永遠と横道世之介 下

  • 毎日新聞出版 (2023年5月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784620108650

感想・レビュー・書評

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  • 上巻とは打って変わって、お別れが近いからか、ほっこりエピソードも、悲しいエピソードも、すべて切なくなる。まるで、楽しい旅行の最終日のような。
    でも素敵な旅行のような、嫌な日常を全て忘れてはしゃぐような読書体験をさせてくれた世之介に感謝したい。
    自然体で生きること。長さや短さ、濃さや薄さに違いはあれど、人と比べることなく満足して一生を終えられることが素敵な人生なんだなと感じた。世之介や、二千花のように。 ★5.0

  • 世之介の二千花への思いが詰まっていた。

    二千花が世之介に余命宣告されてることを告白した時、二千花は付き合ってるわけでもない世之介にいきなり深刻な話をしてしまったから、慌てて茶化す感じに持っていく。
    その時の世之介の言葉が
      「どういう風に過ごしたい?」
    真剣な顔で笑いもせずに聞く。
    あーだから世之介が好きなんだ。やっと分かった。

    結婚式場のオープン記念の写真撮影に行き、ウエディングドレスとタキシード姿で撮影場所の海岸に向かう2人。その途中で二千花が世之介に言う。「ごめんね」「・・・・・こうなれなくてさ。ほんとごめん」
    涙なしでは読めない

    世之介が死んだ時、橇を引いて迎えに来てくれたのかな。

    なんでもない一日が、どれほど尊いのかを気付かされるシリーズでした。

  • 吉田修一さん「永遠と横道世之介」
    上巻に続き下巻も読了。
    世之介シリーズ三部作、完結。

    今回の作品は「ドーミー吉祥寺の南」という下宿のような寮のようなアパートが舞台。この舞台背景が凄く効いた物語であり、世之介がより世之介でいられる場所だと感じられる設定だった。

    そこで描かれる人間模様。普遍的で飾らない暮らしの中にだからこそある生活の満足度、充実度が描かれている。
    人と人との繋がりで構築されていく人間模様。その中心にいる世之介は正に最後に永遠が「一日みたいな人」と比喩した言葉がしっくりくる。
    太陽みたいで…海みたいで…風みたいで…

    人を大事に、言葉を大事に、空気を大事にしていた世之介。彼のその存在は皆の中で違いはあれども共通した「満たし」があったに違いない。その「満たし」が一日という表現なのだろう。素晴らしい表現力。

    三部作通して読んでみて、その世之介が自分の中にも居着いてしてしまっている。
    この世之介という人間の人間力に魅せられてしまって、自分も世之介亡き後、彼が差し出した手の数々のように自分も誰かのためにしていこうと強く思わされている。

    世之介の言葉を借りるなら、自分にはまだその時間がまだ少し残っている気がする。
    相手の目を見てお互いしっかりとリラックスして、お互いの考えをお互いの言葉で話していこう。

    二千花、二千花の両親とのエピソードは本当に心が震えた。世之介自身が生と死を意識することで得られるその価値観が本当に素晴らしかった。

    世之介…最高だった。
    彼と出会えて自分も本当によかった。

  • 他の本のレビューにも書いたような覚えがありますが、著者の吉田修一さんは日本で五本の指に入る小説巧者だと思います。筆が達者すぎます。
    ユーモアのある場面と緊張感のある場面の切り替えが絶妙に上手いです。
    鳥肌が立ちそうになる文章も何か所かありました。
    (P313、6行目~7行目とか、P343、13行目、P345、10行目)
    引用したいのですがネタバレなしで書きたいので引用はしません。


    ドーミー(下宿屋)で暮らす人たちと、亡くなった元婚約者の二千花、世之介の日常が交差しています。


    もうすぐ父親になる同僚のエバと妻咲子。
    好きな女の子のためにサーフィンを始める谷尻くん。
    芸人になりたかった礼二。
    引きこもりの一歩。
    世之介の今の恋人のあけみちゃん。
    二千花の両親の正太郎と路子。
    世之介の両親の洋造と多恵子。


