不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲

  • 毎日新聞出版 (2019年2月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784620108391

作品紹介・あらすじ

父の国の大空襲から母を守り、炎の夜を生き延びろ!
デビュー作『池袋ウエストゲートパーク』以来、少年少女のリアルを見つめてきた著者による新境地――。
〈アンダイング=不死身〉とあだ名をつけられた日系2世の少年、時田武14歳。
母・君代と家族を率いて、炎そのものとなった街を駆ける。

いま読まれるべき、3.10東京大空襲の物語。
(装画・挿絵=望月ミネタロウ)

感想・レビュー・書評

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  • 小学生の時、「戦争の話を取材する」という宿題があった。

    都営住宅に住んでいた私は、母と相談して「13階の高橋さんのおじさん」にお話を伺うことにした。

    高橋さんは、少年時代に第二次世界大戦を経験。

    航空機に追いかけられて、すぐそばに爆弾を落とされ、九死に一生を得た体験を語って下さった。


    この小説を読んで、高橋さんのことを思い出した。

    戦争が、ただの歴史でなく、人と人が殺し合う最高にむごいことであることを実感したのだ。


    時は、1945年3月。
    物語の舞台は、東京の本所区(現在の墨田区)。

    主人公のタケシは14歳。
    アメリカ人の父、日本人の母のもとに生まれた。

    9歳の時にシアトルから東京本所に母と引っ越してきた。

    父の国と母の国が戦争をしている。

    「鬼畜米英の子」「スパイ」などと酷い言葉を浴びせられながらも、中学生の青春の日々は続く。

    そのささやかな日常を、戦争が全て奪っていく。


    1945年3月10日未明。
    東京大空襲。
    タケシの住む地域では半分の方がなくなり、9割の家屋が焼き尽くされた。

    父の国の飛行機から焼夷弾が落とされ、町中が火の海に包まれる。

    目の前で人が死んでいく。たった数時間のうちに何度も何度もだ。

    これが戦争だ。


    著者は、文化の力で絶対悪の戦争に切り込んでいく。

    「池袋ウエストゲートパーク」にも必ず登場するクラシックの名曲を、戦時下のタケシの部屋に登場させる。


    戦争に立ち向かう文化の力。

    暴力に対する対話の力。


    戦争は美談なんかではない。

    青年の未来を奪い、子供の希望を打ち砕き、母に涙を流させる。


    語り継いでいかなければならないものがある。


    戦争ほど残酷なものはない。
    戦争ほど悲惨なものはない。


    タケシ、ミヤ、テツ、登美子。

    1945年の4TEEN。

    石田文学の金字塔がまた一つ。

    #石田衣良
    #不死鳥少年
    #池袋ウエストゲートパーク
    #4TEEN
    #NetGalleyJP

  • アメリカ人の父を持つ14歳の時田武。事故があっても死ななかったことから〈アンダイング=不死身〉のあだ名がある。顔が東洋系ということで母とともに日本に戻ってきたが、アメリカの血を引くということで様々ないじめ、迫害を受ける。勤労奉仕や食糧不足の中、親友たちと夢を語り合い日々を送っていたが、その日はやってくる。家族を守るために、長い夜が始まった。
    戦争の内容で深く暗くならずに、2つの国籍を持つ武の複雑な想いが描かれたのは、そして、厳しい生活の中での青春を描いたのは、石田さんの力だと思います。若い人に読んで欲しい内容だと思うので、硬くなりすぎずにうまくかけているのではないでしょうか。最後の方に、SF要素があったけど、それはそれでより戦争の惨劇が伝わったと思います。最後の方は強烈な内容です。忘れてはならない、2度と起きてはならない。祖母から戦争の話を聞いたことはありましたが、衝撃は強かったです。毎年、忘れないよう読み返したいです。

  • 一気に引き込まれて読破。
    Podcastでも折に触れて話されていた東京大空襲の物語。
    空襲について、戦争を知らない世代である僕達は、どこか遠い昔のことのように、他人事のように思ってしまっている。

