ストロベリーライフ

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108230

感想・レビュー・書評

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  • 望月恵介37歳。妻と5歳の息子がいる。
    大手広告代理店を辞め、グラフィックデザイナーとして独立して2年。
    めっきり仕事が無くて、鳴らない電話が恐ろしい。
    そんな電話が鳴った。仕事の電話かと期待したが、静岡で農家をしている
    実家の父が倒れたという母からの知らせだった…。

    父の病気は脳梗塞で一時命も危ぶまれた程、幸い命は助かったが、
    後遺症は残りリハビリにも回復にも時間が掛かる。
    付き添いで大変な時に母はハウスの世話に行く…トマトは今も大変なのか…?
    親はいつの間にか苺の栽培をしていたのだった。
    腰痛を抱えた老いた母の為、日々実る苺を放っておくことも出来ず、
    イヤイヤ手伝っている内に、農業なんてかっこ悪いと思っていたはずなのに、
    あんなに嫌だと思っていたはずなのに、苺栽培に魅せられていく。
    恵介が悩みながら思考錯誤しながらも頑張ってゆく姿良かったなぁ。

    苺農家の大変さ!
    苺に限らずなのでしょうが、作物を育てるという事は生き物を育て上げるという事で、
    やり始めると、やる事の多い事!多い事!
    そして、自分の都合通りにはゆかず、天候にも大きく作用される。
    でも手塩に掛けて育て多分達成感も素晴らしいみたいですね。
    そして、現代の日本の農業の問題提起もしてると思いました。
    最初、展開が気になり、文章もとっても読み易かったので凄く物語に引き込まれました。
    でも、少し中盤長く感じてしまいました(*T^T)
    しかし最後には、これからの農業の在り方、家族の在り方を温かく描いてて
    ほっこり気持ちが温まりました。
    農業に携わっている方々って本当に凄いです(*´ `*)

    • honno-遊民さん
      「地域活性エンタメ」と宣伝文句のある、黒木伸一著『脱・限界集落株式会社』を読んだばかりで、しのさんのこのレビューを読んだせいか、最近はお仕事...
      「地域活性エンタメ」と宣伝文句のある、黒木伸一著『脱・限界集落株式会社』を読んだばかりで、しのさんのこのレビューを読んだせいか、最近はお仕事小説と言われるジャンルで、農業あるいは地域をテーマにした作品が増えているよう感をいだきます。
      しのさんのレビューに触発され、この小説も是非読んでみたいと思いました。
      いつも、ハナマルを有難うございます。
      2017/01/10
    • しのさん
      こんにちは(#^^#)
      コメントありがとうございました。
      とっても嬉しかったです(*'▽')
      そうですね~最近では垣谷さんの農ライフ農...
      こんにちは(#^^#)
      コメントありがとうございました。
      とっても嬉しかったです(*'▽')
      そうですね~最近では垣谷さんの農ライフ農ガールが印象的です。
      森沢明夫さんの「ヒカルの卵」も限界集落を描いててとっても素晴らしい作品でした。
      奥田英朗さんの「向田理髪店」も限界集落のお話でした。こちらも素晴らしい作品でした。
      本当に最近農業とか地域をテーマにした作品が増えていますね( *´艸`)
      私のレビューでこの本を読んでみたいって思って下さってとっても嬉しいです。
      ありがとうございます。
      こちらこそ、いつもイイネ嬉しく思っています(*'ω'*)
      2017/01/10
    • honno-遊民さん
      紹介本、今後の読本予定に入れておきます。有難うございます。
      紹介本、今後の読本予定に入れておきます。有難うございます。
      2017/01/11
  • 農業など第一次産業が生活の基盤であることも、
    それに従事している人が減っていることも知っている。
    でも、自らはなかなかそこには飛び込めないんだよな。

    フリーのグラフィックデザイナーの恵介が、父が倒れたことをきっかけに、やむにやまれず専業農家である実家の苺栽培を手伝うことに。
    農家を継ぐ決意があるわけではないが日々生長する苺を放っておけない、という場面、私ならもう枯れてしまっても仕方ないとあきらめると思う。
    自分の許容範囲を超えているから。
    無理して一人で働く母が心配なのもあるのだろうけど、農家として働く両親を幼少期に見てきて植物に対する愛が心の奥にあったのだろうなと思う。

