待ち遠しい

著者 :
  • 毎日新聞出版
3.37
  • (12)
  • (31)
  • (57)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 417
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108414

作品紹介・あらすじ

大阪で、のんびり一人暮らし歴を更新し続ける春子。突然訪れた「ご近所づきあい」、その行方は…? 芥川賞作家が放つ大人の女性必読の一冊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 一軒家の離れに一人住む独身女性・春子39歳。春子と近所の人たちとの日常。大家さんのゆかり63歳。ゆかりの親類で近所に住む新婚沙希25歳。その二人と接することにより、近所の出来事、食い違い、自分を見つめ直してゆく。
    劇的なことはないんだけれど、3人の年齢や背景の違いにより、価値観が異なりそのやり取りにその都度考えることがあった。結婚、親類との付き合い、自分の未来について。物語にある近所付き合いについては、ありそうなこと。それぞれの意見の相違とか実際ありそうなことを上手く描いているなあとじっくり読めました。みんな考えることが違うけれど、それは当然であって、いかに自分を持つかかな。理解できるか分かり合えるかどう距離を置くか。春子は流されずにしっかり生きていると思うよ。未来でもなんでも待ち遠しいと思える心の心境を保ちたいなあって思いました。

  • 母屋の隣、離れの一軒家で一人暮らしをしている39歳の春子さん。大家さんが亡くなって母屋に越してきた、63歳のゆかりさん(亡大家さんの娘さん)。裏手の黄色い家に暮らす、メンバーがたくさんいるアイドルグループにいそうな新婚25歳の沙希ちゃん。
    ゆかりさんが越してきたことでご近所付き合いが始まっていく。人との付き合い。社会で生きるということ。ご近所とのつながり。
    女性としてこうあるべき、これが幸せなんだよ感。そうそう、私もその偏った風潮の片棒を担いでいる感も無いとは言い切れないけど、違和感は感じる。私は春子さんほど「一人でいたい」と、しっかり割り切ってはいないけど、分かるな〜と思う部分もありながら読み進めました。同僚と友人とご近所と家族とそして他人と。様々な距離感。私は春子さんの同僚のみづきに、一番尊敬と憧れを抱いてしまいました。そして、沙希ちゃんは普通に腹立つ(笑)けど、みんな違うから、人間は素敵なんじゃないかなぁ。
    私は特別な存在では全くなくて、才能もなくて、人が普通にしていることが私には出来ないんだなぁと日々感じている。だけど、せめて自分の視界に入る人たちの幸せを願って、その人たちからもらっている幸せを、大切にしながら日々を暮らしていければなと思う。

  • 住み心地のいい離れの一軒家で一人暮らしを続ける39歳の春子、母屋に越してきた63歳のゆかりと裏手の家に暮らす新婚25歳の沙希がご近所づきあいから始まるストーリー。
    3人の関係性はつかず離れずで特別「待ち遠しい」っていう関係性でもないのになぁと思いながら読んでいてやっと関するフレーズが出て来た。

    春子が高校生の女の子に質問される場面。
    「あのー、こんなこと急に言うてなんやって思われるかもしれないんですけど、えーっと年取るのって怖くないですか?」
    怖くても怖くなくても年は取るしと返しかけて春子は思い返す。年をとることは悪いことじゃない、楽しい事も面白い事もいっぱいある、ってもっと力強く断言できたら良いのにと話しながら春子は思っていた。これから先が待ち遠しくなるようなことを、言えるようになりたい。

    全く同感です。今週の俳壇に取ってあった句を添えておきます。<言はば言え老いには老いの爽やかさ>高松市に住む島田章平さん

    著者のインタビュー記事は➡https://book.asahi.com/article/12535342

  • 年齢や性格がバラバラなご近所に住む女性3人の日常。一見、穏やかに和やかにご近所付き合いしていると思っていても考え方や性格の違い、抱えている悩みはさまざま。どこまで踏み込んで良いのか悪いのか。家族でもない、姉妹でもない人たちが相手に対し、親身になって相談に乗ったりする時、どれだけかかわって良いのだろうか、、、。相手に対しての距離感が大事なのかなぁ、と。そんな事を考えてしまった一冊。