    世之介はいいます。
    「この世の中で一番大切なのはリラックスできてること」


    他にも書き留めておきたい言葉を記します。
    P349より
    きっと世之介の言う通りなのだろう。
    思い出になるには時間がかかるのだ。
    そして逆に言えば、時間をかければ、すべては思い出になっていくのだ。

    P374より
    「…その人はね、きっと、この本、に出てくる一日、みたいな人だったんだよ。
    なんでもない一日。
    春の、夏の、秋の、冬の、
    そんななんでもない一日みたいな人」


    書いていて泣きそうになりました。
    横道世之介よ永遠に!
    とてもよい物語でした!

  • 上巻を読み終えていよいよ最後の半年。終わりが分かっているから切なさが増してきます。
    ドーミー吉祥寺の南の下宿人は、元芸人の営業マン礼二さんに書店員の大福さん、大学生の谷尻くんに引きこもりの一歩。空き部屋もあるようでたまにゲストも泊めている様子が何気にいいです。あけみさんの作る料理は美味しそうだし、近所のお婆さんも野菜おすそ分けしてくれて、以前の下宿人からもカニとか届くようだし。
    なんでもない日常がずーと続くと思いがちなんですがいづれ在宅か不在かの札を外すときがくるんだと思うと、どれもがかけがえのない瞬間で愛おしくなる。
    全編を通して、世之介の人付き合いの良さには感心します。
    どれだけ面倒ごとを背負いこんでもストレス感じずに鷹揚でいられる姿は柳の枝のようで、ある時は竹を割ったように潔く、そばにいるだけでほっとする存在。元婚約者の二千花が亡くなってから6年経つとゆうのにずーと心の1番目に置いてるとか、信じられないくらいの愚直ぶり。
    世之介をひとり占めできないと割り切っているあけみさんとは無茶素敵な夫婦に見えるのですが、あけみさんはこのままでいいのだろうかと思ってしまう。すっきりしない事が多すぎるけどそんなことひっくるめて、ゆっくりと時間が流れる中で大切な思い出になっていく。スクラップブックを見ているようなノスタルジックな時がすぎていく。
    思い出の中に引きこもっちゃって在宅なんてリモートじゃないんだからまだまだジタバタしてほしいって思ってしまうのですが、この作品のっけから回想シーンが多くって後向きがデフォなんですよね。

    • かなさん
      つくねさん、おはようございます。
      私も、世之介シリーズにも興味があるんですけどね!
      どういう順番で読んだらいいんでしょ??
      読めるとし...
      つくねさん、おはようございます。
      私も、世之介シリーズにも興味があるんですけどね!
      どういう順番で読んだらいいんでしょ??
      読めるとしてもだいぶ、
      だ~いぶ先になりそうですが(^▽^;)

      2024/07/05
    • つくねさん
      かなさん、こんにちわ!

      世之介シリーズ、「永遠と横道世之介」の上下巻だけでも
      充分楽しめると思いますが
      本棚並べたい症候群のかなさ...
      かなさん、こんにちわ!

      世之介シリーズ、「永遠と横道世之介」の上下巻だけでも
      充分楽しめると思いますが
      本棚並べたい症候群のかなさんなら順番に
      大学に進学した19歳の話の「横道世之介」と
      卒業後の24歳「続・横道世之介」と
      今作の39歳の世之介の順番になるでしょうね。

      下巻の最後は15年後の話があり、
      世之介が生きていれば55歳になってて
      ちょうど2024年なんですよね。
      まあ世之介は作者と同じ1968年生まれの
      設定なんですけどね。
      2024/07/05
    • かなさん
      つくねさん、こんにちは!
      教えてもらえてよかったです(*^^*)
      気になっていて、調べてみようと思っていたけど
      つくねさんなら教えても...
      つくねさん、こんにちは!
      教えてもらえてよかったです(*^^*)
      気になっていて、調べてみようと思っていたけど
      つくねさんなら教えてもらえるかなぁ〜って
      つい、甘えちゃいました♪

