- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620107721
作品紹介・あらすじ
巨額の対外債務、高インフレの激震-巨大銀行と国家の暗闘がはじまった!国家の命運を賭け、市場を切り拓く新興国財務官僚たちロンドン、ワシントン、東京、トルコを呑み込むマネーの濁流。
感想・レビュー・書評
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2012.6記。
黒木亮氏の著作は何と言っても、圧倒的な「正義の味方」や「悪の権化」が出てこず、普通の登場人物が普通の難題に取り組んでいる姿に共感する。
「何でも調整、何でも合議」の連続で、時間だけが経っていき「やばいもうだめだ」と言いながらそのときなりの窮地を脱する。黒木氏はこのサラリーマン的なピンチの描き方が本当にうまい。
もうひとつ、この人の小説はしばしば世界が舞台となるが、各地の風景がまたいいんだよな。華麗な表現とは無縁だが、「ビジネスマンが出張して目にするレベルの外国の美しさ」の描き方が何とも言えずよい。
ストーリー自体は、世銀・IMFをいかにも戯画的に悪玉として描きすぎでは、という点はあるものの個人的にはエンターテインメントとして許容範囲かなと。相変わらずのテンポで読みやすく満喫させて頂いた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白いけどもっと面白くなるはず トルコの地理は良く分かった
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4〜5
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ヨーロッパとアジアの結び目に位置するトルコ。今の日本人には馴染みの薄い国かもしれないが、かつては東欧から中東に覇を唱えた大国であり、現代でもGDP世界17位のOECD加盟国である。しかしこの物語の主人公但馬の時代には、インフレに財政赤字、不安定な議会政治に繰り返されるクーデターと、かつての大国は先進国と後進国の間でフラフラしていた。そのトルコが数百億に膨らんだ対外債務がどうファイナンスするか、を巡って物語は展開していく。
相変わらず、黒木さんの筆致は精密である。シンジケートローンを巡る銀行実務も、調達側のトルコ政府の内側も、当事者達が行き交ったであろう街の風景ですらも、緻密に描き出すから黒木小説は面白い。
と、ここまではいつもの黒木節だけど、この小説を彩るのは銀行内部のどろどろした人間関係だろう。どの会社にも意地の悪い人や他人を蹴落とすことで生き残ろうとする人はいる。それは日本も外国も関係ない。それはわかっているけど、いや、わかっているからこそ、人の心の中の黒い部分が炸裂した姿に胸が痛んだ。フィクションとは書いてあるけど、誰かの身の上に降りかかった話なんだろうし。 -
トルコを巡る国際金融戦を描く。
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経済小説はあまり読んだことがなかったのですが、臨場感があり一気に読めました。専門用語もわかりやすく解説してあり、トルコの歴史も随所に堪能できました。
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銀行の海外駐在員の仕事も、結構大変ですね。
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専門用語に負けた~ ^^;
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ソブリン債務なんて言葉は新聞などでしか見たことがなかった。トルコ(赤い三日月)に融資するため、トルコや社内の抵抗勢力を相手に奮闘する銀行マン。格好いいです。人生をかける仕事として、面白そうです。大変そうだけど。
著者は学生時代、箱根駅伝に二度も出場されたそうです。文武両道の方って実在するんですね。