- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620107714
作品紹介・あらすじ
大切な"小さい人"。離れてゆく恋人。眠り続ける赤ん坊。迷える私たちの前にあらわれた、身長50センチのおばあさん。今日も幸せでありますように-東直子が贈る、愛しい人々の物語。
感想・レビュー・書評
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東直子の、大人の童話。
すがすがしい筆致で描かれています。
あいまいな人間関係の中に、不思議な存在ミトンさんが投げかける波紋。
それは‥
アカネは、海外赴任の長いミキヒコ叔父さんの家に住めることになった。
5年3ヶ月暮らした狭い部屋を出て、綺麗な白い家に。
台所の床下収納を開けたら、梯子を降りていくと、赤い服を着た50センチぐらいのおばあさんが眠っていた‥!
叔父さんに電話すると、「アカネ、駄目だよ、ミトンさんは起こさなければ10年ぐらい寝ていたのに」と言われてしまう。
家の守り神というか住む人の守り神なんだという。
自分のことは「オレ」と言い、フルーツが好き。すぐに寝てしまうが、外に連れ出すと喜ぶ。
顔を隠す帽子を買って抱っこしていると、赤ちゃん連れで通るのだが、子供が出来たという妙な噂も一部に広まったり。
2年以上付き合った庄司くんとの、くっついたり離れたりの仲は、リアル。
頼りない彼は最初ミトンさんのことをまったく受け入れないのだが、なぜか戻ってきてからは世話を焼いたりしてくれるように。
学生時代の友人みほさんと思わぬ再会。
すぐにミトンさんの存在を受け入れる彼女。ほんわりした人だけど、孤独な状況。
なかなか連絡が取れないミキヒコ叔父さんも、何をやっているのやら、ちょっと怪しい存在。
日常的なような全然そうでないような出来事がゆるゆる絡まりあって‥
寂しいような、そうでもないような、でもミトンさんに会えたのは良かったね、と思える読後感でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
メルヘンといってもいいのかもしれない。
なんだか不思議で、暖かい話。
ミトンさんは可愛らしさから対局にいる存在かもしれないけど、やっぱりどこか可愛らしいといってもいいような気がする。
それは、ミトンさんの真っ直ぐさなのかもしれない。
その真っ直ぐさでするりと心に入ってきて、その人の真っ直ぐなところを引き出してしまうのかも。
ミトンさんがたくさんいる場所、この世のどこかにあるのかもしれない。-
この作品も以前読んでいて、図書館で謎のタイトルでしたので手にしてみたのですが、はじめミトンさんを理解するのにちょっと時間がかかりました。
...この作品も以前読んでいて、図書館で謎のタイトルでしたので手にしてみたのですが、はじめミトンさんを理解するのにちょっと時間がかかりました。
でも慣れてくるとすらすら読めて世界観にどっぽりはまっていたのでありました♥。
2012/10/30
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身長50センチのミトンさんは、アカネの秘密の同居人。わがままで謎の深いミトンさんと、そこに集うどこまでも優しく独創的な人々を描いたほの甘い長編小説。
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ミトンさんありきの物語である。アカネが引っ越した先――ミキヒコ叔父さんの家――の床下に、ミトンさんはいたのである。ひと目見た時からわたしの頭のなかではミトンさんはムーミンのミイである。赤い服といい、その小ささといい。果物好きでわがままで、害を為すわけではないがいいことを運んできてくれるわけでもない。恋人は浮気をして離れていくし、間違って電話してしまった友人のベイビーちゃんは眠ったままだし、ミキヒコ叔父さんとはなかなか電話がつながらない。それでもミトンさんがいるからこその巡り合わせのような毎日のなかで、アカネはだんだんミトンさんに心を移していくのだった。あちこちに散らばっている点と点と点と点を――ときにあっちへこっちへ飛んでいくようでありながら――ひと針ひと針縫い進め、気づいてみたらいびつながらも「〇」になっていた、としみじみ思う読後である。ミトンさんのようなものはだれの心のなかにでもいるのではないかと思える一冊。 -