      つくねさんの言う通り、順番通りに
      私の並べたい意欲も高まりましたので、
      いつか読んでみますね!!
      ありがとうございました。
      2024/07/07
  • もうすぐ四十の世之介の1年間。
    世之介、前作とあんまり変わってない?と思ったりもしたけれど、前作の世之介と同じくらいの年齢の後輩への対応や、職場でトラブル解決している姿などを見ると、やっぱり大人の男になったんだなぁ、と感慨深い。
    そして、今までの作品と何より違うのは世之介の内面をたっぷり読ませてもらったところ。
    正直、今までの世之介はいいヤツなんだけど、受け身というか、来るもの拒まず去るもの追わず的な人に私には見えていました。今作でも恋人のあけみさんに『世之介のことは独り占めできない、褒めてるんじゃないからね、女からしたら最低のダメ男だって言ってるのと同じだからね』と言われてますしねw
    でも、あけみさんも世之介の心の中にある深い深い悲しみを分かっている。そして、その悲しみこそが、世之介をただのいいヤツだけではない男に変えていったんじゃないかな、と思います。
    世之介は、運命の出会いをしたんだな。
    〜大切な人を亡くしても、世の中は変わらずに動いていく。だけど、同じように見えてもやっぱり少し違う。その人がいた世界と、最初からいなかった世界とはやっぱり何かが違う。それが一人の人間が生きたということ〜

    世之介の周りはやっぱり面白いし温かい。そして、やっぱりみんな、世之介のことが大好き。
    きっと、世之介の眉間には皺とか寄ったことないんだろうな。いつもリラックスしているんだろうな。

    世之介の名の由来、「永遠と横道世之介」のタイトルの意味、分かった時、グッときました。

    あーーー
    もう、世之介には会えないのかー
    寂しいなぁ。 
    ‥‥でも、待ちに待った「コンビニ兄弟3」が!
    図書館の予約頑張るぞー(購入しろ!)

    • こっとんさん
      1Qさん、おはようございます♪
      そうなんですよー。
      DVD借りれるんです!
      今まで借りたことは一回しかなかったんですけど、今回よくよく調べて...
      1Qさん、おはようございます♪
      そうなんですよー。
      DVD借りれるんです!
      今まで借りたことは一回しかなかったんですけど、今回よくよく調べてみたらアマプラで見れないものもたくさん取り扱っていたので、利用しない手はない!と思ってしまいました。
      とりあえず世之介を観てみようと思ってます。
      でも、ちょっとドキドキ。読むだけで観ない方が良かったなぁ、と思うこともしばしばですもんね(“ですもん“←世之介の口ぐせw)
      2023/08/27
    • 1Q84O1さん
      あーーっ!
      その気持ちよくわかりますw
      原作が良かったから映画やドラマも観てみると…
      あれ…!?ってことありますよね^^;
      なんか自分がイメ...
      あーーっ!
      その気持ちよくわかりますw
      原作が良かったから映画やドラマも観てみると…
      あれ…!?ってことありますよね^^;
      なんか自分がイメージしていたのと違うぞって感じなどw
      2023/08/27
    • こっとんさん
      1Qさん、
      そうなんですよねー
      ちょっとドキドキしながら観てみます(^_^)
      1Qさん、
      そうなんですよねー
      ちょっとドキドキしながら観てみます(^_^)
      2023/08/27
  • 読み進める内に、「永遠と横道世之介」そうきたか!とタイトルが腑に落ちました。もともと一作目から世之介の人生にはリミットがあることはわかっていました。
    だからといって波瀾万丈でなく、いろんな人と、笑ったり泣いたりと何気ない日常が描かれます。これが何故だか面白いエピソードばかりなのです。
    特に二千花との回想シーンと現在が同時進行で絡み合って進むのが面白い。そして、切ない。「人生は一人で使うには長い、その余りを誰かのために使えたら贅沢だ。」との言葉には共感しました。世之介自身がそんな生き方だったなと思えました。
    今回で完結しましたが、横道世之介シリーズが自分の傍らにあってよかったと思います。

  • ずるいよぅ...こんな風に終わるなんて。
    あと残り数ページになったから、最後を読むタイミングを見計らってきた。図書館じゃダメ、カフェもダメ。そう、家族みんなが寝静まった今を待っていた!!
    誰にも遠慮せず、泣く!。゚(/□\*)゚。ワーン!

