神域 下

  • 毎日新聞出版 (2020年2月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784620108483

作品紹介・あらすじ

日本は「夢の新薬」を守れるのか?

研究の果実を狙うアメリカ。せめぎあう欲望と倫理。〈神の領域〉に踏み込んだ科学者たちの運命はーー。

国家の競争に巻き込まれてゆく「フェニックス7」。

一方、研究施設周辺では、謎の失踪事件が頻発していた。

真相を追う刑事はその全貌に戦慄する。

果たして、生命の神秘という神の領域に、我々は拙速に突き進んでよいものだろうか。

真山仁が放つエンターテインメントの新境地、驚愕の結末へ!

感想・レビュー・書評

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  • 研究者、お金を出す人、認知症治療のためと言いながらも自らの要望のためだったね。その欲望と人間、そして神の領域である脳の物語でした。脳、人間とりわけ脳の神秘、神の領域に人間の手が入る日がやってくるのかなあ。夢や志がある人は認知症治療希望かもしれない、介護で周りの人、家族に負担をかけたくないという人もいるだろうからね。
    認知症が治ったり、高齢化が進むというのは、自然に逆らっているように私には思える。すべての問題が乗り越えられたら、世界は変わってしまうね。研究や実用化には、安全面の問題、倫理の問題だけでなく、国際間競争、政府との調整等、大変難しいということがわかりました。

  • 上巻に続き、下巻も一気読み。

    ※神域 上
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4620108472#comment

    下巻になって、ミステリーの謎もほぼほぼ解消され、
    あとは
    ・どう謎が解かれていくのか?
    ・どう物語がクローズしていくのか?
    に読者の関心が収束していきます。

    個人的には、(民王などの異色作はあるものの)
    ハゲタカの印象が強すぎる真山さんだったので、
    ビジネスに寄り過ぎていなかった本作は、
    自分のイメージとは若干異なりましたが、
    それなりに物語を楽しむことができました。

    医療関係者は、ちょっとあり得ない設定に、
    気分を害する人もいるかもしれないですね。

    ミステリーを解決する側にいる警察関係者の
    何が起こっているの?からこいつが怪しい!に至る過程が
    若干ジャンプ感があったかなという印象。
    最後の結末(物語のクローズのやり方)も、
    そういう展開なのね…という感じで、
    多少の好みが分かれるかもです。

    アルツハイマー病の薬が日本の製薬企業で開発されつつある昨今、
    ホットトピックな内容の小説かなと思います。

  • 読書備忘録609号(上下巻)。
    ★★★★。
    下巻終わって・・・、まあいい感じで終わりました。
    アルツハイマー病を治す奇跡の人口万能幹細胞(IUS)フェニックス7。IPS細胞の上級グレード細胞ですね。
    主なプレイヤーは以下の通り。
    ①アルキメデス科学研究所:奇跡の新薬としてフェニックス7の開発を東大先端生命科学研究センターと連携して進めている。
    ②政府:国家の威信を掛けて日本の経済再生プロジェクトとして後押しする。
    ③アメリカ:フェニックス7に対し政治介入して奪うことを画策する。
    ④宮城県警:アルキメデス科研の所在地、宮城県で高齢者の行き倒れ死を捜査する。

    ここからは完全なネタバレ。
    アルキメデス科研の理事長氷川はアルツハイマー病家系であり、自分もその兆候が現れていることで焦り、フェニックス7の開発を加速させたい。
    ただ、フェニックス7は処方後に脳細胞の増殖が止まらなくなり、脳を破壊することがあるという問題を抱えていた。
    その解決の為には原因因子を特定するため人間を使った治験(人体実験)が必要。アルキメデス科研所長の篠塚は、徘徊老人を拉致しフェニックス7を処方することで闇の治験を進める。しかしやはり脳の膨張で死者が出てしまう。もともと徘徊老人であることから、死体をそれらしく遺棄する。
    徘徊老人の行方不明事件から数か月後に、死体で発見されることに違和感を覚えた宮城県警は最終的にアルキメデス科研の闇に行きつく。
    捜査の手が伸びてくるアルキメデス科研。人間での治験を米国に移すことを画策する氷川。フェニックス7は日の目を見るのか!それとも司法の手に掛かって消滅するのか!という感じです。

    徘徊老人はフェニックス7の処方でボケる前の状態を凌駕するくらい回復する。どうせボケが進み死ぬ運命だった老人たちは無条件に感謝する。例え副作用で死ぬことになったとしても・・・。
    これは人助けなのか?神の領域に踏み込んだ犯罪なのか?
    最後の終わり方はなるほど!あるかも知れないなぁ、と思わせるものでした。

  • 脳細胞を再生させるフェニックス7の開発を行う2人の研究者。動物実験を経てヒトへの治験段階に進みたいが、なかなか治験許可が出ない。それでも内外でフェニックス7への期待は高まっていく…

    神域と呼ばれる脳の再生医療をめぐる医療サスペンス。医療、研究、ビジネス、国家といった複雑な事情が絡み登場人物も多い割には、混乱なく読み進められた。久しぶりに一気に読んでしまった。
    ただ最後が…あぁ、そういう終わるのね…と。

  • 痴呆症に対して篠塚、秋吉のシノヨシが開発したフェニックス7と呼ばれる細胞の脳移植による治療。動物実験までは順調にきたが人への治験に移る際に問題が。早く使用したいアルキメデス科研理事長氷川。人体実験の証拠を掴んだ宮城県警楠木係長。日本、アメリカ政府も巻き込んだ医療物語。

