人間

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108438

作品紹介・あらすじ

生放送対談で注目!2019年10月10日発売『人間』
又吉直樹さん初の長編小説!

38歳の誕生日に届いた、ある騒動の報せ。

何者かになろうとあがいた季節の果てで、かつての若者達を待ち受けていたものとは?
初の長編小説にして代表作、誕生!!
「変な話だが、自分が小説を書くことになるなんて想像もしていなかった子供の頃から、この物語の断片を無意識のうちに拾い集めていたような気がする」(又吉直樹)

感想・レビュー・書評

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  • 美大生が集まるシェアハウスに住む永山。周りの人より影響を受ける。漫画家を目指しているが、発表された作品が本当に永山の作品なのか問題になった。青春、挫折、彼が乗り越えたこと。
    なんだかなあ、えぐい? 灰汁ばかり。ご自身の経験のことですかね。苦悩とか。複雑に考えているとか、人それぞれ違うもんだし、考え方なんて、簡単に変えられるもんじゃなし、誰だって苦労なしに生きてるんじゃないんだし…永山の物語だったけれど、私は入り込めなかった。唯一、沖縄のところはトーンが違くて(家族のお話)そこはほっとした。

  • 又吉三作目。

    まず、影島と永山がバーで酔っぱらいながら人生談義をするくだりが秀逸だった。こいつは話が分かるってやつと、敢えて飛躍した論理やしっちゃかめっちゃかな譬え話を繰り出しながら語り合ったときの「頭の整理され感」ってあれは一体なんなのだろうか。その雰囲気がとても伝わってきた。

    ちなみに、同じような友との会話で物語中の葛藤が整理される名シーンはと言えば芥川賞の大先輩、庄司薫の「赤ずきんちゃん気をつけて」であろう。あるいは、又吉氏はこれを参考にしたのではとさえ思えた。

    物語としては、たとえば村上春樹も村上龍も最初の2作がまあ自伝でないにしろ実体験をベースにしていて、3作目が「物語」に飛躍したわけだけど、又吉の3作目は「自伝」(と誤読されることへの屈折した挑戦)としてさらに沈潜していったイメージ。

    沖縄の回想シーンの白装束は、岡本太郎の記録映画にあった離島の神事「イザイホー」を彷彿とさせた。島中の女性たちが一晩中白装束で祈りを捧げる、一種の集団トランス状態。
    主人公永山に繰り返し現れる幻視といい、又吉氏は古い記憶によって呼び覚まされる神話的世界を描こうとした、のかもしれない。

  • 他人を判断するときに、枠にはめるとわかりやすいから、芸人だったらこうあるべきとか決めつけて、芸人らしくないことをすると、理解できないからそのことを叩いたりする。その人間そのものを見ようとしないで批判する。そういう話がでてきて、考えさせられるところがあった。
    表面的な部分しか見ないで、あの人は幸せそうだと思ったり、肩書きを見て判断してしまったり。

  • この本は、付箋だらけの聖書だ。

    昔のブログの中で「中村文則さんの新刊が出続ける限り生きていようと思う」と又吉さんは仰っていたが、そっくりそのまま同じことを思っている。私は又吉さんの新刊が出続ける限り生きていようと思う。
    又吉さんの文章は優しい。ぼんやりとした不安を掴まえて、誰でもわかる口語に変換して、私たちのそれぞれの目線の高さまで降りて、放してくれる。そういうことやったんか、と、私たちを安心させてくれる。
    又吉さんの文章は厳しい。それで、お前はどうするん?という命題を、毎回容赦なく突きつけてくる。
    芸術は誰のものなのか?芸術が世俗を意識したとき、それは芸術たりえるのだろうか?
    自己表現に自分なりの意味を持たせたとき、それは尊重されるべきだろうか?
    あるいは、評価されるに値する根拠とは何だろうか?
    そのようなことを考えることに意味はあるのかもないのかもわからない。が、伝わらないことを知っているということを知っているなどという、どうしようもない自意識の罪を贖うことを何度でも赦し、罰を引き受けることを何度でも赦し、燭台の灯火のように手元を照らしてくれる、これは聖書だ。