    シリーズ初めから読んでよかったなあと思いました。世之介の人生を一緒に生きれた。

    ほんと人生って何気ない1日の連続で、時間が経って振り返った時にああ、あれは幸せだったなあ、って気づくんだろうな。結構生きてると辛いこと苦しいこと一杯あるし。そういうことを乗り越える時に、世之介のような自然体の人が側にいてくれると嬉しいかも。力強いだろうなあ。そして私も誰かのそういう人になれたらいいなあ。

    最終巻、名言?というか心に留めておきたい言葉が沢山ありました。毎日頑張って生きる上で、常に側にいてほしい存在の本です。

    • へぶたんさん
      是非会いに行って〜。゚(゚´Д`゚)゚。
      是非会いに行って〜。゚(゚´Д`゚)゚。
      2025/07/08
    • しずくさん
      私も会いたいです!
      私も会いたいです!
      2025/07/08
    • へぶたんさん
      是非お家にお招きして〜。゚(゚´Д`゚)゚。
      是非お家にお招きして〜。゚(゚´Д`゚)゚。
      2025/07/08
  •  遂に…本当にこれでおしまいかぁ…!!一気に読んだけれど、長いとは感じなかったです。

    「ドミー吉祥寺の南」の住民たちと、世之介の元カノである二千花、仕事の後輩に当たるエバ…世之介が関わってきた人たちは(前作・前々作の登場人物も含めて)、みんな素敵な人たちでしたっ!

     善良な世之介と関わったことで、みな善良になれたのかな…この世で一番大切なことはリラックスできていること、世之介らしいなって感じました。なんでもない一日みたいな人が世之介…こんな風に誰かの心に残る人になりたいなぁ…!

     あぁ…読み終えてしまった…!評価は通して、☆4に読み終えたときのインスピレーションでしているけれど…☆5でもいいよなぁ〜と、心の声がしました。もし、再読したら多分☆5にすると思います(*^^*)

    • かなさん
      どんぐりさん、今日もお疲れ様でした。
      なんとも切なくも
      読了してしまいました(ノД`)・゜・。
      また、いつか、いつか…
      再読すると思...
      どんぐりさん、今日もお疲れ様でした。
      なんとも切なくも
      読了してしまいました(ノД`)・゜・。
      また、いつか、いつか…
      再読すると思いますっ♪
      そして、読めて、世之介に出逢えてよかったです♡
      2024/09/03
    • 1Q84O1さん
      かなさん

      昨日もイライラ!
      今日もイライラ!
      きっと明日もイライラ!w
      ではダメですね…(;^ω^)
      さぁ、大きく深呼吸してリラッ〜クス〜...
      かなさん

      昨日もイライラ!
      今日もイライラ!
      きっと明日もイライラ!w
      ではダメですね…(;^ω^)
      さぁ、大きく深呼吸してリラッ〜クス〜〜
      (*´▽`*)
      2024/09/03
    • かなさん
      1Q84O1さん、確かにぃ!!!
      私も昨日も今日も
      きっと明日も、イライライライラ(;´Д`)
      ダメですよねぇ…
      大事なのは、リラッ...
      1Q84O1さん、確かにぃ!!!
      私も昨日も今日も
      きっと明日も、イライライライラ(;´Д`)
      ダメですよねぇ…
      大事なのは、リラックスできていること…です(・∀・)
      2024/09/03
  • あぁ…読み終わってしまった…


