三十光年の星たち (下)

  • 毎日新聞社 (2011年3月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784620107684

感想・レビュー・書評

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  • 下巻に入ってから、スピードアップして読めました。
    やぱり、宮本輝さんの作品には、引き込まれます。

    主人公の仁志、出来のいい兄弟に挟まれて、父親には
    勘当されてしまうけれど、持って生まれた人柄の良さは、
    かけがえのない財産だと思えました。

    佐伯との使役関係も、始めは単なるビジネスって思っていたら、
    彼の家族との悲しい出来事、彼自身の葛藤などが
    分かるに連れて、仁志は、ビジネスだけではない人生感を
    教わったのでは?と思いました。

    30年って言う歳月は、想像すらできない苦労もたくさん
    あるだろうけれど、だからこそ、良いも悪いもそれは経験。
    糧となって、輝ける瞬間を自分なりに感じ取ることかなって
    思いました。

  • 面白かったんですが、少し期待し過ぎていました。

  • 非常に良かった。
    佐伯をはじめとする年配者の言葉の一つ一つに重みがある。
    主人公の仁志は、これまでに職を転々とし、父親から勘当されるなど
    ダメな人間のように見えるが、料理が上手かったり、落語を覚えていたり、
    見よう見まねの灸の技術があったり、実はとても才能にあふれているのでは。これから父親とも良い関係になっていけそうなのが嬉しい。
    とても感動し、心を打たれる作品だと思うが、本当に残念なのが、
    お金を貸した相手を訪ねて話す仕事を、きちんと最後まで描いて欲しかった。
    途中で「ツッキッコ」の仕事がメインになってしまって、最後の一件が気になってたまらない。

    自分自身は、懸命に三十年も努力し続けてきたことなど、振り返ると一つもない。
    ただ、自分の行動が何十年後の何かに繋がっていく可能性はあると思う。
    子供達を精一杯育てること、植物に水をやり花咲かせること、小さく思えることにも意味があるのかもしれない。

  • 下巻も一気に読んでしまった。

    人生でどんな人と出逢うか、そしてその出逢いを如何に大切にし、生かしていくか。それは人生に大きな影響を与える。
    そして、その出逢いの中に、師匠と呼べるような人との出逢いがあれば、どんなに素晴らしいことか。

    「三十年間を、きみはただまっしぐらに歩き通せるか」というメッセージに、30年後、私はどうあるだろうかと思った。でも、どうあるか、ではなくて、どうありたいか、って考えることのほうが、多分何歳になっても大切。
    ありたい自分に向かって、今をどう過ごし、生きて行くのか。
    そんなことを考え、新たなことにチャレンジをしようと思わせてくれた一冊。

  • 年末に心が落ち着く作品が読めたのは良かった。

    京都に住んでいたのでだいたい出てくる地名は想像が付くんだけど、地点間の移動にかかる時間がちょっと早くない? って思った箇所があったように思う、、、、のだけれど、自分の記憶の方の精度にも自信があんまりない:-p

  • 相変わらず輝さまは最高です。今回は何だかすごくリアリティーがあって、考えさせられたなあ。。。

  • 真っ直ぐなこと。それをやり続け守り続け邁進していくこと。
    師と仰げる方に出逢えるのだろうか、独りよがりにならずに、叱られ続け、働き続けることが出来るのだろうか。三十年。自分は何を磨いていくのだろう。私には、見えないものを見ようとする努力が出来るだろうか。

    世の中のありとあらゆる分野において、勝負を決するのは、人間としての深さ、強さ、大きさだ。鍛えられた本物の人物になるには三十年かかる。―略―これから先、三十年のあいだ、そのつどそのつど、悩んだり苦しんだり、師匠を疑って反発したり、ときには恨んだりもするだろう。そしてそのつど、なぜだろうと考えつづけるだろう。そうやって考えつづけて、あるときふっと、ああそうなのかと自分で気づいたこと以外は何の役にもたたないのだ。

    「なぁ、仁志、三人の息子のなかで、仁志がいちばん親孝行だって、お父さんに思ってもらえるようになるんだぞ」
    物語の終盤で、佐伯さんが言った言葉。愛情をとてもとても感じました。

    私には、何もまだまだ分からないし、むしろ分かるわけがないのだろう。だから、毎日、ただ真っ直ぐに真っ直ぐに、積み上げて生き続けなければならないのかもしれない。とにかくとりあえず三十年。

  • 毎日新聞社の朝刊連載小説。
    こんな話を毎朝読んで出社したい!