海の人になりなさい。そしたらもう自由に世界を見る事が出来るのです。貴方のお父さんが愛した、あの海に。
感情を白で表すと、そこには一点の穢れも色もつけさせぬ神秘がありました。貴女は確かに強き母であり続け、小さきものは高みを目指す。私は。私は何で在り続ければいい。
一切の濁りの無き感情に、透明な涙が真珠の様に産まれては消える。風が生命を攫っていく。お逝きなさい。何処までも、空高く。風に乗り、白き雲になり、赤い鳥となって。貴方がそう、望んだ世界へ。 -
ミトンさんは黒髪のおかっぱと書いてあったけど、私の頭の中には常にムーミンのミィがイメージされていた。
最後のほうに出てきたミトンさんの仲間?はお団子頭って書いてあって、やっぱりミィじゃん!って思った。 -
みほさんが、ミトンさんを抱いたとき。
素敵に重いー
って言った。
それが印象的。
表紙やらが可愛いのです。 -
東直子の最新刊。
主人公の茜は叔父のミキヒコの海外赴任中に叔父の家の管理を頼まれる。家を訪れたその日に床下を開けると、そこには子どもくらいの大きさのおばあさんが眠っていた!名前はミトンさん。
茜とミトンさん、そして彼らを取り巻く周り人々の日常を独特の感性で綴った作品です。人々の感情を繊細に描いていて、心に響く言葉がいくつかありました。東直子の掴み所のないファンタジーの世界も楽しめてバランスの良い作品だと思います。
文中の言葉で心に留まったもの。
"気持ちにいらないものはない" -
現実とも言い切れない不思議な世界観のお話。
普通の感覚で言えば”幸せ”とは言えない人が多くでてきますが
ただ悲しい、辛い、では終わらないお話です。
読んでいくと直接的に励ましたり元気つけたりする
言葉はないように思えるのになぜか心にじんわりしみるような気がします。
感想もずいぶん抽象的になってしましましたが
私の解釈ではここまでが限界です。 -
大切な“小さい人”。離れてゆく恋人。眠り続ける赤ん坊。迷える私たちの前にあらわれた、身長50センチのおばあさん。今日も幸せでありますように―東直子が贈る、愛しい人々の物語(「BOOK」データベースより)
やわらかくあたたかく、大きなものを描くお話。
とっても東さんらしくて、これ、好きだなぁ。
「放り出すのも、勇気がいるよ。目の前で、息してるんだから」
「そうよね、目の前で息してたらね」
「ミトンさん、すてきー。すてきに重いー。すてきに抱きつくー」
「今、ここにいてほしいのに、いない。いないと、いいも悪いもなくて、ただ、いない人」
ただ、じりじりと待つばかりの日々。自分ではさわれない場所で変化は起こっている。核心にさわれない苦しみ。
「世界は目に見えてるものたった一つじゃないよ。一人の人間の感覚で捉えられる世界っていうのは、世界のほんの一部なんだ。人によって感受できるものが違うから、一人ひとりの世界は違うんだ。一人の人でも、どんどん世界は変わるんだ。感受できるものが、生きているうちにどんどん変わるから」
「愛は、声に、出さないとね」
今の自分の心に響く言葉もたくさんありました。
今、この時に、この本に出会えてよかった。
ミトンさんたちの歌もステキだったので覚書。
はだしのそこにしらせをうけて
まいまいかぶりあたまにかぶり
おもいのたけはひとりのもので
ひとりのものはきえてなくなる
うまれてくるよおなじからだで
みてきたことをはなしておくれ
しってることをもやしておくれ
ひとりのみずはぜんぶながれる
ほのおのいろははじめてのいろ
くらいけしきでみみをひらいて
おまえのくちはほしをつなげる
ねむらないかおゆびにからまる -
ものであふれ返った一人暮らしのアパートから、親戚のミキヒコ叔父が海外に行っている間に暮らしてもよいと引き渡された大きな一戸建てに引っ越した茜は、その家の床下で「ミトンさん」に出会う。
ミトンさんは身長50cm、赤い服を着ている老婆だ。果物が大好物で、すぐに眠ってしまう。
奇妙な存在のミトンさんに、なぜだか茜はすんなりと慣れてしまい、不思議な共同生活がはじまる。
ミトンさんと暮らすことによって、頼りない彼氏との関係がぎくしゃくしはじめたり、ずっと連絡をとっていなかった友人との関係が再びはじまったりと、茜の生活は今までと異なった顔を見せる。
ミトンさんは役に立つわけでも癒されるわけでもない存在だけれど、憎めず、愛らしい。