権力の館を歩く

著者 :
  • 毎日新聞社
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620320083

作品紹介・あらすじ

建築が政治を決め、政治が建築を決める。吉田茂から小沢一郎まで権力者たちの住み処や国家機関の建物、政党本部ビルなど「権力の館」で交錯する時空へ身を投じ、かつてそこで営まれた政治の意思と権力者たちの本音を逆照射する。新たな視座を打ち立てる、画期的な日本政治論。

感想・レビュー・書評

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  • ・官を生きる 鈴木俊一(都市出版)
    ・公明党vs創価学会 島田裕巳(朝日新書)
    ・沖縄の帝王 高等弁務官 大田畠秀(朝日文庫)
    ・高橋是清自伝
    ・渡邉恒夫回顧録

  •  一言で言うなら「建築と政治」の本。著者は政治学者だが、新聞の文化面に連載、建築学専攻の学生も取材班に加わるという不思議なコラボレーションだ。
     「権力者」「権力機構」「政党権力」の三部構成。「権力者」の章では、私邸が大いに公的性格を持ったこと、西園寺や吉田のように東京を離れた地からもなお権力を振るえたこと、そして田中のように資産家出身ではなくとも豪邸を持てたこと、が不思議だ。今の権力者の私邸それ自体が政治の舞台となることがどれだけあるのだろうか。また、1960年代以前の軽井沢別荘地でのインナーサークルめいた記述を読むと、良くも悪くも政治の当事者が「選良」だったと思わされる。
     本書の出版は2010年。「権力機構」の館は出版10年後の現在読んでも大きくは変わらないが、「政党権力」の章では、社会文化会館はそれ自体消滅した。砂防会館は本書の時点で既に役割の終焉が書かれているが、これも館自体が消滅。他方で自民党本部は、ハード面での変革の必要性が指摘されているも、結局短期間で与党に戻ったことから、本書で描かれた当時の姿と大して変わっていないようにも見える。

  • 政治の真っただ中にいると、権力の恐ろしさに鈍感になる。権力は狂気であり、その一念なくしては政治家は何ものもなしえない。しかし同時に権力は魔物であり、それを自戒しなくては政治家は独善に陥る。中曽根は権力の二面性を鋭くとらえている。創作する情報の中にあって、首相はいかに適切な判断を下すべきか。

  • 140118 中央図書館

    建物が政治(家)の思考様式や行動パターン、組織運営・維持の手法に影響を与えるという仮説のもとに、ケース・スタディーを行うものかな?と思って読み始めたのだが。実際には過去の政治家のスナップショット的エピソードの羅列と、各建物のフロアプラン、動線、借景などの綯交ぜ程度にしか読めなかった。
    とはいえ、面白い。

  • 歴代の首相の私邸や省庁舎、政党本部など、日本の権力が集まる建物を中心に、これまでの歴史を含めて振り返る。特に歴代首相の私邸、別邸は写真を通してでも、そこで重要な政治決定がされたエネルギーが今も残っているように感じられた。プライベートとの分離など動線に気を配る人もいれば、あえて混在させる人もいる。目指す政治がその建物、空間に凝縮されていて、面白い1冊でした。

  • 住民のために自治体は活動しています.住民に向けた福祉,教育,文化等の実際の行政サービスの提供は,公共の施設が行ってきました.そして,その活動を支えるための施設づくりも,行政の重要な役割でした.
    しかし,施設づくりは,莫大な費用負担からも,「ハコモノ」行政と常に批判があります.そして,つくってしまった「ハコモノ」は当然古くなります.そこで,古くなってきた「ハコモノ」は維持や修繕が必要です.その結果,施設の維持には,お金と知恵が必要となっています.このように,現代の自治体では,「ハコモノ」の維持管理は最重要な課題になっています.
    「ハコモノ」が直面する危機は,どこか遠くの自治体の課題ではありません.実は,みなさんお住まいの自治体にもある課題です.そのため,「ハコモノ」の未来はみなさん自身の問題でもあります.県庁や市役所といった庁舎,図書館や美術館という文化施設,公民館やコミュニティセンターという自治施設の帰し方,行く末を論じる,これらの著作を手に取ってみてはいかがでしょうか。

    OPACへ⇒https://www.opac.lib.tmu.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB02018530&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 建物の立地・外観・内装・家具・材質などに、それらを使う個人や組織の思想が反映されている。

  • オーラル・ヒストリーとして語られることの多い、政治の世界。その際、出来事が起こった現場の場所に関する詳細は、話し手の当事者には空気の如く思われていることが多く、口の端に上らないことも多いと言う。しかし、大きな決断や運命を左右する大きな出来事は、建物が持つ”場”によって規定されることが多いのも事実である。建物の構造がほんの少し違っただけで、その後の未来は大きく変わっていた可能性もあるのだ。本書は、そんな「建築と政治」の関係性に着目した希有な一冊である。

    ◆本書の目次
    序 権力の館 事始め
     マッカーサー GHQ跡第一生命感

    1:権力の館
     吉田茂    大磯御殿
     吉田茂    目黒公邸
     鳩山一郎   音羽御殿
     岸信介    御殿場邸
     池田勇人   信濃町邸 箱根仙石原別邸
     佐藤栄作   鎌倉別邸
     田中角栄   目黒御殿
     三木武夫   南平台邸
     福田赳夫   野沢邸
     大平正芳   世田谷区瀬田邸
     中曽根康弘  日の出山荘
     竹下登    世田谷区代沢邸
     宮沢喜一   軽井沢別邸
     軽井沢別荘地(戦中編)
     軽井沢別荘地(戦後編)