  • 宮本輝氏の世界観炸裂の作品。
    好きだなー、こういう雰囲気。京都の陶磁器や染色、焼き物などいろんな職人の世界を中心に、一人の青年が師匠から代々受け継がれてきた使命を悟り、不器用ながらも様々な人に支えながら必死に生きていく。
    私も意義とか動機とかゴチャゴチャ考えずに、働いて働いて働きぬいてみようかな。
    2016/10

  • 宮本輝がこの作品で語りたいことはわかった。
    「30年後を見据えてがむしゃらに仕事に勤しめ」
    これは宮本輝自身が後書きでも書いている。

    主人公が今の自分と同年代であることから、
    少しは自己投影して読むことが出来たが、
    ストーリー自体は???なことばかり。

    個人で金貸し業を営み、事業を始めたい女性限定に金を貸す佐伯という男から、あるとき後継者に任命されてしまう主人公の仁志。(←この設定からしてついていけない)

    しかも、しまいには、佐伯の顧客のかつての事業を引き継ぎレストランの店長をやることになり、パスタのソース作りに励むことになる…謎、、、

    最後らへんはやっつけで書いたとしか思えない低クオリティな小説

  • 何の仕事をやっても長続きしない主人公・仁志が、若い頃に妻と2歳の子供を亡くした近所の老人・佐伯平蔵からお金を借りたものの、事業のパートナーが逃げ出した為に事業に失敗。
    そのお金を返すべく、仁志は佐伯の元で働く。

    10年でやっと階段の前に立てるんだ。
    20年でその階段の三分の一のところまで登れる。30年で階段を登りきる。そして、登りきったところから、お前の人生の本当の勝負が始まるんだ。その本当の勝負のための、これからの30年なんだ。そのことを忘れるんじゃない。(佐伯平蔵から仁志に向けて)

    物を見る目というのは、人間を見る目でもある。優れた物の価値を解せない人は、他者をも粗末にするようになっていくのだ。

    驢馬な旅に出ても馬に帰ってくるわけではない。か。まったくとってそのとおりだ。風采のあがらない驢馬のもくもくとくじけない力は、いつか険しい山野を踏破するだろうをどんな人間もなめてはいけないのだ。(仁志)

  • 京都という設定も意味深い。

    生活にすら苦しむ人々、ちょっとした資金と肩を押す力があれば、才能を生かせる。生活が立てられる。

    そんなご縁。運命を変える出会い。

    染め物・織物・陶芸・・・。職人として生きる人々のつながり。

    ビジネスライクではない、人と人の引き合う力。

  • 何かまた読みたい

  • 2014.08.30

    佐伯老人の正体もわかり、仁志はなぜかレストランを経営しすることに。

    ひとつのことを30年間頑張ることが大事というメッセージはわかるけど、その大事なことをあんな風に他人に決められていいのか?という疑問が残った。

  • 懐かしい

  • 宮本輝さんの本を読むたびいつも襟を正して生きなきゃと思わせられるのに、すぐ忘れてダラダラと考えなしに過ごしてしまう私。定期的に宮本輝さんの本を読まなければ。

  • 女性のために事業を興すための資金を無利息、無担保で貸すという事業を引き継いだ仁志。
    そして佐伯がかつて金を貸して成功した月子の「ツッキッコ」というスパゲティ専門店を再開し自分の給料を稼ぐことに。

    月子の秘伝のソースをマスターし、事業の準備を進めるために昼夜を問わず奔走する仁志。

    本気で取り組んだという証を残すために。
    三十年後、その姿を見てもらうために。

  •  いい話だった。30年後の自分を見てくれと思いながら生きるには、目先のことに惑わされず、毎日を積み重ねていくしかない。叱られて

  • 最近の宮本作品にしては、無駄な挿入話がなかったから、比較的読みごたえがあった。
    しかし、これも最近の傾向として見られがちな上巻の内容と下巻の内容が、本当に同じ話?と言いたくなるような展開は相変わらず。
    そのため、どちらの内容も中途半端に終わるという消化不良感が残る。
    金貸しの話などは、なかなか面白かったので、書ききってほしかった。
    だって、読んでて、基金とこんな手間のかかる店の両立なんて不可能でしょ、って言いたくなってしまう。

  • 三十年後の自分がどんな姿なのか、楽しみに出来るように、まずは今から始めなければと考えさせられる。
    宮本輝ワールドらしい終わり方で、明るい未来が見えているが、最後の一番難しそうな融資相手に対し意気込みだけで終わってしまったのが残念。
    ツッキッコのスパゲッティと仁志のポトフ、佐伯氏のオムレツ、ぜひ食べてみたい。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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