悲嘆の門 (下)

  • 毎日新聞社 (2015年1月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784620108094

感想・レビュー・書評

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  • サイバーパトロール会社でアルバイトをしている大学一年生の孝太郎。ビルの屋上にあるガーゴイル像が毎日少しづつ動いているという話を調べ始める元刑事の都築。ホームレス失踪事件を調べていた孝太郎の同僚が姿を消し、調べを進めるうちに孝太郎はガーゴイル像に辿り着く。孝太郎と都築が出会い、そこから物語が始まっていく。
    『言葉』と『人生のエピソードという物語』が生まれている世界があるという。言葉という見えないものが、けれど確実に積もり積もって人の心を侵食し、強すぎる渇望が人を飲み込もうとする時、とんでもない魔物が生まれる。
    インターネットが普及して、これまで人類が使ってきた『言葉』が大量に溢れて制御がきかなくなっている。SNSに書きこむだけだから、匿名だから、垂れ流してるだけだからと。だけどそれは確実に書き込んだ本人の心に降り積もっていき、心を侵食するのだ。言葉という「想い」の重なりである、人の業。
    かなり壮大なファンタジーで、途中から付いていくのが必死でした。そして、最後の方は複雑かつ難解で、私の中でたくさんの??が飛んでいました。ファンタジーは苦手じゃないけど、宮部みゆきのファンタジーは難しいなぁ。

  • 思うままに、悪を狩れ!

    日本を縦断し、死体を切り取る戦慄の猟奇殺人事件。
    サイバー・パトロールの大学一年の孝太郎
    元刑事の都築の前に〝それ〟が姿を現した!
    「連続切断魔」の正体は?
    「悲嘆の門」とは何か?


    憧れの社長・山科鮎子を殺された事でガラと取引をした孝太郎
    左目の視力を失った代わりに、言葉を「視る」事が出来るようになる…。
    若さゆえの一途な正義感からガラに嵌ってゆく。

    陽気な女性が嫉妬に燃える殺人者
    親切な花屋が血を欲しがる変質者
    闇にまぎれて、私的な制裁を加え罪を片付けてしまうと、
    遺族の心のしこりがほどけることもないのに…。
    家族も友人も職場の同僚も…。
    孝太郎がどんどん怪物化する姿は痛々しかった。
    狩らずにはおられないという自らの渇望を抑えられない…。

    ネットの力が大きい事、ネットが社会を根本的に変えた事。
    情報が錯綜していて、何が正しいのか、正しくないのか。
    溜まり、積もった言葉の重みはいつかその発信者自身を変えてゆく。
    書き込んだ言葉は、その人の内部に残る。
    誰も自分自身から逃れることは出来ない。
    人間の業・言葉の力・物語の力

    ファンタジーが苦手で、英雄の書も苦手だった。
    だが、異世界のシーンが少なかったので救われました。
    また、復活した都築の真っ当な姿や考えが救いだった。
    孝太郎も救われたね。

    現在の社会問題をこれでもかって取り上げて
    これだけの伏線をしっかり纏め上げる筆力は凄いです。
    「おまえたちの世界には、私以上の怪物が満ち溢れているぞ」
    読了感は怖い…。

  • 冒頭───
    「お兄ちゃん、元気?」
     だらしなく足を投げ出してテレビの前に座り、一美が問いかけてきた。
     孝太郎はキッチンのテーブルにつき、天板の上に自分の両手を置いていた。指を動かしたり、握ったり開いたりする。その動きを目で追って、左目の状態を確かめていたのだ。
     瞬きは普通にできる。すぐ目が潤むとか、逆に目玉が乾きやすいとか、痛みがあるとか、そんな問題は一切ない、ただ見えない。それも、瞳の奥に真っ黒な紙を貼り付けられたかのように、のっぺりと、暗いというよりはまさに黒いのだった。 
    ──────

    上巻の勢いにつられて、下巻に突入したのだが───。
    うーむ。どうなのだろう。
    物語が進むにつれてファンタジーの度合いが大きくなり、現実の事件との整合性を頭の中で理解するのが難しくなっていったというか。
    基本的にファンタジーは得意な分野ではないので、実際の人間世界とSF的な不可視の世界を融合させるのに抵抗があるのですな、私の場合。
    後半は、まさに「指輪物語」とか、そういう世界観になってくるので、読みにくくなってしまった、私の場合。
    もちろんファンタジーが好きな人は、こういった展開になっても付いてゆけるのだろうが。
    そんなわけで、孝太郎が「生きてゆくよ」と呟いても、あまり感動が湧いてこなかったです、はい。

