だから荒野

著者 :
  • 毎日新聞社
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感想 : 254
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107974

作品紹介・あらすじ

46歳の誕生日。身勝手な夫や息子たちと決別し、主婦・朋美は1200キロの旅路へ-「家族」という荒野を生きる孤独と希望を描き切った桐野文学の最高峰!

感想・レビュー・書評

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  • 46歳の専業主婦が家出するロードムービー。
    年が近いから感情移入。
    すらすら読めて面白い。

    とにかく家族に思いやりが無く、ひどい扱い。
    こりゃ、家出もしたくなるよなぁ。
    朋美が少しずつ小ざっぱりしてきて小気味よい。

  • 正直ちょっと物足りなかった。
    桐野さんと言えば、毒々しい表現で人間の裏の部分を鋭利に描く印象を持っていた。
    しかし、この作品はぬるま湯に浸かっている家族の不毛な内輪揉めを見せつけられている感じでなんとも居心地が悪かった。

    専業主婦の朋美は自分の誕生日に家族で出かけてレストランの席で、わがままな家族にほとほと嫌気が差しそのまま出奔する。
    着の身着のままで長崎へと向かう朋美を追う姿はさながらロードムービーのよう。
    一方、東京に残された夫の浩光が右往左往する姿はなんとも頼りない。

    まず、夫から渡される生活費の20万に不満を抱く朋美に疑問。
    家賃や固定費を除いて自由に使える生活費が20万あれば十分じゃないか?
    そりゃベンツのワゴンを簡単に買えるような夫という時点で生活レベルが違う。
    庶民の私はどうすりゃいいんだ。
    わがままな夫とは言え、食うに困るわけでもなしDVがあるわけでもなし。
    ゲーム依存の子供は心配の種だろうけど、引きこもりでもなく。
    一体何が不満?
    あえて言えば、退屈な毎日ということか。

    誰にも共感できなかった。
    この小説ってどんな人をターゲットに書かれたんだろう。
    新聞小説だったみたいだけど。
    うーん・・・。
    登場人物全員に「喝!!」を入れたくなるような作品。

  • 一歩間違えると、これは自分かもしれない。そんかことを考えながら、平凡な主婦の突然の出奔をハラハラしなが読んだ。
    こんな風に行動できる人はほぼいないだろう。
    だから小説があるのだな。2019.5.2

  • 感動のハッピーエンドで終わるわけでもなく、びっくりするようなラストもなく、痛快でスカッとするラストでもない。唐突に終わってモヤっとしたまま。
    でもそれが桐野先生。
    結局現実ってこんな感じなんだよねって妙に納得してしまって、消化不良感を持たせないすごい技。
    今回も一気に読んでしまった。
    専業主婦の朋美が自分の誕生日に堪忍袋の緒が切れて突如出奔する話。世の中の家族は主婦を軽視しすぎだ!と朋美に同情して憤って一緒にエキサイティングした前半。
    後半は、いろいろな出来事があり、右往左往したけどなんとなく収まったという。雨降って地固まるといいな。

  • 家族に嫌気がさし
    突然家出をする!という主婦の話。
    途中かなり珍道中。
    主人公のあまり世間知らずで、
    酷い目に合ってしまうところと
    旦那さんが転落の一方(ここが好き)
    ちょっと笑ってしまった
    今回ふた周りも奥さん成長したんじゃないかな。

  • 自分の楽しみを最優先する身勝手な夫、彼女の家に入り浸る大学生の長男、部屋に籠ってゲーム三昧の高校生の次男。主婦の森村朋美は46歳の誕生日の夜、堪忍袋の緒が切れて突然車にて家出する。東京からはるか遠く、初恋の相手が住んでいる長崎を目指し、一人旅に出るが・・・
    朋美の思い切りのよい行動には、爽快感すら感じるが、夫の立場だったら、子供の立場だったらと考え出すと微妙なところも。明日は我が身とならぬよう気をつけなければ。

  • こんなだんなと息子たち、いらなーいと思ってしまうよなぁ。
    相手のことを考えなさすぎ! これじゃ、一緒に生活する意味がない。
    家出してゴルフセットを売るあたりは
    「いいぞ〜」
    と応援したくなったけど、ちょっと物を買い込みすぎのような。先の予定が立っていないのなら、食を最優先するもん、あたしなら。
    ただ単に食い気の問題か?
    他人を信じてみたいけど、これではちょっと。
    自分である程度はなんとかできる能力というか度胸というかも必要なのね。

  • 夫や子供は確かに身勝手で酷いと思うが、
    それを言い訳に家事や教育をおざなりに、
    半ば放棄してきた朋美もお互いさまで、あまり同情できない。
    特に食事がひどく、子供があんな風になってしまった一因でもあると思う。

    そんな朋美が山岡に出会ってからは、きちんとした敬語を使い、
    真面目に面倒を見るようになったのは少し違和感を感じた。
    なんだ、ただのグウタラな人じゃなかったんだ。

    ともあれ長崎への旅は、平々凡々な毎日を送っている私には
    想像もつかないような事が次々と起こり、刺激があって面白かった。
    最後に救いの兆しが見えたので、昔ほどの毒々しさはなかったな。
    東京島以降の桐野作品は個人的にはいまいちだったが、
    これは久しぶりに大いに楽しめた。

  • ダンナから、家事を何もしないと言われる朋美は、私と似てるかもしれない。家出して、いろんな人に助けられたりだまされたり。続きが気になって気になって。やっぱり家族っていいなと思う。

  • 荒野の旅に出てくる荒くれ者は、パッと見ると3人。
    主人公を「ドライバー専門の風俗」と勘違いして、下心から声をかけてきた男。まだこれは欲望に素直で詰り甲斐がある。
    2人目は、旦那にほっぽり出された、と悲壮感を漂わせて主人公に近づいてきた女。元外車のディーラー勤めと語っていたが、シートに背中を着けなかったのは自分の痕跡を残さないため?40デニールのストッキングを指定する厚かましさから「なんか臭う奴」と思ってたけど、多分、外車を海外に売り捌く違法ディーラーの仲間で、さしずめ“仕事中”か逃亡中に仲間割れして投げ出されたのかな。下関に行くといいつつ宮島から華麗にUターンするあたり、最初から大阪に戻りたかったのかな。
    最後は、助けてくれた恩人ではあるけど、恩人の恩人であるはずの先生から200万円ほどネコババしてた亀田青年。先生においそれと近づいておきながら、やってることは1番荒れ狂ってる。とはいえ、先生の講演に涙してる一面を描かれてて、自分が騙している人を尊敬しつつないがしろにするという、人間的にも心理的に破綻してる脆い人間な気がする。

    長男、次男の語る言葉には2012年の連載当時の流行りや流行語が見え隠れして、時代を覗き見るのが楽しかった。ヒロミツは多分、今で言うオジサン構文を使いまくるダサ親父っぽいかな笑

    男のダメ具合でいくと「猿の見る夢」も良かった!

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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