    ここ数日どっぷりと
    世之介ワールドに浸っていたせいで
    寂しくて仕方ないです。。。

    でもとても素敵な時間を過ごせました(^^)


    この先どういう展開になるのか気になって
    早足で読んでしまったのが
    とてももったいなく感じながらも
    でも先が気になって読んでしまいました


    内容が分かった上で
    もう一度じっくり読みたい。。
    (図書館から予約本が二冊も待機してるのは見えないフリしてもいいかな)



    ◯ここからネタバレあります◯



    一作目から気になってたのは
    世之介はどういう気持ちで最後を迎えるのか。

    事故の様子が描かれるだろうと思ってました。

    またニ千花との別れも
    当然描かれると思っていました。


    でも具体的には何も描かれてませんでした。



    そこが、本作っぽくて
    とてもよかった


    いくらでもお涙頂戴な感じで書けるのに
    そうはしなくて、
    あくまで日常を切り取っていて。


    世之介が、ニ千花が、どう生きていたか。
    残されたものがどう生きているかを
    伝えてくれていました。


    しんみりしすぎることのない感じが
    日常ってこうだよな、
    生きるってこういうことだよなと思いました。



    それにしても世之介は
    人を素にする力がありますよねー


    世之介といると自然体でいられるんでしょうね
    そしてどこにでも、誰にでも波長を合わせられる
    いや、合わせてるというより、
    誰もいても変わらなくて、
    相手が自然と変わっていくんですかね


    歴代の彼女たちとも、
    付き合った年月は短いのに
    ずっと一緒にいたかのような関係になれるのは
    そのせいかもしれないですね
    どの人との関係もとてもいい関係ですよね


    あと、あけみさんがいっていた
    世之介は独り占めできないっていうのは
    すごく納得しました

    みんなが世之介を呼んでる。
    頼りないと思ってるのに、頼りにしてしまう。
    そんな人ですね


    にしてもあけみさん。
    ずっと心にニ千花さんがいて
    二番目と明言されていて
    どんな気持ちで一緒にいたんだろ。

    こうやって書くと
    なかなかな物言いをする男だけど
    そんな感じではない横道世之介
    不思議な男だーーー



    ああ書き出すと止まらない
    他にも永遠ちゃんのこととか
    南條さんのこととか
    沢山学ぶことがあったし
    語りたいこともあるけど
    長くなりましたのでこの辺で。笑


    さてもう一回読もう!





  •  飄々とかつ一生懸命に人生を楽しむ男、横道世之介。
     現在は東京郊外にある下宿屋「ドーミー吉祥寺の南」で、家主のあけみや4人の店子たちと共同生活を送っている。
     暮らし向きが豊かでないのは相変わらずだけれど、やはり毎日が楽しそうだ。

     世之介不惑の歳までの約1年間を描くシリーズ最終作。下巻は、後半の半年間の物語。
              ◇
    世之介は39歳を迎えた。カメラマンをしながら東京郊外での下宿屋暮らし。大家で妻のあけみと、気心の知れた3人の店子たち。そんな平和な空間にやってきたのは引きこもり男子高校生。名を一歩という。

     一歩は世之介が仕事で知り合った中学教師の一人息子で、誰ともコミュニケーションを取ろうとせず、不満があれば下宿中に響く爆音で音楽を流したりする。
     両親ですらお手上げ状態の一歩なのだったが、下宿屋のユルい空気の中で徐々に変化が訪れる。

     また、世之介やその周囲でも、人生に新たな希望が芽生えはじめていた。

     全7章で「三月」から「八月」までをひと月ごとに描いた本編と、エピローグとしての「15年後」からなる。

          * * * * *

     下巻の中心になるのは世之介の溢れる人間味です。適宜挿まれる二千花との日々。もう涙なくしては読み進められませんでした。

     まず、世之介の好意を察知した二千花が余命2年を告げるシーン。世之介のリアクションがいかにも世之介で、安堵の笑みが漏れます。
     結婚式場でのウェディングドレス体験に゙二千花が応募する話もいい。タイムアップのときが刻々と迫る人生を精一杯生きようとする姿が美しい。また、彼女を懸命に支える世之介のふわっとした優しさがよかった。
     そして、海辺での2人のシーン。もう言葉にならないほどです。

