永遠と横道世之介 上

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 282
感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108643

感想・レビュー・書評

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  • 「永遠と横道世之介」が出版されると知って驚いた
    えっ、また世之介に会える!

    私が「横道世之介」「続横道世之介」を読んだのは、2019年。読み終えてしばらくは、世之介ロスだった
    今までたくさんの小説を読み、たくさんの登場人物に出会ってきたけれど、私の中でベスト3に入る大好きな人物だ

    スーパー銭湯とかにある不感の湯、体温と同じくらいの温度で、浸かっているのか浸かってないのかよく分からないぬるいお湯。世之介といるとあのお湯に浸かっているみたいで気持ちいいという件があるが、世之介の人柄を表すのに、いい得て妙だ

    この巻に出てきた世之介語録
    「・・・どんな人に出会うかなんて、なかなか自分じゃ選べないじゃん。だったら、せっかく出会った誰かを大事にする方がいいんじゃないかなって」

    「何でお前が生まれてきたかって言うとね、前世でお前がいろんな人を大切にしたんだよ。そのいろんな人たちがまた生まれ変わって、今のお前を大切にしてくれてるんだよ。・・・.何が言いたいかって言うと、何で人間が生まれてくるか、それは、ご褒美だよ。前世でおまえがいろんな人にやさしくしてやったご褒美に、今のお前は生まれてきたんです」

    今回は、事実婚のあけみちゃんが営む「ドーミー吉祥寺の南」を中心にした大した事件が起こるわけでもないごく当たり前の日常が描かれているに過ぎないが、心が癒されていくのが分かる
    私もただただやさしい人になりたいと思ってしまう

  • また世之介と会えるとは。本当に本当にうれしい。

    いやホントもうずるいとしか言いようがない。
    突然涙が出るシーンが頻出。 
    初めて作るトマトとチーズの洋風鍋、世之介くんごいたら失敗しても笑い話になるじゃないという二千花のお母さんのセリフ。

    伊香保温泉でのお母さんとの無理矢理電話。

    この仕掛けを思いついた吉田修一の思うがまま(笑)

    早く下巻を読みたいが、ゆっくり味わいたくもある。

    こんな言葉を噛み締めながら
    「人生というものは、人の一生から、その派手な物語部分を引いたところに残るものではなあかと思うのである。」

  • 世之介と出会ったのが14年前。
    いろんな思いが蘇る。
    感想は(下)に。

  • 2009年刊行『横道世之介』の3作目、完結編。
    2019年に2作目となる『続・横道世之介』が刊行されています。
    どちらも読んだけど、特に続編はほとんど覚えておらず…
    でも心配無用!
    そういう人のために著者がちょいちょい説明を入れてくれている!

    38歳になった、2007年の横道世之介。
    相変わらずののほほんぶり。
    前作と同じように、いろんな時系列で語られ、
    時おり亡くなった恋人と過ごす場面が出てくる。
    初めは失った思い出として読んでいたので痛ましいように思っていたけど、

    【1作目未読の方には重大なネタバレ↓要注意】




    ふと、彼女を見送る世之介も、もうすぐ亡くなるんだったと思い出す。
    前作まではその事実が辛かったけど、見送る立場の世之介を見ているうち、誰かを見送り、いずれ自分が見送られるのは何も特別なことではなくて、人の生きる道そのものだと気付く。
    そうすると、彼女との時間に出会うたび、そのあふれる幸福に、まるで宝箱をのぞいているような気持ちになるのです。
    1作目のラストは現実にあった事故がもとになっていて、確かにそれはとても印象深い事故だったけれど、その事故で物語が終わってしまったのが唐突すぎて受け入れられない気持ちもあった。
    でもこの完結編を読んで、納得できた気がしました。

  • 【人生というのは、人の一生から、その派手な物語部分を引いたところに残るものではないか】

    今までの人生で一番好きな小説の続編でした。
    彼ののんきな優しさにどれほど救われたことか。

    「この世で一番大切なのは、リラックスしてることですよ」って言える世之介は確実にしなやかで強い。
    結局、人生な派手な部分以外が満ちてる人は、黄信号を待てたり、電車を一本遅らせたり、些細な余裕がある人だと思う。

