抵抗論―国家からの自由へ

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  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620316758

作品紹介・あらすじ

自衛隊派兵、憲法破壊、メディアと戦争の共犯、自由の圧殺…。あらゆる人間的価値が崩れてゆく危機の淵を見とおし、一人ひとりの、自分独自の、内奥からの「抵抗」を呼びかける。

感想・レビュー・書評

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  • イラク自衛隊派遣、改憲、靖国、自己責任論・・・日本全体が小泉、阿部、石破、そして石原慎太郎らの何やら勇ましい言葉に踊らされ、気がついたら、1930年代のドイツ・日本に似ていることを痛感する昨今ですが、この時期に「抵抗はなぜ壮大なる反動につりあわないか」と危機感を訴える嘆きが鋭く迫ってきます。確かに抵抗する人たちはあまりにも無力であり、アナクロ、愚かに見えてしまい、嘲笑の対象になっています。著者はそれをデモに参加した最近の体験を通しても語っています。これはあまりにも無感動、付和雷同的になってしまった国民への警鐘であるだけでなく、筆者も育ったマスメディア業界への批判でもあります。この本に漂う無力感と怒りは私も全く同感であるだけに、ビンビン響きわたるような快感を覚えながら読むことが出来ました。そして改憲論を書く中で、著者自身は護憲論者ではないが、少なくとも「国家からの自由を守る」点で現憲法は評価できると断ずる。確かに今は逆に国家を中心に置いて憲法、そして法律を作ろうとしているが、それは全く逆転している発想なのかも知れないことに改めて教えられます。ポポロ事件当時の東大・矢内原総長の国家に抵抗する見識の高さと現代のスーパーフリー・サークル事件、そして江沢民を迎えた時の早大事務当局の見識のなさの比較は凄い説得力です。著者の考えに決して賛成ではない人もいるかも知れませんが、抵抗のない国家が滅びに近づくことを訴えるという意味では今の風潮とは逆説的な「憂国」の書としてぜひ人々に読んでほしい本だと思います。

  • もっと怒りを! もっと自由を! 自衛隊派兵、憲法破壊…。あらゆる人間的価値が崩れてゆく危機の淵を見とおし、一人ひとりの、自分独自の、内奥からの「抵抗」を呼びかける。

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著者プロフィール

小説家、ジャーナリスト、詩人。元共同通信記者。宮城県石巻市出身。宮城県石巻高等学校を卒業後、早稲田大学第二文学部社会専修へ進学。同学を卒業後、共同通信社に入社し、北京、ハノイなどで特派員を務めた。北京特派員として派遣されていた1979年には『近代化を進める中国に関する報道』で新聞協会賞を受賞。1991年、外信部次長を務めながら書き上げた『自動起床装置』を発表し第105回芥川賞を受賞。

「2022年 『女声合唱とピアノのための 風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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