  • 再生医療でアルツハイマーを治療しようとしているが重大な副作用があることが発覚する。

    それに関わる警察と医者と政治との関係が複雑に絡む

  • 面白い.ただ,心のそこから楽しめは出来なかった.それは,斯様な研究者が斯様な実験を行うことがあまりにも現実味がない,と感じてしまったからである.
    それは高い倫理観ゆえにではない.研究者は時として倫理観がない.恐怖心でもない.それは麻痺しなんらかのタイミングで消失することもある.組織的なチェック機構でもない.案外結構ガバガバなので.
    ただ,それら全てが少しずつ考慮に入って,全部が起こる確率がびっくりするくらい低いと感じてしまう感性だと思う.
    殺人だって起こる確率が低いのに楽しめる.それが科学の斯様な事象では抵抗感があったのは,ただ職業柄なのかもしれなく,残念.

  • 人体実験の真相に近づいた宮城県警の楠木。
    政府上層部の圧力も高まるなか、楠木たちは真相にたどり着くか?

  • 認知症と再生医療がテーマの本作、法を犯して認知症治療研究に取り込む医師と、徘徊老人失踪事件に挑む刑事、再生医療担当官僚が主人公。
    再生医療の事は全く無知だったので、
    興味を持たせてくれた一冊です。

    認知症で感情が死んでしまうより、
    人として少しでも長く生きられる未認可の細胞に
    飛びついてしまう気持ちは理解できるが、
    自分だったら、家族が患ったらどうするか、、
    とても考えさせられた一冊です。

  • 一気に読んでしまった

  • 脳細胞を再生させる新薬。残念ながら、完治するわけではない。一時的に発症前の状態に脳を戻せる。有効期限は数年、その後は死を迎える。この薬は、日本で承認されるだろうか?
    恐らく日本では承認されない。治験も消極的。半面、海外(USAなど)では、承認、実用化される、きっと。

    この違いは何だろうと、悩む。誰のための新薬か、と。苦しんでいる患者ともっと苦しんでいる家族のためには誰も動かない?のか。「99%成功していても、最後の1%で、多くの開拓者が壁に立ちはだかられ破滅していく」のとおり、日本は壁だらけなのかもしれない。

    「未承認の薬があったら、使用するか」と、主人公が父に問うが、一蹴される。少なくとも、自分の母親の痴呆を死を受け止めているハズなのに。やはり、医者の立場としては、勧められないのかもしれない。けど、自分で使うなら…。

    きっと、私は使用を躊躇わない。人間としての尊厳は死守したい。外国で合法なら、渡航してでも、と。
    短くても、人間らしい最期を、と考えるのは罪悪ですか。現実を直面していない戯言でしょうか。

  • 真山さんの小説は相変わらず面白い。
    医療小説と経済小説のちょっとどっちつかずな所もありましたが、痴呆というテーマの本はあまり読んだ事が無いので面白かった。

  • コロナのワクチンや治療薬の開発が他国より遅れている日本。医薬の分野に限らず何かにつけて慎重な我が国の政治、行政がここにある。

    2021.12.22 追記
    まさに今、我が国の製薬会社が米社と共同開発したアルツハイマー治療薬が話題になっており、この本のお陰で興味を持つことができた。

  • この手の医療小説はSFより面白い。誰も悪い奴はいないのでできればもう少し当人たちの主義主張がぶつかり合う様子が欲しかったなぁ...

  • 4.1

  • 「仕組みも理論も分からないお上のバカどもがOKと言えば治験となり、ダメだと言っているのに研究者が勝手に移植したら、人体実験となる。でもやっていることは同じだろ」という鋭一の言葉には考えさせられた。

    薬の認可に莫大な労力がかかる仕組みは、かつて多発した薬害事件への反省の賜物だが、回復の見込みのない難病患者に対し、本人や親族が望めば未承認の治療を施せるようにするのもありだよな。もっと言えば、何パーセントでも回復の可能性があれば、リスクが十分に解明されていなくてもオンゴーイングで治療法を承認してしまっていいんじゃないか、とも思う。薬害リスクを取りすぎていて,かえって患者が望む治療を受けられない状況になってしまっているんじゃないかと。とは言え、新型コロナウイルスのように致死率が低く多くの人が普通にしてても治ってしまう病気の場合はそれでは困るんだけど。

    単なる難病治療ではなく、老化防止やデザイナーベビーのような遺伝子操作の領域になると、より「神域」に近づいていく。本作は、そこまで踏み込んだ内容じゃなかったので、安心して読めた。

  • 高齢者失踪事件の全貌。アルツハイマーの新薬開発における老人たちへの治験であった。事件が明るみに出そうになると、国家機密扱いとなり真実は闇の中へ葬り去られる。

  • 認知症の薬が間に合うか。

  • 昨日はコロナのNスペ出演し「感染防止と経済対立させることがおかしい」小説は、どう着地させるのかとハラハラ。横紙破りの横暴極まる国家権力発動、特定秘密保護法発動。それでも読み終えて後味悪くないのは異次元キャラ、松永がテンポ生み出し、重いテーマをすんなりと。

  • 治験の判断は難しい、再生医療の未来はどうなんだろう。

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著者プロフィール

1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー。映像化された「ハゲタカ」シリーズをはじめ、 『売国』『雨に泣いてる』『コラプティオ』「当確師」シリーズ『標的』『シンドローム』『トリガー』『神域』『ロッキード』『墜落』『タングル』など話題作を発表し続けている。

「2023年 『それでも、陽は昇る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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