アトミック・ボックス

著者 :
  • 毎日新聞社
3.87
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本棚登録 : 386
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108018

作品紹介・あらすじ

28年前の父の罪を負って娘は逃げる、逃げる…「核」をめぐる究極のポリティカル・サスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに手にする池澤氏の新作は手に汗を握るスリルに満ち満ちていた。震災後文学として見事エンターテインメントに昇華している。共にこれは『死の島』へのオマージュだ。幾つもの終わりを用意した『死の島』での問いかけを引き継ぐべき使命を担い、一つの回答を示している。主人公の美汐は嘗て原爆開発に携わり後悔の末に亡くなった父の霊魂を運ぶカロンの艀だ。政治家どもの理屈に屈せず、命を張って守り抜いた最後の決断に光が射す。最後はみんないい人で丸めているのは願いの表れ。結局は人間一人一人の心の有り様に賭けるしかないのだから。

  • 雑誌「ダヴィンチ」にて、キトラボックスが紹介されていて、その著者が書いた原子力ミステリーがあるってことで読んでみた。
     
     瀬戸内海の小さな島で、漁師の父を持ち、四国の大学で講師の仕事に励む娘。
    末期ガンの父親が死ぬ間際に、娘に「私を殺すように」と頼んだ理由とは?
     
    実は若い頃に、父は東京のある場所で働いていた過去があった。
    母親さえも知らされていなかった、父親の過去とは?それが理由で警視庁公安から追われ、逃げる娘の行く先は?
     
    明かされる、国家機密レベルな父親の秘密とは?

    って感じかな?
    マジで、面白いです。

  • 一気読み。
    「あさぼらけ」の正体はあんまり驚かなかったけれども、それが実は…という展開にはちょっとどっきり。

    実際にありそうだ。

  • 「一人の死は悲劇だが、百万人の死は統計に過ぎない(byアイヒマン、スターリン)」3.11を受けての核開発にまつわる話だが、上記セリフが頭を過った。池澤小説としてはエンターテイメント性が高いが、その裏に現代に対する危機感も透ける。現実が小説に追いつく!?

  • シリアスとエンターテインメントがちょうどいい塩梅だった。

    手に取ったのは、目次で「犬島」の文字を見たから。瀬戸内が舞台なのかな、くらいの軽い気持ちで。

    それが、読みはじめたら止まらず…久しぶりに一気読みをしてしまった…今もまだ余韻のなか。

    科学的なことも政治的なことも疎いけど、知っている島や町を美汐が逃亡していくのにドキドキしたしおもしろかった。権力に対して弱者である個人が勝つ、というのも愉快。

    …でも、原子力発電所は今も稼働しているし、核保有国が存在するのもフィクションではないんだよなぁ。

  • これって…どこまでがフィクションなの!?(冷汗)
    「あさぼらけ」の正体とその犯した罪が、そのまま現在の日本と世界情勢に繋がって理解され、戦慄した。
    核保有に関する問題は、アメリカの核の傘の下にいる日本にとって非常にデリケートな問題だ。核を持つ用意だけはしておいて、実際には持たない。果たしてそれが日本の採るべき選択肢なのか?本書を読んで、不勉強な私にはますます分からなくなった。
    ま、それはともかく(笑)、扱うテーマに関わらず、池澤氏の書く文章はやっぱり好きだな。
    2018/08

  • 初めましての作家さん。
    知ってはいたけど、今まで手に取る事が無かった。
    他の方の一気読み等のレビューを拝見して手に取る。
    納得の一気読み。
    父親の遺書から物語りが始まっていく。

    原爆、福島の原発、
    とてつもない大きな力
    つくり出したのは人間。
    でも、時として人知を越えてしまう。
    原発の問題にしても、危険ならば廃止。
    そう簡単な問題ではないと。

