派遣村 国を動かした6日間

  • 毎日新聞出版 (2009年3月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784620319308

感想・レビュー・書評

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  • 『派遣村 国を動かした6日間』を読むと、ある日突然、仕事を失った人がどのような苦境に落とされるのかを知ることができる。

    2008年のリーマンショックという金融危機で、多くの人々が派遣切りをされ、仕事を失った。
    仕事を失えば、収入もなくなるため、貯金を切り崩して生活することになる。
    すぐに再就職できれば問題ないが、そもそも経済不況による派遣切りのため、なかなか再就職はできない。
    そのため、どんどん貯金が減り続ける。先の見通せない状況で漠然とした不安に襲われながら生活するのはかなり心理的な負担が大きいだろう。
    やがて貯金も底を尽きかけ、家賃も払えなくなると家を失うことになる。
    また、床屋に行くことも、髭剃りなどを買うことも難しくなるので身だしなみを整えるのが困難になる。
    さらに、衣服も買えなくなるので、同じ服を使い回して、どんどん着古したボロボロの衣服ばかりになる。
    免許証の更新の費用もなく、免許証を失効して身分証明に使えなくなる。

    こうして、住居不定で、身だしなみが整っていない、身分証明証を持っていない人が出来上がる。
    さて、こうした人を正社員として雇う会社もほとんどいない。こうなると、製造派遣や日雇い派遣くらいしか仕事がないという。

    「仕事なんて贅沢を言わなければいくらでもある」という人はこの現実を知らない。
    たしかに仕事はあるが、たいていは苦しい。金融危機にでもなれば、真っ先に首を切られるようなキツイ仕事が多い。

    こうしたことにならないために生活保護があるわけだが
    「生活保護を受給するなんて情けないし、恥ずかしいから嫌だ」という心理的な要因から拒否する人もいる。
    また、役所に行っても「兄妹や両親などを頼ることもできるでしょ」とか「まだ若いんだから働けるでしょ」などと言われて追い払われる「水際対策」などをされることもあるという。

    さらに生活保護を受給できるようになっても困難は続く。とりあえず、住居がないと、まともな就職先が見つからないため、第一に考えるのは住居の確保だ。そして、住む場所を探すわけだが、オーナーから「生活保護受給者は駄目」などと言われて断られる人も多いらしい。
    一度でも住居を失うと、もう一度手に入れるのは至難の業らしい。

    そのため、ネカフェやファーストフード店、野宿などで夜を明かす人々もいるという。

    一度、失業して、すぐに再就職できないと、連鎖的に貧困の苦境に立たされる。「公園などにいるホームレスたちは、どこか遠く離れた別世界の住民」か何かのように考えて生活している「普通の人々」が、毎日規則正しく電車などを使って勤め先へ通う。
    だが、彼らもまた、ある日突然、公園などで野宿するホームレスになることもあり得る。

    貧困をどこか遠くの話だと思っていると、いつか足元をすくわれるかもしれない。
    ある意味、ホラーや怪談よりも怖い現実だなぁと感じた。リアリティがある、というよりリアルに起こった話だからこそ、背筋も凍るというもの。

    まあ、『派遣村 国を動かした6日間』は、2009年に出版された本であるため、今では事情も変わっているだろう。
    それでも、貧困に至る道としてのケーススタディとして興味深い。昨今は自己責任論も強いため、自己防衛のためにも読んでおきたい本だと感じる。
    ……もっとも、自己責任論を突き詰めた先に、この派遣村という現象が起こった根本の要因があるような気がしないでもないけど。それはまた別のお話。
    ―――終わり

  • なんとなく興味を持って読み進めることに…当時、ありましたね! 派遣村! 社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    しかし今現在、コロナ禍である今は当時よりも悲惨な状況になっていること請け合いであります…。

    また、派遣村みたいなことやらないんですかね?? というか、もう実施されているのか…?

    分かりませんけれども、また人々の善意が…この国にまだあることを期待したいですな!

    さようなら…。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 年越し派遣村が、数人の有志によって企画され、ここまで日本社会にインパクトを与えたのが「年越し派遣村」である。

    労働者派遣法が間接雇用であるがゆえに、ここまでの劣悪環境に置かれている。

  • なんとも言えない閉塞感が残った。いろいろなところで多くの人が声をあげているけれど、それだけでは根本的な解決にはならなくて、今、日本は岐路に立たされていることを痛感させられる。
    村民には30代の若い人も多く、彼らの生の声は悲痛だ。当事者筆の章もあり、それが伝わってくる。

    もう2年も前のことだが、今でもなんら生きやすくなったようには思えない。

  • 図書館で借りた。

    派遣村が開村され閉じられるまでの流れ、派遣村に参加した人・関係した人の文章からなっている。

    派遣切りが行われているということを知った人が、何かやらなきゃ駄目だよね、という考えで呼びかけていたことを知り意外だった。計画がろくにないまま走り出し、やりながら組み立てていったものだった。100万円くらいしかないのに始めてしまった活動がうまく回ったのはカンパがすごく集まったからだと思う。

  • 衝撃。

    なんとなく図書館で借りた本が、こんなにも衝撃をくれるなんて。

    「湯浅誠」は私の要注目人物になった。

    2008ー2009年の年越しだけでは終わらせないでほしい。

    貧困ビジネスはなにかと批判されがちだが、彼は違う、と思いたい。

  • 府立にもあり

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