  • 私には合わない作品でした。
    自意識をひたすら文章に起こしたという感じで、小説として読むことができなかったです。
    最後の沖縄の話しも唐突に語られ始めた感じで、繋がりがよくわかりませんでした。

  • 私には難しかったよ、又吉さん。
    最後の、家族で沖縄に集まる話はわかりやすかった。別の話になってしまったかのように。

    2部での影島とナカノタイチとのメールでの言い合いは、本当に凡人の私には何が何やらでした。

    カスミとの絡みもミステリアスな感じだったし、
    とにかく1冊で、何種類もの小説がギュッとなった感じ。

  • 又吉直樹さんの小説は、3冊とも読みました。文章を読み解く能力が弱いのか。内容に入り込めはしませんでした。苦しんでいる人間ばかりが登場しているような、そんな印象です。それと、どの作品に共通ですが、登場人物に作者自身を投影しているような気がしてなりません。このように作品を書き続けいると、作者自身が消耗してしまうのではないかと思います。

  • 不思議な読後感。又吉先生は第二図書係補佐の頃から好きで、全てではないですが見つけてタイミングが合えば読んでいます。今回もそうで、読み進めていくうちに垣間見られる明らかにヒントを出しているワードや象徴的な出来事と読み解く上で必要な別の物語も含めて作品でありました。時系列をあえて分かりづらくしたり、宗教や神話に人情味を加えたり技法と呼ぶにはそぐわない意欲的なオリジナリティもビシバシ伝わったのでかなり読み応えがありました。一回読んだだけではアホなので理解出来ない部分があったと思うので時が来たらまた。読み飛ばしや、速読をさせない純文学としての文章の強さがありました。

  • 芸術を志す若者達のシェアハウスに住む主人公。
    住人たちの才能の無さがしつこく描写されるので、ああこれは彼らを馬鹿にしている主人公が一番才能が無かったっていう終わりかなと思ったらそういうくだりは前半三割で終わった。えっ。

    あとはもうひたすら過去に苦しみ続けて問答を繰り返す。自己愛と自己批判の連続。
    又吉の小説は、自分にオリジナリティはあるか、才能はあるか、わざとらしく見えていないか、という自意識をずっと色んな方向から書いているな。
    途中明確に又吉本人をモデルにした人物が出てきて、「芥川賞を取った芸人」に寄せられた批判への反論とかがあり、いや、こういう形でのアンサーってずるくない??自分の口で言いたくないからワンクッション挟んでるの??と思った。
    後々「あの批判にも受け入れるべきところはあった」みたいなシーンもあり、本当は自分ちゃんとわかってますよってこと??又吉はそういうわざとらしさ恥ずかしがりそうだったので意外だな。

    主人公の心が安定を失って時間や場所の感覚があやふやになる描写はわたしも騙されてすごく好きだった。結局それは最後まで続くんだけど、ラストは色んな狡さや格好悪さを持ちながら堂々と生きている両親を愛をもって見つめるという時間になるので爽やかな終わりだった。
    中盤まではあんなに自己愛、芸術の探究と他者からの見え方、みたいなのを繊細にやりとりしていたのに、沖縄の父のガサツさの前には何もかも無力。沖縄に帰省してからほとんどそういうことを考えなくなっている。
    主人公の中で、自分の人生に対するスタンスとあの両親のことを受け入れている部分とが大いなる矛盾となってるんだけど、矛盾こそ人間の深みなので、その矛盾があるから主人公は倒れないで生きていけるだろうなと思った。

    芸能人への誹謗中傷のくだり、2019年に書かれた本なのに正確に現実を言い当てていて驚く。預言者か?

  • 「その夜」を乗り越えて人生は続いていく。人生はずっと主観だ。

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著者プロフィール

又吉直樹(またよし・なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。2003年より、お笑いコンビ「ピース」として活躍。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。代表作に『東京百景』『劇場』『人間』など。

「2021年 『林静一コレクション 又吉直樹と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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