せず、山野を渡って生きる放浪の山の民。武田晴信、長尾景虎が台頭し始めた上信越の山野を、老渡り・月草は集団を離れ、独り北へ向かう。亡き妻が遺骨を埋めて欲しいと望んだ、あの山桜の木の下まで。

感想・レビュー・書評

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  • マイミクさんに教わって。山野を放浪(渡り)する山の民。60間近の月草は掟に従って集団を離れて(逆渡り)亡き妻との約束を果たすための一人旅に出る。実に渋い時代小説です。妻を思う主人公の優しさにが心に染みました。

    • ゆいさん
      趣味で山を登っておりまして、昔の人はつくづく偉大だなと思い知らされた次第です。サンカやマタギの方々の真似など俺にはとうてい出来ませんです。そ...
      趣味で山を登っておりまして、昔の人はつくづく偉大だなと思い知らされた次第です。サンカやマタギの方々の真似など俺にはとうてい出来ませんです。そろそろ文庫になる頃かもしれませんね。
      2013/02/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「昔の人はつくづく偉大だなと」
      私達は便利になって何かを忘れてしまったのでしょうね。。。
      「昔の人はつくづく偉大だなと」
      私達は便利になって何かを忘れてしまったのでしょうね。。。
      2013/02/06
    • ゆいさん
      おっしゃるとおりだと思います。でも、一度美味しい思いをすると元には戻れないのもまた事実かと。
      おっしゃるとおりだと思います。でも、一度美味しい思いをすると元には戻れないのもまた事実かと。
      2013/02/06
  • 「山の民」である月草は、亡き妻を弔う為、集団を離れ独りで死地に向かう“逆渡り”を決行します。
    途中、様々な事に巻き込まれ、命の危険にさらされたり、裏切りにあったり、読んでいてやるせなくなってしまうような事が続きますが、
    どのような目に合っても淡々と真摯に向き合い、山を敬いつつ、その恵みを存分に享受する月草の姿が胸を打ちます。ラストの光景はまさにご褒美のような素晴らしさです。

    序盤のリアルすぎる死体描写がどうしてもグロく感じてしまい、そこが-(マイナス)星でした。。。

  • 山の民の月草は、亡き妻の遺骨を持ち、逆渡りを始めたが・・・
    山菜を採り、薬草を売って米や味噌に換えるシンプルな生活は、厳しくもあるが清々しい。

  • 長谷川卓さんしらなかったけど、図書館の新刊コーナーで装丁にビビっと来て連れ帰る。結果、正解だった。おもしろかった。知恵と勇気さえあれば、なにも持たずとも大地が与えてくれるものだけでひとは生きていけるものなのかもしれないなぁ、と山の民の生き様をみていかに自分が贅沢かを知る。まあ、我が命を脅かすものは殺すというようなもっと原始的なルールのもとで成り立つわけで、生きるために殺生を繰り返す月草は、決して純粋にヒーロー視はできないんだけどさ。仲間のもとを離れて逆渡りに出た月草を動かしたのも、そこに今はいない妻のカヤの想いだし、里のものたちも月草を思い出しながらまた生きるだろうし。人は、いつかは死ぬけど、生きているあいだに、関ったひとに一人でも生きる理由や意味を与えられたら、それでじゅうぶんなのかもしれないなぁ。贅沢で満たされた社会のなかでも人はいっぱい悩みや苦労を抱えているけど、月草の生き様に触れることで、自分のココロにはりついている、生きるうえで余計で贅沢な悩みはすこし削ぎ落とされるようなきがする。里が生み出した火薬が、あっさり使われて終わってしまったから、小草を主人公にまた続編が出てほしいなぁ。良作です。

  • 歴史ものとして、信玄や謙信や真田がストーリーの背景として登場するが、あくまでも、それらは背景のみに甘んじ、そんな歴史の在り方とは全く関わりなく、過酷な日常を生き抜く山のものを主人公として据え、戦国時代に生きる人々の人生の過酷さと、山で生きるということの過酷さを描いている。
    一つ一つのエピソードにつながりはあるが、だからと言って大きなストーリーにはなっていないが、主人公の生き方には芯が通っており、読後感はさわやか。

  • 日経の書評を読んで図書館で予約していたもの。借りられた時にはすでになぜ予約をしたのか全く覚えていない。しかしこれは本当に素晴らしかった。上半期全然読書できてないけれど、間違いなくベストをつかんだ。主人公のバイタリティとか知恵とか多少の暴力とか死生観とか、そして何よりも(対人間に限らず)他者を尊ぶ態度が、自分はへたれでインドアで山の者にはどうしたってなれない故の憧れもあいまってぐいぐい引き込まれた。ラストの美しさは涙なしには読めない。

  • カテゴリは「歴史物」となっているが、内容は歴史物とはちょっと異なっている。時代背景は、戦国時代であるが、そこで生きている「山の者」の生活に焦点を当てている。

    主人公の月草は60歳まであと2年ほどあるが、亡き妻との約束を果たすために、山の仲間から一人離れて行く。どちらにしても60になると、足手まといだと言われ仕事に連れて行ってもらえなくなるのだ。

    一人になってから、まったく思いもかけないことに巻き込まれてしまう。いろいろと努力するのだが、ほとんどが裏目に出てしまい、ついに山犬に襲われて死にかける。

    助けてもらったが、その命の恩人にさえも殺されかけてしまうという、厳しさだ。しかし、最後は感動的だ。

    良くこのような世界のことを書くことができるものだと作者の偉大さを心底感じた小説だ。絶賛に値する。

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著者プロフィール

1949年、小田原市生まれ。80年、群像新人文学賞を受賞。81年「百舌が啼いてから」が芥川賞候補となる。2000年には『血路―南稜七ツ家秘録』で角川春樹小説賞を受賞。本書は、一介の部屋住みの身から将軍に上り詰めた吉宗の裏の顔を描いた歴史時代小説の復刊である。著書に「嶽神伝」(講談社文庫)、「戻り舟同心」、「北町奉行所捕物控」、「高積見廻り同心御用控」(すべて祥伝社文庫)シリーズなど。2020年11月、逝去。

「2023年 『運を引き寄せた男 小説・徳川吉宗』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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