     世之介のよさは、二千花の余命をカウントダウンしながら彼女に接する、ということをしないところです。
     世之介が見ているのは目の前にいるいま現在の二千花だけ。だから二千花も、その時の体調に合わせた過ごし方を世之介に伝えるだけ。瞬間瞬間をきちんと生きようとする2人が胸を打ちます。
     心が繋がっているような密度の濃い2年間でした。

     また、世之介の両親の出会いから世之介誕生の日のことまでの描写も印象的です。
     「世之介」命名の意味もストンと腑に落ちました。「名は体を表す」のことばどおり、まさに世之介の生き方そのものだったからでした。

     あとは運命の日に向かって物語が盛り上がりを迎えていきます。
     世之介の日々は明るく希望に満ちた展開であるだけに、読んでいて却って辛くもなります。

     ブータン人のタシさんの言葉。
    〈私が誰かに生まれ変わる。そしたらその生まれ変わった誰かは、きっと今、私が愛している人たちの生まれ変わりにとても愛されるんだと思います〉
     目の前の人を愛する。助ける。でも決して押しつけない。誇らない。得意にならない。まことの愛は輪廻転生を越え永遠に受け継がれていく。

     世之介にはタシさんのような確固とした哲学はないと思います ( 偏見です、ごめんなさい )。けれど、本能というか根っこのところで、世之介にはタシさん同様の行動原理が備わっている気がします。そんな天然の「愛の使徒」っぽいところに人は惹かれるのだろうと思いました。

     世之介と関わった人たちは皆、素直で優しい愛でもって周囲に接するようになります。その展開の心地よさこそ本作のかけがえのない余韻なんだと思います。

          * * * * * 

     世之介は、宮沢賢治さんの詩「雨ニモマケズ」を体現したような人だなあと、ずっと感じていました。亡くなるその瞬間まで世之介は、「サウイフモノ」だったと思いました。

    • yhyby940さん
      こんばんは。ますます読みたくなりました。ありがとうございます。
      こんばんは。ますます読みたくなりました。ありがとうございます。
      2023/11/16
    • Funyaさん
      yhyby940さん

       はじめまして。コメントありがとうございます。

       この横道世之介シリーズは何かしら心に刺さる作品でした。

       初め...
      yhyby940さん

       はじめまして。コメントありがとうございます。

       この横道世之介シリーズは何かしら心に刺さる作品でした。

       初めて読んだ第1作が強烈で、高良健吾主演で吉高由里子がヒロインになった映画も観たほどです。
       世之介停滞期の第2作を経ての第3作は感慨深く、胸がいっぱいになりました。

       yhyby940さんなら世之介の生きた時代背景をよくお解りになることと推察いたしますので、ぜひご一読ください。
       映画もたくさんご覧になっていらっしゃるようですから、よろしければそちらもいかがでしょうか。(原作と少し違うところがありますが。)

       これからもよろしくお願いいたします。
      2023/11/16
    • yhyby940さん
      ご返信ありがとうございます。吉田修一さんの守備範囲の広さを感じさせてくれる作品だと思っています。世之介の少し浮世離れしているところが好きなん...
      ご返信ありがとうございます。吉田修一さんの守備範囲の広さを感じさせてくれる作品だと思っています。世之介の少し浮世離れしているところが好きなんです。それでもって人を惹きつける。魅力的な主人公ですね。本棚、参考にさせていただきます。
      2023/11/16
  • 「横道世之介」シリーズ完結編。

    ついに最後となった世之介の物語。
    最後の最後に蘇ってくるのは、最愛の人ニ千花と過ごした楽しかった日々。
    印象に残ったのは、「この世の中で一番大切なのはリラックスできてること」とニ千花が言ったことである。
    リラックスできてるってなかなか出てこないことば。
    だけどピッタリとはまるのが世之介なんだと改めて感じ、彼の大きさに今さらながら納得する。


