満月の泥枕

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 694
感想 : 106
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108308

感想・レビュー・書評

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  • 読み始め、中盤、そして終盤と全く違った様相を見せ、読者を良い意味で意味裏切り、独特の世界へ引きずり込んでいく。
    子供を自分の過失で死なせてしまったと思い、その思いで前に進めない主人公が登場する。重苦しい感覚で小説は始まるが、そこにとどまらない。それぞれどこか抜けている多様な登場人物たちの喜劇に転じたと思いきや、殺人事件というミステリーに変化していく。読者を飽きさせず、しかしそれは支離滅裂な展開ではなく、読者を納得させる終盤を迎えることになる。
    いろいろな現実にはあり得ない出来事を経験や同居をしている姪を通して、主人公は重く苦しい過去の出来事から再生し、新たな一歩を踏み出していく。軽やかでスピード感のあるストーリー展開で、爽やかな読後感を残してくれる作品だ。

  • 図書館で借りた本。
    幼い娘を亡くし離婚した二美男は、病死した兄の子である汐子を引き取り一緒に暮らしていた。夏祭りの夜酔っ払って池から人が落とされた現場を目撃して、警察に届けるが、酔っぱらいの見た幻か夢だと誰も相手にしてくれなかった。そんなある日、汐子の同級生の男の子が家にやってきて、二美男が見たものは、自分の祖父じゃないかと言ってきて、そこから事件に巻き込まれていく。

  • まぁ面白いのだが、何かモヤモヤ感が残る。
    2017.10.18

  • あまり道尾秀介さんっぽくない、人情ミステリー。
    序盤はテンポが遅めで、なかなか入り込めず。
    途中から話があらぬ方向に進んでこんがらがった割には、オチというかラストのインパクトが少々弱い。
    道尾作品だから期待してしまっていたというのもあるが…
    全てが必要な要素だったのかな?という疑問が残る。

  • 時には実の親が自分の子供のことをよく分かっていなくて、理解していなくて、誤解していることがある。長い時間を経て気づいた時にはとてつもない感情の疎隔ができたりもする。逆に全然関係の薄い、付き合いも全然短い人たちの方がよっぽどよく理解してくれていたりする。親子とは何なのか、血のつながりとは何なのか、人と人との距離感というものを深く考えさせられた。

  • なんか途中、ムチャクチャでしたが…
    面白かったです。
    続編希望。

  •  娘を自分の不注意から亡くした二美男は、自暴自棄になり離婚もし、夜逃げもして今の町に住みついた。
     亡くなった兄の娘の汐子をひき取ってからも、その日暮らしをしていたが、祭りの前夜にとんでもない事件に遭遇した。

     泥酔した二美男が公園の池の近くで倒れて朦朧としていたところ、殺人事件に遭遇した。そう思ったのだ。だから翌日交番に行って警官に事の次第を話したのだが、酔っぱらいの言うことは信じてもらえなかった。

     しかし、殺されたであろう人物の孫と名のる少年が、二美男に祖父の事件を解明したいので協力してくれと現れた。提示された金にふらっとした二美男は、アパートの住人を巻き込んで壮大な計画を実行した。



     祭りを乗っ取ったり、鉱山跡で何者かに追われたり、ハラハラする場面やクスッと笑える場面もあって面白かった。

  • 道尾さんといえばどんでん返しのミステリー、というイメージをして読みましたが、どちらかというとドタバタ喜劇?それぞれ登場人物はそれぞれ心に重いものを抱えていて、変な事件に巻き込まれていきますが、ハートウォーミングにしては物足りない、ミステリーとしてももうチョットかなあ。

  • ミステリーのためのミステリー。落ちが先にあって、そこから遡流して登場人物がいて物語があると、作り物めく。ちょっと前はそれで良かったのだけれど、今は人の明るい部分も暗い部分も全て引っくるめて、リアルに対峙したい。これが人間の泥臭さだなって格好悪くても収まりが悪くても構わない。全ての登場人物に、必然性はあったのだろうか?エンタメ小説の極み。突拍子もなく、派手で、どこかコミカルだけど、ちょっとしんみり。あまりにもうまく出来すぎている、道尾ワールド。宗教に乗っかるにしても浅く、武道を語るにも薄く、人生を語るにしても淡い小説でした。ただ、作り物としての質は一定以上保障されています。

  • 幼い娘を失い、親戚の娘と暮らす冴えない中年男が、偶然事件に巻き込まれる。ミステリー要素のあるどたばた人情もの。

    自分の不注意から子どもを亡くしたとなれば、親は一生消えることのない苦しみを背負うことになる。主人公たちのように、自分を責めたり何かにすがりつきたくなるのは当然のことだろう。
    現実においても、悩みなさそうだねなどと安易に言う人がいるけれど、能天気に明るく生きているように見えたって、心の底はわからない。人の傷をえぐるような無神経な人にはなりたくないな、と思う。

    暗い過去や心の傷を抱えて生きている人たちの哀しみと再生というのは、ここ最近の作者の好む路線。『笑うハーレキン』『サーモン・キャッチャー』『スタフ』など、それぞれ設定こそ異なるけれど、個性的な面々に笑いとどたばた、伏線を散りばめてミステリーで引っ張る…と、作を追うごとにややワンパターン化している。
    『透明カメレオン』が秀逸だっただけに、二番煎じが続いている感は否めない。心の傷と再生という優しいテーマは好きなので、そろそろもうひと工夫ほしいところ。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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