    やはり、宮部さんの作品では、リアルな人間世界の問題を奥深く追及した作品のほうが、私にはあってるなと思った次第です。
    ではでは、さようなら。

  • 火車的なミステリーかと思ったらファンタジーで拍子抜け。さきが気になる展開ではあったが、ファンタジーの世界観によく入り込めなかった、、、

  • 私がお腹に子を宿していた時のこと。ある日、造園業者さんが、周囲の5-6軒のお宅の植木の消毒をしにやって来ました。予約してあったことを知らなかった私は、当日、驚きはしましたが、家の中で過ごしていれば問題ありませんでした。ところが、隣家の奥さんが怒り出したのです。「Pさん(私のこと)は妊娠してるのに、事前に連絡もなく消毒薬を撒くなんて、常識がなさすぎる‼︎」と。そして業者に直接そう言って、苦情を申し立てたのです。私は別に何とも思ってないのに。業者さんもご近所の方だったので、それ以降なんかギクシャクしちゃって…正義感って、怖いですね。
    昔の話はさておき、この本を読んで、正しい社会のために自分にできることは何だろう…と改めて考えるきっかけになりました。不穏な世の中ですが、出来るだけ穏やかに、真っ直ぐに、正しく過ごしたいです。

  • 存在するけど実在しない概念的な話。分かったような分からないような異次元の話にちょっとついて行けてないようないけてるような。時間が経つとともにこういう事なのかと感じることがある。

  • 現代の犯罪の闇的な内容を求めて読み始めた上巻がまさかのファンタジーだったという衝撃。
    そして迎えた下巻ですが。
    連続殺人に関してはまだ犯人は誰だ!?の期待がありドキドキしつつ読めましたが。
    でも犯人はやっぱそうなのかーという想定内のオチでした。
    異世界の部分に関しては何を言ってるのかさっぱり状態で(笑)
    興味がないから文字が頭に入ってこず。
    悪いヤツが恐怖に慄き消えていくのは読んでてスッキリする部分ではあるけど現実問題容疑者が消えてしまうと残された遺族にとって不愉快極まりないよね。
    最後に彼女が生きてた事がホッとできたので★3つで。

  • 異形の怪物とか現実離れした世界とか出てくる段階で、ちょっと私の興味は薄れてきているものの、孝太郎の左目の特殊能力+連続殺人事件の謎という部分は嫌いじゃない。部分的に楽しめた。

    私、上巻では孝太郎のこと、大人っぽいとかジジくさいと書いたけど、人の意見に耳を貸さず突っ走ってみたり、自分が正義!みたいな思い込みや無鉄砲さは、やっぱり青いな、若さかなと思った。

    「ガラと一緒に行く」「もう帰れない」なんて自分勝手に決めるな!と叱りたい気持ち。心配してくれる親や友人のことも少しは考えなさい。自分に酔ってるんじゃない!

  • 孝太郎の変化が心配で、痛ましくて。
    優しくて、真面目だからこそだもの。
    人の中には、いろんな自分がいるものだけれど。
    終盤に向け、だんだん読むのが辛くなっていって。
    言葉とか、概念とかについても、いろいろ考えてしまう。
    でも、それでも、みんな、生きていくしかない。
    ううん。
    生きていくことができるのは、ありがたいこと。

  • 連続切断魔「指ビル」の事件と、女戦士ガラとのダークファンタジーとの両軸で物語は回っていきます。
    この部分は、「言葉の残滓」にあてられて辟易しました。

    言葉は残る。言葉は消えない。そして溜まっていく。
    山科鮎子の言う、単なる憂さ晴らしでも書き手の中に残って、溜まって、発言者を変えていく、誰も自分自身から逃れられない、というのは真理だと思う。

    悲嘆の門への下りはすごいバッドエンドな予感で、えーってなりましたが、そこは戻って来れてよかったし美香が無事で良かった。
    すべてが解決、万事OKってとはならないけど、それが現実的な落としどころだと思います。
    ちょっと物足りない感じはしたけど。

    真菜ちゃんの母親の言葉の残滓が温かく美しい光輪であることが、この物語の最も美しく優しいところです。
    ここで全てが救われた気がする。


    「英雄の書」の続編だということを読み終えてから知り、知っていればもっとファンタジー脳で読めたかも。
    「英雄の書」の内容をもはや覚えてないのでどうしようもないけど、現実の物語にした方が読みごたえあったかも?

