- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620107899
作品紹介・あらすじ
『レディ・ジョーカー』(1997)『太陽を曳く馬』(2009)に続く、"合田雄一郎"シリーズ最新刊!
2002年クリスマス前夜。東京郊外で発生した「医師一家殺人事件」。衝動のままATMを破壊し、通りすがりのコンビニを襲い、目についた住宅に侵入、一家殺害という凶行におよんだ犯人たち。彼らはいったいどういう人間か?何のために一家を殺害したのか?ひとつの事件をめぐり、幾層にも重なっていく事実。都市の外れに広がる<荒野>を前に、合田刑事は立ちすくむ― 人間存在の根源を問う、高村文学の金字塔!
冷血(上)の感想・レビュー・書評
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フィクションでありながらノンフィクションを読んでいるような気分にさせられる小説である。
とにかく描写が細かくリアリティにあふれる。
これだけ事細かく書くためにはどれほどの綿密な取材をしているのだろう。想像するだけで気が遠くなる。
高村薫の作品は「李歐」以来で本作が2作目。
「李歐」はもっとドラマティックで息をつかせぬ展開だったような記憶があるが、本作はどちらかと言うと淡々と語られる。
犯人側になった事件の顛末と警察側の捜査状況が事細かに描かれている。上下二段組みのうんざりするほどの長さだが、決して飽きさせるようなことはなく気づけば上巻が終わっていた。
資産家のエリート歯科医師夫婦とその子供たちの生活と、底辺を生きている犯人達の生きざまの対比が印象的。
本来ならば全く交差するはずのない両者が、惨殺事件の被害者と犯人と言う形になって交わる。
犯人の動機は一体何なのか、疑問を呈する形で上巻は終わっている。
早くも下巻を読み始めた。
☆5つにするか最後まで迷ったけれど、最終的な結論は下巻にて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
上下ニ段組みの本である。
故に、長い。読み応えがあり過ぎる。
ニ段組みの本なんて、いつ以来だろう?
高校時代に読んだカッパノベルズの高木彬光以来か?
はたまた祥伝社ノンノベルズの平井和正ウルフガイシリーズであろうか。
いずれにせよ、文字の小ささとページ一杯に詰まった字の多さで読むのに最初苦労した。
が──。
この本、評判どおりに面白い。
冒頭は中学生女子高梨あゆみ目線での語り口で始まる。
その彼女が十三歳、子ども以上、メス未満になった誕生日の朝の感想である。
そこから場面は一転して、彼女とは全く関係のない前科者、戸田ヨシオの語り口になる。
冗長すぎるほど、細かい日常や心理描写が続くのだが、この記述が何故かけっこう飽きない。
この男はいったいなんなのだ? と興味が湧いてくる。
これからどうなるの? って感じだ。
そしてもう一人の男、井上カツミの登場。
こやつがまた、得体が知れない。やることなすこと何も考えていない。
これをしたらどうなるのか? なんて全く意に介さない。
ヤクでもやっているのか? 本能のまま行動する。
ひょんなことで、戸田と井上が合流し、ハチャメチャな犯罪をし始める。
その延長線上に、最初の登場人物である高梨あゆみが突如引っ掛かってくる。
三人の視点が容赦なくあちらこちらへと飛ぶので、少し読みにくい。
で、そこから悲劇が起こる。一家強盗殺人事件。
強盗殺人事件なわけだから、単純に面白いなどと書いてはいけないのかもしれないけれど、面白い。
ページをめくる手がどんどん早くなる。
しかも殺人には深い動機などなく、「いやあ邪魔だったからついみんな殺しちゃってよお」てな按配なのだ。
いったいどうなっていくのだ、この物語は?
というところで、上巻は終了してしまう。
まったくもって、罪作りな本だ。
私の予約ミスのせいで、上下巻の連携がうまくいかず、下巻はなんと50人マチである。
何ヶ月先になることやら……。
頼むから20冊ぐらい購入してくれよなあ図書館どの、と祈るような気持ちだ。
本屋で思わず新刊を買いたくなるほど、早く続きが読みたい。-
え~、上下二段組みなんですか・・・(^_^;)
私も図書館予約中ですが上下セットで予約してしまいました。
ソロモンの偽証はバラバラで予約してくださいと言われましたが、この本はお咎めなし。
あー、でも読み切るかな。
ちょっと不安になってきました。
でも楽しみです(^_-)-☆
ちなみに私の利用図書館、田舎のせいなのか、ネット予約不可のせいなのかこの本も予約5人位しか待ってません(^_^;)2013/02/04 -
vilureefさん、コメントありがとうございます。
上下二段組みで、かなり文字数が多いです。
最初のほうは視点がポンポン変わるので誰の話か分かりにくい面もありますが、
途中から悪役二人のキャラと行動が興味深くて引き込まれます。
ですので、二巻同時でも読みきれると思いますよ。
とにかく、上巻を読み終え、犯人も事件の詳細も呈示されているのに、この後、分厚い下巻でどうやって話をつないでいくのかが気になって仕方ありません。
ああ、早く下巻が読みたい!!