    空から爆弾を落とすという視覚的な情報ではなく、空襲によって奪われていく一人ひとりの命。
    死というものを生々しく身近に感じさせられた。

    この生々しさは、どこから来るのかということは、あとがきを読んで納得。

    このような人々の悲惨な死に様を知らなければ、戦争を知らない世代の僕らはまた同じことを繰り返してしまう。
    そのことに気付き背筋が凍った。

    70年前という遠くない日本で起きた出来事を覚えていたいと心から思った。

  • 今の、十代にとって戦争は二世代、三世代前の話になる。直接話を聞く機会も少なくなっている。
    我が家の二十代の子どもたちも祖父母から戦争の話を聞くことはほとんどない。
    もうあと十数年でそういう機会もほぼなくなるだろう。生きた話を聞くことは、どんなにたくさんの書物を読むよりも大きい。その機会を失ってしまうことをものすごく恐ろしく思う。
    だから、たとえフィクションであっても戦争について書かれたものをいろんな形で若い世代に勧めていきたいと思う。
    読んでほしい。あの戦争が、なにを壊し、なにを奪い、なにを目指していたのかを。なにひとつ得るもののない、無意味な戦い。けれど、その戦いのさなかに、一生懸命生きた人たちのことを、知ってほしいと思う。
    ただ、朝起きて、ご飯を食べ、学校に行き、友だちと遊び、そして温かい布団で寝る。その当たり前の一日を、手に入れられずに死んでいった者たちのことを、知って、そして覚えていてほしいと思う。
    それ伝えていくことが、まだ、直接戦争についての話を聞くことのできた世代の私たちの、それが次の世代への使命だと思う。
    SF風味のこの戦争小説は「戦争物は怖いし悲しいから嫌い」という十代にも手に取りやすく読みやすいでしょう。
    地面に刺さった焼夷弾の美しさは、同時に人の命を奪う武器でもある。熱風にあおられ水を求めて氷点下の川に飛び込む、その極限を、自分の背負っていた子どもが知らないうちに死んでいたことに気付いた母親の慟哭を、自分や家族の命のためによその幼い子を追い出す大人の利己を、戦争の、本当の姿なのだと伝えていかねば。
    大きな戦いではなく、町に住む、普通の、小さな命の最期とその理不尽を。

  • 東京大空襲から76年の日に読了です。東京に暮らし、東京大空襲という歴史的事実は知っていながらも、その様相を間近で見る機会はなかなかありませんでした。もちろん小説ですので虚構の部分はあるかと思います。でも、描かれた空襲で逃げ惑う人々の気持ち、平和への未来への思い、友情、家族愛…。迫力ある描写の中で、様々な感情が去来しました。今の平和の足下に埋められた、数多くの犠牲を忘れないようにします。

  • 本の装丁が気になり手に取った1冊。
    3月10日に起きた東京大空襲の前後を描いた本。

    中盤までは、作者とはどうも合わないなーとグダグダ読み進めていたのだが、
    空襲の場面に入ってからはかなり引き込まれた。

    恐ろしい。
    焼夷弾の描写が物凄く、私が思っていたのとはまるで別物だった。
    逃げても逃げても終わらないB29からの攻撃。

    私だったら恐怖に負けて生きることを諦めてしまうかも、
    と何度も思った。

    本当に単純な話、戦争なんてしても何も良いことないな。

  • 終盤まではすごくいい本だと思ってた…東京大空襲という題材を綿密な取材によって包み隠すことなくリアルに再現しながらも石田氏の持ち味である三人の少年の暖かな友情と主人公タケシの淡い恋心を巧みに織り込みながら戦時の日常を描く傑作であるのだと。
    しかし悲劇の3月10日、タケシが雨の如く降り注ぐ焼夷弾の直撃を受けるところあたりから頭の中には「?」の雨が降り注ぎながら物語はクライマックスへと突っ走る。
    結論を言えばこの手法もありなのかも知れないがそれでも犠牲になられた10万の御魂のことを思えば心境は複雑でやはり問題作であることは間違いないだろう。
    伝えて行くためには仕方なしなのか

  • アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた子供。アメリカでは日系人だと差別され、日本ではアメ公の子供だと冷たい目で見られる。それ以前に、1人の人間じゃないか。なんでそんなことで蔑まされなければならないのか。父の生まれた国で作られた飛行機が爆撃してくる中、火に襲われながら母の生まれた国で逃げ惑う。今はそれを微塵も感じさせない東京で、そんな出来事があった。

    この物語はフィクションだけれども、本当にこんな家族がいたかもしれないし、これからこんなことが起こらないとも言い切れない世の中になってきている。それを二度と繰り返させないのは、それを体験した人たちのリアルな言葉とそれを受け継いだ我々の「そんなのまっぴらごめんだ」という強い思いだ。だからこそこの物語を通してその思いを広げていけたらいい。

  • 石田衣良さんのファンでも、そうでなくても。
    石田衣良さんの作品が、好きでも、嫌いでも。
    本読みを自認してるなら、これは読むべし!!

    めっちゃオススメです〜〜!!!

  • この本を読み、本当の戦争を知った気がします。

    主人公タケシの視点で語られる世界は生々しく、壮絶すぎて。
    大空襲の夜の描写は想像するのが苦痛になるほどのもの。
    タケシたちにどうか生き延びて欲しいと、祈りながら、読んでました。
    またタケシを通じて描かれる当時の状況。
    空腹感、暮らし、中学生が未来を考えられない生活。
    その中での仲間との相撲、登美子との初恋などのキラキラした日々。
    少ないながらも時折出てくる笑顔のシーンは辛い物語の中での光のようでした。

    かけがえのない時間、大切な周りの人に気付かされました。

  • 日米ハーフの少年が、戦時中に肩身の狭い思いをしながらも、懸命に日本男児として、友達や家族と日々を送る。貧しい食糧事情や勤労動員などに戦争を感じるが、そんなものはまだ幸せな方だと、東京大空襲の夜に気づく。激しい炎や焼夷弾の中を逃げ惑い、たくさんの死体や友の死を乗り越えて、家族を生き延びさせるために頑張る。
    SF要素が残念に感じたが、逆に言うと、SF要素でもいれないと、生き延びるのが難しいほどの空襲だったということか…