    なんだか色々考えさせられた1冊。
    広島の原爆ドームを訪れる予定もあり、
    個人的に、なんだか色々タイムリーな1冊だった。

    2014年 2月10日
    装丁:木村裕治
    装画:影山徹

  • 自分には寿命を生き切る資格がないから、と生命維持装置を切ることを父が娘に頼む場面から始まる物語。
    タイトルから察せられるように、その理由には原子力が絡む。
    正直に言うと理系の理論がさっぱり理解出来ないので、小説でそういった場面が出て来ると挫折しがちなのだけど、この小説はそれでも全く苦にならずに読めた(理系というほどでもない常識なのかも知れないけれど、私にとってはどうしようもなく「むつかしいりろん」なのだ、そこは許して下さい)。
    理由の一つは、おそらく池澤夏樹はこの作品をはっきり冒険小説と意識して書いていて、それが最初から最後まで貫かれているから。
    物語が面白いので、立ち止まる気がしない。
    そしてもう一つの理由は、池澤夏樹の人間への深い愛情と信頼を感じられるから。
    彼はおそらく、人間の力や判断は信じていない。
    けれど、人の美しいところは理性を超えたところで信じているのだと思う。
    それが、クライマックスで黒幕が主人公に言う台詞に表れている。
    顛末には賛否あるだろうし、私も納得し切れないところはある。
    しかし読後感も清々しく、力強いいい小説を読んだ、と思える作品だった。

  • 池澤夏樹「アトミックボックス」読んだ http://books.mainichi.co.jp/2014/01/post-e716.html … はーおもしろかった。。!今年度エンタメ部門第1位(なんのランキングだ?いま作った) 原爆設計、被曝、核バランス、良心、信用。国家の威信と日々の生活。さらりと読めるけど訴えているものは重い(つづく


    思想と思想の対決、お互いが自分にとっての倫理を全うしようとする。池澤夏樹にしては珍しい、叙情を抑えた硬質めの短文を重ねる文体と早いテンポがいいし主人公が手放しで魅力的なのも初。この人らしいまっ直な若さも勇気も、荒唐無稽にならないぎりぎりで大胆に話を進めて行く。やー楽しんだ(おわり
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    池澤夏樹の「アトミックボックス」http://books.mainichi.co.jp/2014/01/post-e716.html … を読み始めた。まだ20ページくらいだけど、これは! 池澤夏樹は突き抜けたな。文体はやや硬質めでテンポがいい(どちらも池澤夏樹にしてはとても珍しい)「わたしは月と潮を味方につけて海に出て行く」。。。

  • 父親から、死に際に渡されたCD-ROMが原因で、公安警察から追われる身になった娘。

    警察から逃げながら、CD-ROM内の文書(父の遺書)を読むと、父親が若い頃 日本国内に極秘に進められた原爆開発計画に携わっていたことと、そのプロジェクトからこっそり持ち出されたデータが入っていて、これらの事実をどう扱うか、娘に判断を預けると書かかれていた。

    判断がつかないまま、国産原爆開発計画を主導していた人物に会いに、広島から東京まで、警察の監視をかいくぐっての逃亡劇になっていて、ハラハラしながら楽しく読める。

    特に、瀬戸内海の小島づたいの逃走は、歴史と観光と離島の暮らしの紹介をかねていて、面白い。

    ただし、登場人物は皆同じタイプの人間で(芯が通ったカッコいいタイプの人間)、リアリティーや世界の奥行きを感じさせるところがない。

    たぶん、そのせいで、「核」を主題に扱っていながら、「核」の忌避感や贖罪、原爆や原発に対する感情にしっかりとした質感がなく、ふわついた書き割りになっているように思う。

    原爆プロジェクトの同僚が言う、「ずっと運転しつづける発電所に比べたら、出番を待って眠ったままの爆弾の方が作る方が気が楽さ」という言葉は、自分のいる世界が、尋常ではないことを端的に示していると思うけど、その言葉の寒さを感じることがないまま、読み終わってしまう。

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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