人間

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 336
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108438

作品紹介・あらすじ

生放送対談で注目!2019年10月10日発売『人間』
又吉直樹さん初の長編小説!

38歳の誕生日に届いた、ある騒動の報せ。

何者かになろうとあがいた季節の果てで、かつての若者達を待ち受けていたものとは?
初の長編小説にして代表作、誕生!!
「変な話だが、自分が小説を書くことになるなんて想像もしていなかった子供の頃から、この物語の断片を無意識のうちに拾い集めていたような気がする」(又吉直樹)

感想・レビュー・書評

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  • 苦しいねぇ。又吉さんは小説を書くことでとことん自分を苦しめているんじゃないのか。苦しむために小説を書き、小説を書くことでまた自分自身が苦しむ。その苦しみそのものが自分の存在意義みたいな。
    「今の私のやってることって何の意味があるの」とか「私の存在意義って」とか「私は何者なの」とか「私がやるべきことは」とか、ていうか、そもそも「私」ってという、ある時期だれもが通る関門であり、問いでもある。
    それを見つけるためにもがいたり苦しんだりして、自分自身やそばにいる誰かを傷つける。
    痛いなぁ。痛いし辛い。傷つきたくないからそういう問いから目をそらせ、納得した振りでたいていの人はオトナになっていく。
    だけどそれができない、自分自身で何かを生み出そうとする人たちにとってそれはもっと激しくもっと濃く深い痛みなのだろう。
    芸術、という世界で何かを作りだそうとする若者たちの中にある羨望や嫉妬、そして憎悪はある意味、創作への熱源として有効なのかもしれないけれど、それをうまく扱えない、いなせない不器用さが読み手の心のどこかにある「小さい自分」を刺激してくる。
    その流れでの、終盤の沖縄での時間のゆるさや血縁者や近所の人との不思議な共鳴、父親との関係、何気ないやりとりのおかしみや温かみやわずらわしさが不思議と心地いい。
    繊細なのに攻撃的で不器用で内省的な主人公が全身傷だらけになりながらも歩き続ける姿に、ざわつく緊張感とほのかな安堵感を覚えた。

  • この本は、付箋だらけの聖書だ。

    昔のブログの中で「中村文則さんの新刊が出続ける限り生きていようと思う」と又吉さんは仰っていたが、そっくりそのまま同じことを思っている。私は又吉さんの新刊が出続ける限り生きていようと思う。
    又吉さんの文章は優しい。ぼんやりとした不安を掴まえて、誰でもわかる口語に変換して、私たちのそれぞれの目線の高さまで降りて、放してくれる。そういうことやったんか、と、私たちを安心させてくれる。
    又吉さんの文章は厳しい。それで、お前はどうするん?という命題を、毎回容赦なく突きつけてくる。
    芸術は誰のものなのか?芸術が世俗を意識したとき、それは芸術たりえるのだろうか?
    自己表現に自分なりの意味を持たせたとき、それは尊重されるべきだろうか?
    あるいは、評価されるに値する根拠とは何だろうか?
    そのようなことを考えることに意味はあるのかもないのかもわからない。が、伝わらないことを知っているということを知っているなどという、どうしようもない自意識の罪を贖うことを何度でも赦し、罰を引き受けることを何度でも赦し、燭台の灯火のように手元を照らしてくれる、これは聖書だ。

  • 主人公、永山のもとに届いたあるメール。
    そのメールをきっかけに過去、大学時代の出来事を振りかえり、年を経た永山が気付いたこととは?

    深い!
    これが又吉直樹の考える人間か。
    登場人物からして、まるで、又吉直樹という人間を内側と外側から見ているような感覚。
    自意識、自己嫌悪、惰性、才能、常識、嫉妬、平気なふり。
    と人間味溢れる本書。