    心から横道世之介にはなれなくとも、自分にすこ〜し余裕がある時、人に優しく出来るようにしたい

  • また世之介に会えるとは・・・、感無量。

    読み終わるのが惜しくて、一行ずつじっくり、なんだったら一文字ずつ味わいつつ読んでいたのだが・・・、
    それでも読み終わってしまったぁ。

    上下巻なんかじゃなく、100冊セットとかだったらいいのに。

  • Kindleで読んだ。
    世之介が暮らすのは、東京郊外に建つ下宿「ドーミー吉祥寺の南」。元芸者の祖母が始めた下宿を切り盛りするあけみちゃん、最古参の元芸人の営業マン礼二さん、書店員の大福さん、大学生の谷尻くんらとゆるーっと暮らす毎日に、唐突に知り合いのベテラン教師ムーさんの引きこもりの息子一歩が入居することになって……。下宿仲間たちと繰り広げる、温かくてしょっぱい人間ドラマ。 
    シリーズ3作目にして完結編。

    2007~2008年、横道世之介38~39歳の一年。
    2008年の秋に人助けをして亡くなる世之介の最後の一年。
    カメラマンとして独り立ちした世之介は、あけみが営む下宿で一緒に暮らす。事実婚のような状態。
    このあけみさんが作るご飯が美味しそうなこと!

    間に入ってくる話が、今までは未来だったけど今回は過去の話。
    余命宣告を受けていた恋人で、病気で亡くなった二千花の話をメインに織り交ぜながら。
    結婚式場オープン記念のウェディングフォト撮影が印象的。
    “生まれ変わったら結婚しよう”と二千花。
    ブータンからきたタシさんが教えてくれた『輪廻転生』に繋がってくるのかな。

    世之介が生まれた時の話は泣けた。
    “世の中の人たちを助けてあげられるような、そんな大きな人間になってほしいって意味を込めて”
    世之介は名前の由来通りの人になったよね。
    周りも頼ってるって実感ないまま頼ってる、みたいな。
    亡くなってから15年経ってもなお、皆に話題にされるなんてすごいことだと思う。

    “どんな人に出会うかなんて、なかなか自分じゃ選べないじゃん。だったら、せっかく出会った誰かを大事にする方がいいんじゃないかなって。”
    世之介をよく表してる。来るもの拒まずなところ。
    世之介みたいな息子に育ってほしいな、と思うよ。

    これで終わりだなんて寂しいなぁ。
    今回も心に響く言葉がいっぱいあった、

  • 一作目、二作目に続き今回も読みました。
    引き続き世之介、世之介の周りが暖かく、読んでいて幸せな気持ちになりました。
    今回で完結なのは寂しいですが、世之介マインドを自分も持てたらと思います

    人生の時間を自分のためだけに使うんじゃなく、
    大切な人、困った人のために使えるそんな人になりたいです

  • プルーフ読了
    マイペースでありながらも
    周りに頼られ、
    誰彼問わずほっこりさせてしまう存在。
    横道世之介―
    あなたのような男になりたい。
    あなたのような、
    リラックスした人になりたい…。
    飾らず、気取らず、気負わず、
    そして飽きさせない。
    日々の暮らしぶりを
    淡々と描いているようで
    会話も感情も
    わだかまりなく共有できてしまう。
    その筆力は流石の一言に尽きます…。

  • もうとにかく横道世之介と言ったら奇想天外、摩訶不思議な人物である。人がやっていけない事を平気でやってしまう様な性格、そして「ドーミー吉祥寺の南」の人達がおもしろいったらありゃしない本当に心置きなく読んでしまった。世之介の死んでしまった元恋人の恋話なんかおもしろいおかしく読みました。ラストのエバへの手紙も感動したし、題名の『永遠と横道世之介』の深い意味を読んで理解しました。あなたもぜひおもしろい感動作を読んで見て下さい。

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著者プロフィール

1968年長崎市生まれ。97年「最後の息子」で文學界新人賞を受賞し作家デビュー。2002年『パレード』で山本周五郎賞、同年『パークライフ』で芥川賞を受賞。07年『悪人』で毎日出版文化賞、大佛次郎賞、10年『横道世之介』で柴田錬三郎賞、19年『国宝』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『路』『怒り』『橋をわたる』『ウォーターゲーム』『女たちは二度遊ぶ』『犯罪小説集』『ミス・サンシャイン』など多数。

「2022年 『逃亡小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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