- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620321189
作品紹介・あらすじ
東日本大震災発災から350時間14分の、自ら収入を断つことに他ならないCMカット連続生放送。社の存続さえ危ぶまれるなか、ラジオ福島はインターネットとの連動型災害放送で県内外、海外へも声を届け、多大な支持を集めた。いまも闘いは続き、果ては全く見えない。苦悩と苦闘のなかから社員55人、中継車2台の小さな放送局が目指す道とは。
感想・レビュー・書評
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有り 699/カ/12 棚:17
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自宅ソファーで読了(1)
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私は、福島出身でRFCの大ファン。東京都に住んでからも未だにPodcastなどでRFCに関するものは聞いている。
そのため、書かれているアナウンサーには非常に親しみを感じているし、描かれている現場には、身近な場所が多く読み進めるのは辛い事もあった。
涙が止まらない事も多々あった。
私にとってラジオ福島は、親しいご近所の様な身近に感じられるメディアだったのだが、本書からその様に感じているリスナーはたくさん居るのだと感じた。
その親しいラジオ福島が、必死に報道をするドキュメントに想像を絶する厳しい状況だったことが伺えた。
ただの美談をまとめたドキュメントではない。
また、ラジオのメディアとしての弱さ、強さを考えさせられる内容だった。
ラジオ福島のファンとして、この本を出版してくれた事には感謝したい。
また、ラジオファンとして、ラジオというメディアに一層注目したい。 -
まだ終わっていない。薄れる記憶が再び。けど覚えてるだけではダメなんだ。
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前書きの「取材の中で」の、地元メディアとしてのラジオの矜持が打ち砕かれる様。それは東日本大震災以前の、別の出来事の話なのだけど、この苦しい体験を持ったラジオ局が、震災のときにはどうだったのか。
この本が伝えるべきは、当時の惨状でもなければ今も終わっていない声でもなく、そのときに、ラジオというメディアがどんな役割を果たし、またそのために権利や費用といったものをどうしたのか。ラジオと相性がいいとされるインターネットも、自治ではなくて民間が運営しているサービスに支えられていて、結局のところ「会社がどう考えるか」という話なのだ。立派だったという当時の評価の裏に、存続の危機すらおぼえさせる売上減。
ラジオの話ではあるけれど、それ以外の見方が十分できる。 -
あの大震災に遭遇した誰もが、現実のむごさ、冷徹さに立ちすくんだ。被災したいちラジオ専業の小規模ラジオ局員が、持てる力を振り絞って被災者の姿を追い続けた。あの日を、あのあらゆる恐怖に正面から向き合わざるを得なかった人々の、生への葛藤を描き出している。人間は、自然の前にはあまりにも無力だ。自然に意思などないだけに、脈々と続いてきた日本人の中の被災の歴史が、再び繰り返されたことに、言いようのない絶望感と、人間の限りない希望を追い求める姿を見た。淡々と事実を追う筆致も好印象だ。
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前書きともいえる「取材の中で」の章だけを立ち読みし、これはきっと、あの震災の中で奮闘したラジオマン達の魂の物語に違いない、と思って購入した。もしかしたら埋もれたものすごい傑作かもしれない、という予感さえあった。それほどにこの冒頭の文章には力があり、魂があった。
なのに、読み進むうちにその予感はもろくも崩れる。確かにラジオマンたちの奮闘は記述されているのだけれど、あまりに客観的、あまりに散漫的な記述に、彼らの中にあったであろう熱い魂を感じることができなかった。エピソードも人物も、あまりにすべてを網羅しようとしすぎて多くのものを登場させすぎ、結果としてとらえどころがなくなってしまった。まことに残念な結果である。ノンフィクションであるがゆえに、客観にこだわりすぎたのではないかな?とも思えた。
もしこれが効果的な演出を施すことができるフィクション物語であったなら、たぶん著者の文章力はもっと生かせたのではないだろうか。 -
AM単営局のラジオ福島(rfc)が、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故(rfcでは略さずこう呼ぶ)に対しいかなる対処をしたかを綴るドキュメンタリー。
震災9日目の夜、ニッポン放送の福山雅治の番組を急遽ネットする事になったり、8月にTBSラジオの爆笑問題の番組を福島から放送する事になったりといった、東京のラジオ局との繋がりや、同じ単営局で阪神大震災を経験したラジオ関西からの訪問といった、「オールラジオ」としての取り組みも、ラジオ好きとして読み込んでおきたい出来事だった。rfcが県民に信頼され、県民の為の情報を発信しようとする中で、放送は「伝える」だけでない役割がある事に気付かされる。
あとがきにある「まだ何も終わってない」というrfc社員の声が響く。この本は震災に立ち向かったrfcの取り組みの全てではない。rfcの今後も見守りたい、と思わせてくれる一冊でした。