2013/02/05
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犯罪者たちの思考にあいた穴ぼこと、国道沿いのすかすかの風景。人々の暮らしを隔てる階層格差と、警察という組織の行動。作者が膨大な言葉をつくしてこれらを描写するのは、これら荒涼や不毛というものを、「要点をまとめて」表現してしまうことで、その実体から外れてしまうということなのだろうか? 下巻の犯行動機をめぐる章への助走であり、どこにたどりつこうとしているのかわからない犯罪者たちの行き当たりばったりの彷徨や、通報から始まる捜査手順の一部始終を精密にただただ追っていく描写が続くのだが、圧倒的なディテールが面白く飽きない。
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前半の登場人物ひとりひとりの細かすぎるくらいの心理描写の積み重ね。
一転して後半の合田雄一郎を始めとする刑事たちの捜査状況の時系列を追った丹念な書き込み。
一見ムダにも思える描写の積み重ねが物語にリアリティを感じさせる。
これぞ高村薫の真骨頂。
今はただ早く下巻を読みたいっ!!
それにしても…
他の作品でも感じたことだけど、どうやって取材していくんだろう。
井上のパチスロ打つシーンや戸田のとっさにGT-Rを値踏みするところとかリアル過ぎる。
毎度のことながら隅から隅まで手抜きの無さに感服。
さすがは高村薫としかいいようがないわ。すごい。 -
高村さんといえば、その昔「マークスの山」「レディージョーカー」で「このミス」第1位になり、私の作品をミステリーという枠で、ひとくくりにしてもらいたくないとかなんとかで、その後はその選定に合わないように作品の発表の時期をずらしたり、また本当にミステリー要素のない、哲学的な作品になっていき、しばらく遠ざかっていた・・・
今回は私の好きな高村作品で、しかも合田雄一郎シリーズだ。
私は「レディージョーカー」以来、15年ぶりだそうだ。
15年たつと人間も、変わるし合田の変化もおもしろい。
その当時は、いつも真っ白のスニーカーで、家庭も顧みない事件一筋の男だったのに、今回の合田はなんと、野菜作りが趣味なのだ。
早朝4時に起きて、共同農場の作物の収穫などを手伝ってから、仕事に行く。
時には、肥料のにおいが手に染みついていたりする。びっくり! 定年後の趣味のためという普通のその辺のサラリーマンと同じじゃない。人間くさい合田さんである。
とまれ、話は進んで、後半「下」に続くのでありますが、段取りが悪くまだ順番が回ってこないのです(しくしく) -
感想は下巻で
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高村薫は特別な作家だ。これほど濃密に描写できる作家はいない。
その作家が「ことば」の限界を問う。
カポーティの同名作と同様に理由なき殺人事件が舞台。
捜査の過程で事件が再現されていく。それは調書であったり、論告求刑、弁論要旨、判決文だったりする。
それらは事実を正確に表しているのか?
主人公の合田は煩悶する。
「ことば」で表される動機や犯意はすべてを表現できているのだろうか?
もちろん裁判では「ことば」で表現できなければ、つまり出来事を文章化できなければ一歩も先に進めない。残された文章だけが事実として記録されていく。
それは真実なのだろうか?
敷衍して「人の存在意義」を説明することはできるのか? そも説明する必要があるのか? 説明できなければ存在意義も無いことになるが、そんなことはないはずだ。
作者はインタビューで「私は人間が言葉ですべて説明できると思いすぎているのが気になっていました。ひとりの人間が罪を犯す、それによって人が死ぬ。それらを言葉で断定して理解した気になることに、もっと慎重になっていい」と語っていた。
現代は「はじめに言葉ありき」の西洋文明の支配下にある。その根本に向き合う傑作だ。 -
まるで透明な瓶からアリの巣を観察するような、物事のある断面を書き表す高村節。今回は管轄署に立てられた捜査本部のしくみでしたね。まるで自分がその中の一員になったかのような現実感。そして被害者犯人の人物像の光の当て方。警察物が好きな人にはたまらないんじゃないかと思うんですが?
長いのが嫌な人にはお勧めできませんが。 -
歯科医一家殺人事件は、なぜ起こったのか・・・
歯科医一家の日常や、犯行に及んだ二人の男の行動が淡々と描かれているだけなんだけれど、なんだか迫力がある。
この、何気なく大した動機も無しにやっちゃうトコが、今時のリアルか。
高村薫の作品




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