    2:権力機構の館
     首相官邸
     貴族院、参議院
     衆議院
     最高裁判所
     検察庁
     警視庁
     財務省・大蔵省
     日本銀行本店
     宮内庁庁舎
     枢密院
     都庁舎
     北海道赤れんが庁舎
     沖縄県庁・高等弁務官事務所

    3:政党権力の館
     自由民主党本部
     砂防会館
     宏池会事務所
     日本社会党(社会民主党)本部
     日本共産党本部
     公明党本部
     民主党本部

    結 権力の館 事納め
     小沢一郎   深沢邸

    やはり、抜群に面白いのは「権力の館」の章である。当然のことではあるが、主が我儘である方が、個性が存分に反映されるのだ。個人の要件定義を受けた建築物は、ときに主より雄弁にその主体を物語る。特に、着目すると面白いポイントは、”機能要件をどのように定義したのか”と”庭との向き合い方”という二点である。

    ◆「権力の館」の特徴
    ・吉田 茂
    お手のものであった政治工作と同様に、始終手入れを好む普請道楽であった。非制度的な主体を好み、私邸で閣議を行う”館政治”の元祖。庭での散歩を好み、よくそこで考えごとをした。
    ・岸 信介
    御殿場という立地に、首相復帰をもくろむ権力動機が現れている。合理的思考が反映され、いつ何がおこっても困らないつくり。り。首相復帰への願望は、主体的に関わる庭を求めたところにもあらわれている。
    ・池田 勇人
    私的スペースをほとんど無視し、商売繁盛の料亭のようなつくり。庭にも自らのアイデンティティを求め、「石にも木にも顔がある」と述べたほど。
    ・佐藤 栄作
    由比ヶ浜の海を一望できるパノラマ風景がすべて。また鎌倉という立地は、鎌倉文士たちとの交流も可能にした。一度だけパーティを開いた広大な庭は、他の政治家へ格の違いを見せつけたという。
    ・田中 角栄
    フラットでフローという政治哲学をそのまま反映させた館のつくり。庭には、新潟に生まれ育った田中の皮膚感覚にあうものだけが取り入れられた。
    ・福田 赳夫
    自身の身の丈にあわせるべく、距離感の近さを重視したつくり。倹約の精神を貫き、庭もケチに徹したゆえの狭さを誇る。
    ・大平 正芳
    執筆活動が有名であるように、知的活動を保証するためのつくりとなっている。千客万来の”よすが”とするために、庭のボリューム感を重視した。
    ・小沢 一郎
    神秘性におおわれた要塞のイメージ。多くの政治家にみられるような”建物と一体化して広がるイメージの庭”はなく、閉鎖感が目立つ。

    また、政治家から依頼を受けた建築家という立場への興味も尽きない。吉田茂、佐藤栄作などから依頼を受けた吉田五十八によれば、「私宅でありながら、いつ公的要素が入り込むかはわからない。そのため、動と静をあわせもち、急変化を遂げるためのダイナミクスが求められた。」との弁を残した。そのため、「私的の居住部門」、「公式につかわれやすい接客部門」、「サービス部門」という3つの機能分配を行うことが、多くの「権力の館」に見られるベーシックな造りとなっている。

    おそらくは建築家自身、依頼主である政治家の目利きを存分に行い、本人にも気付かれぬよう、隠れたデザインを施していたことであろう。また、多くのケースにおいて、建築物は政治家自身より寿命が長い。没後、どのような評価が下されるかも考慮し、主亡き後の館の姿も見すえて、デザインしていた可能性も否定はできない。

    ちなみに、本書の構造も、「権力者の館」、「権力構造の館」、「政治権力の館」という3つの章で構成されている。権力者の館の代表的な機能分配である「居住」、「接客」、「サービス」に、なぞらえたということなのだろうか。もしそうだとしたら、本書自身も、まことに見事な「建築物」である。

  • まだ研修所にいた頃、寮の新聞で、楽しみに読んでいた連載でした。
    この視点は、完全にツボでしたw

  • 別の雑誌で著者の大磯吉田茂邸についての文章を面白く読んだことがあって、興味を持った。今回は「権力の館」という観点から、別荘やお屋敷だけではなく、国会議事堂や官庁、各党本部、都庁などについても書かれている。権力者というのは実に様々な「館」を持ち、使いこなす。それは「館」を維持する多くの人々を使うことに通じる。ビジネスの場というだけではない独特の雰囲気が感じられる。個人的には国会議事堂と各党本部の比較が面白かった。また、お屋敷編では、朝吹登水子氏の「私の軽井沢物語」を読んでみたいと思った。

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著者プロフィール

御厨貴

1951年(昭和26)東京都生まれ。東京大学法学部卒業。東京都立大学教授、政策研究大学院大学教授、東京大学教授を経て、東大先端研客員教授(名誉教授)、放送大学客員教授。サントリー文化財団理事、サントリーホールディングス株式会社取締役。東日本大震災復興構想会議議長代理(2011年4月~12年2月)、復興庁復興推進委員会委員長代理(2012年2月~13年3月)、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」座長代理(2016年9月~17年4月)などを務める。著書に『明治国家形成と地方経営』(東京市政調査会藤田賞)、『政策の総合と権力』(サントリー学芸賞)、『東京』、『馬場恒吾の面目』(吉野作造賞)、『権力の館を歩く』『平成の政治』(共著)などがある。

「2020年 『天皇退位 何が論じられたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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