絶体絶命ラジオスター(毎日文庫) (毎日文庫 し)

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620210322

作品紹介・あらすじ

さえないラジオDJの俺を殺しに来たのは…… 俺! ? 『スマホを落としただけなのに』の志駕晃が贈る新感覚SFミステリ!《書き下ろし》

感想・レビュー・書評

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  •  『 勝手に「ラジオ」特集 #7 』
     ー志賀 晃さん『絶体絶命ラジオスター』ー

     帝都ラジオアナウンサー・垣島武史は、ギャンブル、FX好きで明るい酒乱? 緊張すると失敗するが、絶体絶命の時は不思議と何とかしてしまうタイプと自認している。
     垣島が飲んだくれてスマホを失くし、『ケータイお探しサービス』で検索すると、地図上に3つの印が‥。ここから不可思議なことが続き、違和感が恐怖へと変わっていきます。
     
     自分にそっくりな男が現れ、身の危険まで感じて男を追う内に、その男が自分であることを突き止めるという、時間と空間を越えた物語です。所謂、時間軸を遡って過去を変えた結果、因果に矛盾をきたすタイムパラドックスミステリー。
     何となく、過日読んだ『異常 アノマリー』を思い出しました。本作は、その時ほど不穏・恐怖感はないものの、「俺」の複数の存在と視点の変化に、やや読み手として混乱しかけました。
     でも、そこも狙いなんでしょうか、展開にスピード感があり飽きさせません。

     最後の2時間のラジオ生放送。リスナーのメールを読み、覚悟を決めて話し続ける姿が、まさしく絶体絶命のラジオスターでした。

  • AMラジオのDJ・垣島は、最近奇妙な出来事が次々と起きる。就職活動中の人に会う約束をしたのに遅刻。でも会っていたという。他にも垣島の声を使って、店をキャンセルしたりと自分の他にもう一人の自分が?
    命も狙われることになり、垣島はどうなっていくのか?


    作者の志駕さんは、ニッポン放送にいたこともあり、「この人ってあの人だよね。」と思わせるような登場人物や番組などが登場するので、思わずクスッとしてしまいました。ラジオの裏側も楽しめるので、ラジオ好きの私にはたまらなかったです。

    SFミステリーということですが、タイムトラベルものです。垣島が過去に飛び込んでは、また過去へと繰り返していくので、それまでの不可解な行動が、答え合わせのようにわかっていきます。最初はドッペルゲンガーといったホラーっぽい演出かなと思いましたが、段々とわかるにつれて、あれとこれが繋がる面白さは快感でもありました。

    SFとしての面白さもありましたが、メッセージ性もあったのが印象的でした。何事にも始まりがあれば、いつかは終わりがくるものです。これが終わりだと感じた時、人は何をするのか?何を思うのか?

    その状況下での登場人物たちの行動が感動を誘うものがありました。自分だったら、どんな行動をするのか。終わりになるということは何かの始まりとも解釈できます。
    読み終わった後、何か行動を起こしてみようかなという気持ちにさせてくれました。

    ミステリーという点では、志駕さんというと、ドンデン返しの展開や犯人が印象深いのですが、今回はどんでん返しというよりは、ちょっと衝撃的な展開でした。なので、ドンデン返しを期待している人には、物足りないかなとも思いました。
    ラジオは声でしか伝わりません。また本は文字でしか伝わりませんが、その中に込められた思いは、温もりを感じましたし、「愛」も感じました。
    特に最後のラジオ放送は、メッセージ性が強く、印象深かったです。

  • 序盤は何か分からないという怖さ。
    中盤以降はSF要素からのハラハラ感。
    志駕先生の本来のお仕事から描かれていると思われるラジオ局の様子が、想像しやすく、そこも面白いポイントでした。
    志駕作品にしては比較的綺麗に纏まっていて(上から目線でごめんなさい)、垣島の成長も見受けられ、良かったと思います。

  • 初めて読む作家さんだったが、予想していたよりずっと面白かった。

    SFミステリーとしても、ラジオ業界ものとしても興味深かったし、終始テンポ良く、読後感も心地好かった。

    ラストの「解説」を読んで初めて知ったが、「スマホを落としただけなのに」の作者だったとは…!「スマホを~」は未読だし、映画も観ていないが、てっきりもっと若い作家が書いたものだと思っていた。

    ニッポン放送でバラエティ番組やラジオ番組のプロデュースに長年携わり、40代から執筆活動を始め、53歳で「このミス!」最終候補作に挙がるという異色の経歴にも納得がいった。

    語彙も知識も豊富で筆力もあるのに、遅咲き作家としての初々しさもしっかり持ち合わせていて、行間から変な手練れ感が立ち昇ってこない所にも好感が持てる。

    今後の作品にも期待したい。

  • タイムパラドックスミステリSF×お仕事小説。俺の前に現れた男は…俺?? 主人公にいろいろと不思議なことが起こりグルグル回って理解するのに追いつけない感じだったけど最後に経緯が分かると「なるほど!」と楽しく読み終えた。

  • 面白い。が、最後が『え』
    これで終わりなの?
    っと思いがあり、星を減らしました。
    先が気になり、どんどん読めました。

  • 最近ミステリーばっかり読んでいるので途中までSFとは思わず読んでいたのが一番ムカシのカッキー気分でなかなか面白い読書体験をした。

    ぐるぐるっと回って明日に向かって進んでいく前向きな読後感もいい感じでした。

    ついでに小ネタの名無しのヒッキーにも若干動揺したし、母は偉大だとも思った。




    書き下ろしとは言え校正がちょっと粗雑じゃない?ってところが数か所。特にドルの売り買いと缶コーヒー、何かの伏線か?とすっごいストレスでした。

  • 勝手に「スマホミステリー作家」と呼ばせていただいている志駕さんが今度はタイムスリップですって。もうスマホミステリーじゃないのかぁと思ったけれど、最初にちゃんとスマホを落とすし、ちょっと一杯では済まずに泥酔しています(笑)。

    過去の自分と未来の自分が入り乱れて3人も。事情をわかっている未来の自分が、トイレのドアを開けたらそこに座っていた過去の自分に思わず謝ってしまうのが可笑しい。

    SFには若干苦手意識がありますが、この程度のややこしさならついていける。しかしビルという名前の人が一瞬ボブになっていたのはタイムスリップのせいじゃないですよね(笑)。書き下ろしにこの手のミスが多い気がしなくもない。

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著者プロフィール

1963年生まれ。第15回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉作品『スマホを落としただけなのに』にて2017年にデビュー。他の著書に『ちょっと一杯のはずだったのに』『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』がある。

「2022年 『たとえ世界を敵に回しても』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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