スプートニクの落とし子たち

著者 :
  • 毎日新聞社
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本棚登録 : 117
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620320076

作品紹介・あらすじ

1960年代、理工系ブームが残した傷。外資系銀行の副頭取にまで上り詰め、「一生困らないほど金を貯めた」と語った大学同期のエース。彼は、なぜ挫折してしまったのか?金融工学の第一人者が、悲哀を込めて描く、親友の人生。

感想・レビュー・書評

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  • 辛い話だ。

  • Wed, 21 Jul 2010

    未踏開発者なMさんにすすめてもらってよんだ.
    ノベル?と思ったらノンフィクション.
    実名出しまくり.大丈夫なのだろうか・・・?

    東大出身の著者,同期はは野口悠紀雄を始め,今や有名人な各位.著者自身も金融工学の有名な先生(らしい)

    スプートニクショックで理系大学充実の文科省方針のもと拡充された定員の中で,進学した著者たち.
    その青春群像から,大学を出て,就職,研究者,教授,社長へ・・・
    など,定年を過ぎるまでの人生が小説のように追われていく

    その中で同期の一人,後藤氏の実話に基づく数奇な運命,時代に翻弄された運命がつづられていく.

    普通の小説のようによみやすく,ストーリーも豊か.

    東大を出た人の詳細なんて,一般の立場からは「あちらの世界」的なもので,あまり,身近に感じられる本は無かったように思う.東大にいく人間の古き良き「雰囲気」が,つたわるいい作品だと思う.

    決して手放しに幸せなわけでもなく,メディアが誤解とともにレッテルづけするように温室育ちなわけでもない.

    特に,僕自身,立ち居位置的には著者と非常に近い位置におり(大学院進学後,学者),著者自身の研究者人生を通して,結構勉強にもなった.

    なかなか,おもしろかった一冊

  • 1960年代の理系ブームが残した傷跡。
    ソ連のスプートニクの成功で、理系強化が叫ばれ、日本でも数学が嫌いでなければ理系へという進学指導が行われていた時代の一断面です。
    東大工学部でベスト10⇒富士製鉄(現新日鉄住金)⇒ハーバード大MBA⇒外資系銀行の副頭取まで上り詰め「一生困らない程金を貯めた」大学同期のエースの顛末とその挫折。
    東大理系のエリート達の生態、考え方、生き方を興味深く読みました。
    また本の中では断片しか述べられていませんが、この本の登場人物達の理系のエリートにより、(元はアメリカですが)金融工学なるものが発達し、日本はバブルへ突入した時代背景があります。理系教育強化の結果が、日本のバブルとその崩壊へ辿ったという皮肉な結果となり、そういうバブルの時代の落し子達の物語でもあります。

  • 1957年ソ連のスプートニク打ち上げにショックを受け日本政府も科学技術振興に予算を振り分け東大理科一類の定員は58年、59年に50人増員し550人になった。60年に東大に入学した著者の自伝でもあり、その友人の後藤公彦がもう一人の主人公なのだが何ともやりきれない、しかしあまり共感できない物語だった。

    同級生がいろいろ登場するがその中の一人が日比谷高校で断トツ、東大理科一類でも成績2番の超整理法の野口悠紀雄、著者曰く1940年生まれでは王貞治、大鵬、立花隆につぐスーパースターだと言いながら、そつなく満遍なく点を取るが飛び抜けたものは無いとやや冷ややかな見方で、大学院進学中に公務員試験を2番で合格し大蔵省入り、海外留学後しばらくして大学教授に転じたあたりの目端の利く行動が好きではないのかもしれない。同じように転々としながら不遇であった後藤に対するひいきもあるのだろう。
    本題からは外れるが同級生として他にもミスター円榊原英資、失敗学の畑村洋太郎、元セガの入交昭一郎等々いろんな名前が出てくる。