  • ファンタジー苦手民の感想ですm(_ _)m

    上巻よりもさらにファンタジー度があがっていて、あまり馴染めずに読了。

    美香が助かってよかった!
    あと、まきさんがおケイと交際していた過去があったことが明かされて良かった。まきさんのこと左目で見て欲しかったな〜(笑)

  • 一気に読み終えた

  • なんとか上巻を読破しましたが、下巻はもう内容がすごすぎて疲れました。ところどころ曖昧なまま読み進めました。自分には、ちょっと向いていないストーリーでした。

  • なかなかに壮大なスケールの話だった。善良な大学生、孝太郎が巻き込まれる異世界。もう孝太郎が死んじゃうかも、と何回も思わされてハラハラした。
    上巻にある、山科社長が孝太郎に話した『言葉の重み』がとても印象に残った。今は匿名でSNSなどで有名人を誹謗中傷したり、時には人を死に至らしめるようなひどい傷つけ方をして追い詰めるような事件を耳にする。私自身はあえてSNSには入らずに身を守っているけれど、言葉の持つ毒、刃について人はもっと良く考えたほうがいいと思う。
    下巻で美香があんなことになって、残されたガク先輩の今後を思うともうやりきれない気持ちになったけれど、大どんでん返しで美香が助かり本当にほっとした。でもその一方でガラが石化して悲嘆の門の門番となったことは衝撃的だった。救うもの、救われないもの、助かるもの、助からないもの、いろんな表裏一体が感じられる結末だった。
    人の知らない世界、届かない世界ってきっとあるんだろうな。

  • そう言えば、英雄の書はかなり前に読んでほとんど覚えてなかったけど繋がった。とにかくこの作家さんは、どんな話も徹底的に極限までぶっ込んで書く人だから、読む方も相当な覚悟で読まないと付いていけません。

  • 連続(?)殺人事件、ネット上での裏サイト。それを見張るクマーという会社。
    普通の大学生だった主人公。現役を退いても事件が気になる元刑事。
    人の表の顔と裏の顔。宮部さんの小説は、人物描写が細かくて鋭い。

    表に出さずとも心のうちの感情や発してしまった”言葉”の中に毒や悪は誰しもある。
    その”言葉”の塊を視ることができたら… 怖すぎる。
    正義という建前で自ら罰して満足しても、それは自分の欲望を叶えているだけかもしれない。
    読みこなせなかったかもしれないが、壮大なファンタジーの中に重い哲学を感じた。

  • 2017.11.28 読了


    いや~ 時間かかったわ~

    やっぱ この話 苦手だわ~



    宮部さんの 現代な話が 好きで、
    パラパラッと見たら 現代っぽかったから
    読み出したんだけどなぁ。。。

    まさか こんなにファンタジーとは。


    100%理解できたか 自信ないし、
    なんとなく読後感も モヤモヤ。。。

  • 小さい頃、冒険物語を読む間、ドキドキ、ワクワクのドキドキではなく、文字通り心臓がドッ、ドッと打つ音が聞こえていた。
    同じことが、この作品を読んでいる間、起こっていた。宮部さんモノはどれも、登場人物が魅力的過ぎて…。

  • 憧れの存在だった女性が殺され
    仇を討つためにガラの力を得る契約を結んだ主人公
    その力を使って連続殺人事件の犯人を裁こうとする。
    「狩るモノ」になってしまった青年と
    昔ながらの足で真相へ迫ろうとする老、元刑事

    現実とファンタジーが違和感なく溶け合わさった世界は
    さすがの宮部作品
    ラスト、ちょっと光が見える終わり方でよかった。

  • 言葉が蓄積される、という考えには共感。
    発したという事実は自分の中に残るので、例え外から見たら発言者が自分とは一致しなくても一緒だと思う。

    ネットの世界に詳しくないが、クマーのような会社は実際にあるのだろうか。
    謎解きの部分が甘い感じがした。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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