  • ヒトとヒトの関係って難しい。
    距離とか温度とか深さとか、いちいち考えていると疲れてしまってもうどうでもいいや、なんて思ってしまう。

    それぞれに歩いてきた人生の長さ、育った環境、仕事や趣味や現在の状況によっても、付き合い方は変わるし、極端な話、今日の気分によっても変わってくる。
    一人が好きな人も、一人が嫌いな人もいる。濃密な関係を求める人も淡泊な関係が心地いい人もいる。
    その関係も職場なのか、学校なのか、近所付き合いなのか、によっても変わってくる。

    たまたまご近所として付き合いが始まったアラフォーと、アラ還と、二十代半ばの女性三人。普通で考えたら共通項のない三人の、つかず離れずの付き合いの、心地よさと難しさ。

    小さないさかいや行き違いはあるものの、全体的にのどかでゆったりとした時間が流れているように見えて、実はこの三人の周りには様々な問題が横たわっている。
    その一つ一つを際立たせるわけじゃなく、そっと目の端に置くことで、物語に奥行きと深みとリアリティが生まれる。
    25歳の時の私と、39歳の時の私と、63歳になった時の私がきっとこの中にいる。

  • 『普通はこうだよね~』とか、
    『○○じゃないなんて、変だよ』とか
    私たちの周りには、さりげなく自分の価値観を押し付けようとする言葉が大量に飛び交っている。
    価値観や常識なんて人それぞれだし
    あれこれ言ってくる人は、言うだけで責任なんてとってくれないのに。

    主人公の春子さん(39歳独身一人暮らし)は、
    相手にそんな言葉を投げつけられても
    ふんわりと受け止めてしまう。
    私なら例えその場ではニコニコしてても
    心の中では『お前の顔なんて二度と見たくね~!』とか
    思ってしまうような場面でも。

    春子さんは相手の考え方を否定しない。
    『そういう風に思うには理由があるのだろう』と考える。
    いいな、私もそんな風に相手のことを決めつけないで
    考えられるようになりたいな。
    まだまだ修行が必要だ。

  • 還暦過ぎと氷河期世代とゆとり世代、三人の女性たちがひょんなことから関わり合っていく。
    この小説のフィクションで割り切れない感じ、「正しい人生」の定義や見本がない現実と鏡合わせだからかな。
    立場が個人を透明にしたり、人それぞれ大事にしていることが違ったり、善悪に絶対がなかったり、誰でも過ちを犯したり…。
    自分の歩みを信じたいから他人にも押しつけたくなるし、異なる価値観を否定したくなるんだよなあ、と思った。もちろん自戒とともに。
    語りが大阪弁ですいすいとリズムよく読まされるけれど、ふと気がついたら思考が深いところまで潜っているような、不思議な物語だった。
    立ち止まって考えたいときに、また手に取るかもしれない。

  • 主人公と普段やりとりしている近所の人たちのやりとりの描写がとても細かく、「本当にそうだよね~」と思わずうなずいてしまった。私も含めて、一人で過ごすことが好きな人はこの小説に共感できると思う。

  • 男やから、女やから、結婚してるから、結婚してへんから、子どもいてるから、子どもいてへんから、仕事してるから、仕事してへんから…
    ◯◯やから××なんやろ?って決めつけられたり、自分も無意識に決めつけてしまっていたり、そんなことから自由になれたらきっとすごい楽なんやろな。
    昔と比べれば多様な生き方が認められていることは確かなのかもしれへんけど、でも物心つく前から刷り込まれているものは頑固に根深い。
    決めつけられたり、自分で自分を決めつけながらも、自分が自分でいられる暮らしをひっそり守って生きている春子がとても愛おしかった。
    そして、登場する人たちの関西弁がはんなりしてて気持ちよかった。

全52件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

柴崎友香(しばさき ともか)
1973年、大阪府生まれ。大阪府立大学総合科学部国際文化コース人文地理学専攻卒業。大学卒業後4年OLとして勤務。1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞最終候補に残る。1999年、「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学ブック・チャート BEST200』に掲載され、同作が収録された『きょうのできごと』が2000年刊行、単行本デビュー。その後同作は2003年に行定勲監督により映画化された。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞・織田作之助賞大賞、2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。
主な著作に『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』『わたしがいなかった街で』『週末カミング』『パノララ』『かわうそ堀怪談見習い』『千の扉』『公園へ行かないか? 火曜日に』など。『寝ても覚めても』が東出昌大主演、濱口竜介監督で映画化されカンヌフェスティバルに出品された。2018年9月1日公開。書籍の増補新版も刊行されている。

柴崎友香の作品

待ち遠しいを本棚に登録しているひと

ツイートする