  • 戦争は忘れてはいけない。二度と同じ過ちをしないで欲しい。

  • 夏だし、前から気になっていたから良い機会だと思い手をつけた。石田衣良さんと東京大空襲というテーマが結びつかなくて、ドキドキしながら読み進めた。そして絶対忘れられない読書体験となった。もう一度読み返す元気はまだない。主人公・タケシと級友たちの暮らしが、戦争の中でも中学生らしくまぶしく輝いていた三月九日までを思い返すと、なんともやるせない気持ちになる。このテーマで日系人の少年が登場する物語を読むのは初めてだったのでかなり衝撃を受けた。銃後の戦争、みんなが生きていくのに必死だったのだと改めて気付かされた。この読書体験を通して、戦争と空襲の残酷さと平和の尊さをまた学ぶことができた。もし、主人公と同じ十四歳のときに読んでいたらと考えたがそれは無理な話なので、これからを生きる十四歳の子どもたちに広く読まれますようにと祈った。

  • 戦争中のお話だと思って読んでいた。大東亜戦争の時代の中学生、時田武。

    家族と空襲から逃げる頃になって、ただの悲惨なお話ではない、と気づいた。
    命を懸けて、大切な家族を守り抜いた少年の勇気は、尊敬に値する、と感じた。

  • 石田先生が中学生に読んでもらいたいと書いた小説。なるほど、たしかに、読んでほしい。
    胸が苦しくなるほど、身体が震えるほど、空襲の恐ろしさが伝わってくる。

    戦争なんてろくなもんじゃないと、つくづく思う。
    大義なんて、クソ喰らえと思う。
    平和な日々を維持したい。
    だから大人も読むべき小説。

  • 読了

  • 第二次世界大戦の著書、特に東京大空襲にスポット当てている。

    最後の方に微sfが入り、「?」があったが、後書きを読んで石田衣良さんの意図を理解した。
    (若い子に読んでもらうためだそう)

    今の私と当時の人は生活様式が明らかに違うが、人を思う感情や友人との関係などは今と変わらないのだなと、改めて思った。

  • 東京大空襲のさなか、ハーフであるアンディタケシが家族を守り抜く話。過去の幼児体験からタケシには不思議な力が備わっていた。空襲の場面は特にすごく、空から落ちてくる焼夷弾、燃えさかる炎、煙など想像して読んでしましとても泣けました。

  • 終戦の日を前に、読んでみた。
    広島、長崎の本や体験記は読んだことがあったが東京大空襲に関する本は初めてかも。
    アメリカ人の父をもつ少年タケシのほんの4日間の物語。
    不思議な力で家族を救うというフィクションでありながら、空襲は実際あったことで、読んでいて恐ろしかった。
    戦争、次に起こるとしたら、日本なんてあっという間に焼け野原だろう。
    二度とあってはならない。
    前半ややまどろっこしく、ラストは急に不思議なパワー発揮で小説としては今ひとつ。

  • 石田衣良氏が語る東京大空襲。
    1945年3月の東京。主人公のタケシは日本人の母とアメリカ人の父をもつハーフの少年(中学生)。アメリカでの日本人排斥の動きを避けて、父と別れ、母と二人日本に戻り、帝都東京の下町の親戚の家に厄介になっている。タケシは子どもの頃、遊んでいて溺れたものの、タケシだけが助かったので アンダイング・タケシ → アンディ・タケシと呼ばれた強運の持ち主だ。

    東京大空襲は3月9日の夜から10日未明にかけて、アメリカが行った無差別爆撃。東京が一晩で一面の焼け野原となった。この作品は3月7日の朝から始めて、タケシを中心として当時の東京下町の暮らし様子、少年たちの日常生活として、極限に近い食糧難、学校での授業はなく、軍需工場での勤労奉仕、徹底した灯火管制、乏しくなった娯楽、愛国精神の同調圧力に押されて行動が歪み始めている大人たち、敵国の男性を父に持つということによるいわれ無き差別、といった物を丁寧に描いている。
    全編のうちの3分の2がそういう空襲前夜の東京を描く一方で、最後の3分の1は東京大空襲の一夜に費やされている。
    タケシは母と世話になっている親戚家族の命を守るために避難の先頭に立って行動する。その逃げるタケシ達が目撃するものは、爆撃によって町に何が起きたのか、B29の落とした焼夷弾が、家屋を焼く炎が、業火によっておきた炎の嵐が、逃げる人々にどのように襲いかかり、いかに命を奪っていったのかというものだ。
    石田氏があとがきに書いているように「空襲で人々がどんな死を迎えたのか、百科事典的に網羅する」べく描き切っている。

    避難の目的地とした錦糸公園まどあと少しというところでタケシが感じたことが象徴的だ。
    "戦争は兵隊と東京都民の区別などしなかった。戦争は相手の一番大切なもの、一番柔らかいところ、壊して欲しくないものを徹底的に傷つけあうことだった。際限なく燃えあがり、自分の力に酔いしれる憎悪の炎そのものが戦争なのだ。"

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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