    「ドーミー吉祥寺の南」の下宿人である礼二さんと世之介の死を覚悟した転落騒動から始まった今回は、谷尻くんの恋愛事情もあったり、引きこもりとは思えなくなった一歩くんのことだったり…。
    そして、後輩カメラマンのエバと咲子のカップルが新しい命を授かったことも大きな出来事。

    回想するのは、ニ千花のことだけでなくお互いの両親の出会った頃のこともある。

    大切に繋がっていく、紡いでいく想いを感じこの完結編は、とても濃厚で一行とも無駄にしたくないと思った。

    『永遠と横道世之介』のタイトルに頷ける。
    十五年後が、また最高に素晴らしい。
    まだまだ世之介を感じられる。
    それは、永遠に思える。



  • なんでもない一日の話ばっかり
    なんでもない秋の一日、なんでもない冬の一日が上巻で終わって下巻ですw
    下巻はなんでもない春の一日、なんでもない夏の一日

    だけど、下巻は少しずつ涙が出てくる…

    世之介と亡くなってしまった元恋人の二千花の思い出に…

    エバと咲子と赤ちゃんの頑張りに…

    ページをめくるたびに世之介との別れが近づいてくることに…

    そして、最後に分かる『永遠と横道世之介』のタイトルの理由に…

    下巻はゆる〜い中にもグッとくるものが詰まっています

    読めばきっと世之介にまた会いたくなる一冊

    • 1Q84O1さん
      ですよね~
      世之介いいんですよね〜
      ひろさん、まずは続編を!
      で、次は本作を!
      世之介が待ってますよw
      ですよね~
      世之介いいんですよね〜
      ひろさん、まずは続編を!
      で、次は本作を!
      世之介が待ってますよw
      2023/07/16
    • 土瓶さん
      なんでもない話なのに、おもしろいって。
      いいですね~(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
      なんでもない話なのに、おもしろいって。
      いいですね~(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
      2023/07/16
    • 1Q84O1さん
      そうなんですよ~
      この空気感がいいんですよ〜
      今回も声に出しておきましょうw
      よ・こ・み・ち・よ・の・す・け!
      そうなんですよ~
      この空気感がいいんですよ〜
      今回も声に出しておきましょうw
      よ・こ・み・ち・よ・の・す・け!
      2023/07/16
  • そばにいるとホッとする、なんでもない1日のような人っていうのが、すごくいいなあと思いました。
    永遠と横道世之介って、タイトルの意味も最後に分かって良かったし、静かに読み終えることができました。

  • 上巻は序章と云っていい位、最高でした。

    一番は二千花が世之介に自分の余命を
    告白する場面。
    これはグッときました。

    礼二が志村けんに会って、興奮して
    とんでもない話をする場面。
    あるあると思ってしまいます。

    あけみちゃんが墓参りの後、
    世之介を独り占めできないと
    本心をいう場面も大好きです。

    とにかく、どの場面も大好きですし
    これが最後だと思うと本当に寂しいです。















  • 「こうやって美味い卵焼きやおにぎりをみんなで食べていると、来年も再来年も、いや、もっといえばこの先ずっと春になれば、このメンバーで井の頭公園にやってきて、今日と同じように満開の桜を眺めているのではないかと思う。そうなったら幸せだなー」

    世之介ー!
    結末は分かっていたけれど、やっぱりこの時を迎えるとなんとも言えない気持ちになった。
    飄々としながらサラッと素敵なことを言う世之介に、ちょっと悔しいけれどキュンとなった。
    「この世の中で一番大切なのはリラックスできてること」
    この言葉は世之介が言うからいいんだよね。世之介だから受け手の気持ちも自然とほぐれてくる。世之介の人柄が、その存在が、みんなを救ってくれる。