    著者は成績としては下位ながらこの世界で食うしかないと同期の中でも早く教授になり日本の金融工学のはしりとなった。一方で成績ではベスト10に入る後藤はこのままでは教授になれないと見切りを付け富士製鉄に入社、ハーバードに留学しファイナンス理論を学ぶがここでも理系出身者は社長になれないと帰国後ニューヨークの銀行に転職し日本総代表の副社長になる。ちなみに東大経済学部の同期で同時期に富士製鉄から留学した三村明夫はその後新日鉄社長になっている。後藤は銀行勤めを数年続けた後白人でなければ社長になれないと退社。その後は教授になろうとして著者の協力も有り東工大でファイナンス理論の非常勤講師としてスタートする。1学年1100人の大学で900人が受講する人気講義で後藤は生徒からも評判が良かったらしい。しかしハーバードでも生きていたら経済学のノーベル賞を取っていただろう教授に博士進学を勧められていたのに断っていたのだ。人文系ではなく理系教授を目指す後藤は博士号を先ず取る必要が有る。国立がんセンターの客員研究員として「たばこの社会的費用」の研究を始める。この研究はやがてタバコ税算定の基礎になって行く。医学部出身者以外の博士号に難色をしめす大学から待たされたあげく国立がんセンターから私大に転じた教授の後押しで6年がかりで博士号をとると、今度は後藤は中央大学に対して自分を教授にしろと申し込む。今度は中高の同級生の法政大学教授が助けを出し法政は無理だったが新潟の国際情報大学に99年教授として迎えられた。しかし1年後にはこの大学をやめ法政に教授として戻ってくる。やはり学生には評判が良かったらしいが大学のカルチャーを理解せず同僚には評判が悪かった。銀行時代には羽振りが良かったが安い給料でつとめていた講師時代に離婚し晩年は再婚するも金は持っていなかったらしい。

    著者は最後は夫婦仲も円満で学生をよく家に招くなどして実は幸せだったのではと書いているがどうなんだろう。常に自己評価と他者からの評価があわず目端が利くような行動を選んだつもりで結果としては自分の望んでいない方に進んでいるようにしか見えない。何がしたかったのかわからないのが共感できないところだ。
    著者は本来理工系に進むべきではなかった人がブームに乗って来たのが不運の味余りと言っており、また現在の金融工学ブームに乗って本来は理工系に進むべきひとが金儲け目当てで違う道に進む理工系離れを心配しているのだがこの本を読んで大学人事の古くささを見ると嫌になるんじゃないのかと思ってしまう。

  • 亡くなった同級生についての個人的な回顧録以上のものではない。
    タイトルの響きは魅力的で、終わりにも「きっかけはスプートニクショック」というところに立ち返っているが、これについて筆者は何か言いたかったのだろうか? 私は、そうですね、と思うのみ。

    それにしても、大学までの勉強の成績やインパクトのある経歴+αで人物が縁取られていくこと、人も高校も大学も一つの軸でランク付けされていることなどに、面食らった。作品中の台詞を吐いたのだろう実在の同級生然り、地の文然り、"優秀な"人々を書いているはずなのにとても低俗な印象。誇張だと思いたい。
    研究の実績は素晴らしいのだろうが、そういう人たちに一国一城の主を任せるのは怖いなぁ。

    かくいう私も理I出身者、定員が1000人を越えた後の話だが。理Iで何番などとあまり考えたことはなかったし、友達の順位を知っていたとしてもそんなに大々的に言うこととは思わなかっただろう。重要と思うことが違う。
    時代が変わったのか、性別の違いなのか、個人差なのか。

  • 面白かったです。

  • 1940年生まれ 野口悠紀雄
    小川洋子 小説家として大事なことは、毎日机の前に坐ること。そして一旦書き出したら必ず最後まで書くこと
    嵐山光三郎 人生星取表 男の一生を五年単位に区切って勝ち負けを記入していくと15日分の星取表ができる
    全勝の人生はつまらない 7勝七敗で千秋楽をむかえ最後に一勝してこの世をさるのがよい

  • 著者の理科一類での優秀だった同級生の人生を書いた本.これだけ他人のことを書けるのはもう作家である.しかし最後の取材対象をさけて,推測ですましてしまっている点でプロではない.まあどうでもいいけど.
    最後にある人生の星取り表だが自分のを考えるのはともかく,人のまで考えるのは大きなお世話だろう.それとも定年が近づくと,同級生とかと自分を比べて,オレの方が勝ち星が多いとか言うようになるのかな.嫌な感じ.
    それにしても,日比谷,東大で優秀な人物がそろっているのはわかるけれど,大学の人事にまでけっこう露骨にその力学を利用しているのを書かれると良い気はしない.地方の高校や,東大以外から学者を目指す皆さん,気をつけた方がいいよ.

  • 本来理系でない人が理系に行ったための人生について、、、東大理一ってこんなの?と、ある程度は想像していた以上のいやらしさ。
    何だか自慢話と愚痴の本。

  • 随分前に読んだけれど、感想を書き忘れていた。ドロドロした世界の話。もう一度読もう。

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著者プロフィール

中大

「1992年 『数理決定法入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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