    「たいていの人間は、自然が好きだと言うが、自然は人間なんて嫌いだろう」
    この1文が心に残った。

  • 父親の入院という事態に、イチゴ農家の実家の手伝いを始めた広告デザイナー。
    最初は仕方なく始めたイチゴ栽培であるが、その魅力に取りつかれ、やがて本腰を入れることになる。
    イチゴ栽培については、著者自ら体験したかのように真に迫った描写で、また、主人公たちが収穫したイチゴを食べる場面は、思わずつばを飲み込みたくなるほど・・・
    自然相手のイチゴ作りの苦労、夫婦の問題、姉たちとの絡み、近所の農家との付き合い、問題は山積するが、最後はすべてハッピーに。
    「読んでいるだけで幸せな気分に浸れる」は、森沢明夫著『ヒカルの卵』のレビューに使ったフレーズだけど、この作品にも使いたい。
    表紙帯の「人生応援小説」とは、言いえて妙。

    数年前に、自宅の庭でイチゴを栽培したことがあったが、今年はまた取り組んでみるか。

  • 読み終わり、爽やかな
    本当に清々しい気持ちになった。
    それと同時に野菜や果物の
    ありがたみがしみじみ……

    今まで値段が高いと思って
    行ったことのなかった苺狩り。
    今年は絶対行くぞ~!

  • 荻原さん、さすがの安定感です。
    東京在住で妻子持ちのフリーのグラフィックデザイナーが、父の病気を機に家業のいちご栽培を手伝ううちに。。。。というお話。
    なんだか農業に関心があるのかなという書きっぷりです。調べてみたら荻原さんは元フリーのコピーライター、趣味は家庭菜園だそうで、そのあたりがこの作品を書くきっかけになり、色々調べられたようです。
    主人公の恵介がたった数日の経験でそれまで嫌っていた農業を受け入れるようになったり、離婚の危機かと思われた妻・美月が翻意をしたり、ちょっとご都合主義的な感じも無きにしも非ずなのですが、全編を通して感じさせる前向きで暖かな雰囲気がそんなことをスルーさせてしまいます。
    もう一つ、文章の最後に落語で言う「オチ」のようなものをつける手法が多く使われ、コミカルな仕立てになって居ます。最近はあまりなかった気がしますが、デビュー当時のスラップスティックものの時に荻原さんが良く使っていた私の好きな手法なのです。

  • フリーでデザイナーをしている恵介。独立後は順調とはいえないなか、農家を営んでいる実家の父親が倒れたとの連絡が。当面嫌々ながら手伝うことにした恵介だが、奥さんは反対し子供と東京へ戻る。右も左も分からぬ中、恵介はイチゴ栽培に取り掛かる。
    話の展開としてはなんとなく想像していたような流れだが、テンポよくユーモアを交える荻原ワールド。もちろん農業は簡単なものではないのだろうが、前向きなのがいい。ラストは荻原さん節でよかった。

  • 萩原浩にしてはいまいち面白くなかったかも・・・。いちご農家からしてらめっちゃ面白い本なんだろうなっていうくらい農業の記述がマニアック(本業の農家さんからしたら初歩中の初歩なんだろうけど。)だなと思った。

  • 読了が爽やかで希望満ち溢れてる最後がいい。

    独立して仕事に苦戦しているグラフィックデザイナーの主人公が、倒れた父の代わりにやむなく始めた苺農家。
    実際に作り手にならないと分からない事や、体感できない気持ち。
    手探りの中、右も左も分からぬ農業に奔走して本当に大変だったろう。
    飛んでいる蜂一つ見ても全てに経費が掛かり、その年の収穫が上手くいかなければ大赤字。
    逆立ちしても覆せない天候にも振り回され…農家という生き方は自分の時間を費やしても費やしても、足りないのかもしれない。

    地域のやり方に右倣えをやめてデザイナーだからこそ、他所から来たからこそ見つけた新しいやり方。
    不安や後悔もある中、ひたむきに前だけみて進んでいく姿は、泥塗れだろうがきっと子供にとっては「格好いい姿」なのでは、ないだろうか。

  • 嫌いだった…農業も田舎暮らしも。でも、そこに本当の自分はいた。父親の入院をきっかけに、主人公は人生や家族を見つめ直す。
    頑張っている主人公を応援したくなります。
    イチゴ農家の目線では、ツッコミ所満載ですが…,。

  • 青臭いと野菜を嫌がる子どもに「本当の味を知らないから野菜が嫌いなんだ」と語るシーンが『美味しんぼ』にあった。農業従事者の減少については、あちこちで取り沙汰されている。じゃあどうするという問いに、一つの答えを示した作品。
    綿密に勉強をして執筆されたことが伝わるリアルな農業の実態と、育てた生き物への愛情がストレートに伝わる主人公の語り口がよかった。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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