    「なんで平均的な人物を演じなあかんの?」
    この言葉が響く。
    人間は
    生きてくのは、難しいな。

  • 2019年10月12日読了。

    ⚫️裸体画とか素晴らしいものもあるとおもいますし
    ただそこに性的な官能が容易に入ってくると
    それこそ誰かに対してのサービスのように感じられると
    いうか、いい喩えが思いつかないんですけど、一人称で
    書かれた小説って、語り手は現実での覚醒している状態
    の常識にのっとって行動していたはずなのに、そこだけ
    急に馬鹿になるというか、設定が緩くなる不自然さをほ
    とんどの人が疑問を持たず了承していることがよく理解
    できないんです。語り手の心が乱れていたり、心神喪失
    状態なら平然と語ることもあるかもしれないけれど
    それなら最初からそういう語り手を用意してくれないと
    混乱してしまうんです。飲み屋で性的な自己体験を得意
    気に語る奴は嫌いやし、ナイーブな想い出なのに克明に
    語る奴も嫌いなんで。心象風景だけが描かれていると
    か、当事者ではない他者の視点ならまだわかるんですけ
    ど。そうじゃないなら、性的な行為そのものが道具にさ
    れているように感じるし、アンチテーゼとして語られる
    こともあなじようにいやで。あくまでも容易に 型とし
    ての性的なことが描かれることがいやなだけで、個人の
    抱えきれない問題を作品化することとか、ほとんど自傷
    行為に近い表現であるなら鑑賞する側も覚悟を持って受
    け止めるべきやとはおもいますけど。

    ⚫️他者からの評価を聞くと不安になるけれど、すぐにそれをはね返したくなる。面倒なら観なくていい。力がなくて観ることのできない子供は力をつけてから鑑賞するか誰かの力を借りればいい。鑑賞する側が一切ストレスを感じず誰にでも平等に作品がひらかれているという状態は嘘なのだ。一見すると平等に感じるかもしれないけど、鑑賞する側の意見が区別なく平等に扱われてしまうことを拒絶できないならば、作品に辿り着くまでの過程で自分の肉体の強度や思考を可視化させなければならない。人は作品を鑑賞するということが自分と作品との関係であるということをすぐに忘れてしまうから。

    ⚫️(飯島とめぐみの関係を知って)
      この痛みは、どういった種類の痛みなのだろう。
    もしかすると、ただの個人的な趣味ではないのか。
    性的な興奮などと呼べる大層なものでもなくて、笑える
    話をわざわざ自ら進んで痛がってみるという自己演出が
    かった苦しみにすぎないのではないか。これは自分の特
    技と呼べるかもしれない。目の前で狂態を演じる二体の
    人間を見下したうえで、彼らに馬鹿にされた自分を存分
    に笑い、ある程度の時間が過ぎたら記憶に蓋をして
    それで完了してしまう記憶。理屈ではわかっている。

    ⚫️感傷に流されるのは本質的じゃないらしい。本質的じゃ
    ないなんて視点持ってる奴は永遠に本質を捉えることな
    んてできないと思うけど。動物的な本能に一定の距離を
    保っているかぎり、永遠にそいつらは本質から二歩遅れ
    た地点で「爆発に巻き込まれなくてよかったね」とか、
    「爆発ってきれいだね」などと言って、当事者にはなり
    えない。内側から景色を見ることがかなわない。

    ⚫️「想像力と優しさが欠落した奴は例外を認めず
    ただの豚」

    ⚫️P266

    ⚫️自分が把握している自身の記憶なんてものは、やはりほ
    んの一部分でしかなく、おなじ人生であったとしても、
    どの点と点をむすぶかによって、それぞれ喜びに満ちた
    物語にも暗澹(あんたん)たる物語にもなり得るのかも
    しれないと思った。

  • 何度も何度も読みたい

  • 生放送対談で注目10/10発売
    初の長編小説!何者かになろうとあがいた季節の果てで、
    かつての若者達を待ち受けていたものとは?

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著者プロフィール

又吉直樹(またよし なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。お笑いコンビ「ピース」のボケ担当。第153回芥川龍之介賞受賞作家。2009年6月せきしろとの共著、自由律俳句集『カキフライが無いなら来なかった』を刊行し、これが初の書籍となる。2010年12月に続編である『まさかジープで来るとは』、2011年11月初の単著『第2図書係補佐』をそれぞれ刊行。2015年1月7日に『文學界』2月号に初の中篇小説『火花』を発表し、純文学作家としてデビュー。3月に文藝春秋から『火花』が単行本化。同作が第28回三島由紀夫賞候補となり、第153回芥川龍之介賞受賞に至る2016年にNetflixと吉本興業によってネット配信ドラマ化2017年板尾創路監督により映画化された。2017年『劇場』刊行。2018年9月、毎日新聞夕刊で新聞小説「人間」を連載し、毎日新聞出版から2019年秋に発売予定となる。

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