    「世の中の人たちを助けてあげられるような、そんな大きな人間になってほしい」
    ご両親から託された名前通り、いつも周囲の人たちを全力で助けた世之介。あなたが生きた証はずっとずっと消えることはない。世之介と出逢った全ての人たちの心の中にいつまでも在り続けるに違いない。

    二千花ちゃんは約束通りトナカイの着ぐるみを着て橇を引いて世之介を迎えに来てくれただろうか。
    空からシャンシャンと鈴の音を鳴らして笑顔で迎えに来た二千花ちゃんと、そんな二千花ちゃんを見て嬉しそうに微笑む世之介の姿を想像しながら、横道世之介シリーズ完結編を、切なさいっぱいに読み終えた。

  • 上下巻の感想です。

    以下の順番らしいですが、またまたやってしまいました。
    ◯横道世之介→読んでない
    ◯続横道世之介→読んでない
      (文庫本は おかえり横道世之介 らしい)
    ◯永遠と横道世之介(上下巻)→読んだ

    作品順に読まなくても大丈夫と本文に書いてあり、充分良い話しでしたが、やっぱり 永遠と横道世之介 は最後に読んだ方が良いです。

    著者が場面を説明しながら進むスタイルなので、何だかちびまる子ちゃんのような。
    内容は良い人の楽しい日常で、悲しい出来事もあるけど、総じて気持ちが晴れるような作品、女性が描いたような優しい物語です。
    (吉田さんイケメンなおじさん。)

    年始にのんびり読むのにちょうど良かった。

  • 2023年初版。横道世之介3部作読了しました。お人好しのお気楽中年の主人公。人柄の良さから周りには、いつも人がいる。いつのまにか中心にいる。結末は最初からわかっていていますので、辛いなあと思いながら読み進めますが、主人公が本当にいい男。本気で愛した女性を亡くして今も立ち直りきれていない。人のことばかり世話を焼く。そんな主人公のことを周りの人がみんな好きなんですよね。ラストが悲しい終わり方でなくて良かったとホッとしました。是非、著者には世之介の長崎時代のこと、彼の少年時代で書いていただきたいと切に望みます。リラックスを心がけたいと思わせてもらえた作品。読んでみてほしい作品。

  • アルバムを閉じた一冊。

    最高。
    真っ先に浮かぶ言葉はただそれだけ。

    出会いと別れ、生と死、人生に於けるさまざまな悲喜交々を世之介は彼らしい捉え方、生き方で見せてくれた。

    彼の姿勢、何気ない一言、人生論は心の深部にスッと落ち、いつも安心と笑顔という波紋を広げてくれた。

    こんな時、世之介だったら…?この先立ち止まった時に考えてしまいそう。
    そう、それぐらい世之介は自分の心に"在宅"してくれている。

    世之介が心のお守りとして居てくれる気がする。

    それがうれしい。

    号泣と感謝で閉じた彼の人生アルバムに今、大きなリボンをかけたい。

  • 横道世之介シリーズ完結編の上下巻。先の2作を読んだのはつい去年だったが、世之介の「人たらし」ぶりにすっかり魅せられてしまい、今回の続編を楽しみにしていた。先の2作から、世之介の結末は知っていたが、もう少し若かった頃の話だと思っていたので、ひょっとして電車事故はなかったことになった上での続編なのかなと一瞬期待してしまった…。

    39歳になった世之介も相変わらず。吉祥寺の下宿屋で、内縁の妻的なポジションの女主人と下宿人たちと楽しく暮らしている。そんな日常生活の様子が、時々、時系列を行ったり来たりしながら描かれている。世之介は四季折々の日常を、人生を楽しむことに長けているなと、読んでいて癒されとても温かい気持ちになった。タイトルの意味も、下巻で分かった。
    世之介がリラックスできることが1番大事とどこかの場面で語っていたが、その通りだと思う。続編が出て、ここまで再会が嬉しかった登場人物もなかなかいない。少し切ない読後感だが、とても良い読書時間だった。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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